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Amazon.co.jp ・本 (412ページ) / ISBN・EAN: 9784569764818
作品紹介・あらすじ
父の汚名を晴らすため江戸に住む笙之介の前に、桜の精のような少女が現れ……。人生のせつなさ、長屋の人々の温かさが心に沁みる物語。
感想・レビュー・書評
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「きたきた捕物帖」シリーズの北一が住んでいる富勘長屋の部屋の前の住人の話、みたいな事が書かれてたので読んでみた。思ってたとおり面白い。
訳あって主人公の古橋笙ノ介は、国許の搗根藩(とうがねはん)を出て今は江戸で暮らしている。重責を担っているんだけど、毒母と離れる事もできたし江戸で日常を送っている方が笙ノ介にとっては幸せかな。自分らしく生きている。
今回読んでて面白いと思ったのが、庶民の暮らしぶりを垣間見れたこと。特に娯楽の部分が上手に描かれてると思う。富勘長屋のみんなとお花見に出掛けたり、そこで行われた大食い大会、笙ノ介が貸本屋の治兵衛に頼まれた仕事の一つ、起こし絵(今で言うドールハウスみたいなものだと思う)など。読んでて私も楽しい気持ちになった。
これと同時に描かれてたのが、貧困の話。笙ノ介も江戸の華やかさに感激しつつ、後ろめたさを感じてた。国許の庶民の生活とあまりにも違ってた。貧しい藩だったので、自分ばかりこんな贅沢をしててもいいのか?と。笙ノ介の国許だけでなく江戸でも貧しい庶民たちが多い。その事に心を痛めてる笙ノ介は優しくて好き。最後の長堀金吾郎とのやり取りはジーンときた。笙ノ介も貧しいという事をもっと深く考えたと思う。
優しい笙ノ介の周りにはやっぱり優しい人たちが集まってくる。富勘長屋の住人たち、貸本屋の治兵衛、笙ノ介の主人の東谷などまだまだいっぱいいる。彼らのおかげで穏やかに暮らしているんだなと、ほっこりしてしまう。いい出会いもあり、このままこの生活が続けばいいんだけどな。
笙ノ介は父の問題、藩の問題を解決できるのか?話の続きが気になるんだけど、下巻は波乱がありそうなんだよなー。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
怪異現象の無い正統派の時代小説にミステリ要素が入り、楽しく読み進められる。この前に読んだ「きたきた捕物帖」に繋がる多数の人達が出てくるのも面白い。ただ、「きたきた」では主人公が辻斬り(?)に切られて死んで、その空いた部屋に北一が入るというのが気にかかる。
父親を陥れた奸計に、本人も分からなくなる程の偽字があり、今作では関連して誰にも読めない字の解読があり、解読方法はすごいが、その読みの謎がよく分から無い。下巻では、敵の捜索と、恋の行方がどうなるか楽しみ。 -
「ささらほうさら」
綺麗な響きの言葉だ。
甲州地方で、「あれこれいろんなことがあって、大変だ、大騒ぎだ」という意で使われる言葉。
その一部を表題にした宮部さんの時代物「桜ほうさら」。
好むと好まざるにかかわらず、誰しも何かを背負っているもの。
本作は、実直だった父が汚名を着せられ、非業の死を遂げた若侍が、その父の死の謎を解くべく、物語が進む。
宮部さんの時代物によくあるが、この若侍の家庭も訳あって母や兄と心が通い合わず、心の中に重しを抱えている。
いつの世も、「家族」は理想通りに盤石ではないものの、手を差し伸べてくれる人、世話をしてくれる人々の存在に、世の中捨てたものではないなと、私も心を解き放つことができる。
生きることは、すなわち色々なことがあるということ。
一つが上手くいかない、思い通りではないからと言って、諦めたり、自暴自棄になる必要などない。
登場人物たちそれぞれが背負う事情も、物語の奥行きを深めている。
日常生活ではすっかりご無沙汰している美しい日本語も、言葉で様子を描けるんだなあと膝を打つ。
「婀娜な微笑としどけない仕草は、確かにこの女の持ち物ではあろうが、不安を鎧うための煙幕でもあるのだ」P.384
正直者で責任感が強いと、ついつい他人の事情を汲みし過ぎて、にっちもさっちもいかなくなる。
「人も大勢いるんです。笙さん一人がいくら気張ったって、世の中から飢饉を失くすことはできません。人にはそれぞれ、生まれ持った役割というものがあるんです。笙さんの仕事は、お天道様の気まぐれで獲れたり獲れなかったりするお米について悩むことじゃないでしょう。」P.406
三木謙次さんの挿画も温かみがあって、よい雰囲気。
続いて下巻も。 -
文庫本のカヴァーイラストに惹かれてのジャケット買いの一冊。
宮部みゆきさんなので心配はしてなかったけど、さすがの内容。
主人公の住む長屋にはいろんな人がいて、現代なら到底、相手にされない
ような人でもそれなりにお付き合いしくれる富勘長屋。
きっと貧乏でも気持ちに余裕があるんだろうと思う。
私なら文句言うだろなと思うけど、そんな生き方はつまらんぞと
