- Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569806907
作品紹介・あらすじ
80年代、世界有数の経済大国だった日本は、今なぜ中国や韓国に追い抜かれてしまったのか? 本書は日本を代表する経済ブロガーと、『中国化する日本』で脚光を浴びた気鋭の歴史学者が、日本の歴史を辿り、現代の「決められない政治」や「変われない企業」といった日本停滞の原因を縦横無尽に語り合った成果である。「明治維新後、西欧化を図り、わが国は世界に類を見ない高度成長を遂げた」という歴史の通説は幻想であり、実は日本がいまだに江戸時代から進歩していないというのが、両者の共通認識である。全国300もの藩が別々に法律や武力を保持し、ムラ社会の掟で問題解決するシステムが、内向きで縦割りの社会構造を生み、全体戦略や強いリーダーが現れない原因を作り出したのだと指摘する。歴史を見れば、外からの衝撃を吸収しながら豊かな国になった日本人の、変化への適応力の強さを活かすことで、グローバル化に対応する道はある! 通説を覆す一冊。
感想・レビュー・書評
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中国のような皇帝がルールを決めて統治する社会ではなく、欧米のような法治国家でもなく。日本は江戸時代から続く村社会で課題を解決する仕組みが今も根付いている。
専門家の2人の先生の対談で、お互いに一定の知識レベルがある前提で話をあちこちに展開されるので、正直なところ読みにくい。内容は詰まっているので、完全に自分のレベルが低いのですが。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
明治政府がキリスト教をモデルにして国家神道なるものをでっち上げて戦争に利用しただけで、日本には政と教が結びつく伝統なんかないし、そもそも分離しなきゃいけない宗教もないんです。(79)
租税反乱が法の支配を生んだ
日本の消費税がわずか10%でこれだけもめるのは、問題は税率じゃないということです。みんなが政府を信用していないから、10%でこれだけもめる(181)
日本には法の支配がない
西洋で法的な権威が国家権力から独立したのは、国家権力が都市に分散していて、そのなかだけのローカルな法では商売できないからでしょう。(189)
日本の官僚制度は「ブロン」か「キマイラ」か
「江戸時代的全会一致」には一長一短があって、秩序の隅々にまで合意を取って結束できる点は強みだったのですが、弱みが「損切りの不可能性」です。(223)年金にせよ補助金にせよ、ここまでやってしまうともう財源がもたないからカットしよう、と言ったら、関係者が拒否権を行使する。戦前であれば「軍拡・放漫戦線」に帰結したものが、戦後は「放漫財政・財拡」に帰結して、誰にも引き締めができなくていま困っている(224)
科挙官僚というのは皇帝が絶対権力をもって命令する組織で、みんなで仲良く決めるしくみじゃないから、決める人がいないと無限ループしてしまう。そこに無駄に細かい大陸法を直輸入したものだから、日本の社会の実態と輸入した中国型の官僚機構と西洋型の法律が、最悪の形で結びついているわけです。(225)
全会一致が日本社会の規範
日本人には「組織内で意見が分かれている」ということ自体を、あからさまにするのを嫌う傾向がある(233)
強行採決という言葉がおかしいでしょ。民主主義は最後は多数決で採決するんだから。(235)
小泉改革は「個人商店」
日本はコモンローの伝統が失われて法の支配が育たなかったから、法律も裁判所も当てにならない。仕方がないので、ムラ的なコミュニティと拒否権の組み合わせで、自分たちの暮らしを守る。そういう生き方を江戸時代以来ずっとしてきた。(240−241)
経済財政諮問会議というのは法律上は大した権限はないんです(中略)ところが小泉首相が諮問会議に毎週出てきたんですよ。霞が関も役所だから、上意下達だけはしっかりしているので、最高責任者が決めると動く。(243) -
日本・中国・西洋の比較でみるこの国のかたち。
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「日本人とは何か」について、2人の作家がとことん語る一冊。
言ってることは(特に池田信夫のブログを日ごろから呼んでれば)充分頷ける内容なのだけど、何せ対談形式なので話がダッチロールして中々進まない。
対談よりもむしろ2人の共著形式の方が良かったのでは? -
在野の経済学者、池田信夫さんとネット歴史論壇の旗手、与那覇潤さんの知的刺激あふれる対談集。
この本を読んだ後には、司馬史観で「お前も大志を抱いて励め」と諭す上司に一言いいたくてしょうがなくなるかもw
曰く、「明治維新後、西欧化を図り、わが国は世界に類を見ない高度成長を遂げた」という歴史の通説は幻想であり、実は日本がいまだに江戸時代から進歩していないというのが、両者の共通認識。
