- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569804163
作品紹介・あらすじ
平清盛、源頼朝など、新興武家棟梁が権力を握りはじめた時代。彼らと互角以上に渡り合った「大天狗」後白河上皇なかりせば、今の天皇制は大きく変容していたかもしれない。武士が後白河を蔑ろにできなかったのは、彼が一風変わった「情報源」を持っていたからだと著者は見る。その情報源とは、絵巻物である。後白河がつくらせた絵巻物の往時の姿をデジタル復元してみれば、「策略家」とは思えない後白河の本当の姿、そして、絵巻物に時代を動かす力があるということがわかってきたのだった。
感想・レビュー・書評
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後白河上皇と絵巻物ですか
結構面白いかも?
知らん事って多いなあ詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
<目次>
一 はじめに
第一章 怪しき帝の生涯
複雑な生い立ち
天皇になったのは二十九歳
今様ぐるい
平安末期の異常事態
在位はわずか三年
「保元の乱」と「平治の乱」
後白河は”比類少なき暗主”
ブサイクな清盛?
後白河はどんな顔か?
さらなる棚ボタ
清盛の計画で皇子誕生
良好な関係だったころ
不気味な存在・延暦寺
神輿を担ぐ僧侶たち
後白河にかわいがられた藤原成親
想像しにくい関係を想像する
白山事件
後白河は策略家なのか
”鹿ケ谷の陰謀”
言われるがままに、言いっぱなしの帝
初めての直接行動
全国の情報が後白河へ
清盛の後継者
与党平家の支持率の急落
ここまで来てまだ強運
本当のライバルの登場
心の機敏をとらえる頼朝
一方、義仲に対する印象は
田舎者の粗相な振る舞い
さらなる気の利いた申し状
予想外、源義経の登場
頼朝はなぜ義経を快く思わなかったのか
奇妙な三角関係
「大天狗」の真相
後白河の最期
終生「言われるがままの帝」か?
第二章 非人ネットワーク
井上靖の後白河像
描きたかった良心
五木寛之の後白河像
後白河主催の歌競べ
平成十二年八月二十七日の朝日新聞日曜版で
尊敬すらされていた?
衝撃的な本
平安末期の都の構造
六波羅に集中している後白河の活動範囲
情報を伝える者たち
情報の宝庫『梁塵秘抄』
そして「何か」に行きあたる
そもそも『梁塵秘抄』とは?
後白河はなぜ今様にハマったのか
繰り返す参拝
後白河の狂気
私がシンプルにこだわる理由
「非人」とは何か
「非人」の種類
「一遍聖絵」にある重病人
罪人の役人化
非田院と非人
「聖」に関わる非人
非人たちの情報ルート
非人たちの活動拠点
非人たちの坩堝・六波羅
第三章 天皇と天王
京都の街角で
もともとは別の神
「祇園祭」の意味
今は失われた「年中行事絵巻」
祭のもとの姿
ポイントは神輿の周り
デジタル復元で確認
犬神人は描かれているか
嫌われた祇園
庶民からの人気者 牛頭天王
「網羅したい欲望」から生まれた絵巻物百科
奇妙な絵巻物「辟邪絵」
小さな牛頭天王
牛の頭をした獄卒
天皇と天王
動物的であることへの強い関心
非人との結びつき
理解は人気へ
ローマと京
隠された第三勢力
人気という鎧
パイプ役、吉田経房
情報そのものの力
呪詛的情報
第四章 天皇は死んだ
謎の絵巻物「日無経」
発見された特異な場面
「有明の別れ」
物語が浮き彫りにした平安時代の生と性
不思議な力ー隠れ蓑、念仏、祈祷……
絵巻物を三つに分類
米俵が飛ぶ「信貴山縁起絵巻」
日本神話を扱った「彦火々出見尊絵巻」
奇跡にあふれた世界
放火事件を扱った「伴大納言絵詞」
圧巻の表現力
「噂」の力
「噂」の巧まざる二重構造
やり残したデータベース化
「陰陽道の祖」を描いた「吉備大臣入唐絵巻」
吉備真備への無理難題
見えてくる後白河のスタンス
頼朝は絵巻物が怖かった?
脱「粋」人間
超越した感覚
『ツァラトゥストラ』
「超人」の誕生
超人・後白河
天皇は死んだ
超人の力
ひとり思いついた
情報戦争の軍配
おわりに
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平清盛、源頼朝など、新興武家棟梁が権力を握りはじめた時代。彼らと互角以上に渡り合った「大天狗」後白河上皇なかりせば、今の天皇制は大きく変容していたかもしれない。武士が後白河を蔑ろにできなかったのは、彼が一風変わった「情報源」を持っていたからだと著者は見る。その情報源とは、絵巻物である。
後白河がつくらせた絵巻物の往時の姿をデジタル復元してみれば、「策略家」とは思えない後白河の本当の姿、そして、絵巻物に時代を動かす力があるということがわかってきたのだった。
(本書カバーより)
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絵巻物から解く、時代背景と後白河上皇の人物像についての本。
後白河はさかんに絵巻物を作らせたり収集したりされ、その力を最大限に活用するすべを知っておられた…というのが主旨。
もっとも、絵巻物というのはひとつの切り口で(これはけっこう新鮮だと思う)、実際にはそれが何を表しているのか、著者による分析と考察が行われている。
私は本書と併せてたまたま平安時代の絵巻物について書かれた別の本を読んでいたこともあり、それなりには面白かったのだが…。
個人的趣味で、やはりもっと深く人物像を掘り下げている方が好みなので☆3。 -
著者は絵巻物などのデジタル再現を手がけるCG系の専門家。その制作の過程を通じ、後白河の政治的強みの源泉が「絵巻物」だったという説を提起する。
ここでいう「絵巻物」という表現は、いわゆる「情報戦略」を象徴していて、権力の頂点に立ちながらも、型破りに市井の情報を収集し、絵巻の形でアーカイブしてしてきたことを指している。
果たして、この絵巻物作戦が実効を奏したのかどうかはわからないが、後白河という超個性的な人格の解釈のひとつとして面白いし、最後には後白河=ツァトラストラ=タモリという、奇妙な方程式を提示してしまう。
実際の本の中身は、絵巻再現作業に関するは部分的で、後白河の生涯や人となりについて、多くのページを割いている。日本史の研究者ではないし、現代的な感覚での史実解釈が多い気がするが、極めて平易な表現なのでサクッと読んでしまえるのが良い。 -
自称デジタル復元師の著者が,絵巻物の分析を通じて後白河の人となりに迫る。で達した結論が,後白河はニーチェの言う「超人」だってこと。他に超人と言いうるのは,何と…タモリなんだって。なんじゃそりゃ。途中までは推測に推測を重ねてる感満載ってくらいで意外とまともだと思ったのに…。
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後白河上皇の「異形の王権」を、「今様狂い」や絵巻物プロデューサーとしての視点から見る。ボストン美術館展で「吉備大臣入唐絵巻」などの絵巻物を見た後なので、いろいろと腑に落ちた。
網野善彦先生は後白河上皇を中心に語った本ってあったかな。