あなたの不幸は蜜の味 イヤミス傑作選 (PHP文芸文庫)

  • PHP研究所
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  • / ISBN・EAN: 9784569769455

作品紹介・あらすじ

いま旬の女性ミステリー作家による、「イヤミス」短編を集めたアンソロジー。見たくないと思いつつ、最後まで読まずにはいられません。

感想・レビュー・書評

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  • なかなかの人気女性作家6人のイヤミス傑作選。
    女性の嫌な部分書かせたら右に出るのもが6人居たんでしょうね。
    人の不幸は蜜の味ほどでないとしても、あなたの不幸になぜか興味があるタイプ。つまり、イヤミスが好きなんです。
    「石蕗南地区の放火」辻村深月は、直木賞「鍵のない夢を見る」の中の一作。確実に再読になります。
    放火魔となった消防団員の男と付き合いそうになっていた女性。この女性の自意識過剰さと自己肯定感が嫌ね。というところだけど、誰しも心あたりがありそうなところが上手い。
    その後、
    「贅肉」古池真理子
    美しかった姉の過食と贅肉を憎み始めた妹の行く末。
    「エトワール」沼田まほかる
    架空の妻を持つ男に振り回される女性。
    「実家」新津きよみ
    実家を相続できなかった女性が、人に渡すくらいならと、狂気に走る。
    「祝辞」乃南アサ
    やりたい人は多そうな、結婚式で新妻の過去を暴露
    「おたすけぶち」宮部みゆき
    危険な山間で交通事故死したと思われていた兄。
    偶然にも名前をお土産のハンカチに見つけた妹。兄を探そうと閉鎖された村に向かう。

    なぜかどれも読んだ記憶があるようなないような。ドラマとかになっていたことがあるのかしら。

    • ゆーき本さん
      結婚式で過去を暴露…。イヤー!恐怖でしかない!笑 他人のだったら居合わせてみたいけど笑
      結婚式で過去を暴露…。イヤー!恐怖でしかない!笑 他人のだったら居合わせてみたいけど笑
      2024/01/18
  • イヤミスは苦手だ。
    何を好んでわざわざ嫌な気持ちになるために時間を使わなくてはならないのか、と思っているだけでは無い。私は性格的にイヤミスとは合わないのではないか?と推測しているからである。私はイヤミスで嫌な気持ちになるには鈍感過ぎるのである。今までの読書人生でイヤミス展開を読まなかったわけではない。大好きな若竹七海は、ある意味イヤミスしか書かないし、宮部みゆきにイヤミスに相当する作品は多数ある。それでも、それらを楽しんできたのは受け手の主人公や探偵が、ある意味鈍感(或いは精神的に強かった)からである。彼女たちの作品はイヤミスではないのかもしれない。本気のイヤミスを、私は食わず嫌いで読んできていないけど、もしかしたら案外人生が変わるほど感動するか、思いのほか時も忘れて楽しい時間を過ごせるのかもしれない。正しく「あなたの不幸は蜜の味」を味わえるのかも。

    ‥‥それで所謂イヤミスアンソロジーを紐解いた。

    そうか、これがイヤミスなのか。
    辻村深月「石蕗南地区の放火」
    小池真理子「贅肉」
    沼田まほかる「エトワール」
    新津きよみ「実家」
    乃南アサ「祝辞」
    宮部みゆき「おたすけぶち」

    もちろん、結末は主人公たちに不幸が訪れる。
    でも、私は、「私に」やがて不幸が訪れるのではないかと慄きはしないし、「彼らを」可哀想とも思わない。また、「彼らに」同じことをしたいとも思わない。
    ともかく「彼らの」行動原理が理解できない。面白くない。
    何故ー
    「彼らは」あんなにも「人との関係」に神経をつかっているんだろ。「あそこまで」思わなかったら、こんな不幸なんて起きなかったのに。

