海の翼 エルトゥールル号の奇蹟 (PHP文芸文庫)

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (477ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569762081

作品紹介・あらすじ

明治23年のトルコ軍艦エルトゥールル号救出劇は、百年の時を超えて、奇蹟を生み出した。日本とトルコの友情を感動的に描く長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 耳にしただけで涙腺が緩む単語が私にはいくつかある。最近は歳のせいか、昔より涙もろくなっているような気もするが、この本に登場する『エルトゥールル号』もそうした単語のひとつだ。

    といっても私の感涙ポイントはエルトゥールル号そのものではなく、イラン・イラク戦争の折、自分が直接助けられた訳でもないトルコ人が日本人に対して示してくれた態度のほう。
    危険を承知で飛行機を飛ばしてくれたトルコ航空のクルーはもちろん、イランとトルコは地続きだから、と自国の飛行機を日本人に譲り、車で避難したトルコ人達には本当に頭が下がる。
    私がその立場であったら、自国民を優先して当然!と自分の権利を主張してしまいそうだ。(今後、もしそういう場面に遭遇したら、この話を思い出してみようと思った。)
    車でトルコを目指したトルコ人たちについて、その後は書かれていなかったと思うが、全員、無事に帰国出来たのだろうか。

    難破したエルトゥールル号の乗組員を救助した串本町の人びとについて、なけなしの食料を供出したり、自ら荒れた海に入って救助にあたったことはこの本で初めて知った。彼等もまた尊敬に値する人びとだと思った。

    さしあたって、イラン・イラク戦争のときの恩に報いるため、テロや金融不安で揺れているトルコに対して、日本人ができることは何か考えてみたい。

  • 1980年に勃発したイランイラク戦争。
    1985年当時のイラクの大統領フセインが出した、これから48時間以降に領空内に侵入した航空機は無差別に攻撃する、という声明で起こった出国パニック。
    どの国も自国民救出を優先するため、脱出チケットが手に入らない。法律の壁に阻まれて自衛隊も出動できず、国からの救助は絶望的に。
    中東に空路を持つ日本航空会社はなく、このままでは戦禍の中に多くの日本人が取り残されてしまうという絶望の中、唯一日本人救出のために動いた国、トルコ。
    彼らトルコ人は100年前に受けたエルトゥールル号の恩返しと皆口を揃えて言う。

    中間に、エルトゥールル号事件(1890年)とは何か、その時日本人は何をしたか、が細かく書かれている。(ただ物語性を出すためだろうが、りつとウシュカの話はちょっとドラマチック過ぎな気もする)

    トルコが親日国と言うことは知っていたけど、その理由までは具体的に知らなかったので、トルコ親日の背景がわかってすごく面白かった。
    というか、当時の串田町の人々がとても素敵。武士でもないのに、義勇にあふれている。

    苦境の時に受けた親切は、相手に感謝と友愛をもたらす。
    国境を越えてお互いに苦境に立ったときに助け合う関係があるのはとても嬉しい。
    聖書の弁ではないけど、利己的ではなく与える側に立つことって、人生において大切だなと感じる。
    最近のトルコ情勢を見ると
    テロや難民で色々と心配。一刻も早く情勢が落ち着くといいな。

    久しぶりに一気読みした。
    そして電車の中で泣いた。

  • なんでこの本を手に取ったのか今でも不思議。
    タイトルを見てもピンと来ないし、もちろんエルトゥールル号なんてその時は知りませんでした。
    でも何故か手に取って表紙や帯に書いてあるコメントを読むと、どうやら実話でしかも感動的な…しかも問題の時代は1985年。世界情勢なんて気にも止めずに遊び回っていました。イランとイラクが戦争をしていたのは知っていましたが、まさかこんなドラマチックで感動的な実話が有った事は本書を読んで初めて知りました。
    ラストは震える位感動しました。
    老若男女問わず日本人なら是非読んで欲しい本です。

  • 日本とトルコの絆を描いた、史実を基にした小説。
    明治時代のエルトゥールル号事件(紀伊半島付近でトルコの軍艦が遭難し、地元住民が懸命に救助した)と、1985年のイラン・イラク戦争時に日本人のイランからの退避にあたってトルコ航空が臨時便を出した史実を絡めて描いたもの。

