桜ほうさら

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  • PHP研究所
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レビュー : 348
  • Amazon.co.jp ・本 (605ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569810133

作品紹介・あらすじ

父の汚名をそそぎたい。そんな思いを胸に秘めた笙之介は…。人生の切なさ、ほろ苦さ、人々の温かさが心に沁みる物語。

感想・レビュー・書評

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  • 宮部みゆきの時代ものは最高だ。
    ①登場人物がいい。
    ②時は変われと人の悲しみ、喜びは変わらない
    ③生きていくことは大変だ、特に江戸時代、不作で飢饉、金があっても作物がなければ食べられない
    毎日の今日食べるものを、何とか得て暮らしている
    ④教わることが多い。
    例えば、本文より

    嘘というものは、釣り針に似ている
    釣り針ー返しがついている
    引っ掛けるには容易だが、なかなか抜けない
    刺さっている時より深く人を傷つけその心も
    抉ってしまう
    だから些細なつまらぬ嘘をついてはいけない一生突き通す覚悟を決めたときだけにしておきなさい。

    古橋笙之介の父
    古橋宗左衛門はあることから藩の取り調べを受ける
    賄賂を受け取った罪で、
    書いた覚えのない証文も宗右衛門の直筆であった。
    陥れられた。
    兄勝之助は温和な父を軽蔑し軽んじてた「母の影響もあるが」
    父と子の確執、兄、弟の確執
    とりわけ血肉を分けた争いほど悲しく酷いものはない
    どうしても許せない、理屈ではなく
    憎しみ!
    そこから始まる。

    笙の介の、江戸で暮らしが始まる

    お家騒動、藩騒動
    伏線はたくさんあった。

    村田屋治兵衛の世話になる
    村田屋は貸本であり、写本でアリ
    教本など写す
    今のように印刷もないし
    手で写す「名頭字尽」「伊呂波尽」「庭訓往来」「消息往来」
    算盤の教本「日用塵劫記」「比売鑑」「和俗童子訓」「御伽草子」「化け物草紙」そんな仕事を上負わせてもらう

    題名の「桜ほうさら」は

    そえさんの甲州でささらほうさらというんだよ。
    「ささらほうさら」ーあれこれいろんなことがあって大変だ。という。

    とにかく
    いろいろあって大変だし
    飽きることがなく読みづつけた。
    仕掛けはいくつもあった「凄い構成」


    最後は
    人間って哀れでどうしょうもなくて
    笙之介を思い泣けて、
    また愚かな勝之助にもどうしょうもなく


    ー 人の心は揺れ動くものだし、何かの拍子にころりと変わることもある
    明け方にはこれが正しいと信じていたものが
    夕べには色あせて見えることもある ー

    うちら本好きは多分村田屋さんに
    入り浸って
    あの本読んだりいろいろしてるけど
    先立つものがない暮らしだとそうはいかない、
    やはり現代の方が恵まれてますよね。

    宮部みゆきの時代物にどハマりすると
    こんな凄いものが他にあるだろうかと思う。
    まだまだ言いたいことだらけ
    誰も見てくれないよね「だらだらと」

  • 宮部みゆきの時代物、今回は少し悲しくて可哀想だが終わりには救いもある物語。小さな貧しい藩トウガネ藩で生まれ育った笙之介が主人公で、冤罪で父を失くし一家は離散して ゆえあって江戸で暮らすことに。剣の腕前はからっきしだけど書の腕ならばそこそこの彼を取り巻く人々がみな個性的で魅力的な設定。さて草食系男子の笙之介が遭遇して行く出来事や如何に?! 605ページの厚さも苦にならずスイスイ楽しく読了しました♪

  • 地方の下級武士の家の次男坊が、藩内の謀りごとに巻き込まれて江戸に出て来る。
    家族の中の亀裂は根深い。価値観の違う父と母、そして真っ二つに分かれた兄と弟。
    こう言う対立は現代でもよくありそうだけど、武士の世の中では考えの違いが際立つし、相容れない者を切って捨てるってなるのは過激。

    写本の仕事をしながら様々な出会いを糧に成長してゆく主人公。
    取り巻く人々は様々で多様な問題を抱えているが、それをまとめてラストに収束させていく宮部さんの力量はさすが!

