- Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569780252
作品紹介・あらすじ
入院中のおばあちゃんに歌をつくった翔太と麻里絵。その話を聞いた友だちの滝田が、校内合唱コンクールの自由曲もクラスの創作曲で挑戦したいと言い出した。何をやってもビリで、やる気もまとまりもない6年3組。だれもが無理だと思っていた。ところが、いつもはやる気のないボスが滝田の提案にのって、創作曲をつくることが決まった。歌の作詞は翔太、作曲は麻里絵。しかも歌詞は、クラス全員が一言ずつだしあってつくることになり……翔太は思わぬ展開に頭を悩ませる。▼歌ができると、今まではサボってばかりの受験組も歌の練習に参加するようになり、次第に盛り上がっていく。そして、今までまとまりがなかったクラスが初めて一つになった。ところが、麻里絵はみんなに隠していたあることを話し……。▼家族、クラス、そして友達。それぞれのつながりのなかで成長していく翔太。卒業を迎えるクラスの姿、子供たちのさまざまな思いを描いたさわやかな作品。
感想・レビュー・書評
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まさか、まさかジュニア小説で泣くなんて思わなかったな。
いや、決して侮っていたわけではなく、そこはもう通り過ぎたというあまり根拠の無い自信があったせい。
本の力とは大きいものだと再認識。
大の大人の私が、あっという間にその頃に引き戻されるのだもの。
小学6年生の韮崎翔太が主人公。
クラスメイトの女子や男子も入り混じり、帰国子女だの級長だのガキ大将だの仲良しの気弱な子だの、それはもうどこの学校にもいるような子が登場する。
それぞれのキャラクターがしっかり描き分けられて、役割もじゅうぶんこなしている。
話のきっかけになるのは、翔太のおばあちゃんの入院。
眠れないとこぼすおばあちゃんから、誕生日プレゼントに歌を作ってほしいと頼まれる。
たまたま出会ったクラスメイトの細川麻里絵に助けられて曲は完成するが、それが思わぬ方向に向かう。
校内合唱コンクールの曲を創作することになったのだ。
なにをやってもビリの6年3組は、一致団結できるのか・・・
教科書の曲を使うか創作曲にするかで学級会を開く場面が特に面白い。
これって今思えば、正しい話し合いのしかたを学んでいたのね。
当時は気づきもしなかったけど(笑)。
そして大人になった今は、話にもならない人をたくさん見すぎて、この本の中の【正しい話し合い】に妙なノスタルジーを感じたりする。
頼りにしていた細川麻里絵がアメリカに帰国してしまって、緊張の糸がプツンと切れたかのようになり、本番では大コケだった6年3組。
でも、そこがいい。合唱コンクールで金賞を獲ることの次に良いのは、ひとつの目的に向かってみんなで力を合わせたということ。
時間が経つごとに、それはかけがえのない思い出に変わっていく。
そして、二度と繰り返せないと知ったとき、涙になるのだ。
ラストは、麻里絵に宛てたみんなの手紙と麻里絵からの返信で終わる。
あっさりし過ぎていて「?」と思う人も多そうだが、小学生が読むことを前提にしているのでこれでベストかと。
おばあちゃんに贈った歌とコンクールの創作曲の楽譜が巻末に載っていて、歌ってみたら綺麗な曲だった。
そう言えば、卒業の歌っていつの間にかあんなに多くの曲を歌うようになったのだろう?
