日本のリアル 農業・漁業・林業 そして食卓を語り合う (PHP新書)

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  • PHP研究所
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感想 : 40
  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569806983

作品紹介・あらすじ

日本人の「家族の絆」の実態を調査し続ける岩村暢子氏。耕さず農薬も肥料も使わない農業で強い米を作った岩澤信夫氏。植林活動で海を変え、震災も淡々と受け止める牡蛎養殖家畠山重篤氏。日本になかった合理的な間伐を普及する鋸谷茂氏。ごくふつうの日常を研究する人、リアルな「モノ」に携わる人と解剖学者が、本当に大事な問題を論じ合う。「日常から消えた『現実』」「不耕起栽培で肥料危機に勝つ」「ダムは造ったふりでいい」「人工林を救う管理法」…地に足をつけて考える一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 現代人の日常には、現実が無い 岩村暢子
    岩村さんと言う方は毎年食DRIVEと言う定点観測をやってるらしい。同じ人に食生活アンケート、1週間のすべてのメニューの写真と日記、そして家族の誰が食べなぜそう言うメニューに下かの調査をし、食生活はこうしたいと言う意識と実際の矛盾を突き合わせる。その中で一緒に食事をせず、バラバラに食べる家族が増えて来ていると言う。う〜ん、高校あたりから自分で作って食ってる割合が高いので全く違和感を感じないなあ。ごちそうの意味が変わり、高価な物ではなく自分の好きな物だけを食べれるのがごちそうだと。それとご飯を残しちゃいけないと言われなくなってるらしい。
    まあそう言う文脈で「家庭の食事という日常そのものに現実がなくなってきている」と書いてるんだが最初から母親が食事つくって、子供が手伝って家族一緒に食事と言う家族像ありきで個人的にはあまり共感できず。

    田んぼには肥料も農薬もいらない 岩澤信雄
    この前読んだ「食の終焉」によるとアメリカでは不耕起栽培は一般的になってきているらしい。ただし無農薬とは限らないし遺伝子組み換え食物を使ったりするのでの合理化、省力化が主目的だが。
    土を耕すのは当たり前っぽいが目的は空気を通したり、雑草を生えなくしたり、排水性を良くしたりとか。しかしあまり科学的なデーターは揃っていないようだ。
    土を耕す明らかなデメリットも有り、簡単に言うと表土が砂のように完走すると流出しやすくなること。アメリカの例では不耕起の畑は耕した畑より明らかに地面が盛り上がっていた。

    肥料に関しては豆類を植えて解決する。豆を植えると根粒菌が窒素を固定するので肥料=主に窒素系を減らせる。稲の場合は冬期湛水という冬も田んぼに水をはるやり方との組み合わせで、田んぼが生き物だらけになるらしい。蛍が増えて観光客も増えるとそのうち何十人かは多少高くてもここの米が食べたくなると言う。
    田んぼの不耕起はなかなか難しかったらしく、南方では直播できたが東北ではやはり苗を育てて植え替えている。1993年の冷害の年に他の田んぼが穂をつけないのに不耕起の田んぼだけが黄色く実った写真がすごい。田植機では稚苗を植えるのに対し昔ながらの田んぼでは苗代で成苗になってから植え替えたるので冷害に強いのだそうだ。
    昔ながらのやり方と新しいやり方を組み合わせ、しかも農家はマーケティングが大事と言う辺り良い方向性だと思う。
    家庭菜園で大豆を植え枝豆と味噌を作る運動というのも面白い。日本人が消費する味噌は年間10Kgほどで大豆20株ほど。

    山と川に手を入れれば、漁業は復活する 畠山重篤
    気仙沼の牡蠣と帆立の養殖業者で山に木を植える「森は海の恋人」の活動を続けている。最近では森から送られるミネラルが大事だと言うのはよく知られていると思うが、東北沖の世界三大漁場ははるかロシアのアムール川から流れ込む鉄分で支えられていると言うのは知らなかった。これと比べると黄河が断水する渤海湾で魚が捕れないのは当然のように思える。
    鉄分が植物プランクトンの成長に必要で鉄が体内に取り込まれやすくするためには腐葉土に含まれる有機酸が必要なのだとか。それで広葉樹を植え腐葉土を増やすと海に流れ込み海産物が増える。

    震災後の牡蠣の養殖を最初に助けてくれたのはフランスのコックたちでフランスの牡蠣が病死した際に宮城県産の種牡蠣が救った縁の恩返しだそうだ。さらにはルイ・ヴィトンも支援してくれている。
    実際には色々問題も有るだろうがキックスターターみたいな仕組みも使えそうな気がする。単に募金するのではなく、1年後の牡蠣を先払いで買い、集まった金で機材を揃える。こうすると財務の状況が良くなるので金融機関の融資も下りやすくなりそうな気がするがどんなもんだろうかね。

    気仙沼では防波堤は作らず高台に住むことを選んだらしい。だったら堤防を作ったことにしてその分他に金を使わせてほしいと。

    「林学が無い国」の森林を救う 鋸谷茂
    日本の林学界には健全な森の定説が無かった、日本の森林の4割は人工林で主に杉や檜、儲からないため間伐が適切に行われておらずひょろひょろの木が密集し下草もはえない。表土は流出し、根も大きくはらない。間伐は他の植生が生えるまでやらないと意味が無いらしい。上層は杉や檜が大きく枝を張る空間を確保し、下層、中層の広葉樹が腐葉土を形成する。このバランスを適当にすると健全な森林ができる。
    密度管理の考え方は果樹園では実際にやっており、比率は杉林と一致するそうだ。