富勘長屋のみんなからワイワイと話されて、ついでにおにぎりもらってる
ような気分になります。そのまま下巻へ突入です。 -
私と同じ歳宮部みゆきの作品は、文庫本になったもので既に図書館で読んでいるのを除けば、全て買うことにしている。
ファンである。だからこそ、評価は厳しい。これは宮部版「用心棒日月抄」である。地方の藩のお家騒動に巻き込まれた青年が、江戸の長屋暮しをしていろんな事件を解決する。長屋の住民、江戸の世話人、腕のたつ友人、魅力的な女性との出会い。そしてやがて元の藩の事件の真相が暴かれる。藤沢周平の名作とこっちが違うのは、主人公が腕の立つ剣士ではなく、少し頭の切れる優男である、という処だろうか。つまり草食男子、切った張ったは無い。現代的なのである。
藤沢周平の短編が小気味良く好漢青江又八郎の活躍を水墨画のように描き止めたのに対して、宮部みゆきのそれは表紙にも描かれているようにほんわかで、南画のようというよりか、絵巻物みたいになって落としどころがピリリとしない。
ただ、描写力は相変わらず安定している。ちょっと話はずれるが、この作品には北方謙三「水滸伝」で活躍する文書偽造の天才蕭譲のような人物が登場する。この人物が誰か、というが物語を引っ張る「謎」の役割をしている。ある人がこの謎の人物を評してこう云う。
笙之介(主人公です)はもう一歩踏み込んで問うた。「真似られた当人にも見分けがつかぬほどにそっくりに、他人の手跡を真似ることのできる人物がいるとしたら、それはどんな人物になるのでしょうか」
はてさてーと、井垣老人は顎を撫でる。
「真似る手跡の主に合わせて、ころころと眼を取り替えることのできる人物、ということになりますかな」(212p)
作家を職業としていたら当たり前だと思うかもしれないが、宮部みゆきは「まなこを取り替える」達人である。一方、宮部みゆきは本格的な政治家を登場させない等、出てくる登場人物を見事に「選択」している。だからこそ、登場させた人物に彼女はなり切る。彼女の中にその人物のありとあらゆる想いが溢れてくるから、勢い一編の長さが長くなる。上下巻で四話しかないのは、おそらくそういう理由(わけ)だろう。つまり、描写力は凄い、という所以である。
2016年1月14日読了 -
求めるもの!に大きな違いがある時、家族への親愛などは何処かへ追いやられてしまうらしい。それどころか身近にあるがゆえ憎しみに変わる。笙之介君頑張れ!!
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宮部みゆきさんの時代小説らしく、登場人物たちの持っている空気感が素晴らしいと感じた上巻でした。
主人公である笙之介は父が賄賂騒動のため自害し、上昇志向の強い母や兄とは確執があります。ただそういった陰の部分がありつつも、長屋の人々達とのやり取りは人情味があって温かく、女性陣の可愛らしさも光る。そして何より笙之介自身の頼りなくも優しい性格も相まって、しみじみと心にしみるものがあります。
表現も美しい。特に笙之介が夢うつつの中、桜の精とも思しき美しい少女を見かけるシーンなんかは、幻想的で自分も笙之介のように違う世界に迷い込んだかのような気持ちになりました。
笙之介の父を陥れた騒動の真実を探るのが大きな話の目的ですが、その過程で笙之介は江戸の町での様々な出来事に巻き込まれます。近所の住民たちと大食い大会に見物に行ったり、子供たちの手習いの先生の代役を務めたり、そしてふとしためぐりあわせから暗号を解く羽目になったり……。
そうした事件や日常、それぞれに人の感情が息づいているようで、物語が作り物めいていない、血肉あるお話としてしっかりと自立していると思います。下巻も本当に楽しみな作品です。 -
上下巻の上。
久しぶりの宮部みゆきだったが、安定の面白さ。
読んでる途中ですかさず下巻も購入。
あれこれとした過去と少々きな臭い使命を帯びた若侍の人となりと、愛すべき人の良さが存分に描かれた上巻だった。"事情"を抱えた少女とのほのかな恋模様からも、目が離せない。すかさず下巻へgo♪
★4つ、9ポイント。
20190.05.14.新。
※古橋が抱えた事情を鑑みると、下巻はおそらくきな臭さが増すのだろうなという確信と、下巻裏表紙のあらすじ書きに"悲しい事実を知り決断を下す"というくだりから、ハッピーエンドとはならないのだろうという不安が……(苦笑)。
※話は全く変わって・・・(普段は小説を読み返すことなどほとんど無いのだけど)『ぼんくら』のシリーズを再読したくなった。 -
搗根藩(とうがねはん)に勤める父が、父の筆跡に似せた偽の証拠で切腹させられた。笙之介はその偽証拠を書いた人物を父の仇と思って、江戸で探している。そんななか、三八野藩の藩士が、三八野藩主の書いた書を持ってやって来たが、読むことができない。さてどうしたものか。鰻屋の建具に書いておいたら読める人が来るのでは?と知恵を働かせ、果たして読める人物がやってきた。
