ネットいじめ (PHP新書 537)

著者 :
  • PHP研究所
3.23
  • (0)
  • (17)
  • (36)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 186
感想 : 23
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569701141

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ツールと世代に関係なく、いじめの芽は昔から偏在している。
    必死で「キャラ」を着せ替えながら世渡りをしていくしんどさはピンとこないが、
    「自分」を持ってる方が珍しいのかしらね。
    以前読んだ『キャラ化するニッポン』という能天気な本よりも
    ずっと深刻な処世術。
    http://takoashiattack.blog8.fc2.com/blog-entry-1427.html

  • ネットでのいじめの実態を各種データを用いて検討したもの。
    最終的にはメディアリテラシーの話が結論として用いられる。

    感情的な議論になりがちで実態を見失いがちな世論に待ったをかける意味で良い本と感じた。
    しかしながら,メディアリテラシーの題材として取り上げられた感が若干否めず。
    どうせここまでやるのであれば,全編通してネットのいじめを問題として欲しかった,というのが個人的な感想。

  • 「学校裏サイト」に関する報道には,やや疑問を感じていた。さらに,携帯禁止の議論にも,本質を見失う危険を感じていた。本書は,それらに対して,順序立てた説明を加えてくれる。
    著者自身がネットを活用する人であり,ネット擁護にかたよっているのではないかという見方もある。しかし,冷静に世の中の議論を聞けば,その疑いも消えるだろう。
    ネットによるいじめは,ネットを規制すれば減るだろう。でも,それでいじめがなくなるのか。携帯サイトは出会い系という発想はあまりに幼稚だ。知らないものはこわいものという,無知をさらけ出した議論はもういらない。新しいメディアが生まれるたびに繰り返されてきた危険論。その歴史を振り返ってみることも大切だろう。
    また,いまのマスコミは,新しいメディアである「ネット」の台頭を脅威に感じているはず。そのようなマスコミの言説にこそ,偏見があると疑うことも必要だろう。
    ただ,いまのネットの問題を無視しているわけではない。問題点を冷静に見つめて,きちんとした解決をはかることこそ,いま求められていることなのだろう。特に,いじめの問題をネットの問題にすり替えた議論は,本質的な問題の解決を遠ざけてしまう危険がある。

  • 最近の学生間でのイジメがどんなもんかと思って読んで見たんですが。
    主に「学校裏サイト」でのイジメの実態・発生件数等について語っているが、数字的な意味ではそれほど精密ではない。
    筆者の観察した範囲の感覚で件数等は語られている。
    (とはいえ数百件は観察されているけど)
    世間の論調は「子供にネットをさせるな」「インターネットから子供を守れ」というものだが、筆者は違う。
    ネット上での交流がかならずしも「陰口」や「いじめ」に繋がるとは限らないというもの。
    情報を共有したり何気ない雑談で交流をさらに深める可能性のあるものを断つのはいかがなものか。という論旨。

    ネット上で悪口を書かれる人の種類は下記のとおり。
    ?良くも悪くも目立つ人32%
    ?嫌われている人・陰キャラ27%
    ?だれでも14%
    ?おとなしい人4%
    ?ふつうの子2%
    ?不良・ヤンキー系2%
    ?先生2%
    ?ギャル系1%
    ?自分1%
    ?その他15%
    学校裏サイトでの調査であるため、加害者側は「同級生・先輩」が98.4%と圧倒的。
    結果から見ると学校でのヒエラルキーとほぼリンクしている様子。
    不良やヤンキー、手を出したら現実世界で制裁されそうなところには陰口はあまり叩かない。
    先生の悪口とかもっと言いそうな気がするんだけどずいぶん低いんだな。

    イジメやネットについての考察はよくあるものだったけど、「キャラクター作りの重要性」というのはなるほどなぁと思った。
    「イジメ」ではなく「イジラレル」。
    ”●●は面白キャラ”とか言われつつもそれは、馬鹿にすると面白いとか。蹴ったり水かけたりしてからかうと面白いとか。
    イジメではないのだけれど(それが楽しい。芸人でもないのにオイシイと思い込んでいる)、イジラレル側は結構キツイ。
    「コイツはからかうと面白いヘタレキャラだ」とかクラスの中で一度決まってしまうと、空気を読んでソレを演じて乗り切るしかない。
    拒絶すれば”つまらないヤツ”になるし、キャラ作りに失敗すれば失望させるんじゃないかというプレッシャーも出る。
    「イジメの原因は本人にある」なんていう人もいるけど。
    個人的には”周りの雰囲気でイジメに繋がるかどうかが決定される”と思う。
    どんなに寒いキャラでも、それを面白がってそういうキャラだと思って接するか、くだらない人間だと見下して苛めるか。
    本人のキャラは同じでも、それを見る周囲の人間の反応によって状況が異なると思う。

