相対性理論から100年でわかったこと (PHPサイエンス・ワールド新書)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569774824

作品紹介・あらすじ

19世紀の物理学に残された2つの暗雲-これらを吹き払ったものこそ相対性理論と量子論だった。「物理学は完成している」という当時の常識さえなぎ倒し、銀河宇宙レベルから原子より小さな世界まで、すべての「物の理」をめぐる人類の冒険は始まった。それから100年、日本人のノーベル賞受賞も相次いだ素粒子論と宇宙論。ミクロとマクロの極限はどこまで見えたのか。専門知識なしでも楽しめる現代物理学のあらすじ。

感想・レビュー・書評

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  • 相対性理論、量子論から、最新の宇宙論まで。新書1冊でここまでわかりやすく解説してくる本もなかなかないだろう。もちろん、詳細な説明は省略してあって、おおよその考え方を説明しているだけなのだが、説明のたとえが素人にわかりやすい。
    2010年の作品なので、すでに11年が経過。その間、本書で期待を寄せていたヒッグス粒子が発見されたり、その性質が解明されたりしている。続編に近い形で最新の宇宙論が描かれている入門書に期待したい。

  • いや〜。勉強になった!

  • 相対論から宇宙論、量子力学の全体を俯瞰するような内容だが、数式は殆どなく、読みやすく分かりやすい。バランスが良いのか。
    個人的にとても好きだったのが、宇宙論に対する態度で、関わる人間が変わって来たので、理論的に面白ければ何良いと思ってる人が増えてる気がするし、それが悪いわけではないが、もっとこだわりを持って一つのテーマに取り組んでほしいという主張か。
    最終的に人間原理が正しいことになるのだろうが、研究者が早いうちにそれを言っちゃあおしめえよと。

  • 2010年刊。著者は東京大学名誉教授。◆20世紀物理学は(一般)相対性理論と量子論で言い尽される。未だ交わらない二つの理論は、超ミクロの素粒子論と超マクロの宇宙論に大きく結びついている。本書は、該四大テーマについて、その史的な流れを踏まえ、現代の議論、すなわち超ひも理論やM理論、マルチバース宇宙論まで言及し解説。◇多くのノーベル賞受賞者の功績と軌跡にも触れつつ、数式を用いずに、判りやすい比喩を用いて密度濃く解説するのは、この分野の先駆けらしい。殊に「対照性の破れ」がそれ。とはいえ、素粒子論は難しい。
    ◆本筋とは離れるが、南部陽一郎氏の才を彼方此方で叙述。某物理学者が理論物理学の10年先を見据えるべく南部氏と議論したが、その議論が理解できたのは10年後だったという笑い話に始まり、南部氏の着想の鋭さやアイデアの閃きが、例えば超伝導の物性物理の知見、ひも理論が弦振動の古典物理からの援用だった事実を著者は開陳する。まさに専門分野を超えた知識や知見が有用(というより不可欠)ということを強調する。◇南部氏ほどの力量如何を問わず、多くの人の示唆に富む叙述のよう。

  • 極小世界の理論が広大な宇宙の解明と密接に結びついていることに驚く。最新理論に基づく計算によって宇宙誕生の原理がここまで解明されていたのかと興奮した。物理学者同士の交流の様子が紹介され現場の雰囲気がかいま見えるのも良かった。

