異邦人(いりびと) (PHP文芸文庫)

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  • PHP研究所
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レビュー : 147
  • Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569768168

作品紹介・あらすじ

京都の移ろう四季を背景に、若き画家の才能をめぐる人々の「業」を描いた著者新境地のアート小説にして衝撃作。待望の文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • 原田マハさんは、かなり以前に『楽園のカンヴァス』を読んだことがあるのですが、この作品は舞台が京都ということもあるでしょうが、「マハさんってこんな雅やかな作風の方でしたっけ」と、まずその世界観に圧倒されました。
    文庫版の解説には「川端康成の『古都』をお手本にした」とマハさんはおっしゃたとありますが、私は連城三紀彦さんを思い起こしました。
    そして扱う題材は美術品や書道や茶の湯やなにかの世界ですから、これはもう、うっとりしない訳はないです。

    主人公は画廊を経営する篁一輝とその妻で美術館副館長であり、美術品をこのうえなく愛する菜穂。
    京都の美しい風景と京言葉、若く美しい無名の新鋭画家白根樹。
    そして3.11小説であり、また夫婦小説でもあり、京都の四季と京の人々とのはんなりした会話をおりまぜながらの、美術業界のおはなしが面白くない訳がないです。
    「芸術至上主義の圧倒的に強い女性像(解説より)」の菜緒の生き方とともに、話が急展開していくラストまで、余すところなく堪能させていただきました。
    『異邦人(いりびと)』というタイトルもいいですね。
    私も京都に六年間、住んでいましたが、その言い方は知りませんでした。

    余談ですが、美術品って価値の認められたものは(モネの『睡蓮』が五十億とか)ものすごい値がつくんですね。スケールの大きさに驚きました。

    • kanegon69 さん
      まことさん、さすがのレビューです!私まで嬉しくなってしまいました。

      京都って観光ではなく、実際に移住されると、よく排他的と言われてました。...
      まことさん、さすがのレビューです!私まで嬉しくなってしまいました。

      京都って観光ではなく、実際に移住されると、よく排他的と言われてました。私の両親は関東から転勤してきてましたが、ご近所付き合いにかなり神経をすり減らしてたのを思い出します。学生同士だと全国から集まってきますから、あまり感じないかもしれません。そういう意味で異邦人と言うのは私はストンと落ちました。もちろん時代は流れ、今は変わっているかも。いや、変わらないかな(^^)

      私が昨日読了したマハさんの本では、ジャクソン・ポロックの絵が200億円超でしたよ。いやはや、アートは凄いですね。

      それにしても、まことさんの視点は新鮮で楽しかったです。ありがとうございます。
      2019/04/12
    • まことさん
      kanegon69さん。
      お褒めのコメントどうもありがとうございます!!
      私も京都は親の転勤で住んでいたのですが、私自身は勤め先のアルバ...
      kanegon69さん。
      お褒めのコメントどうもありがとうございます!!
      私も京都は親の転勤で住んでいたのですが、私自身は勤め先のアルバイトの学生さんたちとすごく仲良くなれて楽しかった思い出があります。
      だけど、京都が地元の友人は親御さんが、厳しくて、うちには何度も招いても、あちらには招かれたことがなかったり・・とかありましたね。
      「いけず」というものがあったように記憶しています。

      絵が一枚200億円超とは眩暈がしそうですね。これからも、機会があったらまたマハさんの他の作品も拝読しようと思います。

      こちらこそ、ご紹介ありがとうございました。

      2019/04/12
  • 原田マハさんの作品は本当にどれもストーリーに引き込まれていきます。特に美術関連の小説は、さすがもとキュレーターだけあって、表現が見事です。主人公の一人、菜穂さんの感じが、楽園のカンヴァスを思い起こさせました。最後の終わり方がややさみしい(特に男性諸君には)ですが、余韻が残る良作だと思います。

  • かつてキュレーターの経験を持つ、著者ならではの美術小説。
    さらに、京都の風物詩、京都言葉が随所に綴られ、居ながらにして京都情緒を堪能できる京都小説ともいえる。
    そんな京都らしさをゆったりと味わえる前半から一転して、後半はミステリーもかくやとの怒涛の展開になって行く。
    主人公菜緒の心を奪う一枚の絵と、京都への彼女の執拗なまでの執念。
    強烈な彼女の個性に、周りの人々とともに読者も振り回される。結末はどうなるのかと、頁を繰る手も急かされる。
    やがて明らかにされる真実は、恰も何枚もの緞帳が続けて巻き上げられる舞台を観ているかの様。
    京都を訪れる人は、何度訪れようと京都にとって永遠の異邦人であるように、菜緒は読者にとって永遠の異邦人かも。

  • 面白かった
    「いりびと」と読むそうです。
    京都の風情が感じられる物語。
    そして、上流階級の方々のどろどろっとしたところもかいまみられる物語(笑)

    ストーリとしては
    たかむら画廊の専務一輝とその妻の有吉美術館の副館長菜穂。そして菜穂の母親克子。
    絵画に対する目利きのすごさ、美へのこだわり、わがままな菜穂
    克子と菜穂の微妙な親子関係
    一輝と克子の微妙な取引関係