    それとも、このくらいの他人への気配りが、ほんらい人として正常な在り方なのだろうか。

    だとしたら、異常なのは、この作品の結末でなくて「私」、真に恐ろしいのは「私」だったのだろうか‥‥。

    • NORAxxさん
      kumaさん初めまして、こんにちは^ ^ いつもいいねをありがとうございます。
      私自身イヤミスを好んで手に取っている真逆の人間です。「何故好...
      kumaさん初めまして、こんにちは^ ^ いつもいいねをありがとうございます。
      私自身イヤミスを好んで手に取っている真逆の人間です。「何故好むのか」を考えた事が無いわけでは無いのですが、ざっくりと「私の性格が俗悪だから」に落ち着いていました。
      とは言えハートフルな作風を嫌悪している訳ではなく、読みはしないけどここのレビューで中和をさせていただいている事にバランスの良さを感じています。
      ですがこのレビューを読んで、改めて「何故」を追求してみると、自身の「臆病」な心が由縁しているのかな と新しい仮説が出てきました。

      「私は、「私に」やがて不幸が訪れるのではないかと慄きはしない(中略)「彼らに」同じことをしたいとも思わない」

      ...まさしく仰る通りで、私は「もし〜」の訪れるかどうかもわからない不幸に怯え、私の存在が周りの人によって「彼ら」の脅威になることを恐れている...のでは無いかと。つまり、「もし...」の場面での自分の行動が読めない、己への認知が出来ていないんです。自分という人間が定まっていない。.....蔑んで慰めを請うてる訳ではないですよ(笑)

      単純に「好きだから!!!」で納得していましたが、隠れた所で小心者の自分を見付けた事は大発見です。初めてのコメントで勝手に脱皮して自分語りばかりで申し訳ないです。。苦笑
      別視点から己の恥部を観察出来る機会を下さった感謝をここに残したくコメントさせていただきました!!これからもレビュー楽しみにしてます(*^^*)
      2022/02/28
    • kuma0504さん
      NORAxxさん、はじめまして!
      ありがとうございます!
      このレビューを書いている時、NORAxxさんならばどう読むのかな、と思いながら書き...
      NORAxxさん、はじめまして!
      ありがとうございます!
      このレビューを書いている時、NORAxxさんならばどう読むのかな、と思いながら書きました。期待に応えてくれて、ありがとうございます♪

      私は、「臆病」とか「小心」とかそういうことを感じないからこそ、私に不幸は訪れないと感じるのであって、ある意味サイコパスとまでは言わないけれども、この鈍感さはかなりのヤバさだと思っています。若い時にそういうことを自覚していたならば、まだいろいろ対処したのかも(イヤミスたくさん読んで鍛えるとか)しれないですが、やっと最近自覚したのでどうしようもない。

      というわけで、NORAxxさんや他の方のレビュー読んで、いろいろ想像させてもらっています。この後少なくとも本屋大賞受賞のあのイヤミス作品は読まなくちゃいけないんだけど、映画観ているからなあ、あまりインパクトはないかも。

      NORAxxさんの文章大変好きです。参考にさせてもらっています。これからも宜しくお願いします。
      2022/02/28
    • NORAxxさん
      kumaさん、そう言っていただけて嬉しいです。ありがとうございます^ ^

      不幸は訪れないの気持ちが本当に不幸を遠ざける力に感じます。私は物...
      kumaさん、そう言っていただけて嬉しいです。ありがとうございます^ ^

      不幸は訪れないの気持ちが本当に不幸を遠ざける力に感じます。私は物事にハッピーな着地を見付ける努力が必要だなぁ...なんて、平凡に生きてはいるんですけどね(笑)そのお心、勝手に有難く頂戴したいと思います。

      確かに映像からの原作だとインパクト減少してしまいそうですね。良く言えば映像と文章の製作者の違いを体感できる訳ですし、ここに新しい感想が芽生えたら楽しめそう...素敵な時間になる事を願っております。

      私の方こそkumaさんの小説から実用書、ハウツー本に至る様々なジャンルのレビューに好奇心くすぐられワクワクさせていただいてます。いつもありがとうございます^ ^ こちらこそこれからもどうぞ宜しくお願いします。
      2022/02/28
  • なぜか時々読みたくなるイヤミス小説。しかし不吉なタイトルのこの本、手元に置いて年越ししたくない、早く図書館に返してしまおうと思う。
    「あ…この感じは…なんか分かる……」と部分的に登場人物それぞれの心境に共感できるところがあった。うまい描写だと思った。
    自意識過剰、他人を羨む気持ちや嫉妬、怒り、憎しみ、恨み、不安、焦りなど負の感情は、自分自身や周り、そこら中にある。イヤミス発生未遂をしているんじゃないかとも思う。

