まさか発達障害だったなんて 「困った人」と呼ばれつづけて (PHP新書)
- PHP研究所 (2014年9月16日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569809489
作品紹介・あらすじ
大人になって発達障害と宣告された本人と、宣告した専門医。もっと早く医者に診せていたら……。▼本人による幼少期から今日までの独白、それを聞いて病名を下した医師の見立てを紙上で再現した本書は、数ある類書とは一線を画す。幼少期からのさまざまなエピソード、診断の経緯、なぜここまで発達障害は見過ごされてきたのか、そして今後の処方箋。当事者2人が、発達障害の真実を語った。▼人の話を聞かない、急に感情的になる、約束を守らない――「変わった子」といじめられて育ち、その原因に気づかないまま職場や家庭の「困った人」に。さかもと氏もそうだった。「甘え」だと家族に否認されてきた彼女は、最近、発達障害の専門医である星野氏と出会い、ADHDを合併したアスペルガーと診断された。悩み抜いた者にとって、それは驚きであり福音だった。▼発達障害は「治せる」。心の病をタブー視する社会の空気を変え、苦しむ人たちの救いとならんことを。
感想・レビュー・書評
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さかもと未明さんが発達障害について自身の体験を語り、それに対する星野仁彦医師の解説の繰り返しで構成されています。ADHDにASD、さらには家族のあり方について語られています。それにしても舞台は1980年代。発達障害なんて言葉の影も形もなかった……。それぞれが特性を強く持つ家族。家族なのにうまく機能しない。未明さんは深刻な愛着障害も抱えるに至ります。
この時代、家族療法などなく、どれほどの発達特性を抱える人々が見過ごされ苦しんできたのでしょうか。未明さんは40をとうに過ぎて治療を受けて「救われた」とのべられています。
適切な支援や治療を受ければ、きちんと社会生活を営めるようになると星野医師は言います。
そうあってほしいと思わずにはいられませんでした。それが当たり前の世の中になるよう日進月歩な発達支援の世界から目が離せません。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著名人の発達障害として生きる人生を読む事が出来た。自分を認めて家族と和解することで人生が切り開けるのだと痛感した。
私は離職の多さで発達障害を疑っていたが著者の症状と照らし合わせてみてもさかもとさんのような特別な集中力や行動力、記憶力などの特徴は特にみられなかった。やはり神経症なのかなあ。 -
16.jan.11
昨日読んだ『発達障害に気づかない大人たち』の著者、星野仁彦医師と、2007年に40代にして発達障害と診断され、膠原病と戦いながら生きるさかもと未明さんの共著。
お二人が交互に一章づつ綴る形式。
星野医師はさかもとさんを発達障害(ADHD&AS)と診断するに至ったプロセス・根拠から、発達障害全体(ADHD&AS中心)の症状や対処法、日本の精神科医界に存在する問題点の指摘など、多岐にわたる。発達障害についての説明は同氏の『発達障害に気づかない〜』とほぼ同じなので飛ばし読みした。
さかもとさんの章はほぼ自叙伝。異常に厳しく育てられ、そして突き放され、愛情を感じることができなかった両親との壮絶な人生を語る。
よくぞ、ここまで心も身体もぼろぼろになり、大人になりパートナーと出会えても上手くいかず、自分が子孫を残してはいけないという感覚や、生きている意味を見つけられない状態を持ち続けながら、それでも生きていてくれた…というのがまずもっての感想。
もっと早く正しい診断が受けられていたら、さかもとさんの苦しみは早いうちに楽になったと思う。それは周囲の無理解というのも大きかったし、小児精神科医が極端に少なく遅れている日本の現状のせい。
さかもとさんが自身の辛い体験や記憶をこうして形にし、同じ苦しみを感じている人が早く治療にあたられるようにして下さったことに感謝し、社会全体の発達障害への理解が進むためにより多くのひとにこの本が読まれるように願ってやまない。 -
よくぞここまで赤裸々に語ってくれたものだ。壮絶の一言に尽きるドキュメントである。
