- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569801759
作品紹介・あらすじ
沈むヨーロッパ、崖っぷちのアメリカ、そして日本の独り勝ちが始まる。
感想・レビュー・書評
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私が本を読む中で日本の将来性を評価して紹介してくれる識者は、この本の著者(日下氏)以外に3人(増田悦佐、長谷川慶太郎、三橋貴明)いますが、その中でも日下氏の本とは長いお付き合いをしています。
彼の主張の中に、日本はバブル崩壊あたりから先進国で、それに引き続くデフレや、高齢化、少子化等、多くの国々が後になって直面する問題にいち早くぶつかり解決していくと述べていたのが印象的でした。
この本も日本の素晴らしさが書かれていますが、増田氏の主張に似ているところとして、日本を代表するリーダーはそれほどでもないが、実際に運営している企業の中堅リーダーや一般大衆が素晴らしいことを述べていると思います。
以下は気になったポイントです。
・日本陸軍の宮崎少将は、インパール作戦において、規則違反でありながら、個人的特徴を生かした専門兵や分隊をつくり、終始善戦敢闘し、コヒマでの勇戦は語り継がれている(p27)
・日本のこれからの潮流は、「戦後派が災前派」になり、「戦前派が災後派」になるという逆転現象が起きる(p37)
・安倍氏は防衛庁の省昇格や、海洋基本法の制定等、日本の未来にとって必要なことを推し進めた、突然の辞任表明は霞が関官僚の抵抗、公務員制度改革法成立は、高級官僚の人事をコントロールする人事局を設置した(p39)
・永住外国人の地方参政権付与、家族の絆を断ち切りかねない夫婦別姓制度の導入、人権侵害救済法案を推進していた千葉法相が落選したことに、国民意識の底流が表れていた(p41)
・明治の元勲は欧米視察で彼等との差をせいぜい40年と見積もることができた、その差の大きなものは、1)殖産興業(経済力の発展)と、2)富国強兵(軍事力の増強)であった(p53)
・アメリカには長らく奴隷制があった、ギリシア・ローマ文明が奴隷制の上に立っていたし、欧州諸国は「脱ローマ」の過程で奴隷制の代わりに農奴制になり、自営農民をつくったが、アメリカ・中国にはその歴史がない(p58)
・道徳がない経済に、景気対策は存在しない、消費の魅力がない産業に成長政策は存在しえない、それら2つがあるのは日本のみ(p67)
・日本が示す次のステージは、数値化・計量化・可視化できない、より複雑な価値であり、それに基づいたモノである(p69)
・ポケモンの哲学は、皆で話し合って、敵同士も分かり合って、許しあって涙を流すというもの、ワンピースも同様で、善悪二分法でない(p71)
・ロシアは1993年に、日本海で約800トンの液体放射性廃棄物を投棄、また化学兵器も1万トン程度廃棄している(p77)
・アメリカはビキニ環礁で67回、フランスはムルロア環礁で180回の核実験を行い、大気中や海洋に放射能物資を放出してきた(p78)
・命令の上に訓令があった、指揮官が状況変化を予測しきれないときや任務遂行のために具体的な方向を指示できないときに用いられた(p83)
・自分から仕事を見つけて、それを自分のやり方で解決してこそ本当の中流、たんに命令されたことをマニュアル通りこなすのは「下流」(p89)
・上に立つ者の責任は、全幅の信頼がおける部下を見つけ出し、次にそのポストに置いたら、いちいち口出ししないこと(p121)
・中国が覇権を握っていた時に現れた現象とは、1)政治がショーになる、2)自国の国家論、文化論が盛んになる、3)地方に目が向く、4)周辺途上国に関心をもつ、5)考古学や古典ブームが起きる(p133)
・江戸時代に新田開拓により人口が増加したが、人口3000万人の統一国家は当時は存在しなかった(p136)
・イギリスのチャーチルはヒトラーからの和平提案をすべて断りヒトラーと戦う英雄としての演出をした、その後はスターリンが標的(p147)
・チェルノブイリ原発事故当時に0-10歳だった子供たち12万人を1990年から見た結果、1)白血病は2名、2)甲状腺がんは平時100万人に一人から、1万人に一人となった、ミルク摂取制限をしなかったので甲状腺にヨウ素が蓄積、3)セシウムの内部被ばくは見られるがそれによる疾患増加は見られない(p165)
・広島長崎の被爆者約8.6万人の健康状態追跡調査から、妊娠5万689例のうち、奇形は一人も見つからなかった、死産等も無い(p166)
・1996年までにウィグル自治区で実施した46回の核実験において、19万人が急死、放射線障害は129万人にのぼる(p170)
・計画停電よりも、自家発電能力をフル活用することを考えるべきであった(p174)
・核拡散防止やプルトニウムが心配であればトリウム溶融塩炉を開発すべき、アメリカがウラン型を進めたのは核兵器として利用するため、トリウム原発はウラン原発比較で、廃棄物が千分の一、プルトニウムは発生しない(p185)
・OECDの労働時間調査は、ファーストジョブのみでセカンドジョブは含まれていない、日本人が働きすぎとは一概に言えない(p202)
・日本人の総労働時間は減少している、それでも成長率が横ばいとは、労働時間が減った分は成長している、お金ではなく時間で成果を受け取っている(p255)
2012年2月12日作成詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者の一貫した先進国日本の立場をよく説明している。
これを読んで日本人は省みて、前に進んでいくことが大切だと思う -
これからの日本の在り方を考えるのに面白い一冊。培ってきた文化に高い技術力、まだまだ世界で存在感を示せるだけの力は持っている。“失われた20年” による閉塞感の打破と昨年の震災からの復興。今、指導者の立場にある人には本気で取り組んでもらいたい。
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すべての源泉は心のあり方に帰結する。何を大切にし、何を守りたいか?
その上で、日本は劣位戦を展開するのではなく、優位戦を展開すべき。
サービスの語源は、神様を礼拝すること。
もはや、静止経済の時代。そのなかで、従来の量的拡大、伸長という指標は古い。
TPPは自由貿易かを、目指した枠組みで、全物品の関税撤廃と、サービスと投資の自由化をすること。そこに、国益があるか考えるべき。
物事に第一幕しかないというのは、子供の考え。第二幕、第三幕があるというのは大人の考え。
大きな構想をたてて、長期的に考えられるか?手段と目的をしっかり峻別できるか?枝と葉を見極める目を持っているか? -
経済の指標では測れない価値。日本人の心の美しさ、誇り。
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この本は読む価値がある。言葉では表現できない知識、暗黙知が、島国で多くの体験を共にしてきた日本庶民の間には存在する。この暗黙知が日本文化の奥行き、複雑性、多様性を形成してきた。戦後、震災前、失われた20年の経験の中で、論理で二択を迫る圧倒的な米国文化や、アジアの台頭に自信を失いつつある日本ではあるが、世界からみれば、あらゆる面で超先進国であり、世界をリードするべき立場にある。それにもかかわらずなぜ日本人はもっと日本を主張をしないのか、世界は不思議がっている。白人絶対主義からアジア人に人種平等を勝ち取った日露戦争勝利の意義、首脳会談キャンセルの脅しを盾に李登輝氏の日本入国・公演キャンセルを迫った胡錦濤氏に毅然たる態度で反対した安倍晋三元首相、中国重慶でのアジアカップサッカー時のサポーターの態度をみて北京オリンピックで使用されるはずであった砲丸提供を断った日本人砲丸職人の心意気。ぐっとくるエピソードが満載で、日本人であることが誇りに思えるような一冊。