事故がなくならない理由(わけ) 安全対策の落とし穴 (PHP新書)
- PHP研究所 (2012年9月14日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569808260
作品紹介・あらすじ
鉄道、医療、バス、原発、温泉施設…事故が起きるたびに、責任が問われ、規制が強まり、対策がとられる。だが、安全対策によって「安全・安心」は高まったと言えるのか。著者は、安全対策によって人間の行動はどのように変化するのか、そこにこそ注目すべきと説く。事故や病気や失敗のリスクを減らすはずの対策や訓練が、往々にしてリスクを増やすことになるのはなぜか、人間の心理とリスク行動に光を当てる。さらにリスク行動の個人差、リスク・コミュニケーション、リスク・マネジメントにまで踏みこむ。
感想・レビュー・書評
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ビーコンが普及して、遭難が増えた。
防潮堤ができると安心して非難しない。
釜石の奇跡を生んだ先生も、防災教育を始めようとして迷惑がられた。
防潮堤は子守唄効果をもたらした。
運転が下手なほうが事故は少ない。
初心者が事故を起こしやすいのは、若者が多いから。
停止駅の先の踏切を占めるのは、オーバーラン対策。
リスクホメオスタシス理論=安全装置をつけるとその分スピードが上がる=リスクテイクが増える。リスクは、どんな場合も同じになる。人々のリスク水準を変えない限り、事故は減らない。
若者がリスクを取るのは、進化行動学で説明できる。若者は冒険が好き。
リスクをとるとエンドルフィンが出て、快感を感じる。リスクを取る効用のほかに、リスク自体が魅力がある。
正常化バイアス=異常なことは起きていないだろうと勘違いしやすい。川治プリンスホテルの火災、石勝線特急列車のトンネル内の火災、など。
地震警報の平塚市の誤報は、ほとんどの人が信じなかった。テレビで報道していなかったから。
緊急事態でパニックになることを恐れるあまり、緊急であることを周知しない。このほうが惨事になる。
みんなで話し合うと、声の大きな人に結論が引きずられる。リスキーになる。
無免許だとエンジンがかからない仕組み。飲酒運転かどうか調べる仕組み。列車のATSのような仕組みを取り入れるべき。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「事故がなくならない理由」芳賀繁。PHP新書。2012年。
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大学で心理学を教えている学者さんの本。国鉄などに勤務経験もあるらしく、半ば「事故のプロ」なのでしょう。
2019年4月に読んだ本なのでかなり忘れていますが、大まかに言うと。統計データ上、
「安全技術が進歩しても、事故率はあまり変わらない」
という一寸衝撃的な内容で、つまりは
「安全技術が進歩すれば、人のココロが油断して、例えば自動車ならながら運転などをしてしまう。だから変わらない」
「安全技術が進歩しても、運転がいちばん分かりやすいのだけど、人のココロには”ギリギリのスリルを楽しみたい”という要素があるから、変わらない」
というような話だったと思います。
自分の若い頃の運転を振り返ると、多少思い当たり。
へー、ふむふむ。という感じはありました。
(自動車の運転に限らず、人間関係とか仕事とかお金がらみとか犯罪被害あるいは犯罪加害とか、いろんな事も同じなんでしょうね)
そういう要素がある、ということを肝に銘じて暮らす方が良いんだなあ、ということですね。事故を避けるためには。
あと、どうやっても「家族そろって絶対に事故を避けて生きていく」ということは、人間社会で生きている以上は、どれだけ気をつけたって、自力では不可能なんですよね。
むしろ「事故にあっても、最悪の大事に至らないように気をつける」、「事故にあっても失敗しても不幸にあっても、それでもなんとかなるような心持ち、助け合えるような関係でいる」というほうが、現実的かと思います。
よくウディ・アレンなんか描いていますが、結局は自分の力、実力の賜物に見えるようなことでも、かなりの割合で所詮は複数の偶然の産物、神様の悪戯ってヤツなんだと思います。だからまあ、ヒトのありようってのがそもそも事故なのかも知れません。
...とまあ詮無き戯言ですが、本日も家族揃って無事故で過ごせたことを、一日一日感謝。無事是名馬。 -
ー リスク補償行動とは低下したリスクを埋め合わせるように行動が変化し、元のリスク水準に戻してしまうことをいう。細くて見通しの悪い道路から幅の広い直線道路に出たドライバーがクルマの速度を上げたり、雪道をノーマルタイヤでのろのろ走っていたクルマがスノータイヤに履き替えたとたんにスピードを出したりする現象が典型である。
運転速度のように測定できる行動変化だけでなく、注意力が低下したり、他のことを同時にしたり、より大きなリスクをとる方向の判断や決定を行う確率が高まることもリスク補償の現れである。 ー
テクノロジーの進化と共に、リスクも減ってきていると思われがちであるが、テクノロジーの使い方によっては逆効果になってしまうことも理解する必要がある事を、さまざまな事例を用いて教えてくれる。勉強になり、面白い作品。 -
事故がなぜ起こって、なぜ防げないのか?永遠のテーマです。このテーマをどのようにとらえるのか?内外の研究例を紐解きながら、わかりやすく導いてくれる導入書です。いい本だと思います。
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苦労して安全性を高める装置を作っても、それを使う人間が安全性を引き下げてしまう!リスクは0にはならないという事実を踏まえて、共存する方法を考えるべきだ。ダニエルカーネマンの本も読んでみよう。201410
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[リスクとの付き合い方法、教えます]事故回避のための新技術や万全とも言える備えが導入されるにもかかわらず、自動車事故やヒューマン・エラーが起きてしまうのはなぜなのか。事故発生の外部的要因のみならず、人間の心理状態にまで分け入りながら、その原因と更なる対策を提唱する作品です。著者は、産業心理学や交通心理学を専門とされている芳賀繁。
「リスク」にまつわる話が本書の大部を占めているのですが、そのリスクを完全に否定するのではなく、それと上手くやっていこうという姿勢が示されているところが興味深い。どのくらいまでのリスクであれば許容しうるのか、そしてその許容度にどのようにして個人差が生まれるのかなどの研究が取り上げられており、普段読まない分野の本ということもあってか、なるほどと思いながら読書を進めていくことができました。
抽象的な話ではなく、図やグラフ、そして大小含めて実際に生じた事故に例を取りながら説明がなされているため、とにかくわかりやすいというところにも好感が持てます。著者があとがきに書くように若干総花的になってしまった感は否めませんが、幅広い事故対策に関する考え方が紹介されていることもあり、足がかりとしながら更なる研究を進めるには打ってつけの作品だと思います。
〜一般人はゼロリスクを求めていると考えるのは、一種の神話ではないだろうか。その神話を信じて、専門家や事業者の側が、「リスクはありません」、「極めて低いです」、「安全です」と強調してしまうのは、筋違いな対応なのではないだろうか。むしろ、リスクがあることを認めて、そこから話し合いを進めるべきだと思う。〜
事故というか台風に伴う日本各地の被害をいくつか目にしました。どうぞお気をつけてください☆5つ -
リスク対策に関する良書。
特にリスクのホメオスターシス理論、つまり安全対策を講じてもそれに安住して更に危険行動がエスカレートし、結果的に事故確率は変わらないと。結局は心理が大きく影響するということ。
次回、平成26年度の(平成27年1月)JMA研究発表会の主題基調講演にどうか。 -
とても勉強になった。リスクマネジメント、安全について幅広く学ぶことができた。参考文献にも手を伸ばしたい。