IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ (PHPビジネス新書)

  • PHP研究所
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本棚登録 : 782
レビュー : 87
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569800783

作品紹介・あらすじ

勤めている会社は大丈夫か?取引先は?会社再生のプロが実践している37の手法が身につく本。メーカー、小売・卸、通信、飲食ビジネス…エピソード満載。

感想・レビュー・書評

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  • 私にとって受け入れ難い本だった。業種によって規模の経済が効く効かないというように書いてあるが、規模の経済が効かないときの議論は、設備投資を拡大するときの話をしており、それは経済学でいう長期費用の概念である。そこでは固定費用も可変費用として扱う。つまり固定費用の存在しない世界である。これは著者の言う「規模が効く」ための2つの要件を満たさない。つまりどの業種も設備投資の話になれば規模は効かないことになる。よって規模が効くか効かないかは、長期(設備投資)でとらえるか、短期(生産)でとらえるかの違いであり、一方では設備投資の面、もう一方では生産の面で業種が語られていたに過ぎない。著者が間違っていなかったとしても、全体的に経済学にあまり触れてない人にとって誤解を生むような説明が多く残念。

  • いわゆる数字をいじるだけの経営分析から、数字の裏にある現実に近づくためのリアルな経営分析のためのノウハウが書かれている。特によかったのは第3章。生き残る会社と消え去る会社ということでいろんな会社の儲けの構造・枠組み=ビジネスモデルについて書かれている。結局自分が分析しようとしている会社の儲けはどこから出ており、どういうルールの中で戦っているのかを把握しないとただ数字を見ても意味がない。また第4章ではトマトの卸を例に実際にビジネスの流れをシミュレーションし、数字を作ってみている。これでかなり分析対象のビジネスにリアリティが持てるようになる。
    コンサルティングをやっていて思うのはこのリアリティについて自分で納得感がないと、なかなか仕事もうまくいかない。
    そういう意味では他の経営分析の書籍とは一線を画した良書。

  • 産業再生機構で様々な企業再生に取り組み、現在も経営共創基盤で活躍している冨山氏の著書。経験に裏打ちされた、芯を食った内容で、近年の経営分析モノ書籍の中では群を抜く内容。
    財務諸表を見て、単純に電卓を叩いて、他社比較をして○×をしていてはいけないということ。事業の実態、働いている人の実態を見ないと、正しい方向には向かないというのは理解できる。会社も事業も、人次第であり、その人たちが活躍できる・活躍したいと思う仕組みを仕掛けないといけない。
    実態を見よ、そして謙虚であれ、というのは、これからの人生で常に忘れずにいたいものである。
    財務諸表の取扱い方、価格の相場観の磨き方、といった個別tipsも参考になる。

  • 企業財務に携わる者として、読んで非常に参考となる良書だと感じました。

    大事なことは、

    ①全ての基礎である簿記と業界専門知識を理解していること
    ②数字が全てだが、いきなり数字の分解から入らないこと
    ③同じビジネスを手がける会社でも同列比較するのではなく、それぞれのビジネスモデルの本質を掴むこと
    ④想像力を働かせて自分で三表を組み立ててみること
    ⑤好奇心を忘れず、仮説を立てながら場数を積むこと

  • PLで事業モデルを掴むための材料を与えてくれる。BSはその事業がこれからも持続性を持てるかどうかの健全性についての情報を提供してくれる。
    →数字と睨めっこする前に、事業内容を想像し、生き物として数字を捉えることさわ大事

    PLを突破口にして、その会社で何が起きているのか、どんな活動が行われているかの仮説を立てる。つまりPLで事業モデルをイメージする。

    BSもまた事業実態から出発する。在庫回転期間と想定回収サイト(他にも販管費や人件費、家賃など)から運転資金の最低ラインを見積もる。

    また、その上で勝ちパターンを考える上では、経済メカニズムを考える必要がある。
    ここで言うのは、以下。
    ・規模の経済が効くか(またそれはどの範囲で効くか)
    ・範囲の経済は効くか(現状リソースを維持して拡大出来るか)
    ・人間心理的な障壁は無いか
    ・密着の経済は効くか(ドミナント戦略による顧客や地域に密着してコスト効率化出来るか)
    ・地理的な特性をどう活かすか(都市と郊外では人の入りが異なるため、人件費をどう濃淡をつけるか)
    ・ネットワークの外部性はあるか(普及がさらなる普及を呼ぶか)
    ・スイッチングコストは高いか(独占・寡占しているか、高い場合に利鞘を大きく取れるか)
    ・市場は黎明期か、成長途上か、成熟か

    これらの視点を3C分析な5 force分析などの定性分析と合わせて、定量データとして組み合わせると、物事がクリアに見える

  • 生きた経営分析のあり方が学べる。「表面的に数字を見るのではなく、そこからいかに想像力を働かせられるかが大事」というメッセージが、個人的に最も歩留まっている。

  • 著者は経営共創基盤の代表取締役。数々の企業再生に携わってきた経歴の持ち主。
    経営分析というと真っ先に財務諸表の解釈が思い浮かぶが、それだけでは机上の空論に終わってしまう。実際に企業再生の場面においては一つの見方だけでなく多様なパターンに当てはめて最適な見方を選ぶ必要がある。(もっともそういったことが出来るようになるには経験を積み重ねなければならないが)
    PLで全体のストーリーをつかみ、BSでそれを確認する。どんなヒト、モノ、カネ、業務プロセスが絡んでいるかを、PLとBSからイメージ化することを、ケーススタディーを使って説明するのは面白く読むことができた。

