ぼくらが夢見た未来都市 (PHP新書 676)

  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569779577

作品紹介・あらすじ

高度成長期、少年向け雑誌のイラストや漫画に描かれた超高層ビル群、エアカー、空中都市などに、子供たちは魅了された。建築家たちも、増加する人口に対応するための巨大な東京計画を次々と発表した。一九七〇年の大阪万博は未来都市の実験場だった。しかし、四十年後の上海万博で展示された未来都市は、大阪万博とたいして変わっていない。未来都市は構想できなくなったのか?いまやノスタルジーなのか?ダ・ヴィンチから現在まで、建築家たちやSF作家たちが描いた未来都市像の変遷を辿る。

感想・レビュー・書評

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  • 社会

  • 「高度成長期、少年向け雑誌のイラストや漫画に描かれた超高層ビル群、エアカー、空中都市などに、子供たちは魅了された。建築家たちも、増加する人口に対応するための巨大な東京計画を次々と発表した。一九七〇年の大阪万博は未来都市の実験場だった。しかし、四十年後の上海万博で展示された未来都市は、大阪万博とたいして変わっていない。未来都市は構想できなくなったのか?いまやノスタルジーなのか?ダ・ヴィンチから現在まで、建築家たちやSF作家たちが描いた未来都市像の変遷を辿る。」

    「戦後日本住宅伝説―挑発する家・内省する家―」のキュレーターを務めた五十嵐太郎氏と評論家磯達雄氏の共著。主に1920年代~2000年頃までの都市計画、建築思想を設計図や写真、小説や映画、漫画などを並べてざっと説明。この本を見ると、SF小説は建築史と共に進化してきたことがよく分かる。特に第8章では「サイバースペースの彼方に」と題して、J・G・バラード「コンクリートの島」、ウィリアム・ギブスン「ニューロマンサー」「カウント・ゼロ」「ヴァーチャル・ライト」「あいどる」、グレッグ・イーガン「ディアスポラ」、神林長平「過負荷都市」、映画「ブレードランナー」などを挙げながら60年代70年代以降の、熱気の冷めた「未来都市」像を紹介している。

    また、この本では「未来都市」や「都市計画」について言及する時にこれぞ未来都市の博覧会と言うべき大阪万博(しかしコンピューター制御の未来都市は予想を上回る圧倒的な入場者たちによって制御不能の大混乱に陥る)と、ヴィジョンの曖昧な愛知万博(開催前から国民の批判を浴び、計画が二転三転)を引き合いにだしている。愛知万博開催時、さんざんテレビの映像を観たけれど全然興味が湧かなかったのは、パビリオンの建築が建築家のものではなく、大手ゼネコンや広告代理店に拠るものだったからなのか。あれ全然ワクワクしなかったもんな。太陽の塔ならぬ、藤井フミヤの大地の塔とかもすっかり忘れてた。革新的な芸術よりタレントの知名度。溜息。

    2020年の東京オリンピックまでに東京はどのように変わっていくのか。街は刻々と「再開発」されて行くが、万博のパビリオンと違ってオリンピックが終わった後も、街は残る。安易な街づくりはしてほしくない。ドバイや上海みたいなのも困るけど……。

  • 18世紀に創造された未来は大阪万博でも同じような姿だった。そして上海万博においても未来の姿はそのまま止まったままだった。しかし、実は未来は止まっているのではなく、現代の上海やドバイといった都市が未来に追いついたのだ。

    建築家、建築史に見られるリアルな側面と、まんが、映画、アニメに見られるフィクションの側面を章毎に交互に、一部をオーバーラップさせながら描いている。建築史についてはそれなりの知識がないとちょいとつらい。建築家と小説家がお互いの分野の最先端の知識を共有(刺激)しあいながら創作しあっていたとはおもしろい。

  •  SF作家や建築家の描いてきた未来都市の変遷をたどる。高度成長期、雑誌や漫画に多くの未来都市像が描かれた。とは言っても我々の世代は実感を持ちにくく、読み物としてわかりにくい。またいつか読み直したい。

  • 世界中の建築家・小説家・SF作家・漫画家などが空想した未来都市の姿を紹介した本

    軽い気持ちで読み始めたが、意外にマニアック(笑)

