作品紹介・あらすじ
豊臣秀吉のかげに小一郎秀長あり!――卓越した実務能力と調整力で日本史上屈指の補佐役といわれた人物の生涯を描いた歴史巨編。
感想・レビュー・書評
絞り込み
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主に内政面で豊臣家を支えた秀吉の弟の生涯を経営的視点から読み解いた変わったタイプの歴史小説。文献が少ない(少ないからこそ優れている)ために想像の部分が多くはなっているが、石高からみるに有能なのは確実だったのだろう。戦国武将らしからぬ出世の欲がなかったのが珍しい。変わり者で敵も多かった秀吉のために人と人との折衝を上手く行っていたのがよく分かる内容であった。若干のびいきがあるように思えたがそこはまあ好みということで。個人的には織田家の中でも目立たない存在ながら好きな丹羽長秀がピックアップされていたのがうれしい
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一流の補佐役小一郎。単に家臣、郎党の少ない羽柴家いや木下家で兄の庇護により功を遂げた人物かと思いきや、秀吉の成功を支えた第一人者と思わせてくれる1冊でした。着眼点含めて素晴らしい。いずれのエピソードもさもありなんというものばかり!
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久々の長編歴小説だったが夢中で読了。来年の大河(豊臣兄弟)が今から楽しみ!
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あらためた再読して感じる名著。No.2として自ら影の存在であることを選んだ天下人の弟の生涯。
随分昔に読んだ本を「どうする家康」を見ながら再読。生没年不詳、豊臣秀吉の弟、補佐役として稀代のサクセスストーリーを支えた存在。
作家というより官僚、経済評論家としての堺屋太一の視点があるからこその作品。史実に筆者の視点を加えたオリジナルストーリー。
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紙の本で読んだものを、アンリミテッドにて再読。かつては星五つだったが、再読では下記の理由で星三つにした。面白くはあった。
初読の時は豊臣秀吉の弟、秀長について知らなかったので、本書の記述はすべて知的興奮を起こさせるような内容だった。上下2巻が短く感じられたほど。
再読では小説というより説明文が長いので、新書の歴史解説を読んでいるようで長く感じた。新書版の本のところどころに台詞がある、といった感じ。ドラマで言えばやたらとナレーションが入る感じ。
堺屋氏の小説はほかに読んだ覚えがないので、他の小説については不明。然し小説を楽しむ感じではなかった。
面白かったが小説を読みたかったので星三つとした。
ハイライトは小説としては多い。
下記にハイライトした個所をコピペ:
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ピンク色のハイライト | 位置: 24
もし、「この人」の事績を歴史の表面からわざと隠した者があるとすれば、「この人」自身だろ
メモ以下の記述は慧眼といえる。コピペ:もし、「この人」の事績を歴史の表面からわざと隠した者があるとすれば、「この人」自身だろう。
ピンク色のハイライト | 位置: 35
「この人」が生きた時代、戦闘騒乱が絶えなかった十六世紀後半の日本には、英雄人傑が輩出し、それぞれに一家を成し一国を築いた。しかし、急速な成功者の多かったこの時代でも、「この人」以上の大封を得た人物は「天下人」と呼ばれる三人── 織田信長、 豊臣秀吉、 徳川家康 ──のほかにはほとんどいない。 敢えて捜せば、中国の雄・毛利元就 が、不安定な状況ながら、かろうじてそれに 匹敵 する封領を持てたといえる程度である。つまり、「この人」は三人の「天下人」に次ぐ地位に昇ったのだ。 この一事だけでも、「この人」のなし得た成功がいかに大きかったかが分るだろ
メモこれも確かにいえる。以下コピペ:「この人」が生きた時代、戦闘騒乱が絶えなかった十六世紀後半の日本には、英雄人傑が輩出し、それぞれに一家を成し一国を築いた。しかし、急速な成功者の多かったこの時代でも、「この人」以上の大封を得た人物は「天下人」と呼ばれる三人──織田信長、豊臣秀吉、徳川家康──のほかにはほとんどいない。敢えて捜せば、中国の雄・毛利元就が、不安定な状況ながら、かろうじてそれに匹敵する封領を持てたといえる程度である。つまり、「この人」は三人の「天下人」に次ぐ地位に昇ったのだ。 この一事だけでも、「この人」のなし得た成功がいかに大きかったかが分るだろう。
ピンク色のハイライト | 位置: 81
つまり、「この人」は常に脇役として登場する。そしてそれが、「この人」の果した役割に最もふさわしい出方なのだ。そんな役回りを、今日の言葉では「補佐役」と呼ぶ。「この人」は、日本史上最も典型的な、最も有能な補佐役であった。そして、そうあること以外を望まなかった。私がこれから描こうとしている人物・豊臣秀長とはそんな生涯を送った人で
黄色のハイライト | 位置: 1,754
この当時、敵方の使者を 斬ることは滅多にない。どういうわけか、それだけはこの国の武士社会のよく守られた慣習になっている。 高 天神 城に監禁されていた徳川の臣・大河内 政局 や 伊丹 城で捕えられた黒田官兵衛など、使者に行った者が長年月獄に 繫 がれた例はあるが、斬られたことは
黄色のハイライト | 位置: 3,007
美濃を陥し、北伊勢を攻めた織田信長は、いよいよこの「天下布武」の大構想をはっきりと打ち出す。その第一は、新たな本拠とした稲葉山城を岐阜城と改名したことだ。 この名は、昔、 周 の 文王 が、 岐山 より 興って天下を収めたのに 因んだものといわれ、信長の天下征服の意図を打ち上げたものとされて
