- 本 ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569760841
作品紹介・あらすじ
養老孟司氏、推薦! 荒俣宏氏、推薦!▼河川行政に長年携わり、日本全国の「地形」を熟知する著者が、歴史の専門家にはない独自の視点(=インフラからの視点)で日本史のさまざまな謎を解き明かしていく。▼◎なぜ京都が都になったか──都市繁栄の絶対条件▼◎元寇が失敗に終わった本当の理由とは何か──日本の危機を救った「泥の土地」▼◎なぜ信長は比叡山延暦寺を焼き討ちしたか──地形が示すその本当の理由▼◎関ヶ原勝利後、なぜ家康はすぐ江戸に戻ったか──巨大な敵とのもう一つの戦い▼◎赤穂浪士の討ち入りはなぜ成功したか──徳川幕府百年の復讐▼◎なぜ吉原遊郭は移転したのか──ある江戸治水物語▼◎なぜ江戸無血開城が実現したか──船が形成した日本人の一体感「地形」を見直すと、まったく新しい歴史が見えてくる!▼歴史に対する固定観念がひっくり返る知的興奮と、ミステリーの謎解きのような快感を同時に味わえる1冊。▼『土地の文明』『幸運な文明』を改題し、再編集。
感想・レビュー・書評
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地形専門家の著者が、地形から日本史の史実考察をする。
本当に地形から考察しているものもあれば、強引にこじつけているものもある。なかなか面白い本である。
自分の日本史の知識がもっとあればさらに面白かったと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
地形や天候から為政者の行動を読み解く。面白い。歴史の見方、その土地の見方が変わる。
文献的な証拠がないので仮説の域は出ないが、なるほどと納得させられる仮説が多々ある。空想と言いたくなる仮説もいくつかある。無理があると言うより、なんで歴史上の心情がわかるねんと突っ込みたくなる。 -
真偽のほどはともかく、地形をカギとして歴史上の事件を読み解く、というのが謎解きっぽくて面白かった。ほんと、真偽のほどは不明なので笑、そこにこだわらず仮説を楽しむ読み方で。
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京都。日本海側と太平洋側、どちらも船運交流ができる位置。
京都遷都の理由。
道鏡など奈良仏教から遠ざかる。
水と森がより豊かな京都へ。
江戸遷都の理由。
木材が豊富な関東へ。
江戸は湿地帯、天下の睨む地の利も関西より悪い。
かつて森林の宝庫だった黄河、今は砂漠化が進む。黄砂が発生。朱鎔基首相は北京からの遷都を考える。 -
地形から日本史の謎に臨んだユニークさが売り物。
全体には面白いが、中には強引な我田引水のものもあります。
例えば、江戸城の半蔵門。大手門が正規の正門ではなく、半蔵門が正門という主張。城外から城内へ唯一橋ではなく土塁で繋いでいるのは正門の証しだと強引に結論付けている。
別の本で調べたら、半蔵門が土塁で築かれているのは、将軍の脱出用として、橋では万一壊れたり、焼け落ちたりするが、土塁にしてそういうリスクを避けている。そして半蔵門に繋がっている甲州街道を使って天領である甲斐まで落ち延び易いように、半蔵門の周辺や甲州街道沿いには、百人隊や千人同心は配置されているとある。
こちらの説の方が説得力があるようです。
というような箇所もあるが、ユニークな切口で、それなりに歴史を楽しめる。 -
建設省の土木・ダム・河川関連の専門家が地形から
導かれる歴史を書いた本。やはり着眼点が面白くよかったです。
江戸の治水、江戸城半蔵門、逢坂山と比叡山、鎌倉、赤穂浪士と吉良氏
の話。吉原。奈良の衰退。大阪に緑が少ないわけ。遷都に関して
それぞれの話が地形をカギとして説明されているのですが
本当にそうかはいろいろあると思いますが、それぞれとても
面白い論理かと思います。 -
なるほど、いわれてみれば確かにそうだなあ、の連続。歴史を地理の観点から見直すと、まったく違った説得力を持ってくる。
徳川家康が、いかに河川(治水)の重要性に精通していたのか。関東平野は平野ではなく沼地湿地だった。利根川の流れを変える大工事が関東平野を平野にしたのだ、と説く。
首都はなぜ奈良にできて、なぜその後に京都に移ったのか。当時の海面の高さや川の位置から船による交通の便を想像し、もう一方で山と川が提供する薪(=エネルギー)と水の供給能力から収容できる人口を見積もってみる。遷都は必然だった、と結論づける。
東京には緑が多いのに大阪の街には緑がない。なぜか。テヘランや北京の街でみた風景からひらめく。大阪は民衆の街で王侯貴族に支配されなかったから、庭園が緑地公園にならなかったのだ、と。
他にもヘェ〜と膝を打つような話しが満載。
江戸幕府が吉原を移転した本当の理由は。
江戸城の半蔵門は裏門ではなく表門だ。
赤穂浪士は潜伏中、江戸幕府に保護されていた。
奈良の歴史的遺物が1000年の長きに渡って保存された理由は。
信長が比叡山を徹底的に焼き討ちした理由は。
元寇が攻略できなかった日本の自然の砦とは何だったのか。
博多は大都市の四大条件、安全/食料/エネルギー/交流軸をほとんど満たしていないのに繁栄しているのはなぜか。
本書を読み終わる頃には、すっかり歴史を見る目が変わってしまう。
惜しいのは、語り口。「AだからB」というときのAについて、意図的なのか不明だが、必要条件と十分条件を混同しているように見受けられる。言い切った方がドラマチックではあるけれど、その分、眉に唾つけながら聞いてしまう。本書は歴史についての「科学」というよりは「もう一つのお話」として楽しむのが吉。
最後に、著者も意図してない本書の効果をあげたい。それは、地理という学問の面白さと奥行き、可能性。小学校中学校で習った地理は面白くなかったけど、こうやって歴史と組み合わせてみると立体感がでてきて、歴史と地理の両方が面白くなる。 -
戦国時代からの日本史を理解する上での地政学見地からの示唆が無茶苦茶ある内容。江戸は西を下にした地図で理解する。甲州街道が半蔵門に直結している。
そもそも江戸は、豊臣が家康にした左遷であった。生活しづらい湿地を肥沃で広大な田園都市に家康が国土開拓をして行ったことが良くわかる。
また、小名木川は、軍事的な意味で造られたものであるとの新説を導き、日本のアウトバーン的水路をアウトバーンよりも何年も前に実施していたとの説に驚かされた。 -
ここまで断定してしまっていいのかなぁ...と思いもするけれど、納得感は大きい。とはいえ、これも一説なんだけど。
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地理・地形・土木の観点から史実を読みといていく一冊。
トンデモ本なような気がしないでもないが、ミステリー小説を読んでいるようで興味深い。
大阪城や延暦寺がいかに抜群の立地であったかがわかる。
利根川大工事や吉良家への仕打ちなどを読んでいると、徳川家康の執念深さと忍耐強さにゾッとする。
著者プロフィール
竹村公太郎の作品





