桜ほうさら

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  • PHP研究所
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レビュー : 335
  • Amazon.co.jp ・本 (605ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569810133

作品紹介・あらすじ

父の汚名をそそぎたい。そんな思いを胸に秘めた笙之介は…。人生の切なさ、ほろ苦さ、人々の温かさが心に沁みる物語。

感想・レビュー・書評

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  • 宮部さんの長編時代小説。
    藩での騒動もありますが、主に人情ものかな‥
    タイトルは、甲州では、色々あって大変なことを「ささらほうさら」ということから。

    故郷を離れ、江戸の長屋で暮らす古橋笙之介。
    長屋から見える桜の木の下に、珍しい切り髪の若い娘を見かけます。
    桜の精のように不思議なそのひとは‥
    ロマンチックな出会いです。

    笙之介の父は、小藩の小納戸役でしたが、収賄を疑われて自刃。
    まじめなのが取り得の実直な父が、そんなことをしたはずがない。
    家族はばらばら、文武両道の兄は預かりの身となったのです。
    父自身にも自分で書いたとしか思えないほど字が似ていた書状。偽の証拠を作った犯人を捜そうと江戸に出ることに。

    江戸留守居役の東谷の紹介で、笙之介は貸本の村田屋の写本を作る仕事をしているのでした。
    字を真似るのが巧みな人物を探すために。
    ある日、押込御免郎という作家が書いたどぎつい話をもっと読みやすく売れるよう書き直してくれと頼まれ、笙之介はしぶしぶ取り掛かります。

    料亭の絵を立体的に作ることが出来る起こし絵に興味を抱いたり。
    桜の精のような女性は、和田屋の娘・和香。
    事情があって家にこもりがちだった和香もアイデアを出したり、だんだんと協力する仲に。

    将来を嘱望されていた兄に比べて、武道はからきしで特に優れたところがなく、誇り高い母には見放されていた笙之介。
    気のいい青年が、さりげなく誠実に周りと関わっていき、しだいに居場所を見つけていきます。
    長屋に生きる人々も、存在感があります。
    タイトルの響きほどは、ほのぼのした話じゃないけれど。
    巻き込まれる事件にもこの時代ならではの特色があって、しだいに繋がってもいき、さすが宮部さんと思わせます。

  • 賄賂の罪を着せられ、腹を切らされた父。
    その父を蔑み、憎むような態度をとる母と兄。

    主人公の笙之介は、行き場をなくし、ある使命を持って江戸へ赴く。
    浪人の身ではあるが、写本作りの仕事を請負いながら何とかその日暮らしをしている。
    剣術はからきしダメだし、長屋の皆にも酷い言われようだけど、優しい、皆から愛される若者だ。

    その脇を固める登場人物もステキ。
    東谷様。
    何か抱えている書物問屋の治兵衛。
    差配人の富勘さんに長屋の面々。特に太一。
    そして、賢くて気が強くてかわいらしい和田屋の和香。
    頼りになる武部先生。
    そして、笙之介の父の言葉がすごく心に残る。
    嘘は釣り針の形をしている。
    返しがついていて、まんまとはまっても、いざ抜こうとするともっと苦しむことになる。
    だから、嘘をつくのなら一生つき通そうという覚悟を持ってしなさいよ。というようなもの。

    皆、何か抱えながらも真っ直ぐに強く生きている。
    だけど、何処かで捩れてしまう人もいる。
    それが家族となると、より一層酷くこんがらかってしまうこともあって…。

    家族だからこそ憎い。
    家族だからこそ許せない。

    それが悲しかった。
    何故そこまで…と。

    あまりにも悲しい真相だったけれど、ささらほうさらであったなぁと言える笙之介は強い人だとも思った。
    本当はその胸の裡には色々あるだろうけれど。
    和香さんとそれを癒していってほしいなと思います。

  • いろんな事に悩んで迷って蹴躓いて倒れても、
    最後に「ささらほうさらな一年だったね」と笑えて立ち上がれたらちょっと素敵な年になる。

  • 小さな藩の跡目争いの渦に巻き込まれて父を失い江戸に出て来た笙之介は、剣術は苦手ながら学問はこつこつとする実直な青年。収賄のぬれ衣を着せられ、切腹して果てた父の無罪を信じ、多勢の人に助けられながらお国の江戸留守居役から命じられるままに、貸本家の写本作りを隠れ蓑にして、父をおとし入れた偽の文書書き、代書家を探しています。代書家探しとお国の跡目争いを縦糸にしつつ、江戸での暮らしの中で起こるあれこれの騒動をひとつずつ横糸で繋いで、最後にはいろいろ切ないこともありつつも全ての謎が解かれてスッキリ。辛いこと悲しいこと酷いこともあれど、ちゃんと救いもあって、大変面白かったです。宮部さんの時代物にはずれなし。

