日本の「情報と外交」 (PHP新書)

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  • PHP研究所
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レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569809724

作品紹介・あらすじ

なぜ日本は、尖閣問題で厳しい岐路に立たされたのか?政策決定において、論理よりも空気が重んじられる傾向は、「戦艦大和の最後の出撃」と重なるのではないか-。本書は、CIA、旧KGB、MI6等々、数多くの情報機関と交流した著者の実体験を交えて、情報とは何か、情報体制はどうあるべきかを提言する。外務省は、なぜニクソン・ショックを予測できなかったのか?なぜ石油ショックやイラン・イラク戦争の終結、ベルリンの壁崩壊を捉えきれなかったのか?元・外務省国際情報局長が国際諜報戦争と外務省の真実を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • イラン・イラク戦争、オイルショック、ニクソン訪中、9.11、湾岸戦争、日米貿易摩擦等々の事例から、日本のインテリジェンスの弱さに警告を発している。
    著者はアメリカに対しては根強い反米感情が出るが、その他については冷静に情勢分析している。

  • 元外交官の外崎亨が、日本の「情報と外交」について分析した一冊。

    インテリジェンスとは何かということを含めて、勉強にはなった。

  • 【ノート】
    ・「正直言うと、どんな美味しい酒より、この(ウォッカで)ただれる感覚が一番良かったと思う(P67)」

    ・現代では、少しの手間で入手できる情報により、情報マフィア予備軍ぐらいの情報を得ることができる。「『フォーリン・アフェアーズ』を読むことは、米国国務省政策企画部マフィアの準構成員レベルに行けることである。(P88」

    ・東西ドイツの壁崩壊につながる動きの端緒はハンガリーからだったが、その動きを画策したのはアメリカのパパ・ブッシュ。だが、CIA長官も務めたブッシュは「『成功は人に告げることなし』のモラルをもっていた人物である((P117)」

    ・「重要なことは、世界の情勢を見るとき、『まず大国(米国)の優先順位を知れ、地域がこれにどう当てはまる?』を考えてみることである。(P131)」

    ・P149では予算の計算が合わないような気がするが...。

    ・「CIAというと一般にタカ派の拠点の印象を受けるが、米国の政治抗争の中では、CIAがハト派に位置する場面が多い。(P191)」

    ・「したがってCIAは、自由労働運動の強化、競争的な協同組合の結成、各種の文化的、市民的、政治的団体の援助にも、多くの努力を払った。(P216)」

    ・「駐日米国大使顧問などを歴任したケント・カルダーは『米軍再編の政治学ー駐留米軍と海外基地のゆくえ』で、『米軍基地は日本を無力化させる目的をもっていた』と記している。(P238)」 これは「無力化させる目的『も』」ではないのかな。

    ・「『ロシア現政権には、歯舞、色丹を除き、北方領土で日本に譲歩する可能性はまっくありません』『米国をはじめ各国の対応を見ていると、いま、日本が国連安全保障理事会の常任理事国になれる可能性は存在しません』(P250)」とのことだが、この見立ては折田本と真逆。また、北方領土についての見立ては鈴木宗男や佐藤優の本と真逆。

    ・「国際社会での米国の優位性の後退は、避けがたい潮流と思う。同時に中国の力は上昇する。米中の狭間にあって、日本の安全保障政策の舵取りは難しい時代に入る。否応なしに独自の情報能力が問われる時期が来る。ほんとうはその日に備え、日本は情報機能を強化すべき時期に入っている。(P261)」

    ・山本七平の「空気の研究」、ここでも出てきた。読まなきゃ。

    ・ちょっと日本語の使い方に難アリな印象が散見された、意外だが。

  • 自分は外交官にはなれないな。

  • 元外務官僚の体験に基づく、インテリジェンスの鉄則と日本への提言。

    インテリジェンスは、行動のための情報であるとして、米国のリーダーシップが低下し、中国の台頭が著しいこれからの時代こそ、独自の政策と、それを支える情報機関が必要であるとの言は、その通りであり、米国では大統領が米国第一主義を標榜し、環境、経済分野での存在感を後退させ、一方であらゆる分野で強力な存在感をしめす中国があるという今日、本書を読むことにはなお意義があるのではないか。

  • 東2法経図・開架 391A/Ma29n//K

  • 以前出版されたハードカバー「情報と外交」の新書版。あらためて一読したが、外務省での国際情報局長、分析課長、ソ連・イラン・イラク大使館での勤務経験を踏まえたインテリジェンス経験論には、説得力抜群です。
    国内のインテリジェンス機関の拡充に関しても、単に拡充するのではなく、国益を考えて目的を明確にすることが大事というご意見にも賛同です。
    イラク戦争への是非に異議を唱えた故に、外務省から遠ざけられた著者の無念にも共感。故に、最近多数の著書出版やTwitterでの積極的なツイートをなされているのでしょう。
    巻末に示している"場の空気"論。正論を述べても、その場の空気が支配してしまう日本の体質は、体質(伝統的価値観)故になかなか変わらないのでしょうね。第二次世界大戦の敗戦で反省しているのにも関わらず…

