地方議員 (PHP新書 631)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569774220

感想・レビュー・書評

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  • 地方議員、地方議会の実態と改革の方向性について解説。諸外国の状況なども簡潔にまとめられており、地方議員や地方議会の基礎知識を得るにはよい。
    しかし、内容は薄く、著者の持論の開陳が目立った。また、後半、地方議員や地方議会改革の背景として自治体の役割、あるべき姿にかなりのページが割かれているが、地方議員をテーマとした新書としてはあまりに迂遠な内容で、もっと地方議員に関連する内容を深掘りしたほうがよかったのではないかと感じた。さらに、「予算を伴う提案(中略)に関する議会の減額修正は事実上できず、増額修正のみに限定されてきた」(「減額修正」と「増額修正」が逆と思われる)という重大な事実誤認が見られたのも残念である。
    本書では、首長と議員がともに直接公選される二元代表制の意義が強調され、地方議会は組織全体として野党的機能を持ち、「民意を鏡のように反映させる場」となるべきだと主張されている。そのことには同感である。現在の多くの地方議会、地方議員がそうなっていないとするならば、そのような議員を選んでいる住民の責任も大であろう。住民として、あるべき地方議会、地方議員の実現に向けて、選挙の際はよく吟味するとともに、日頃から地方議会、地方議員のチェックを怠らないことが必要である。
    また、現在の日本では全国一律の二元代表制が施行されているが、諸外国のように、一元代表制も含め、それぞれの自治体の状況に応じて制度に違いがあってもよいのではないかという問題提起もされていたが、それにも共感した。人口1,000人に満たない村と、人口数百万の政令市が同じ制度というのは、やはり無理があるのではないだろうか。

  • 財源の多くを国の補助金に頼り、足りない財源を国の交付税で穴埋めする。これを当然と考えてきた自治体。赤字という概念がなく、もらわなければ損という意識だけが先走り、主体制のない補助金行政による無駄な施設を作り続けた。国主導の官僚行政に無駄が多いのが分かっていても縦割り省庁の補助金行政は誰もコントロールできない。積もり積もった借金は1000兆円。省益あって国益なしの縦割り行政。増税論議が喧しいが、どれだけ増税をしても中央集権体制のままでは、無駄な政策が続くだけ。全国に統一性公平性を求める中央集権体制の時代はもはや終焉を迎え、時代は着実に次のステージへと進んでいることを自覚しなければならない。高度に都市化された現代。公共サービスはますます多様性、迅速性が求められている。究極の改革は分権改革。著者は、地方が自らの意思で政策を決め金の使い道を決めるなら、物取りブンドリ意識は消え財政規律も保たれると主張する。他方、地方主導の国づくりが進めば、いよいよ自治体間競争が始まる。行政責任は明確化され、自治体は自己決定、自己責任、自己負担の三大原則を正面に据えた経営が求められることとなる。国民の一人として国の進むべき方向を真剣に考えなければならない時期に来ている。深く銘肝させられた。

  •  地方自体では首長の権限は圧倒的である。その権限でさえ、中央官僚には敵わない。地方議員はほとんど名誉職としても価値しか無い。実際、外国では地方議員は無報酬かボランティアに近い収入で働いている例が多いという。

     地方の問題では地方議員に訴えて改善することは少ない。実質的に面倒な事は暴力団を利用する方が速くて確実ということもある。

  • 大学の講義にあつかった本の中で一番印象に残った本。


    道州制にすべきだ、と思えた。

  • [ 内容 ]
    全国の都道府県会議員、市区町村会議員は総数で約三万八千人にものぼる。
    地域主権の気運が高まる中、彼らの役割は今後ますます大きくなるが、その実態はあまり知られていない。
    本書はまず、有権者が地方議員について知っておきたい事柄を網羅する。
    彼らのふだんの活動、議会の招集権を持つなど非常に大きい首長の権限、議員の報酬、どのような人が議員になるのか等を解説。
    そのうえで、新しい時代の自治体のあり方、地方議員のあるべき姿を提案。
    都庁勤務経験を持つ、行政学の第一人者が易しく書く。

    [ 目次 ]
    第1部 議会を変える(なぜ地方議会が必要か;住民の代表をどう選ぶ;議員は変われるか;議員の待遇をどうする;議会をどう変えるか)
    第2部 自治体を変える(変わりゆく市民の暮らし;なぜ、地方分権か;自治体をどう変えるか;政策をつくれる自治体へ)
    豊かな自治をつくる

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 非常に無駄がなく示唆に富んだ良書だと思う。

    いまや「先生」などと呼ばれ、特権的なものを感じる「議員」と言う存在。
    本来は有権者の代表として民意をすい上げて、税金の配分を行う町内役員のおじさん、くらいのものであるはずの地方議員がなぜこのように市民から遠く、偉いさんになってしまったのか。

    そこを起点として、地方議会の本来の役割や、国会と地方自治体の関係等を丁寧に解説し、問題点や社会の構造変化から今後あるべき地方政治を展望する。
    もちろん政治に付随して経済の問題や私たち自身の問題にも言及。
    まずは市民が問題意識を持ち、政治を知るところから始めないと、未来にどうしようもない負債を残すことになることを痛感させられる。

    「税金の使われ方の無駄、政策発想の貧困さに伴う行政の劣化、リーダー枯渇によりさまよう日本の進路、このすべてが長く続いた自民党政治、官僚支配の中央集権体制の弊害である。これを大胆に転換せずして私たちに明日はない。」

    こわいこわい。

  • だよね〜>>この権力の座を求めて政治の世界に乗り出す人物は一般的には「五欲旺盛、気力体力は充実し、細心かつ厚顔無恥、自己顕示欲が強く、並の人間ではない」とされる(大森彌)。本来政治家になる必要な条件は、威張らない人、うそをつかない人、夢(ビジョン)のある人だと筆者は思うが、実際は五欲旺盛、厚顔無恥、自己顕示欲の強い人が当選してくるようだ。(中略)こうした人たちは一旦手に入れた公職を放さず、これを恣意的に運用したり、これを利用して私服を肥やすかもしれない。事実、国、地方を問わず、政治家にまつわる汚職などのスキャンダルは後を絶たない。(p.40)

  • 地方議員についてくわして教示してあり、
    おもしろい一冊です。
    地方議員の歴史的沿革、法的位置づけ、国会議員との違い、
    地方分権・地域主権時代における地方議員の役割に関する
    知識は実際の地方議員でなくとも、為になる内容です。

    さらに、首長及び地方政府官僚の役割、住民の役割についても
    言及されており、地方分権・地域主権における各主体の
    自己決定・自己責任を認識・覚悟する必要があることを
    感じました。

  • 基本的に行政学の講義のような本であり、得るところ少なかった。人口減社会を肯定的に捉えているところは、共感出来た。

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著者プロフィール

中央大学教授 法学博士

「2013年 『大都市行政とガバナンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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