ウェブ人間退化論―「社会のIT化」は「サル化」への道!?

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569700557

作品紹介・あらすじ

叱らない大人、若者の"ボキャ貧"、日本人のコミュニケーション能力低下…それでも「ヒト」と言えるのか?

感想・レビュー・書評

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  • 内容紹介(amazon)
    「IT革命」「ウェブ進化」……。果たしてこれらは本当にヒトを幸せにしているか!?
    人間の生活をこの上なく便利にさせたIT機器。眼に見える限り、私たちは多大な恩恵を受けている(ように見える)。しかし、人間を生物のレベルから見たとき、決してヒトに良い影響だけをもたらしているのではない。生まれた時からこのIT社会にどっぷり漬かっている若者や子供たちには、すでにそのマイナスの傾向が見え始めている――。
    長年サルを研究し続けてきたサル研究者が、サルの一種であるヒトの幸せ、充足感、満足感を、理性ではなく本能のレベルから考え、さらにそこから日本人の習性や現代のいじめ問題にまで斬りこむ!
    若者が「自分探し」をするのはなぜか? ヒトが呆けたくないのはなぜか? ヒト社会に「いじめ」が起るのはなぜか? 企業が「ヒューマンエラー」を起こすのはなぜか?……。

  • 霊長類研究者の著者が、人間とサルはどのように異なるのか、日本人と欧米人はどのように違うのかという視点を踏まえつつ、急速にIT化した(ネットに依存した)日本の現代の問題点を軽い感じで扱った本。2008年発行なので、内容はやや古いが、学者らしい鋭い視点があって楽しかった。

    1章では、人間とサルは異なり、「食物」というモノで得られるものではなく、「自尊感情」という無自覚な注目されることに快感を得る人間の本質をまとめている。また、地域共同体が崩壊している現状も指摘している。

    2章では、日本人はマッサージなども含めて、「ふれあい」や「てあて」が好きな民族であり、欧米の個人ではなく、「世間」という概念が重要であることを指摘している。当時のケータイメールの使い方が欧米とは異なることも指摘している。

    3章では、いじめの本質と人間の嫉妬との関係、しごきが減って、いじめが増えたことの指摘、4章では、ゲームなどの普及と現代社会との関係、5章では、不便をよしとする生活についてまとめている。

    著者の一連のサルと比較した人間論を読みたくなった。

  • 人が長く生きる意味。
    人と人が相対する意味。

    それを考えて、おばあちゃんに会いに行こうと思う。

  • 我思う故に我あり
    でありつつ
    他人が考えているの存在が自分であったりもする

    自分とは 自分の内面にも
    外とからの認識にも存在するもの

    大学の先生と さらさらっとお話しているような本でした。

  • ヒト 他の存在が自身に注目を払ってくれることが心地良い。社会的に注目を浴びることに心地よさを感じる習性は、人間に生まれながらにして備わった、いわば業であり、私たちは終生、その呪縛から逃れることができない。そもそもいたみといった主観的とおぼしき感覚ですら、人間は他者とのコミュニケーションを通じて獲得するということがあきらかになっている。痛みというような、きわめて個人的で主観的と思われる感覚ですら、人間は他者の当人への働きかけや受け止め方を内面化することで形成されていくのだ。私の考える私というのは、結局周囲の考えるところの私とたいして変わらない。その私がみつからないという昨今の若者を中心とした日本人の悩みは、ようするに周囲の考えているところの私がどういう姿なのかを認識することができなくなっていることを示唆しているのである。高齢者を限定する決定的な要因とは、繁殖活動を停止してなお存在し続ける存在というのが答え。スリランカに生息する野生の象は、海岸沿いにいたにも関わらず、まったく被害にあわずに済んだ。理由は地震発生直後素早く高台に逃げたから。高齢の象が反応し、付き従い、集団全体が避難した。欧米の社会と日本の世間。日本人は個人でなく庶民。戦国時代に武田信玄や勝頼と親しかった快川紹喜という僧は、武田家の菩提寺である恵林寺を織田信長の軍に取り囲まれてひをかけられたとき、心頭滅却すれば、火も自ずから涼しといって死んだと伝えられている。これは注意を捨てることの究極の状況を良く表した表現であるといえよう

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著者プロフィール

1954年大阪生まれ。専門は、ヒトを含めた霊長類のコミュニケーションの研究。
1983年 大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了
現 在 京都大学霊長類研究所教授

[主著]
ケータイを持ったサル 中央公論新社 2003年
音楽を愛でるサル 中央公論新社 2014年
自閉症の世界(共訳) 講談社 2017年

「2019年 『ニューロダイバーシティと発達障害』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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