黄色のハイライト | 位置: 3,133
織田信長が、足利義昭を迎えるに先立って、三河の徳川、近江の浅井、甲斐の武田、越後の上杉らと婚姻を結んだり贈物をばら 撒いたりしたのはこのため
メモ堺屋氏の解釈だが、興味深い。信長が西の大名らと婚姻を結んだのは、嫉妬を押さえるためとのこと。
黄色のハイライト | 位置: 3,136
織田信長は、これだけの準備をした上で、ようやく足利義昭を美濃・立政寺に迎え
黄色のハイライト | 位置: 6,263
出雲 の名族・尼子は全く亡び去ったのである。ただ、山中鹿之介の幼い遺児だけは生き残り、その子孫が清酒を発明、巨富を成して 鴻池 両替店を開くことになる。かつての 三和銀行の元祖で
黄色のハイライト | 位置: 6,734
低い地位の者が成功し、大組織の高位に 就く間には、この種の変質が不可欠だ。今日の企業社会でも、中小、零細企業が大企業に成長する過程では、人間臭い家族主義を捨て法規と組織を確立することが必要となる。それを現代人は経営の近代化と呼んでいる。だが、この間には、法規と組織になじめぬ古い功労者は脱落する。そこに、古参の家族主義者の反発が生じ、内部対立が生じるのが常で
メモ19人がハイライトする箇所とのこと。堺屋氏の小説の特徴的記述。
黄色のハイライト | 位置: 8,273
だが、この日、兄・秀吉が、大村 由 己 に書かせた『惟任退治記』を公表したのには、小一郎も舌を巻いた。事件からたった四カ月での出版は、この当時としては異例の速さである。しかも秀吉は、その写しを何百と作り、京洛から 遠国 にまで配らせ
オレンジ色のハイライト | 位置: 8,699
世に、長久手での徳川の勝利ばかりが名高く、伊勢での羽柴方の働きはあまり伝わっていない。自らの武名を 轟かせたかった一方の主役・徳川家康と、あくまでも補佐役に徹した小一郎秀長の違いであろ
オレンジ色のハイライト | 位置: 8,708
長久手の戦いで局地的勝利を収めた徳川家康が、結局は秀吉の軍門に 降らざるを得なかったのも、小一郎秀長が四隣を平定してしまったから
青色のハイライト | 位置: 8,710
小牧の対陣から一年経つと、徳川は依然として五カ国を持つだけなのに、羽柴は七カ国の領地を加え、北畠・長宗我部を味方にしていたのだから、家康も抵抗のしようがなかったの
青色のハイライト | 位置: 8,716
小一郎は生涯のうちに大小百回以上も戦場に立ったが、一度として失敗したことがなかっ
青色のハイライト | 位置: 8,725
しかし、小一郎秀長が賤ケ岳の合戦以降に尽した功績は、軍事よりも内治にこそ
青色のハイライト | 位置: 8,735
天正十三年、紀州、四国を平定し、徳川家康を配下に加えた頃の羽柴家とは、そんなものだっ
例えば、今、どこかの大企業の子会社だった中堅企業が、三年の間に事業規模が十倍になり、従業員数が一万人から十万人になり、かつての親会社をはじめ数々の一流大企業を買収して足下に収める好運に恵まれたとしたら、この会社の経営陣はどれほど忙しいだろうか。かつては親会社の人事本部や財務本部に統括されていた人事・資金も、今はこちらが指導しなければならない。グループ全体の調整も必要だし、政治家、役所、諸外国との付き合いも一挙に増える。しかもこの会社は、もとはといえば二流の子会社、人材は乏しいとあっては、トップのオーバーワークは避けられまい。
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かなり前に読んだものの、控えめながらも、補佐役として、兄一代で築いた豊臣家のブレーンとして生涯徹した主人公の姿が目に浮かぶような小説でした。成功者には優秀な補佐あり、また、補佐役とはかくありなんという姿が描かれており、主人公のファンになりました。手元に置いてある1冊です。
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筆者本人が出過ぎて、それも俺は他が注目しないことも全て知っているという謎の満足感が鼻についてすぐに断念。名補佐役の話で興味深いのに、書名に反する自己中さが残念。
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補佐役の生涯はとても興味深い。秀長亡き後、秀吉の変貌ぶりをみると、いかに補佐役が大切か、あらためて思う。
まったく目立たない、人が嫌がる仕事ばかりを黙ってやる。かと言って、人を妬んだりをしない。自分のやるべきことをしっかりと守る。華やかしい実績を残す人や企業の裏には必ずこんな人が存在する。
本書は秀長以外に秀吉、信長などの生き様もよく描かれており、とても長い小説だが、歴史に興味がある私は十分に満足できる内容である。
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この目立たない「補佐役」に注目するのがすごいところ。
著者プロフィール
堺屋太一
一九三五年、大阪府生まれ。東京大学経済学部卒業。通商産業省(現経済産業省)に入省し、日本万国博覧会を企画、開催したほか、沖縄海洋博覧会や「サンシャイン計画」を推進した。在職中の七五年、『油断!』で作家デビュー。七八年に退官し、執筆、講演、イベントプロデュースを行う。予測小説の分野を拓き、経済、文明評論、歴史小説など多くの作品を発表。「団塊の世代」という言葉を生んだ同名作をはじめ、『峠の群像』『知価革命』など多くの作品がベストセラーとなった。一九九八年から二〇〇〇年まで小渕恵三、森喜朗内閣で経済企画庁長官、二〇一三年から安倍晋三内閣の内閣官房参与を務めた。一九年、没。
「2022年 『組織の盛衰 決定版』 で使われていた紹介文から引用しています。」
堺屋太一の作品