    3.11の原発事故の放射能の影響から逃れるため、出産を控えた菜穂は京都へ。
    3.11について、このような描き方をするのはちょっと違和感があります。金持ちの考え方?
    菜穂は長期滞在している中、京都の老舗画廊で1枚の絵に出合います。そして、その絵の作者でしゃべることができない樹に強く惹かれることに。

    一方、たかむら画廊は取引先から騙されて経営の危機に。
    そんなとき、一輝と克子は有吉美術館の菜穂に伝えることなくモネの絵を売ることで危機を乗り切ります。
    ほころび始める一輝と菜穂の夫婦関係

    さらにこんどは有吉美術館も存続の危機となり、絵画を売りに出すことに。
    そんな状態にもかかわらず、菜穂は樹にこだわり続け、支援を続けます。
    樹とその師匠のどろどろっとした関係
    いったいこの人間関係はどうなっているの?
    という展開でした。

    そして後半明かされるその関係性。ありゃまって感じ。
    登場人物たちにはあまり感情移入もできず、原田作品にしては、読後感に元気ももらえずという作品でした。

    強烈な菜穂の個性に参りましたっていう物語(笑)

  • アートという初めてのテーマ。

    興味深く一気に読んだ。

    夫婦それぞれの視点で物語は進む。

    やや強引な幕切れだったが、人の縁にはこういう事も有るか。

    主人公は誰だ?という点で少しぼやけたけど、面白く読ませて貰った。

  • 美術の知識に富むマハさんの紡ぐ文章が、それこそ美術作品のようなしなやかさを持ち合わせている気がする。色彩が見事に浮かんでくる。
    とくに白根樹に対する表現力がもう、マハさんそのものな気がして、いくつか印象強いものを抜粋。

    ・泉のほとりにひっそりと咲く水仙のような、すらりとした立ち姿。
    ・清流を遡る鮎のように、するりするりと抜けていった後ろ姿。
    ・凪いだ湖面のように、静まり返った瞳。冬の木立のような、凛とした立ち姿。
    ・樹は、すらりとなよやかな青柳の精にでもなってしまったかのごとく、その場に立ち尽くして動かない。瞳は水面の光を反射するようにさんざめき、…

    読むたびにマハさんの虜になってしまう。。

  • 発売された当初は読む気がなかったのだけど、文庫化されたのを機に読んでみることに。
    基本、この作者は海外の芸術作品や芸術家にまつわる作品しか読まないので、今作の舞台が京都であることが、何となく新鮮に感じた。
    時は東日本大震災の起きた2011年。
    原発の被害が東京にまで及ぶと、とんでもないデマがまかり通ってた頃。
    都内で画廊を経営する篁一樹も、身ごもっていた妻・菜穂を京都に避難させる。
    当初は騒ぎが収まるまでの短期間のはずだったが、京都で出会った名もない画家の出現で二人の運命は大きく変わる。
    章ごとに一樹と菜穂の二人の目線が入れ替わる。
    京都で出会った樹と言う画家はきれいな女性で、一樹が惑わされる展開になると思いきや、全く違う展開に、少しだけ何が本当に描きたかったのか、中盤は分からなくなる。
    ラストまで読んで、「そういうことか」とはなるけど、メインとなる菜穂の強い思いは伝わるが、一樹の目線は必要だったのか、その辺が微妙。いっそ菜穂の物語として、一貫していた方がもっと面白かったような気がする。
    背景に描かれる京都の四季の描写は、とても美しかっただけに少し残念。

  • 東日本の震災後のお話で、放射能とコロナが被ってみえました。
    登場人物にあまり共感することはできなかったけど、京都と芸術品にもっと触れたくなりました。
    なにより原田マハの書く作品の表現がとても好きだなあと感じました。この方の小説は初めて読みましたが、鮮やかで感情が伝わってくるのに暑苦しくない。
    少しずつ絡み合い、後味の悪い結末なのに、ふと心が軽くなるように思います。

  • 京都に行きたくなる話。
    住居の描写が心に残った。
    京都の華やかさと閉鎖的な感覚と味わい深さがあった。
    異邦人たる人が視点によって夫婦のどちらとも思える。

  • 京都の風物や季節の移り変わりに、複雑な人間模様、そして圧倒的な美への執着。始めは主人公の菜緒の美術作品への執着に違和感があったが、話が進むにつれ思いがけない展開に引き込まれた。原田マハさんの作品はいつも脳裡に美しい映像を映し出すだけでなく温度や湿度も感じるかのように錯覚する。

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著者プロフィール

原田マハ(はらだ まは)
1962年東京都生まれ。小6から高校卒業まで岡山で育つ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部美術史学専修卒業。馬里邑美術館、伊藤忠商事株式会社、森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館での勤務を経て、2002年よりフリーのキュレーターとなる。2005年小説化デビュー作の『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞。2012年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞、『キネマの神様』で第8回酒飲み書店員大賞をそれぞれ受賞。2013年には『ジヴェルニーの食卓』で第149回直木賞候補、2016年『暗幕のゲルニカ』で第155回直木賞候補となる。2017年『リーチ先生』で第36回新田次郎文学賞受賞。2019年『美しき愚かものたちのタブロー』で第161回直木賞候補に。

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