全国300もの藩が別々に法律や武力を保持し、ムラ社会の掟で問題解決するシステムが、内向きで縦割りの社会構造を生み、全体戦略や強いリーダーが現れない原因を作り出したのだと指摘する。 -
読み物として、とても面白い。実際に日々の生活の中で感じる組織や社会、文化に対する疑問に、意外な角度からヒントを与えてくれる。自分の思考を深めるための、導入的な対談だった。
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対談に名作なし、は読書家の定評(?)だが、池田信夫ということで手に取ってみた。
対談のもう一方の相手の與那覇潤は、『中国化する日本』という本を書いた気鋭の歴史学者らしい。池田信夫も学者といえば学者なので、学者系の対談にあるようにやたらと文献が出てきて、あの本の中ではこう言われていた。あれはこう解釈することができる、といったような対談にありがちな流れになる。丸山眞男とかドゥルーズ、マックス・ウェーバー、サンデルも出てくるし、『失敗の本質』も出てくる。この辺りはある程度知識はあるので付いていけている気がするが、そもそも『中国化する日本』を読んでおくべきなのかもしれん。
副題に、「変わる世界、変わらない日本」とある。対談が行われた頃は、民主党政権への失望感が溢れ、原発問題やTPPや普天間の対応がぐだぐだになっていた頃。「決められない政治」が今以上に痛烈に批判されてもやむなしな状況であった。
この「決められない政治」は、明治維新や敗戦を生き延びて江戸時代以前から続く日本人の「古層」から来るものであるとする。つまり「空気」によって支配される共同体が、法=ルールベースの政治や経済の実現を阻んでいるとの見立てである。そのことが、グローバル化において、日本が必然的に地盤沈下していく理由の大きなひとつだとする。
もちろん、ある意味それはひとつの解釈だ。
西洋化も歴史上先行したというものでなくひとつの類型であり、中国もひとつの類型、そして日本もそのひとつだと。経済成長はこれまでの産業革命などの説明と違い、資本蓄積が進むと成長し、やがて止まり人口増加以上の成長が望めなくなるというルールに結局したがうのだというのが著者らの視点だ。
フランシス・フクヤマの『歴史の終わり』からタイトルを取ったということだが(歴史=世界史)、「日本史」(そういう意味で教科の日本史とはちょっと違う)はもはや終わるべきだがなかなか終わらない、というのがタイトルが寓意するものではないか。
結局、二人は意見が合っているのかいないか分からんかったな。対談ものは難しい。 -
西洋化・中国化・江戸化の3類型の違いを政治・経済・文化の観点から歴史的に解明・定義していくという内容で、読み物としては結構面白い。自分は歴史に詳しくないし、本書を批判する程の知見はないので、言われてしまえばそうかもなあと納得してしまいそうになるし、世の中いろんな見方があるものだと感心させられる。日本万歳でもなく、自虐でもなく、総じて客観的・相対的に書かれている印象。良くも悪くも日本(人)とは何か?を考えて、その中で自分がどう生きるべきか?という指針にはなる。印象に残ったのは「勤勉革命」で、この革命には参加してはいけないなとか、やはりフリーライダー戦略が正しいのかなとか。
が、所詮は対談本なので話が飛ぶし、論理構成も弱いし、(P287の表1つでこの本の説明は殆ど終わるような)本著でいろいろと気づきを得たなら、関連書籍にあたってみるというブックガイド的役割なのかなと思う。
そもそも池田氏は他著で「対談本には価値はない」とか言ってたのに、こういう本を出したのは何故なのだろう?あと、「遺伝子」という単語が結構出てくるのだが、政治・経済・文化においては環境的継承性はあっても、遺伝性はないので、そこを信じているのはどうかな?って気がしたけど。 -
池田信夫・與那覇 潤共著。
2人の趣味で書いたでしょって感じの本。
多分1回じゃわからん。
日本史を西洋基準でなく、中国基準で見直しましょう。
それはシステム1(本能的な感情)とシステム2(抑制する機構)の存在で、システム1は全世界が持ってて、システム2は戦争しまくった西洋しかもっていないっていう考え方。
メモ
・約350年間(薬師の変から保元の乱)、「国家の首都で政治的理由による死刑が執行されなかった」期間としては世界最長。
・五十代十国の状態が宋という王朝によって統一されず、中国大陸が分裂したままだったとしたら、ヨーロッパと同じになったかもしれない。
・日本の実際の有罪率は世界平均だけど、検察が有罪・無罪を決めて裁判所はそれを追認するだけというように三権分立になってない。
・日本における反対運動[江戸化](独り占めはさせない)[中国化](法治よりも徳治)
・平和ということはそれ自体に重要な価値がある。
うん、これはもう一回読まんとわかりません。 -
今が終わりで、その先は?ということにはまだならない。つぎつぎとなりゆくいきおひの先がどうなるのかは、グローバル化だというが、それはどういう状況なのだろう?処方箋なしでもすごく楽しかったからいいけれど。