  • 2014年3月2日読了。

    人と人の絆の大切さを改めて感じた作品。

    笙之介とその周りに住まう人達は、家族だろうが
    友達だろうが恋人だろうが、例え他人だろうが、
    「人」の為に行動する。

    助けたい、幸せになってもらいたい・・・そんな想いを
    込めて。

    そんな風に、誰かを想い行動する人間たちに、とても
    大きな愛情を抱いた作品でした。

    その分、笙之介の母と兄には嫌悪感しか抱かなかった。
    だって、笙之介の父があまりにも不憫すぎる。
    正直、この二人にはもっと、自分がした事の罪の大きさを
    自覚するような目に遭って欲しかった。

    ところで、この作品は全てのページに桜模様が施されて
    いて、それがとても綺麗でした(^^)

  • 宮部さんの江戸時代ものはなんだか温かくて大好きです。
    今回も、一生懸命日々生きる人たちの姿が描かれていて、癒されました。
    笙之介と和香のほのかな恋心がとっても可愛いです。
    足りないものを補い合って、一緒にいることでよくなっていく二人はピッタリだなあと思います。
    そして、周りの人達も温かい。
    長屋のみんなも、富勘も武部先生も治兵衛も東谷も梨枝もいい。
    (東谷さんと梨枝さんの関係が気になる私です)

    お兄さんが可哀想だったなあ。
    お兄さんの周りには、笙之介のまわりにいるような人がいてくれるんだろうか?
    和香が言った、「お互いに見分けがつかないくらい、すっかり変わっているといい」という言葉がしみました。

  • やっぱり宮部みゆき、いいなあ〜( ̄ー ̄)。読み終えるのがもったいなくて、3夜かけてゆっくり読みました。今作は黒宮部さんがほぼ影を潜めており(笑)、優しくて切ない余韻の、いいお話。でもしっかりミステリなあたりが、さすがです。

    笙之介の父のキャラクターが大好き。妻には物足りなかったのだろうけど、しっかり地に足をつけている、思いやり深い人物。それだけに、その最期があまりに哀しい(T_T)。でもその心は、きっと笙之介に受け継がれるのだ。

    おきゃんな和香ちゃんもカワイイ。のんびりな笙之介といいコンビ。ふたりで幸せになってくれるといいなあ。そして、長屋の太一くんがサイコーにいい。さすが宮部みゆき、少年書かせたら天下一品です!朴念仁のくだりは、くすくす笑いが止まらなかった。

    他にも、治兵衛さんとか東谷さま、おつたや川扇の女将、三八野藩のお侍…魅力的な人物がたくさん。時間をおいて、またゆっくり読み返したいものです。

  • 読みはじめは、江戸時代の小さな藩での出来事に
    理解するのにちょっと時間がかかったのですが
    江戸に物語がうつってからは
    次々とは起こるけれども、物騒ではない事柄に
    ほんわかとしながら読み進めていました
    昔の甲州韮崎で「ささらほうさら」という
    あれこれいろんなことがあって大変だ、大騒ぎだ
    というようなときにいうことばがあるそうです
    そのことばと、桜の季節にであった人との話をからめて
    『桜ほうさら』という題名はきれいなことばだと思います
    物語が後半になり、やはり宮部作品
    ぐっと胸に突き刺さる、やるせない落ちどころとなり
    涙を流しながら、読み終わりました
    宮部さんの江戸ものは、やっぱり好きだなぁと改めて思う
    表紙のきれいな桃色と可愛らしいイラスト、
    小説だけれども、ずっと桜の花びらが散る絵がついて
    内容にあったイラストもついて、楽しませてもらいました

    • hongoh-遊民さん
      宮部みゆきの新作というので注目はしていたのですが、keroruuさんのレビューをさっそく、読んで読みたくなりました。
      宮部みゆきの新作というので注目はしていたのですが、keroruuさんのレビューをさっそく、読んで読みたくなりました。
      2013/04/28
    • keroruuさん
      hongoh-遊民さん
      是非、読んで感想を聞かせてください
      hongoh-遊民さん
      是非、読んで感想を聞かせてください
      2013/04/29
  • (No.13-17) 時代小説です。