発達障害という病気の全体像を知れるような本ではないが、その実状がどのようなものかをまざまざと見せつける、非常に意義深い一冊だった。表現が悪いが、テストケースとして見ることが出来るだろう。
その凄惨な人生にはただただ胸を痛めた。関わったすべての人を良く言う作者の心境には、本当に胸が痛む。そこにある自罰が透けて見えるのだ。
自身、見に覚えがあるというか、身につまされるところが少なくなくて、勉強になるところが少なくなかった。
そうした個人的な感想を除いても、良い一冊だった。新書らしい薄さはなく、濃密である。こうした論評はそぐわないだろうが、文句なしに星五つである。 -
本書の著者とは同世代。著者の親はずいぶんひどく書かれているが自分の親にも似たようなところがあるなと理解できる気がする。著者の親との問題の根底には発達障害だけでなくジェネレーションギャップもあるような気がする。
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漫画家でありタレントでもあるさかもと未明の半生をつづった一冊。
機能不全家族に育ち、それ故子供の頃から疎外感を感じつつ、本人も発達障害の影響で様々な軋轢を感じて社会人になるもうまくいかず、成功しても様々な症候群に悩まされ……というまさに一筋縄ではいかない人生で、発達障害の恐ろしさを感じた。 -
第1章 まさか自分が
第2章 そう、あなたは発達障害です
第3章 壊れていく家族
第4章 お母さんも発達障害だったかもしれない
第5章 抑うつ状態との闘い
第6章 発達障害は治せる
第7章 思春期の危機
第8章 薬物療法の新たな可能性
第9章 私の居場所はどこにある
第10章 発達障害でも幸福になれる社会
終章 ほんとうの家族を探して
おわりに
長年自分を取り巻く人間関係や心身の問題に悩んできたさかもと未明さんは、40歳近くなって初めて自分が発達障害を抱えていたことを知る。さかもとさんは、ADHDとアスペルガー障害を併せ持っていた。
本書では発達障害当事者であるさかもとさんのエピソードが奇数章に、医者の星野仁彦先生による解説が偶数章に、交互に章立てされている。まず事例を読み、そして次の章の解説で理解を深められるようになっている。ちなみに、星野先生自身もADHDという発達障害を持って生まれ、機能不全家庭で育った「当事者」である。
暴言や精神症状に関する生々しい表現が多いため、精神的に不安定な人が読むのはかなりしんどいかもしれない。良くも悪くも、様々な感情を掻き立てられる。
親子で発達障害を抱えてしまうと、普通の生活を送ることがいかに困難になるかがよくわかる。子供が発達障害で社会生活がうまくいかずに困っていても、親も発達障害を抱えているからその気持ちが理解できない。
それでも子供は「親はきっとわかってくれるだろう」と信じて疑わない。その一方で親は、子供の問題行動の原因がよくわからず、つい怒鳴ったりしてしまう。そんなすれ違いを幾度も繰り返して、やがて家族は崩壊していく。
さかもとさんの母親は「普通から外れてはならない」という恥じらいから、専門家にうまく助けを求めることができなかった。だから自分や子供が発達障害であることに気付かない。夫が酒を飲んで暴れているけれど、仕事はちゃんとしているから、依存症でないと考えてしまう。
きちんと精神科を受診し、専門的な治療を受ければ良くなっていたはずだ。にもかかわらず、「『精神科』に通うことを恥と思う感覚が、家族のさまざまな問題を取り返しのつかない状態にまで悪化させてしまった」(p272-273)のだ。
終章にて、さかもとさんは以下のように述べている。
「たまたま発達障害のデパートとも呼べる人生と家族だったから、それをみんなに伝えて、社会がよくなるための本をかけたらいい。お父さんとお母さんは嫌がるだろうけど、そういうことをだれかがしないと、同じような問題で悩む家族は減っていかない。」(p273-274)
本書によって、1つでも多くの家族が救われることを祈る。 -
さかもと未明氏についてはたまにテレビで観る程度でしか知らず、なんとなくチャラいイメージでしかなかったのでこのような著書を出している事が意外でした。
診断を受けられないまま、発達障害かそうでないかというグラデーションの疑念の中で生きている人は世の中に多くいると思うのですが、
そういった人達にとっての自分自身への具体的な対処法も書かれており、大いに救いになる良書だと思いました。
著者プロフィール
星野仁彦の作品