    アザと見紛う肌荒れ体質で引きこもっているが、なお勝気で明るい和香が印象的。

    文字には書いた人の性格やその時の気分までもが出ると何回も強調されるが、他人の書を丸ごとそっくりに書ける人間には己が無く中身が空洞なのではないかという問いかけにはちょっとゾッとする。
    今紙に文字を書く事が減ってきているが、現代人の中身は段々無くなっていくのかも(苦笑)

    最後どうしても分かり合えなかった兄は、実は一番気の毒な人間だった。自分の間違いを認める事も出来ず、全てを他人のせいにして何もかもを恨み続ける。
    そして中身の空洞な人間になって行くのかもしれない。

  • 久しぶりに再読。

    これってお初出てくるっけ?ってまた霊験お初と勘違い。
    脳細胞の死滅スピードの速さをヒシヒシと感じる。

    総州搗根(とうがね)藩とは千葉県東金市辺りのことなのかな。
    貧しい小藩の下級武士の次男古橋笙之介の父が書いた賄賂の証文が見つかり、父は切腹した。しかし、生前父はその証文には全く覚えが無い、自分が書いた物ではない、しかしどう見ても自分の字である…と言っていた。
    この偽字を書く者を捉えて父の汚名を雪ぎたい、と思いを募らせる笙之介と、この偽字を書く者を捉えねば、藩のお家騒動に繋がると憂いた留守居役坂崎重秀。
    坂崎は笙之介を江戸に呼び寄せ、写本の仕事をさせながら件の偽字を書く者を探させる。

    1章の「富勘長屋」と4章の「桜ほうさら」で本筋の偽字ミステリーの序段と結末を、間の2章の「三八野愛郷録」では雁字ミステリー、3章の拐かしでは投げ文ミステリーをそれぞれ本流にし、裏に本筋の偽字ミステリーが流れる。

     心に残った笙之介の父が語ったフレーズ。

    ー嘘というのものはな、笙之介、こういう形をしておる。
    釣り針に似ている、と言った。土いじりは好きだが釣りにはとんと縁のない人なのに。
    ー釣り針の先には、魚の口に引っかかったら容易に外れぬように、返がついている。嘘というものにも、返しがついている。
    だから人を引っかけるには容易だが、一度引っかかったらなかなか抜けない。自分の心に引っかけるのも容易だが、やはり一度引っかかったらなかなか抜けない。
    ーそれでも抜こうと思うならば、ただ刺さっているときよりもさらに深く人を傷つけ、己の心も抉ってしまう。


    どれも人情がらみで、さすが宮部さんだなぁと唸る深さがある。2019.12.21

  • 宮部さんの長編時代小説。
    藩での騒動もありますが、主に人情ものかな‥
    タイトルは、甲州では、色々あって大変なことを「ささらほうさら」ということから。

    故郷を離れ、江戸の長屋で暮らす古橋笙之介。
    長屋から見える桜の木の下に、珍しい切り髪の若い娘を見かけます。
    桜の精のように不思議なそのひとは‥
    ロマンチックな出会いです。

    笙之介の父は、小藩の小納戸役でしたが、収賄を疑われて自刃。
    まじめなのが取り得の実直な父が、そんなことをしたはずがない。
    家族はばらばら、文武両道の兄は預かりの身となったのです。
    父自身にも自分で書いたとしか思えないほど字が似ていた書状。偽の証拠を作った犯人を捜そうと江戸に出ることに。

    江戸留守居役の東谷の紹介で、笙之介は貸本の村田屋の写本を作る仕事をしているのでした。
    字を真似るのが巧みな人物を探すために。
    ある日、押込御免郎という作家が書いたどぎつい話をもっと読みやすく売れるよう書き直してくれと頼まれ、笙之介はしぶしぶ取り掛かります。

    料亭の絵を立体的に作ることが出来る起こし絵に興味を抱いたり。
    桜の精のような女性は、和田屋の娘・和香。
    事情があって家にこもりがちだった和香もアイデアを出したり、だんだんと協力する仲に。

    将来を嘱望されていた兄に比べて、武道はからきしで特に優れたところがなく、誇り高い母には見放されていた笙之介。
    気のいい青年が、さりげなく誠実に周りと関わっていき、しだいに居場所を見つけていきます。
    長屋に生きる人々も、存在感があります。
    タイトルの響きほどは、ほのぼのした話じゃないけれど。
    巻き込まれる事件にもこの時代ならではの特色があって、しだいに繋がってもいき、さすが宮部さんと思わせます。

