本質を見抜く力―環境・食料・エネルギー (PHP新書 546)
- PHP研究所 (2008年9月13日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569701943
作品紹介・あらすじ
石油高騰、温暖化、食料・水不足、少子化…。これらの問題を概念ではなく具体的なモノ、データに則して考えれば、本質が見えてくる。知見を論じ合うのは、解剖学の賢人と、ダム行政に手腕を発揮してきた元国土交通省河川局長。「日本人は既に一度エネルギー枯渇を経験している」「温暖化対策に金をかけるな」「小さいことが好きな日本は世界の見本になり得る」、さらに「自殺する人は傲慢」という卓見まで。戦う農業経済学者・神門善久との鼎談も掲載。ものの見方、日本の見方を変える一冊。
感想・レビュー・書評
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読書録「本質を見抜く力」5
著者 養老孟司、竹村公太郎
出版 PHP新書
p144より引用
“いまの人はいらいらしがちで、すぐ全か無
かと考えますけれども、生態系を扱うにはほ
どほどという考え方が必要です。”
目次から抜粋引用
“人類史は、エネルギー争奪史
温暖化対策に金をかけるな
少子化万歳!ー小さいことが好きな日本人
「水争い」をする必要がない日本の役割
農業・漁業・林業百年の計”
解剖学者と元官僚の二人による、世の中の
問題について語り合った対談集。
人類の歴史の見方から世の中を支える業務
についてまで、それぞれの歩んできた分野の
経験を活かして語り合われています。
上記の引用は、自然に対する養老氏の考え
の一部。徹底的にある一つの要素を排除して
しまうと、その要素に押さえつけられていた
物が台頭してきて、結局都合の悪い事態に
なってしまう、ということがあるのでしょう
ね。今世間を騒がせていることも、なんだか
そんのふうな感じを受けてしまいます。
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今から、草むらに行って虫でも捕まえた方がいいのかな〜、っと言う読後感。抽象的な議論を積み重ねてもどうにもならない、と言うのは確かにそうだと思われた。「下」から積み上げていくことが、確実である方法である、と言うのは、確実性の高いこと、かつ自分の中で何度も咀嚼したことしか言わない(言えない)養老さんらしい発言である。確かに苦労は多かったろうが、ある意味でうらやましいとも思える養老さんの生き方は、いつも本気で世界と向き合っているその姿勢がそう思わせるのだろう。
本質を見失いがちな現代人に、おすすめの一冊である。 -
k
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この対談本が面白いのは、上から目線の養老先生は本質を見失ったことも言っているのに、対談相手の竹村さんは本質を見抜いたコメントをされていることだ。
例えば、60ページで養老さんは、「自給率を高めることとフードマイレージを低く抑えることは必ずしもイコールではない」と述べている。環境・エネルギーの観点からは全く正しい。ところが、EUがそういう発想で各国で分担しているというのは、論理の飛躍だ。EUは幾重もの陸路と海路で繋がっているから、食糧安全保障の観点からも分担は正しい。しかし、日本は輸入=海路なので、コロナ禍のコンテナ不足のようにリダンダンシーの点で危うく、日本はEUとは違い、単独での自給率はやはり不可欠な指標だ。
第四章には、「水争い」をする必要がない日本の役割というタイトルがついているが、竹村さんは、東大の沖教授のバーチャルウォーターを取り上げて、日本が間接的には水の大輸入国であることや、水問題が地球温暖化の影響の目に見える事象であることを伝えている。つまり、日本は食料や材木の輸入という形で水争いに巻き込まれていることを示している。これは、まさに本質を見抜いている。 -
地球温暖化やエネルギー問題、国家間における水資源の争いや食料問題など、日本を取り巻く様々な環境に対し、客観的データに基づいた分析によってその本質を明らかにする。社会的事象を解剖学的な見地から解説して、その著書『バカの壁』で大ブレイクした養老孟司と、国土交通省(旧・建設省)で河川局長を務めた一方で作家としても多くのエッセイを出している竹村公太郎という理系のお二人が、人類が農業を始めたとされる縄文時代まで遡り、今の地球上で起こっている諸問題について、正しい「モノの見方」・「日本の見方」を語り合う。
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これは、すごい。
さすが
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【由来】
岸由二の「流域地図」の関連本からの養老孟司関連本(amazon)。タイトルには偽りありっぽいけど、ちょっと面白そうかなと。
【期待したもの】
日本について地理学的な観点からうんたらかんたらってamazonのレビューに書いてあった。
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石油、温暖化、少子化、水に農業の問題。事の起こりを知ってから自分の頭でしっかり考えることをしなくては「だめ」ですなぁ!
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養老猛司氏の本は読んだことがないが、「バカの壁」ほか、なんだかおもしろそうなのでそのうち読んでみよう。
竹村氏は元国土交通省局長。
そういう2人による環境・食料・エネルギー問題をめぐる対談集で、談論風発風に進んでいたところに、神門善久という農学教授が飛び込んできて、農政問題が大変だ、誰もオレの言うことを聞いてくれない、農林水産省はバカだと叫ぶので、年寄り2人がもてあましてニガ笑いといった座談風景が思い浮かんでくる本でした。
竹村氏の発言。
「頭のいいだけではない、勇気もあり、社会を綱渡りしていく度胸とバランス感覚を備えた役人が少なくなりました。
現在はマスコミによって細部のミスでたたかれ意気消沈し、役人になろうとする優秀な人材はカネ儲けのマーケットの世界に行ってしまう。
この激動の時代にこそ構想力と気概を持った役人が必要です。国の役人こそが百年後の国土と食料とエネルギーを考えるセクターになるべきです。」(p158)
「役人」のところは「政治家」と読み替えるべきかもしれない。 -
養老孟司氏の本質をとらえる方法は、ある対象があった、それが五感のすべてで捉える、その対象は「モノ」であり、ただ単なる物質ではないである。西欧人のマテリアルではない。
片や、竹村公太郎氏、文明は下部構造と上部構造で構成されるとし、下部構造は四本の柱で構成されていて、安全、食料、エネルギー、そして交流とする。
また、下部構造は英語でインフラ・ストラクチャー(Infra
Structure)だが、インフラという単語が付く言葉には、インフラ・ソニック(Sonic)、<不可聴音>、音として存在するが、人にはききとれない低い音。インフラ・レッド(Red)<赤外線>。光線としては存在しているが、赤色より外れた波長で人には見えない不可視光線などがある。
インフラには人に見えないという意味があった。インフラ・ストラクチャーとは「人に見えない構造物」であった。
分明を支えている下部構造は、意識しないと見えない宿命を持っているとした。
そんな二人が下記のことを語り合ったのである。
第1章 人類史は、エネルギー争奪史
第2章 温暖化対策に金をかけるな
第3章 少子化万歳!――小さいことが好きな日本人
第4章 「水争い」をする必要がない日本の役割
第5章 農業・漁業・林業百年の計
第7章 いま、もっとも必要なのは「博物学」
で、神門善久氏を交えた「特別鼎談」
第6章 日本の農業、本当の農業
は、農林水産省の役人、農協、そして自由をはき違えた一部農民もどきが、農地利権に狂っているという真の実態が明らかにされています。
ということで、神門善久氏の本を図書館に予約いたしました(笑)。