    特に印象に残った話 ✱( )内は話のポイント
    辻村深月「石蕗南地区の放火」(男版八百屋お七!?)
    新津きよみ「実家」(実家なんかいらない!?)
    乃南アサ「祝辞」(何で私を選んでくれないの?)
    宮部みゆき「おたすけぶち」(排他的な村が不気味)

    • ポプラ並木さん
      なおなおさん、
      イヤミスのアンソロジーとは面白そう。
      しかも超大御所!
      不吉な感じがするぐらいとは、すごい!!
      読んで見たいです(^...
      なおなおさん、
      イヤミスのアンソロジーとは面白そう。
      しかも超大御所!
      不吉な感じがするぐらいとは、すごい!!
      読んで見たいです(^^♪
      2022/12/25
    • なおなおさん
      ポプラ並木さん、こんばんは。
      みんな女性の作家さんなので、女性の心理描写がうまいと思いました。また年代別の背景も分かるな〜と思いました。
      好...
      ポプラ並木さん、こんばんは。
      みんな女性の作家さんなので、女性の心理描写がうまいと思いました。また年代別の背景も分かるな〜と思いました。
      好いていない人に言い寄られて困るわ〜とか、友達が先に結婚が決まって複雑な気持ち〜とか、実家の母に子供を預けて自由時間とか……なんか身に覚えにあるぞ、イヤミスの材料なら身近にたくさんあるぞと思いました^^;
      辻村深月さんのお話は、「鍵のない夢を見る」に収録されており、ポプラ並木さんも読まれていると思います(^^)また是非!
      2022/12/25
  • 6人の女性作家のイヤミスを集めた短編集

    『石蕗南地区の放火』辻村深月
    これ、すごく好きなタイプのイヤミス〜
    女性の勘違い、そして女性が生理的に嫌なタイプの男性を見る時の表現!めっちゃ描写が細かくてわかるわかる〜ってなんかニヤニヤしちゃうくらいのイヤミス作品!
    途中で、あれ?これどこかで読んだ話…と思っていたら過去に読了していた『鍵のない夢を見る』に収録されてた作品だったw
    前に読んだ時よりも好き〜と思えた

    『贅肉』小池真理子
    これはなんだか因果応報というか…姉妹の互いに対する依存が加速していく物語
    私も2人姉妹で私が姉だけど、このお話とはかけ離れすぎていて(頼りない姉なのは同じなんだけど)あまり現実味は感じなく入り込めなかった

    『エトワール』沼田まほかる
    これもあまり現実味がなく、後味は確かに悪いけど それほど好きな作品ではなかった 突拍子もないオチだけど

    『実家』新津きよみ
    この作家さん名前は知ってたけど、たぶん読んだ事はないはず…なかなか面白かった
     普通に生きてきた65歳の女性の日常があっという間に崩れ落ちていく…ありそうで怖くて良かった

    『祝辞』乃南アサ
    いいねいいね〜これぞイヤミス
    女性の嫌な部分、親友という関係性の裏側
    すご〜く嫌な感じで描かれていてゾクゾクするわ〜ラストの祝辞でゾクゾクが加速!

    『おたすけぶち』宮部みゆき
    村が絡んでくるとホラー感増すよね〜
    イヤミスというよりホラーっぽい
    さすが宮部先生で、ものすごくスルスル読めてしまう しかし短編だと宮部作品は少し物足りなさを感じてしまう

  • 1年前に読んでレビューしていなかったので、
    長編の息抜きがてらに再読。
    全作、タイトル通り、あなたの不幸は蜜の味。

    『石蕗南地区の放火』辻村深月
    簡潔に言うと、ストーリーは違うけれど、『傲慢と善良』の短編版みたいな感じ。
    笙子の傲慢さが大分際立って見えた。もしかしたら、人は、9善良でも、1傲慢があった場合、善良さは傲慢さに負けてしまうのかもしれないなと思った。自分も気をつけないといけないと身が引き締まる想い。