    『上総生まれの古橋笙之介(ふるはししょうのすけ)が、江戸・冨勘長屋に住んでいるのには理由がある。長屋の住人たちは、笙之介を浪人だと思っているが・・・。
    藩の中でくすぶるお家騒動。その前哨戦に巻き込まれた古橋家。遠縁の江戸留守居役が笙之介を江戸に呼び、きっかけになった偽文書を作った人物を探すという任務を与えてくれた。
    おそらく江戸にいるだろうその人物を探すため、文書や書物に関わる人達につながりを求める。という理由で貸し本屋を営む村田屋治兵衛から、写本作りを請け負う仕事を始めてからそろそろ半年。手がかりらしいものには全く巡りあえずにいる笙之介だった。』

    笙之介は剣術はまるでダメ、ちょっとぬけているけれど気が優しい青年です。
    母は笙之介の兄に期待をかけていて、笙之介のことは気にとめていませんでした。笙之介もよく似ていた父のことは好きでしたが、きつい母とは気持ちが通い合わないままでした。
    そういうギクシャクした親子関係が、この物語の中で他にも出てきます。自分の思いをぶつけ合うことで分かり合える人達もあれば、すれ違ったままになることも。

    長屋を中心にした庶民たちの事件と、幕府から見たら問題にもならない小さい藩のお家騒動が平行して語られます。
    辛い思いをしながらも優しさを失わない笙之介、引きこもっていた少女、長屋の子どもたちなどが、短い間にもぐんと成長していくことが感じられてとても良かったです。

    全体的にはかなりビター。人も死にます。でも希望が持てるラストで、しみじみした読後感でした。

    私は宮部作品の中では時代物が好きです。
    宮部さんの時代物にはオカルトっぽいものがありますが、この本はあやかしは出てきません。

    題名も表紙も桜、今の季節に読むのに最適です!

  • ようやく読めた。このタイミングで読んでよかったと思った。
    よく「子どもは親を選べない」という。だから親はしっかりしなさいという叱咤に使われることもあるし、だからどんな親でも執着してしまうのだという悲しみにも使われる。
    でも、親だって生まれてくる子どもを選べない。どんなタイプの人間が出てくるのか、親だってわからないのだ。
    笙之介の母親里江は浅はかな女として描かれているが、彼女にしてみれば、三度目の夫に対する不満、長男はともかく、夫に似た次男に対するいらだちは、選べなかったからこその不満であり苛立ちなのではなかろうか。
    この物語の舞台である江戸時代の武家では、女に夫を選ぶ権利がない。
    そんな中で、己の本性とかけ離れた相手と夫婦にならなければならなかった里江の悔しさはいかばかりであっただろうか。
    第三話で出てくるお吉だって、母親との価値観の違い、感じ方の違いに苦しんだんだと思う。血のつながりがないことで若干めくらましをされているが、これが実の親子であったとしても、どうしようもなく相性の悪い組み合わせになることだってあるのだ。
    そこを「親子だから」という人情論で押し切ろうとするから、ほころびが出る。

    たまたま自分が書いた芝居が似たようなモチーフを扱っていたため、非常に興味深かった。
    親の心子知らずというが、子の心親知らずでもあるのだ。
    人の心の行く末、ねじれ、受け止め方というのは、実に千差万別なのだなあと改めて思う。
    笙之介の兄、勝之介に絡みついた愛憎が切ない。

    それにしても、武士の出てくる時代物を読むたびに思うのだが、武家社会というのはとてつもなく醜悪で歪んだ価値観で構築されていたものだ。武士の面目、存在意義、どれをとっても、無理ばかり目立つ。
    時代物があまり好きでないのはその無理矢理な価値観に沿って人が苦しむさまが目に付くからなのだ。

    主人公は笙之介なのだが、読み終わって印象に残るのは、彼の母であり、兄であり、押込御免郎である。彼らのような人間は実はたくさんいる。本作では相当悪くてしょうもない人間として描かれているが、立場を変えてみれば、笙之介のような優柔不断で弱虫で軟弱な人間のほうが非難されてもおかしくない。というか実際にはそのほうが多いのではないか。

    安直なハッピーエンドではないだけに、読み終わったあともいろいろなことを考えてしまう。とても読み応えのある物語だった。

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

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