    偉い先生たちが、本気でこんなこと考えてんのかよ!?的な発想をしているのに驚きの連続だったが、おそらくスゴい「大発明」はこんな柔軟な発想から生まれるのだろう

    自分の凡人ぶりを痛感する一冊だった(笑)

  • [ 内容 ]
    高度成長期、少年向け雑誌のイラストや漫画に描かれた超高層ビル群、エアカー、空中都市などに、子供たちは魅了された。
    建築家たちも、増加する人口に対応するための巨大な東京計画を次々と発表した。
    一九七〇年の大阪万博は未来都市の実験場だった。
    しかし、四十年後の上海万博で展示された未来都市は、大阪万博とたいして変わっていない。
    未来都市は構想できなくなったのか?
    いまやノスタルジーなのか?
    ダ・ヴィンチから現在まで、建築家たちやSF作家たちが描いた未来都市像の変遷を辿る。

    [ 目次 ]
    第1章 大阪万博と1960年代
    第2章 未来のふたつの顔
    第3章 東京をめぐる想像力
    第4章 未来都市としての東京
    第5章 近代ユートピアの系譜
    第6章 ユートピアから科学へ
    第7章 アジアとコンピュータ
    第8章 サイバースペースの彼方へ
    第9章 21世紀へのヴィジョンと愛知万博

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    [ 参考となる書評 ]

  • 建築家や都市計画家による現実に即した計画と、マンガや小説などのメディアによる空想色の強いイメージ、両面から様々な事例を取り上げて紹介している。
    とはいえ未来都市というのは良いものばかりではなかった。空想は常に現実より先のイメージに行きつくようで、1960年代には分野を問わず未来都市のイメージは廃墟を多く含むようになったという。唯一の救いは現実の都市がそのイメージよりも荒廃してはいないことだ。
    読んでみると、それほど真新しい事例はないように思える。イメージとしての未来都市は出尽くしてしまったのかもしれない。

  • 今は夢想さえ許されない雰囲気がある都市について、
    活発に議論がかわされていた時代の都市計画や未来都市構想を
    一気に知る事ができる。
    都市への導入書といった感じ。
    具体的な計画だけでなく、小説/アニメなど
    都市計画家・建築家以外が
    都市についてどのように考えていたかも
    合わせて参照されており、
    都市に対する世代的感性も読み取れ、参考になる。

    悲しむべき事か、喜ぶべき事か、
    これからの都市構想は本書に載るような大規模かつ夢想的なものにはなりえないだろうが、また新たなステップに都市が進もうとしているとして受け入れるべきだと思う。
    そういう意味でも、過去の都市計画を再度勉強する時だと思う。

  • 大阪万博当時に夢見られたチューブロードやエアカー、空中都市や巨大ビル群といった科学万能主義的なあの懐かしい”未来都市”像についての考察。現実の建築家たちの試みを中心とした建築史とSFやマンガなどのフィクション作品の両面から”未来都市”の源流と変遷が語られる。愛知万博に対する「失敗することに失敗した万博」という指摘も興味深かった。

  • 過去最大規模で開催された上海万博。そこに提示された未来都市の様相は40年前の大阪万博と大きく変わらないイメージが。漫画やSF作品等のフィクションの未来都市と、建築家が提示し、部分的には実現もしたリアルな未来都市について、フィクショナルなものに関しては磯達雄氏が、リアルなものに関しては五十嵐太郎氏が執筆した未来都市に関する考察。共著であるが故に、また五十嵐さんの原稿については既発表作品でもあるので一冊の本として焦点がぼやけてしいまった感があるけれど、「多角的な視点で見られた」という利点はあったかも。9章の五十嵐さんによる愛知万博についての項目はそれだけでも充分面白く、パリ万博から上海万博まで万博だけで一冊書いて欲しかったほど。あとがきで磯さんが指摘している「上海やドバイで我々が直面しているのは、来るはずで来なかった未来が、じつは来てしまったという事態」というのは痛烈!

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著者プロフィール

1967年パリ生まれ。東北大学大学院工学研究科教授。博士(工学)。建築史・建築批評。1992年東京大学大学院修了。ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展2008日本館コミッショナー、あいちトリエンナーレ2013芸術監督。
主な著作に『過防備都市』(中公新書ラクレ、2004年)、『建築の東京』(みすず書房、2020年)、『様式とかたちから建築を考える』(菅野裕子との共著、平凡社、2022年)がある。

「2022年 『増補版 戦争と建築』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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