数学を知らずに経済を語るな!

著者 :
  • PHP研究所
3.60
  • (12)
  • (24)
  • (17)
  • (7)
  • (2)
本棚登録 : 232
感想 : 33
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569800424

作品紹介・あらすじ

経済・ビジネスに強くなる「役に立つ数学の使い方」教えます!二次方程式、微分・積分、等比級数…。「霞が関埋蔵金男」が日本一シンプルに解説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  「数学を知らずに経済を語るな!」この主題から連想してその主旨を堅く論述してあるのかと予想したのですが、蓋を開けてみると数学に詳しくない読者に対して数学的(関係式を読む、グラフを読む、要因毎に分類解析する、論理的思考をする、等)に捉えて理解する重要性を、特に数学知識がない一般向けに照準を合わせて詳細に語って聞かせるような切り口でした。

     話の題材として、消費増税・東電・震災復興・金融政策等、具体的に現在の政治経済ネタを使用しています。様々な記事や書籍から著者の主張をご存じの方ならば、その主張の論拠を述べている過程にもなっていることに気づかれると思います。

     さて、中身の問題ですが本書に記述されている内容について読者が十分にその正しさを検証するためには、経済的素養と数学的素養の両方が必要です。語り口が簡易なので、一見わかりやすく正しい主張のように見えますが、その記述の当否を判断するためには経済用語の意味するところが、逐一定義に従って適切に想起される必要があること、また数学的記述に対しては合理的だと腑に落ちる必要があるからです。まあ、これらの条件を差し引いて、特にいかなる専門知識を有していない場合でも、並みの読解力を前提とした読者全体に共通して得られる知見としては、数学的思考の必要性や言葉を定義しないで論議することの不毛さ、等に関して認識を新たにすることは間違いないでしょう。

     また、インターネットを駆使して経済用語・概念の定義等を確認する手間や、様々な実在する経済データや記事を調査する手間を厭わず、高校数学レベルの数学的ものの見方(具体的な知識ではない、微分積分の基本定義の理解、数式を計算式と見なさず、データの相関を簡明に表現する手段としての言葉、等々、数学的記述のそれが意味するところを想像する力が重要)が可能な方ならば、経済的素養・数学的素養の壁を突破して十分に本書を堪能できると思います。しかし、本書はそこまでの内容なので、ある程度以上の知見を備えた方が本書を読むと内容が薄くて冗長に感じる可能性もあります。

     本書に関して個人的な注文を付けくわえるなら、文章を縦書きの文学的なものにせず、横書きにし、もう少し数式や図表を徹底的に引用しつつ(そこだけを並べて読めば、文章を読まなくても著者の主張が解読できるくらいに!)、別途本書のような記述も併存させれば、数学を熱心に読む読者にとっては満足度が倍加(失礼ながら、「それとともに数学を知らずに経済を語るな!」のタイトルが見せ掛け倒しか、本当に著者にその力量があって主張しているのかの見極めにもなります。また、主張の妥当性の信頼性を高める効果もあります。)したと思います。

     兎も角、現在進行形の政治経済の話が満載なので、著者の主張に対する賛否とわず手に取ってみてはいかがでしょうか?

  • かなり昔になりますが、私も理系の学部を卒業したこともあり、本のタイトルに「理系の~」と書いてあると目につくことが多いです。

    この本の著者である高橋氏は元大蔵省の役人で、財務省が毎年発行している分厚い予算書(報道関係者用のダイジェスト版でなく)を読んでポイントを指摘でき、それを本で紹介してくれる数少ない方です。今回は、その高橋氏が日本経済のポイントを数学的視点から解説しています。

    以下は気になったポイントです。

    ・歳入=税収+税外収入(埋蔵金の取り崩し、資産売却等)+公債なので、増税以外にも歳入を増やす方法があることがわかる(p18)

    ・日銀が紙幣を刷ると、長期的には発行価額の99.8%程度の発行差益(政府の税外収入)となる(p23)

    ・日銀の国債引受枠は30兆円(2011)で決まっている額(日銀引受額)は12兆円で、余りが18兆円ある(p24)

    ・現在日銀が引受ている国債は全部で100兆円あり、2011償還は30兆円、市場のマネーがその分減ることになり、30兆円分の国債引受をして紙幣を発行しないと、一層デフレになる(p26)

    ・増刷した紙幣の総額は、将来の納付金を全部足した合計になる(p32)

    ・これだけ景気が悪い中で増税をすると、経済成長率がさらに悪くなるだけ(p49)

    ・ギリシアでは年金額が現役時代の所得比較で96%もある、日本は36%、日本以外のG7は48%程度(p56)