  • 分析ポイントを教科書どおりではなく、現場の実状通りに解説している本です。
    自分のおかれてる業界も触れられてるので考えさせられる一冊

  • 画一的な経営分析では、経営の舵取りはできないことを示唆した本。

    1.隠れた病気を発見し、今後の治療と将来の予防に役立てるのがリアルな経営分析であって、過去を評価するためのものではない。目線は常に未来に向いている
    2.リアルな経営分析では企業ごとの実態の違いに目を向けなければいけない。全てを一括りで扱う投資家向けの財務分析の世界とは違い、りんごとみかんを一律指標で分析・比較してはならない。
    3.経営分析はナマの事業モデルをつかまえることからスタートする。みかんとオレンジは、よくよく見ないと区別がつかない。
    4.細かい業界専門知識を持つことは、必ずしも経営分析力に直結しない。「結局どうなのか」を知るには、売上インパクト、コストインパクトの大きな部分に目を向ける必要がある。
    5.同じビジネスでも、業界ポジション、成長ステージやスピード、経営者の資質と組織との関係性などによって、企業を見るための「ものさし」を変えなければいけない。
    6.経営分析はまず数字から。数字をもとに背後にある企業実態を想像する。出てきた仮説を現場に足を運んで検証して企業の実像に迫る。その繰り返しで分析の質を高める。
    7.PLを突破口に木々用実態を思い描き、BSで確認し、最後はウソのないCSでチェックする。
    8.簿記は必ずやっておくべき。現場で使える経営分析の能力は、しっかりした簿記の土台の上に築かれる。
    9.世の中は教科書通りには運ばない。本当の観察力、想像力は経験を積むことでしか培われない。そして、その学習スピードは、数字と人間の両方に対する「好奇心」次第。
    10.戦争に勝つのはより多くの情報を持っている者。経営改革という戦争の勝者になりたかったら、経営分析力を磨け。
    11.当事者意識を持たずにいくら決算書を眺めても、付け焼き刃の知識しか身につかない。経営の修羅場、ガチンコ勝負に飛び込め。
    12.たかが会計、されど会計。せっかくの人類空前の発明品は都合よく使いこなすべし。
    13.経営分析の目的は、まずは勝つためのルール(儲けの仕組み)を理解すること。経済原則、特にコストを支配する法則が何かは必ず押さえるべし。
    14.事業の経済メカニズムについて、世の中は誤解だらけ。安易に「規模が効く」と思い込むな。まずはありのまま現実を凝視し本質を洞察せよ。
    15.単純に規模を拡大しても、その効果が得られる業種は、実は驚くほど少ない。共有コストが薄い場合、むしろ規模の不経済が働き、勝敗を決めるポイントは拡散する。
    16.優勝劣敗の構図が本当に変わるのは、経済構造が変わったとき。そこで当該事業が消えゆく運命なのかを見定めるのも、経営分析の大事な仕事である。
    17.経済の本質のひとつは、人間心理である。人間音痴では、正しい経営分析はできない。
    18.世の中の多くのビジネスを支配しているのは、実は「密度の経済性」。単純な「規模」だけでなく、「密度」の持つ意味にも着目せよ。
    19.同じ事業のように見えても、購買行動、立地、業態などによって経済構造は異なり、重要な経済指標も違ってくる。「違いのわかる」分析者になれ。
    20.普及するほど利用価値が高まるネットワーク型の商品・サービスの場合、リスクをとって全速力でシェアを取りに行くことが正しい行動となる。先手必勝!
    21.イノベーションなどによって、市場の創造〜成長〜成熟は繰り返される。分岐点における競争ポジションによって個別企業のとるべき戦略も変わる。経営分析でもそのダイナミズムを見極めないとならない。
    22.顧客が他社製品に乗り換えるスイッチングコストを高めることは、提供「価値」を「適正価格」として実現する基本中の基本戦略。顧客サイドの経済性を分析せよ。
    23.見た目は同じ工場でも、系列取引の割合を見極めないと、経営の実態に近づくことはできない。B to Bビジネスでは、このような産業構造的な視点からの経営分析を忘れるな。
    24.インダストリー・バリューチェーン全体の成熟度合いとイノベーション、その中での位置付け(より多くの価値配分を勝ち取れるポジションにいるか)の両方に目を配らないと、企業の将来の競争優位性は掴めない
    25.大競争時代の勝ち抜きの決定版は、スモール・バット・グローバルナンバーワン・モデルで、価値(価格実現力)とコスト(規模の経済)の両取りを狙うこと。スモールセグメントでのシェアとコスト、そしてスイッチングコストに着目せよ。
    26.儲かっているビジネスこそ要注意。運と実力を冷徹に見極めよ。
    27.経済メカニズムの視点を各種分析枠組み(3C分析や5Forces分析)にしっかりと入れることで、個別企業のあるべき姿と、その裏返すでその企業が直面する問題点や課題がよりクリアに見えて来る。事業経済性で本質に迫れ。
    28.単価と数量を掛け合わせれば売り上げがわかる。売り上げを1日、1店舗、一人あたりに細分化すれば具体的な姿が見えて来る。
    29.PL全体でのストーリーをつかみ、BSでそれを確認する。どんなヒト、モノ、カネ、業務プロセスが絡んでいるかを、PLとBSからイメージ化できると「勘」が働き出す。
    30.ある数字を見て異常に気づくためには、相場観が欠かせない。特に値段のリアル感に敏感になることは、あらゆるビジネスの基本である。あなたは今日のトマトの値段を知っているか?
    31.単品管理を徹底すれば、どんぶり勘定の余地がなくなる。大抵の問題はそれで解決できるはず。
    32.お約束通りにやる財務会計は出発点。分析者の経営センス、オリジナリティーが問われる管理会計こそがゴール。
    33.売り上げを増やすのに、どのようなコストがかかっていくのか、どのような売り上げの伸ばし方が、コスト効率が高いのか、という「コストドライバー」の視点で勝ちパターンを見極めていくことが重要。
    34.数字の分析を徹底的に突き詰め、壁にぶち当たり、悩み、苦しむことで、その会社の組織サイド、人間サイドの本質的な問題も浮かび上がってくる。
    35.月次、四半期、年度決算がその事業のサイクルと一致しているとは限らない。当てる定規の長さによって、業績の評価や予測は大きく変わることは少なくない。
    36.取引先や競合他社を見るときも、財務データ、経営データを分析することで、従来とは違った見方を手に入れることができる。プロが本気で分析するのは、その会社と事業の経済性(儲けを決めるメカニズムとその堅固性)と、財務の健全性(いざというときの生存能力)。この2点について、数字と業務実態がコインの表裏のように整合的に納得できるまで、徹底的に分析せよ!