  • 賄賂の罪を着せられ、腹を切らされた父。
    その父を蔑み、憎むような態度をとる母と兄。

    主人公の笙之介は、行き場をなくし、ある使命を持って江戸へ赴く。
    浪人の身ではあるが、写本作りの仕事を請負いながら何とかその日暮らしをしている。
    剣術はからきしダメだし、長屋の皆にも酷い言われようだけど、優しい、皆から愛される若者だ。

    その脇を固める登場人物もステキ。
    東谷様。
    何か抱えている書物問屋の治兵衛。
    差配人の富勘さんに長屋の面々。特に太一。
    そして、賢くて気が強くてかわいらしい和田屋の和香。
    頼りになる武部先生。
    そして、笙之介の父の言葉がすごく心に残る。
    嘘は釣り針の形をしている。
    返しがついていて、まんまとはまっても、いざ抜こうとするともっと苦しむことになる。
    だから、嘘をつくのなら一生つき通そうという覚悟を持ってしなさいよ。というようなもの。

    皆、何か抱えながらも真っ直ぐに強く生きている。
    だけど、何処かで捩れてしまう人もいる。
    それが家族となると、より一層酷くこんがらかってしまうこともあって…。

    家族だからこそ憎い。
    家族だからこそ許せない。

    それが悲しかった。
    何故そこまで…と。

    あまりにも悲しい真相だったけれど、ささらほうさらであったなぁと言える笙之介は強い人だとも思った。
    本当はその胸の裡には色々あるだろうけれど。
    和香さんとそれを癒していってほしいなと思います。

  • いろんな事に悩んで迷って蹴躓いて倒れても、
    最後に「ささらほうさらな一年だったね」と笑えて立ち上がれたらちょっと素敵な年になる。

  • 小さな藩の跡目争いの渦に巻き込まれて父を失い江戸に出て来た笙之介は、剣術は苦手ながら学問はこつこつとする実直な青年。収賄のぬれ衣を着せられ、切腹して果てた父の無罪を信じ、多勢の人に助けられながらお国の江戸留守居役から命じられるままに、貸本家の写本作りを隠れ蓑にして、父をおとし入れた偽の文書書き、代書家を探しています。代書家探しとお国の跡目争いを縦糸にしつつ、江戸での暮らしの中で起こるあれこれの騒動をひとつずつ横糸で繋いで、最後にはいろいろ切ないこともありつつも全ての謎が解かれてスッキリ。辛いこと悲しいこと酷いこともあれど、ちゃんと救いもあって、大変面白かったです。宮部さんの時代物にはずれなし。

  • 2014年3月2日読了。

    人と人の絆の大切さを改めて感じた作品。

    笙之介とその周りに住まう人達は、家族だろうが
    友達だろうが恋人だろうが、例え他人だろうが、
    「人」の為に行動する。

    助けたい、幸せになってもらいたい・・・そんな想いを
    込めて。

    そんな風に、誰かを想い行動する人間たちに、とても
    大きな愛情を抱いた作品でした。

    その分、笙之介の母と兄には嫌悪感しか抱かなかった。
    だって、笙之介の父があまりにも不憫すぎる。
    正直、この二人にはもっと、自分がした事の罪の大きさを
    自覚するような目に遭って欲しかった。

    ところで、この作品は全てのページに桜模様が施されて
    いて、それがとても綺麗でした(^^)

  • 宮部さんの江戸時代ものはなんだか温かくて大好きです。
    今回も、一生懸命日々生きる人たちの姿が描かれていて、癒されました。
    笙之介と和香のほのかな恋心がとっても可愛いです。
    足りないものを補い合って、一緒にいることでよくなっていく二人はピッタリだなあと思います。
    そして、周りの人達も温かい。
    長屋のみんなも、富勘も武部先生も治兵衛も東谷も梨枝もいい。
    (東谷さんと梨枝さんの関係が気になる私です)

    お兄さんが可哀想だったなあ。
    お兄さんの周りには、笙之介のまわりにいるような人がいてくれるんだろうか?
    和香が言った、「お互いに見分けがつかないくらい、すっかり変わっているといい」という言葉がしみました。

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

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