    ・各国の国債のCDS値(クレジット・デフォルト・スワップ)を見れば、財政破綻のリスクはわかる、ギリシアは2011.11現在で80%、日本は2011.9現在で1.3%(=80年払い続けても元はとれる、80年間は破綻しない)(p65)

    ・10年以内に本当に財政破綻すると認識しているなら、CDS保険をかければ10年間の保険額の合計が13%なので得することになる(p66)

    ・今後30年で地震が起きる確率:87%とは、P=1年間で地震が発生する確率とすると、30年間ずっと地震が起きない確率は、1-0.87=(1-P)^30となり、P=6.6%となる(p121)

    ・放射線被爆量で最も重要なのは「累積値」なのに、報道は時間当たりの数字しか発表されなかった(p127)

    ・一瞬値か累積値かは、経済学の「フローとストック」に対応する概念、この違いを瞬時に理解できるかは、数字を見るとき「単位に着目するか」にかかっている(p128)

    ・なぜ対数をとるかは、対数をとることで桁数の違いがわかる、桁が違えば明らかな変化と見なせる、それまでは測定誤差のようなもの(p131)

    ・乗数とは、C=消費性向(収入のうち消費に回される割合)とした場合、1/(1-c)としたもの。C=0.7の場合は、乗数は3.3となる、政府が公共投資等で新たに有効需要をつくると、投入額の3.3倍程度は需要が拡大する(p157)

    2012年4月30日作成

  • 政治家の主張や報道をそのまま鵜呑みにせずに数字で真意を読みとくことを例を交えて書かれている。トレーニングとして読むといいかも。

  • 感謝

  • 難しい話もあったが、面白い。日本人からノーベル経済学賞受賞者がでない話は面白かった。増税が叫ばれる中、それが当たり前と洗脳されないためにも、今読む価値がある本だと感じた。

  • 東大卒の著者との対話で語り口で、平易な言葉で書かれており、理解しやすかった。

  • まぁ、正直高校レベルの数学でもついて行けなかったわけだが、一つだけ心に残ったこどがありました

    議論をする際には前提と言葉の定義をしっかり定義すること。数字は単位につけろ。
    全くその通りですな。

  • はじめて高橋洋一氏の本を読んだが、この人は勿体無い人だなというのが正直な感想。

    本書の、比較的平易な数式を使って経済の読み解き方を指南するというコンセプトはとても良い。

    が、対話形式になっているせいもあり、どうしても氏の語り口、態度が「偉そう」に見えてしまう。
    指南する対象の記者を完全にバカにしているように感じられてしまう。
    この記者は読者の知識レベルを代表する立ち位置であるから、つまり読者代表である。なので、この記者をバカにしているのが伝わってくると、読者としてもバカにされているように感じてしまう。

    言っていることがただしくても、自分をバカしている人の意見には耳を貸したくないのが人情である。
    だから氏は池上彰のような位置には行けないのだと思う。勿体無い。

    もうひとつ。数式は簡単でも、肝心の数字を頭に入れておくのが難しいのです。白書などをスラスラ読めるようにならないと、結局、政治を理解するのは難しいということです。

  • 考え続ける根気が大事。
     
    収入=支出。大原則
     
    数学が分かると、感覚的に捉える捉え方も変えられると知り、数学、経済学を学びたいと思えた。

  • 最近も専門分野のことにあまりにも無知な担当大臣の問題が話題となったが、結局昔からそういう話が続いていたということなのだろう。
    とはいえ、学問の分野の専門分化が進む昨今にあっては、本当に細かい話まで理解していなければならないとすると、学者、官僚が大臣にならないと対応できないともいえるのではないか。国民目線の学者、官僚の政界進出が理想ということか。

全33件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1955年東京都生まれ。数量政策学者。嘉悦大学大学院ビジネス創造研究科教授、株式会社政策工房代表取締役会長。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年に大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(首相官邸)などを歴任。小泉内閣・第1次安倍内閣ではブレーンとして活躍。2008年に退官。菅義偉内閣では内閣官房参与を務めた。『さらば財務省!』(講談社)で第17回山本七平賞を受賞。著書はほかに、『正しい「未来予測」のための武器になる数学アタマのつくり方』(マガジンハウス)、『高橋洋一式「デジタル仕事術」』(かや書房)、『国民のための経済と財政の基礎知識』(扶桑社)、『理系思考入門』(PHP研究所)、『国民はこうして騙される』『プーチンショック後の世界と日本』(徳間書店)など多数。YouTube「高橋洋一チャンネル」でも発信中。

「2023年 『日本の常識は、世界の非常識! これで景気回復、安全保障は取り戻せるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

高橋洋一の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
クリス・アンダー...
池井戸 潤
ウォルター・アイ...
高野 和明
三浦 しをん
佐藤 優
ウォルター・アイ...
冲方 丁
高橋 洋一
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×