    実際にはどうやっているか、間伐の講習会では将来性の有る木だけに印を付けるように言うとだいたい適正な本数になるそうだ。細かい基準ではなく何となくの感覚で良いと言うのが面白い。間伐の方法も切り倒さず立ち枯れにする方法をとっている。幹に切り込みを入れたり表皮をはいだりして成長しないようにして枯らし空いた空間に周りの木が枝を広げて育つ。枯れた木は土留めの効果やシカの進入に対する柵にもなる。林業の難しいのは植えて切るまで50年から100年単位な所だと思う。切った木は100年単位でしか回復しないので短期的な経済合理性と一致しないことがあり得る。所有権とは別に公共財としての管理が有った方が良いと言うことだろう。中国人が買ってもいいけど好き勝手してもらって言い訳ではない。

    燃料としては木を使わないようになり森林面積は回復している部分も有るようだ。昔のお城は今ほど木が生い茂っていなかったし六甲も禿げ山だったとか。50〜100年がかりでやれば回復すると言うことはわかった。

    実は後半3つの話は密接につながっていて最後に最初の食卓につながる。あとはちゃんと儲かる仕組みとかが組み合わせればおもしろそう。

  • 読みやすさ★★★
    学べる★★★★★
    紹介したい★★★
    一気読み★★
    読み返したい★★★★

    戦後、経済優先で自然に手を加え続けた結果、日本の農業、漁業、林業はもはや回復不可能なのか。いや、自然の適応力は偉大だ。人間が手を加えなければ、勝手に回復していくのだ。人間の短絡的な発想や行いを、いつも自然は凌駕する。科学のない時代、人が自然と共生できていた時代。お金のためではない、入れ込める仕事。本当に持続可能なものは、サミットに出るような人たちではなく、本書に登場するような人たちが一番良く知っている。

  • 食事、農業、漁業、林業に携わる、4名の方々との対談。
    でも話は食料・農業分野だけではなく、個と集団の在り方、教育の在り方、生物とは、また全体を通して、社会の移り変わりについて語られている。

    自分と世代が違ったり、成形手段の違う人たちから聴くべき話って、本当にたくさんあるな、と思う。知らなくても生きていけるような時代になったけれど、だからこそ、ちゃんと地に足をつけて生きるためにも、私たちの生命の土台となっている一次産業と呼ばれる職に就く人々から、もっと学ぶ機会を自ら持ち続けたいと思った。

  • 日本の現実を知る中で広い視野で日本を見てみたくなりました。現在の農業、漁業、林業、そして食卓について普段知ることのない世界を知ることができました。

  • 4人の有識者との対談です。

    畠山重篤さんの経歴がなんか知っているなと思ったら、小学生の頃に好きで何度も読んだ本のモデルになった人だった。

    一次産業は上手くやれば、未来ある産業なのかなと思わせる内容だった。

  • 養老さん以外の話がメイン面白い。個人的に2章以降オススメ。

  • 基本的に若者批判なので、若い世代の人間としてはいい気持ちはしません。
    基本的に「何かで成功した人」の話なので、その「何か」を礼賛するものになっています。
    が、示唆に富んだ文章がそこここにあり、がまんして読めば得るものがあるなと思いました。

  • 食卓のあり方を改める一冊となりました。
    毎日、食卓を一家で囲む。これはどんなに忙しくても実践していきたい。

  • 仕事柄、共感できるところ多数。

  • 著者が農・漁・林・食の専門家と1対1で語り合う本。
    現在の日本の問題点や既存のシステムの弊害等、現場でなければ分からないであろう話が詰まっています。
    特に最初の対談で食に関する話が心に残りました。家庭での食事の摂り方はこんな事になっているのか!と驚きました。

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著者プロフィール

養老孟司(ようろう・たけし)
1937年、神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。医学博士。解剖学者。
1962年、東京大学医学部卒業後、解剖学教室に入る。1995年、東京大学医学部教授退官後は、北里大学教授、大正大学客員教授を歴任。京都国際マンガミュージアム名誉館長。
1989年、『からだの見方』(筑摩書房)でサントリー学芸賞受賞。2003年、毎日出版文化特別賞を受賞した『バカの壁』(新潮新書)は440万部を超えるベストセラーに。大の虫好きとして知られ、現在も昆虫採集・標本作成を続けている。
その他の著書に『唯脳論』(青土社・ちくま学芸文庫)、『「自分」の壁』『遺言。』『ヒトの壁』(以上、新潮新書)、『解剖学教室へようこそ』(ちくま文庫)、『無思想の発見』(ちくま新書)、『半分生きて、半分死んでいる』『子どもが心配』(以上、PHP新書)、『まる ありがとう』(西日本出版社)、小堀鷗一郎氏との共著『死を受け入れること』(祥伝社)、宮崎駿氏との共著『虫眼とアニ眼』(徳間書店・新潮文庫)など著書、共著書多数。

「2023年 『ものがわかるということ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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