  • 外務省で情報分野を中心に勤務し、駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を歴任した孫崎享氏が、情報分野をいかに考えるかというテーマを持ちながら執筆した回顧録で、2009年に出版された『情報と外交』を改題したものである。
    著者はまず、外交政策の立案において最も必要とされるのは「外部環境の把握」と「自己の能力の把握」で、この二つについていかに客観的で正確な情報を入手するかが極めて重要であるにもかかわらず、日本の外交においては、戦前も戦後も一貫して、「何がしたいか」という願望が先行して、外部環境の客観的な把握に失敗し続けてきたという。そして、近年の最大の外交問題のひとつである尖閣列島をめぐる問題においても、同様の道を辿ろうとしているかのように見えると警鐘を鳴らしている。
    本書で著者が振り返る事件と、そこから導かれる教訓は以下である。
    ◆「今日の分析は今日のもの、明日は豹変する」~イラン・イラク戦争(1980~88年)
    ◆「現場に行け、現場に聞け」~NATOのベオグラード空爆(1999年)
    ◆「情報のマフィアに入れ」~オイルショック(1973年)
    ◆「まず大国の優先順位を知れ」~ニクソン訪中(1971年)
    ◆「十五秒で話せ、一枚で報告せよ」
    ◆「スパイより盗聴」~ミッドウェー海戦(1942年)
    ◆「「知るべき人への」情報から「共有」の情報へ」~米国同時多発テロ事件(2001年)
    ◆「情報グループは政策グループと対立する宿命(かつ通常負ける)」~湾岸戦争(1991年)
    ◆「学べ、学べ、歴史も学べ」~日米貿易摩擦(1990年代)
    そして最後に、第二次世界大戦後、基本的に米国追従の外交政策をとってきた日本にとって、国際社会における相対的な米国の力の低下と中国の力の上昇という潮流の中で、日本の独自の国益のための独自の外交政策を考えなくてはならない時に来ており、そのためには情報収集機能の強化は不可欠であると結んでいる。
    著者の対米観や領土問題についてのスタンスには賛否があることも事実であるが、著者が本書で一貫して述べる、情報収集と分析の重要性は論を俟たないであろう。
    (2013年7月了)

  • 手にとったきっかけが定かで無い。

    フォーリン・アフェアーズを読むときは1)いま、なぜこの論文が出たか、2)この論文に従えば、米国はどのような政策を取る可能性があるか、3)それはいままでの政策とどう違うか、を見るべき
    アーネスト・メイ教授は「そのとき時の国際社会で最も力の強い国が、特定の地域情勢にいかなる利害をもち、どう関与していくかが最も重要な要因である」ことを説いた
    ・米国の動向を占う上で重要な研究機関、ランド研究所、シカゴ外交評議会、ハーバード大学
    ・分析はサマライズして15秒で話す。訓練すれば15秒で大抵のことは伝えられる
    ・SWOOPというサイトはCIAの元情報分析官等が運営していて、情報源として定評あり。
    ・CIAの対日工作については春名幹男著、CIAの対日工作が詳しい。
    ・選択 2009年5月号掲載の「麻生の威を借る亡国外務省」という論文について一言言いたい感じがにじみ出ている。

  • 著者が外務省勤務時代に感じた、日本のインテリジェンスが抱える問題や力不足を、ニクソン・ショックや湾岸戦争など各時代の背景を交えつつ語っていく。

    やや難しい内容でとっつきにくかった。
    それでも、情報に基づいて政策が立案されていくべきものを、日本においては日米同盟ありきの政策が先に来て、それを支援する情報のみが選別されていく、さらには誤った政策が露見した場合でも、担当部署の人間の責任は曖昧にされていく、という件は面白かった。

    著者がリベラル、かつ脱米国主義であることを念頭に起きつつ読んだが、国益という軸が定まらず、国家としての自立がなされていない以上、インテリジェンスという部署自体が必要とされない、という論も納得させられた。

    外交の話だけに限らず、とかく関心のない話題、不利な情報は過小評価してしまう傾向があるので気をつけたい。

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著者プロフィール

1943年、旧満州国鞍山生まれ。1966年、東京大学法学部中退、外務省入省。駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使等を歴任。著書『戦後史の正体』(創元社)、『日米同盟の正体』(講談社現代新書)、『小説 外務省』(現代書館)、鈴木邦男氏との共著『いま語らねばならない戦前史の真相』(現代書館)等多数。

「2018年 『アーネスト・サトウと倒幕の時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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