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201601/上下あわせて。酷だし哀しい話なんだけど、そこは宮部みゆき根底の優しさによる筆で救いもありじんわりと。登場人物達の台詞も心に沁みる。
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年末に読み始めながら、年末年始休暇中は読むのが進まなんだ。年明け、朝夕の通勤電車で読み進み、年跨ぎでようやく読了。
訳あって国許を離れ江戸で長屋住まいをする下級武士の古橋笙之介が遭遇する市井の人々・出来事の数々。
江戸の出てきた経緯が語られるとともに江戸の庶民の暮らしがいきいきと描かれる第一話。
闖入者が持ち込ん符丁の謎解きに引っ掛け武士や町人の佇まいが綴られる第二話。
桜の精とも見えた切り髪の女性・和香との不思議な出会いとその後の進展が微笑ましく色を添える。
話が多少回りくどいきらいはあるけれど、読んでてゆっくりとした気持ちになれる。
描かれる季節は桜の頃の話だけれど、新春ののどかな風情によく合う。 -
もう何度読んだか、わかりません。
昨日一昨日、また読み返して。
それも、ほぼ徹夜一気読みで。
結末、分かってるのに、それでもなお楽しく読めてしまう。
初めのほうで、西暦が明示されてるんですよ。
主人公、笙之介は1815年生まれ。物語の時点で22~23歳という設定なので、1840年頃のお話。明治維新まであと一息。笙之介が50代を迎える頃には、世の中はひっくり変えるんだなぁ、などと思いながら読むと、さらに興が増すのです。いや、当時の50代ならすでに老年で、生きていないかもしれないけれど。
舞台は江戸深川北長堀町の富勘長屋。
詰め腹を切らされた父の汚名を雪ぐため、藩の陰謀の鍵を握っている、と思われる代書屋を探すべく江戸にやってきた笙之介。貸本屋の写本作りの内職で稼ぎながらの探索活動。身分は違っても、同じように貧しい長屋暮らしの人々との交流。ウマそうな食い物。もう、また読み始めてしまいそうです…… -
タイトルの「桜ほうさら」は、甲州や南信州の「ささらほうさら」(いろいろなことがあって大変という意味)という言葉に桜を絡めた言葉らしい。父の無念を晴らすため江戸へ出てきた笙之介と人々の交わりを軸に、人生の切なさや人生のほろ苦さ、人々の温かさが心に沁みる物語だった。桜の季節に読みたい物語。
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関東小藩の役人の次男坊古橋笙之介は、父が賄賂騒動に巻き込まれたことから、江戸の「富勘長屋」で写本の仕事をしている。
お家騒動絡みとはいえ、主人公が市井の人々と暮らす風景が温かな目線で続く、宮部作品得意の世界観が心地よい。 -
仇討ちをストーリーの中心としながら、文章は軽快でユーモアがあり、美しい風景描写、主人公ののんびりした性格もあって、全体としてはほのぼのとした中でさらっと読めてしまう。
桜や水面といった景色の描写から、暖かい春の日差しや風を感じたり、その場で目で見るような臨場感を味わうことが出来た。
登場人物が着ている着物や、商い物、お店の中の景色を色彩豊かに描かれており、また登場人物同士の心のやり取りを丁寧に描かれていて、それぞれの生活や心の動きを感じることができる。 -
本作の主人公、笙之介が名前だけ登場する「きたきた捕物帖」を読んだのが再読のきっかけ。再読でも十分に楽しめた。
表面的な格好よさとは無縁な笙之介だが、心優しく、人を見る目を持った魅力的な人物である。
ストーリーを追うというより、笙之介と和香、個性ある長屋の人々との交流をゆっくり味わう作品だと思う。
※上下巻通しての感想です。 -
下巻にて
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宮部さんは大好き。こんな有名な作品を読み残してたといそいそ読んだ。が、確かに外れてはないと思うが、江戸人情物は西條さんが好きなので、宮部さんにはミステリーを強く期待します。
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父がある咎により引っ立てられたことを苦に自殺、一家の離散というとんでもない状況に主人公は置かれているのだが、主人公の性格ゆえか、物語はゆっくりとしたスピードで進む。読み進めていくと、そのような状況下に置かれていることすら忘れてしまうくらいほのぼのした印象を受ける。根本には父の死の真相を探るというテーマはあるが、物語はそこに固執することなく、主人公は他からやってきた人の相談に乗ったりしており、スピード感をそれほど感じない。いい意味で疾走感のないミステリーといった感じ。
主人公もさることながら、周囲の人々もいい人揃い。心の内がチラホラ書かれており、江戸深川の人情味溢れる内容が全面的に展開されている。この上巻はミステリーというよりは、人情ものとしての感触が強い。
印象が強い。
著者プロフィール
宮部みゆきの作品
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