  • インフレーション理論を提唱し、ノーベル賞候補とも言われる日本の宇宙論の第一人者が、相対性理論、量子論、素粒子論、宇宙論についてシンプルかつ包括的に解説している。
    19世紀末には、ニュートン力学など既に確立した物理法則を使えば、身近な物体の運動から天体の動きまで予言できたことから、物理学は完成した学問だと思われていた。それでも僅かに残されていた問題は、20世紀に相対性理論と量子論が解決したと考えられているが、一般相対性理論と量子論を融合する理論は未だに完成してはおらず、著者の直観では、量子論がいずれ書き換えられると言う。
    また、相対性理論と量子論は、それまで自分の身近なサイズの物理法則しか知らなかった人間に、マクロとミクロの極限である宇宙論と素粒子論の世界を開き、かつその相反する二つが実はその極限で「ウロボロス」のように深く繋がっていることを示した。そして、最新の宇宙論によれば、宇宙は単一(ユニバース)ではなく、限りなく多数(マルチバース)あると証明されつつあるのだと言う。
    著者は、上記の研究の歴史における、日本の歴代ノーベル賞受賞学者、湯川秀樹、朝永振一郎、益川敏英、小林誠、南部陽一郎、小柴昌俊らの実績についても丁寧に触れている。
    専門外の私にも、物理学の過去100年間の大まかな流れ、考え方を感じることができた。
    (2010年10月了)

  • 佐藤勝彦先生の本はたぶん読んだことがなかった。佐藤文隆先生の本は数冊読んでいるのだけれど、勝彦先生の方がなんとなく難しいと思って読んでいなかった。ところが本書を読んでみると、勝彦先生の方が数段わかりやすく(この本は特にそういうつくりになっているのだろうが)おかげで、宇宙論・素粒子論の全体像がなんとなくつかめた。もっとも、読んでしばらくたつと全く記憶から飛んでしまうのだけれど。本書で最もしっくりと理解できたのは、対称性の自発的な破れと相転移の話だった。ノーベル賞を受賞された南部先生の考え方が以下のような具体例をもとに紹介されていた。棒磁石の中の鉄原子はもともとミニ磁石になっている。ふつう、そのミニ磁石は向きがそろっている(「どこから見ても同じ状態」ではない=対称性は破れている)。ところが棒磁石を高温にすると磁石の性質を失う、つまりミニ磁石の向きが熱運動によってバラバラになる(どこから見ても同じような状態=対称性がある)。次に温度を下げていくと、ふたたび磁石の性質をとりもどす(対称性が破れた)状態にうつる。また、特殊相対性理論と一般相対性理論の違いとか、シュレディンガーの猫の話とかも理解が進んだ。基本的な内容で、何度も読んできたはずなのだけれど、やっと、そこそこ人に説明できるくらいになったような気がした。(相対性理論自体を説明することはもちろんできない。)さて、本書では物理の理論的な話だけではなく、それ以外に、ところどころで書かれている、勝彦先生の本音がよりおもしろかった。終わりの方で人間原理の乱用を危惧されているところなど興味深く読んだ。そして最後には、本書を書かれた動機が・・・事業仕分けで研究費が削られるなか、この膨大なお金のかかる宇宙や素粒子の研究に一般の方々の理解をえたいという思いがよくよく伝わってきました。

  • インフレーション理論の提唱者による20世紀以降の物理学の解説書。物理が全くわからない人のために、できる限り丁寧に平易な言葉で説明してくれており、とても楽しく読めました。これから先、どんなことが新たにわかってくるんだろう?と、ワクワクしてきました。

  • 前半の,物理学の歴史の御解説は何故,どうして,の部分が大変理解し易いが,後半の最先端素粒子物理学の御解説は淡々とした現状が語られるだけのため,取っつき難い.モチベーションの部分が詳らかにされたい.

  • 「宇宙インフレーション理論」提唱者の一人である著者による、「ここまでわかって、ここまでわかってない」ことを分かりやすく教えてくれる本。相対性理論や量子論を、ちょっと疑いながらも、その成果をしっかりまとめてくれている。ただし「入門書」ではないので注意。「他の本を読んでも相対性理論や量子論がわからない」という人が読むのが適。

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著者プロフィール

立命館大学・大学院客員教授、ブレーメン経済工科大学客員教授。大学でのキャリア教育、国内外での学生インターンシップに注力中

「2012年 『楽しいキャリアデザイン(第3版)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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