    題材選びの時点で、もう120%泣ける小説なんだよなぁ。。
    (そういう意味では、よくある病気モノの小説に近い)
    案の定メッチャ泣いたし、読後感も悪くなく、もし今度長めの休暇が取れたりしたらトルコ行ってみたい!とも思わせてくれました。

    では、史実自体を差っ引いて、小説としての本著はどうか。
    まず登場人物。実在・実名の人物と、名前が別名に変えられてる人物、存在から作られた人物が入り混じってます。読んでる間はあまり気にならないと言えばそうなのですが、安藤晋一(安倍さんっすね)の後に秋山真之が出てくると少しばかり混乱します。あと、読後にわかったんですが、現代もトルコ大使やトルコ航空関係者だけ実名なんですね。(日本の大使は別名)
    次に、史実なのかどうかわからないコトが注釈なしに書かれている。実名で出ているトルコ大使は本当に小説の通りに行動されて、あのセリフをおっしゃったのか。JAL(小説内では太平洋航空)は本当に安全保障がどうこうなんてコトを言って事実上拒否したのか。どこまで著者は取材で掴んでいたのか、ちょっとモヤモヤします。
    最後にストーリーテリング。何だか登場人物全部が目標に向かって真っ直ぐな感じがあって、そこ一捻り入らなかったのかなぁとか。せっかくフィクションなら、日本のことが嫌いなトルコ人や、トルコのことが嫌いな日本人を登場人物に入れて改心に至るシーンなんかあっても良かったのに。

    と、細かいコトを言い出すとキリは無いのですが、読んでおくべき一冊です。終章で平成になってからのエピソードを1つ入れているのも◎。

  • "電車で涙が・・・最近涙腺が弱い。
    エルトゥールル号、イラン・イラク戦争、トルコの大地震と脈々とはぐくんできた日本とトルコの友好関係。
    トルコの人たちの人情にただただ、感動する。
    人情だけではなく、勇気と行動力に感動する。

    今、海難1890という映画も公開されている。ぜひ見に行きたい。"

  • 久々に面白い本に当たった。日本とトルコの深い繋がりの話。教科書には載ってなかったけどね。こういう大事な話はもっと教えた方が良い。知らない日本人は恥だっていうぐらい皆が知るべきお話です。

  • こちらブクログで見つけた小説で帯に書かれている文言と評価の高さから気になり手に取った。
    トルコについては日韓W杯ではトルコに負けてしまった悔しさがある、他にはトルコアイスやカッパドキアぐらいしかトルコの事を知らない。
    トルコが親日国家だというのは知っていたが理由は知らなかった。
    もっと早くにこの話を知る事が出来れば、この本がもっと早く出版されていて読めれば日韓W杯での対戦時にはもっと複雑な感情で試合を楽しめただろうと思うし、トルコが親日ではなく、日本が親トルコなのだと思えたのになと思った。
    日本人として知らなかった事が恥ずかしいと感じた。
    自分より下の世代はトルコの方々の様に授業などで取り扱い語り継ぐべきだし、そうしてくれていたらいいなぁと思う。
    自分の様にこの話を知らない方は是非読んで欲しい。
    この本でなくともいいが、日本人として知っておくべき大切な歴史の一つだと思う。

    2022/6

  • 泣ける。
    いい話しすぎる。
    トルコにこんなに好かれているとは知らなんだ。

    重厚濃厚なストーリーかと思っていたら、
    余分な部分を削ぎ落とした、ややこぢんまりとした話になっている。
    そのせいか、重くならない分読みやすくで、スルスルと読める。
    暗くならずに娯楽性の高い一冊。

  • 今となっては少し有名になった歴史かもしれない。他にも色んな歴史が埋もれてるんだろうな。本や映画を通して知っていきたい。

    それにしても、このような事実をもっと歴史の時間に習いたかった。

  • 胸のすくお話。
    トルコが親日という話は聞いたことがあったが、ここまでのエピソードがあったのは驚き!

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著者プロフィール

作家

「2020年 『海のまほろば』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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