    『贅肉』小池真理子
    対極な姉妹の不健全で歪んだ依存関係。
    姉の不幸は蜜の味。

    『エトワール』沼田まほかる
    女の嫉妬その❶
    最後、奈緒子の正体が分かった時に、吉澤はそれを隠す必要あったの?という気持ちになった。嫉妬を利用した恋なんて幸せでも美しくもない。

    『実家』新津きよみ
    遺産相続と実家の話。
    やや趣旨はずれるかもしれないが、本作を読んで、将来結婚しようとしなかろうと、働くことは続けていくべきだなと、改めて思った。金銭面で誰かに頼って生きていくのはリスクが高すぎる。

    『祝辞』乃南アサ
    女の嫉妬その❷
    ここまでいってしまうと、それまでの友情も全てがまやかしだったのかなと思えてくる。
    嫉妬ほど醜いものはない。

    『おたすけぶち』宮部みゆき
    女の嫉妬その❸
    そしてホラー要素もあり。

  • どの作家さんも流石でした。

    辻村さんの作品は実際ありそうで怖い。
    1番後味悪かったのは新津さんの「実家」。
    なんか今まで頑張ってきたのに、身内が誰も自分を必要としてないんだ・・・っていうのが続けざまにわかる感じ。
    自分もそうだったらって考えると悲しいし、
    最後は、あ~ぁって。
    乃南さんと宮部さんのは良いです。

  • 女流作家さんたちによる、イヤミスのアンソロジー。どの作品もクオリティが高く、心にドロっとした気持ちが残ること間違いなしです。
    特に好みだったのが「実家」と「祝辞」。
    「実家」はキリキリと世界が狭まっていくような息苦しさを感じ、女性として役割をこなしてきた(でも結果的に何かを間違い失い続けてきた)主人公の人生に思いを馳せてしまいます。苦しい時、同じことをしないと誰が言えるだろうか。そんな現実的な恐ろしさも。
    「祝辞」はラストのくだりが恐ろしく、読みながらも本をちょっとずつ離してしまいました。女友達の複雑な関係性がリアルなだけに、一番ありそうかも〜と思ってしまう。
    どちらも予想した展開にもう一個イヤを重ねてくれる、イヤミス好きにとってありがたい作品でした。

  • 2019年7月PHP文庫刊。「あなたに謎と幸福を」と同時期に刊行された姉妹編です。文春文庫鍵のない夢を見る辻村深月:石路南地区の放火、双葉文庫贅肉小池真理子:贅肉、光文社文庫痺れる沼田まほかる:エトワール、徳間文庫孤独症の女新津きよみ:実家、新潮文庫夜離れ乃南アサ:祝辞、文春文庫とり残されて宮部みゆき:おたすけぶち、の6遍のアンソロジー。イヤミスなので、覚悟はして読んだが、全編にわたり、気が滅入って落ち込む程のインパクトでした。

  • どの話もほんまに後味悪い。
    すっと読める話ばっかりやのにずーんとなる。
    どの作者さんもすごい。

  • 六人の実力派女性作家のイヤミスアンソロジー。
    深淵を覗き込めば、深淵もまたお前をみている(ゲーテ)の言葉を思い出す。

    既読のものもあったが、結末を覚えていない(いい本の読み方をしていると本気で褒められたことがある)ので、ドキドキして読んだ。

    辻村深月『鍵のない夢を見る』初出、「石蕗南地区の放火」。
    笙子は「いい人いないの?」と聞かれるお年頃。
    自意識が加速していくのは男も女も同じで、実はあまり年齢に関係ないが、面倒なのは、色々見えてきてしまうこと。
    勢いで行けないのだ。
    とは言え、デートくらいはするもので、お試しにと渋々会った相手は......。
    大林は、もう、何と言うか、「断られてんの、気付けよ!」「あーダメだ。ない。ありえない」な相手。
    だからこそ、の後味の悪さ。

    沼田まほかる「エトワール」、乃南アサ「祝辞」
    この二編はどちらもレディースコミック的な題材を扱う。
    不倫だの、女同士の友情だの、ドロドロの中にどうミステリーを潜り込ませてくるか。
    祝辞は、どんでん返し、ではないが、たまにこうした濁りを啜りたくなる。
    エトワールは、昔部活でした練習劇を思い出した。
    内容は全く違うが、紐に絡めとられる恐怖を思い出した。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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