    ネットでのイジメをなくすことは正直難しい。
    こういっては何だけど、正直無理だと思う。
    子供だけではなく、昨今の事件では「国立大職員の男(45)」「千葉県松戸市の男(35)」でさえネット上の情報を信じていたとはいえリンチ的言動を行ったりしているわけで。
    人格形成の未熟な子供だけがネット上で暴走するわけではないのだし。
    むしろ、この本で紹介されている10代の学生の方がネットの扱い方について達観しているとも思える。
    そもそも、ネットが存在するからイジメが発生するのではなく、イジメのなかの一つのツールとしてネットが存在するだけで、ネットを排除すればイジメもなくなるわけではない。
    実際のイジメ等をなくすことが不可能であるように、ネット上でのソレをなくすことも難しいだろう。
    風邪をひかないようにするために風邪菌を絶滅させよう!というのではなく、風邪をひかないようにしっかり予防しよう!そういう環境を作ろう!というのが有効な考え方だ、とのこと。
    ネットの盛んな現在に学生じゃなくってよかったな。ってちょっと思います。

    学校裏サイトって、テレビで言うほど酷い場所じゃないのかなぁ?と思いつつ。
    この本だと、ネットでのコミュニケーションが有意義であることを強調しているのでニュートラルな視点とは思えないなぁ。
    なんとなく、苛められる方の視点ではない。
    クラスの中でのチームリーダーだったり、盛り上げ役であったり。
    比較的、勝ち組の「ネットって楽しいよ!ネットって悪いことばかりじゃないよ!」っていう意見のような気がする。
    そもそも自分の管理するコミュニティ内でイジメをやっているなんてインタビュー受けて正直に言うかな?
    匿名だったとしてもそうぺらぺら「イジメ?やってますwww」なんて言わないような気がするんだけど。
    穿ち過ぎか。

  • 2008/12
    ネットによるいじめが社会問題の一つとされている。確かに舞台はネット上だが、これはネットだけの問題なんだろうか。インターネット社会の特性とそこから個人感になにか変容があるのか、ネットいじめのメカニズムから現代社会が抱えていることから、この問題の原因を探っている。

  • i-mmにする。

    メディア報道が大人がこうであってほしいという原因論でネットを悪者にしているという論法の裏をはるので、
    逆にメディアと同じように視点の偏りを感じさせるけれど、
    そこは本を読む人が両方の論理を見て自分で決めること。
    あたまから一つの本で解決した気になろうという読み方をしては情報はいけません。

    いくつか言葉の書き方や、
    ネット化=顕在化・アーカイブ化・つながり過ぎ化など、上手い言い方だなと思うところあり。

    こうして記録を残していていいのだろうか?
    日々ブログに書いていることの本質を大人の方がむしろ分かっていない。
    ネットリテラシーはどうしたら高められるのか?疑問が残る。




  • 学校裏サイトの実態を示すのだが中盤まで裏サイトを肯定しすぎてる感じが否めなかったので多少疑問を感じた。例えば「死ね」と書き込みがあっても「ネタ」である可能性があるから裏サイトを否定してはいけない、と言ったものである。個人的には「死ね」は「ネタ」ではないと思っている。mixiの日記で他人を「死ね」とか書かないわけだし…。まぁ、終盤にかけては実態が明らかになっていた感じがして安心できた。メディアリテラシーでも「親世代」より習熟した子どもがたくさんいる事実(一種のデジタルデバイドですね)、裏サイト自体は実生活のネットワークとは乖離できないetcは認めたいと思う。個人的にはそれを踏まえた上でも匿名でコメントができるという「システム」はいじめを誘発する考えている。個人的には4章がもう一度読み直したいぐらい良かった。ミクロ社会学の浅野先生も取り上げられていたし。気になる内容は「キャラ」について。mixiの日記は以前はパソコンのみだったので不特定多数に見られるのをユーザーは覚悟していたのについにmixiもケータイユーザーが増えて「不特定多数」からいつか会うべき「未特定少数」へ向けてプリクラをのせたり未成年なのに喫煙、飲酒を日記に平気で書いたりと意識のの変革が起こっているとか、アニメのプリキュアで主人公がケータイを使って変身するから子どもがケータイを持つようになった、少女雑誌でケータイが取り上げられたからetcが内容である。mixiは考察することいっぱいありそうだと思った。

    ☆この著で気になった単語
    「第三者効果」→メディアなどの影響は自分よりも他者のほうが大きいと認知する事で行動を変化させること」
    例)現在のネットを使っている高校生でも未来の小中学生には悪影響が出るから使って欲しくないetc

全23件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

1981年生まれ。評論家。メディア論を中心に、政治経済、社会問題、文化現象まで幅広く論じる。NPO法人ストップいじめ!ナビ代表理事。ラジオ番組『荻上チキ・Session-22』(TBSラジオ)メインパーソナリティー。同番組にて2015年度、2016年度ギャラクシー賞を受賞(DJパーソナリティー賞およびラジオ部門大賞)。

「2019年 『ネットと差別扇動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

荻上チキの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
J・モーティマー...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×