【蛍の光】と【仰げば尊し】だけでいいんだけどな。
涙腺の弱い私は、聞いてると泣けて泣けて・・・・詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
冒頭───
帰りのそうじ当番をしていたとき、校内放送がかかった。
「六年三組の韮崎翔太くん。至急、職員室に来てください」
スピーカーで名前をよばれるのは、初めてのことだ。
モップを黒板の横に立てかけ、教室を出ようとして、ボスたちにぶつかった。
「翔太、なにをやらかしたんだ?」
ボスが大きなからだで前をふさいだ。
「さっき、警察のひとが職員室にいたぞ」
「おまえ、逮捕されるんじゃない?」
付き人のデカ丸とチビ丸が言った。いつものことだ。
──────
中学の卒業式のことは鮮明に覚えているけれど、小学校の卒業式はほとんど記憶にない。
僕らの時代、特に地方に住んでいた僕らには、小学校卒業といってもみんなが同じ中学に進学するので離れ離れになるという意識がなく、それほど悲しいイベントではなかったからだろう。
逆に、中学校ってどんな雰囲気なんだろう? 部活動は何をやろうか? というワクワク感のほうが大きかったように思う。
中学校はあくまで小学校の延長線上で、少し大人になっていく程度の気分だったのだ。
中学受験をするやつなんていなかったし、いじめもなかったし、本当にのんびりほのぼのした時代だった。
でも今は違う。
小学校高学年からいじめは存在し、不良と呼ばれるようなかなり危ない子供も結構いるようだ。
荒んだ公立中学を避けるために、或いはいい大学を目指すために、中学受験も当たり前になっている。
だから、中学進学を機にクラスメイトがばらばらになってしまうので、小学校の卒業式でも悲しさが募るのかもしれない。
この作品は、字も大きいし、表現も平易なので、児童文学の範疇に属すると思うけど、大の大人である私が不覚にも落涙してしまった。
純粋な子供たちの友情や、別れへの哀しみが描かれている姿に、感動してしまったのだ。
学年の中で一番駄目な組と思われている六年三組。
私立中学を受験する子が多く、みんなが好き勝手に行動し、順位付けのある学級対抗では最下位が指定席のクラスだ。
その三組が、あることをきっかけに合唱コンクールで一つになっていく。
コンクールの自由曲を主人公の韮崎翔太と帰国子女の細川が力を合わせて作ることになるのだ。
自分たちだけのオリジナルの歌を作る。
それは卒業の歌でもあり、出会いの歌でもあるという意味を込めて───。
こういう学校ものには弱い。
すぐにジーンと来てしまう。
六年三組の子供たちの未来に幸あれと願いたくなる。
児童文学ではあるけれど、大人が読んでもかなり感動できる良作だと思う。 -
卒業式前の子ども達に読ませたい一冊
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翔太のクラス6年3組は、いつも何をやってもビリのどうしようもないクラスだった。
合唱コンクールもどうせいつもと同じだと思っていたら、成り行き上翔太の作詞、帰国子女の細川の作曲で、創作曲を合唱することになってしまった。
こんなまとまりの無いクラスで、しかも難しい創作曲なんか、合唱できるのか?
クラスメイトの個性豊かな顔ぶれが、「卒業の歌」を紡いでゆきます。ちょっと感激。 -
子どもたちに紹介したい。努力をすることは素晴らしいこと。
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小学6年生にお勧めの児童書。
毎年の校内合唱大会に向けての出来事が
書いてある本。 -
団結力もやる気もイマイチな6年3組。卒業を控えた秋の校内合唱コンクールで、自由曲を創作するという無謀な挑戦に踏み切ることに。
作詞を任されたのは、ちょっと気弱な主人公 翔太。作曲はアメリカから転校してきたちょっと訳ありな帰国子女、細田さん。
自分たちの曲を創って練習していくうちに、バラバラだったクラスの気持ちが纏まってきて…。
優しすぎてコミュニケーション下手な少年、滝田くんの成長が良かったな。
やや安直に思える場面もあったけど、王道なストーリーの中に、成長が詰まっていて爽やかな読みごごちでした。 -
オリジナルの歌をクラスで作った。ただ泣けるだけの歌詞ではなく笑えるものをと。巻末に曲も掲載。
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なんでもびりっけつでまとまりの悪い6年3組。そんな6年3組が校内合唱コンクールで創作の曲を歌うことになった。ぼくが作詞を、クラスメートの細川麻里絵が作曲することに。さて、創作曲のできばえやいかに?クラスメートたちは心をひとつにしてこの歌を歌うことができるのか?