  • 本書の序盤にもあるとおり、経営指標の説明に終止する財務諸表の読み方や経営分析に関する本の不足を補う、ケーススタディによる事業経済性の着眼点・切り口のエッセンス集と言える。
    前半のケースで学んだことの抜粋としては、固定費や共有コストによる規模の経済性、需要が飽和する点を先に抑えてしまうLCCのケースや、スイッチングコストを利用した顧客の囲い込み、などがあった。また切り口としてバリューチェーン上の位置づけのような聞きなれた言葉も、この本によって実践的な分析に使える切り口になった(使い方が分かった、その切り口を使う回路が脳内にできた)と思う。
    後半ではより実践的に仮想の企業を分析する追体験をするが、非常に学びが多い。特に想定なしに経営指標の計算に走るなという点は説得力がある。
    また、後半部分で単品管理の重要性を説いた箇所で、単品管理を妨げる要因の例や無責任組織の結末(トップによる達成不可能な目標に各部門が個別最適に動いて損失を出す)はリアリティがある。私の勤める会社の例にもよくあてはまる。
    本書のまとめで述べられていた通常のPL、BSや関連する指標の分析に事業経済性が加わることで定性的で表層的・感覚的な分析から定量的で根拠の強い分析になるのも非常に説得的であった。

    以下、非常に些末な点ながら、経験による着眼点・切り口のエッセンスという性質上理論化や一般化が難しいため各パートのまとめの欄の文が「実態を、本質を見極めよ」のようになってしまうのは少々残念。もう少し体系立てて整理する余地はあると思う。また、カネボウと花王の合併がありえない主張したというエピソードでは、従業員の愛社精神よりも同じ販売チャネルを使うことによるブランドの毀損のほうがクリアかつ重要なのでは、と思う。著者が実際に関わって得た印象は非常に重要で、その経験値の共有こそが本書の価値ではあるが、そこで「販売員と飲んで見ればわかる」というあたり、経験や肌感覚に頼る古臭さを感じる。

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著者プロフィール

冨山 和彦(トヤマ カズヒコ)
株式会社経営共創基盤 代表取締役CEO
1960年東京都生まれ。東京大学法学部卒業、スタンフォード大学経営学修士(MBA)、司法試験合格。ボストン コンサルティング グループ、コーポレイト ディレクション代表取締役を経て、2003年に産業再生機構設立時に参画し、COOに就任。2007 年の解散後、IGPIを設立。パナソニック社外取締役、東京電力ホールディングス社外取締役、経済同友会副代表幹事。財務省財政制度等審議会委員、内閣府税制調査会特別委員、内閣官房まち・ひと・しごと創生会議有識者、内閣府総合科学技術・イノベーション会議基本計画専門調査会委員、金融庁スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議委員、経済産業省産業構造審議会新産業構造部会委員などを務める。主な著書に『会社は頭から腐る』(ダイヤモンド社)、『AI経営で会社は甦る』(文藝春秋)、『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(PHP新書)などがある。


「2019年 『両利きの経営』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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