夢幻花(むげんばな)

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  • PHP研究所
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レビュー : 730
  • Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569811543

作品紹介・あらすじ

黄色いアサガオだけは追いかけるな――。この世に存在しない禁断の花をめぐり、驚愕の真相が明らかになっていく長編ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 不審な死に、幻の花が絡む事件を若い二人が追います。
    冒頭のいくつかのシーンが全然結びつかず、ええ?と引き込まれます。

    50年前、平和な一家を襲った通り魔事件。
    蒲生蒼太の中学のときの初恋。
    そして現代、秋山梨乃は従兄が自殺したと知らせを受ける‥
    妻子とは別居して4年の早瀬刑事。息子のことで急に呼び出されるが?

    秋山梨乃は水泳選手として有名だったが、ある日突然病気になり、原因不明のまま泳ぐことが出来なくなっていました。
    花が好きな祖父のために、代わりにブログを作るようになり、祖父の元を時々訪れていたのですが。
    ところが祖父が事件に遭い、ショックを受けます。

    蒲生蒼太は大学院にいますが、原子力が専攻なので、就職が難しくなり、悩んでいました。
    年の離れた異母兄の要介はどこかよそよそしく、子供の頃から家の中に何か壁があると感じていた蒼太。
    要介を訪ねてきた秋山梨乃と出会い、黄色いアサガオの写真を見て、興味を惹かれます。
    思わぬ関わりが気になり、一緒に調べて歩くと、さらに‥?

    誘惑に負けて、危険なものに手を出してしまった人。
    善意のまま行動していただけなのに、巻き込まれてしまった人たち。
    負の遺産を引き継ぎ、出来る警戒を続けようと決めた家族‥

    途中からは大体の関連がわかってきますが、次々に起こることに目を奪われていて気づかなかった点もあり、あっ、なるほど‥と。
    最後は勇気をもらえるような、感動的な結末でした。

    2002年~2004年の連載を元に書き下ろし、2013年に発行されたもの。
    3.11以後に、新たな決意を持って書かれたということですね。

  • 最初はぼんやりとした丸いものが
    少しずつ見えてくる。

    「どうですか?わかりますか?」
    「いいえ。」
    「これならどうですか?」

    「…。あ、気球…かな?!」
    「はい、OKです。」
    速攻、ぷちん。

    (あっ…!!)←と、声が出そうになる。(^^;

    眼科検診で使われる写真は
    綺麗な風景モノが多いので、(もっと眺めていたいのに…)なんて、つい思ってしまう。

    この『夢幻花』を読んでいて
    何故か視力検査の事を思い出した、というのは
    最初、あまりにも縦(時間)横(登場人物の関わり)に広がりすぎていて
    ぼんやりしていた背景が
    (どうですか?)
    (これならどうですか?)
    と、少しずつクリアに見えてくる感覚が似ていたから。

    物語で使われていた写真は
    色鮮やかな黄色い朝顔であった。

    ぷちん、と無情に消される心配もなく
    読み終えてもしばらく目の奥に映ってる朝顔が
    この胸にもたらしたものは単純な美しさばかりではない。

    この地で花咲くことを許されなかった悲運の花と、
    生まれた時から、選択肢のない道を歩まねばならなかった人達の苦難が、この物語から色を消し、立ち向かう覚悟が再び光を呼んだ。

    そんな美しい光景を
    しばらく眺めていられる幸運に、ゆ~っくり浸れて幸せな読後だった♪

  • 「この先立ち入り禁止」の先に何があるのか、
    「見るべからず」にはなにが記されているのか。

    人の心は不思議なもので、禁止されると知りたくなってしまいます。
    「知らなければよかった」と思っても後の祭り。
    知るまでは好奇心を押さえられないのは人間の性なのか。

    そんな「決して追ってはいけない」夢幻花―存在しないはずの黄色いアサガオを巡る本格ミステリです。

    冒頭で唐突に提示される2つのエピソードと、それに続くストーリー。
    ばらばらに散らばっているかのようなパズルのピースが最終的にきちっと1枚の絵を作るところは圧巻です。
    そしてその絵を見たときに、読者ははっとさせられます。

    この本が10年も経って今、世に出ることに非常に意味があると思える作品。
    本には読むべきタイミングがあると思っているのですが、
    「天空の蜂」と並んで、今だから余計に響く。

    もともと響かなければいけない言葉なのに、
    以前であればどこか他人事のように感じてしまっていたと思います。
    痛みを知って初めて響く。後悔して初めて気づく。
    誰しもが持っている、そんな心。
    それは人の性と片づけてしまってはいけないと痛感します。
    過ぎてしまったことは仕方がないけれど、今ここにある現実は受け止めなければいけないこと。
    向き合い、考えること。そんな大切さを改めて考えさせられました。

  • 『夢幻花(むげんばな)』のこと……
    以下、東野圭吾さんからのメッセージです。

    『歴史街道』から小説連載の依頼がきた時、「私に歴史ものは無理です」と断りました。すると編集者は、歴史ものでなくても、何かちょっとでも歴史に関係する部分があればいいといいます。そこで思いついたのが黄色いアサガオでした。御存じの方も多いと思いますが、アサガオに黄色い花はありません。しかし江戸時代には存在したのです。ではなぜ今は存在しないのか。人工的に蘇らせることは不可能なのか。そのように考えていくと、徐々にミステリの香りが立ち上ってきました。面白い素材かもしれないと思えてきました。

    ところが素材は良くても料理人の腕が悪ければ話になりません。何とか連載は終えましたが、あまりにも難点が多すぎて、とても単行本にできる代物ではありませんでした。おまけに、ずるずると出版を引き延ばしているうちに小説中の科学情報が古くなってしまい、ストーリー自体が成立しなくなるという有様です。しかし担当編集者には、「何年かかってでも必ず仕上げます」と約束しました。「お蔵入り」だけは絶対に避けたかったのです。

    結局、「黄色いアサガオ」というキーワードだけを残し、全面的に書き直すことになりました。もし連載中に読んでいた方がいれば、本書を読んでびっくりされることでしょう。

    しかし書き直したことで、十年前ではなく、今の時代に出す意味が生じたのではないかと考えています。その理由は、本書を読んでいただければわかると思います。

  • 久々に、東野圭吾さんのミステリーを読みました。
    2つのプロローグがどんなふうにつながっていくのか・・・
    最後まで楽しませてもらいました。

    かつての悲劇からいったんはほぐれた糸が再び絡まる。
    その先に待ち受ける悲劇。

    誰かが背負わなければならない負の遺産。
    それを自分の使命として受け入れられるのか・・・
    自分自身では気づかない自分にしかできないこと。
    それもまた自分に与えられた使命かもしれない。
    一人一人に与えられた使命、背負った運命。

  • つづけて最近の作品が手元に来てくれてうれしい。

    「島はぼくらと」しかり、3・11後に執筆された作品では、
    触れずにいられないのだなぁ。
    これは10年ほど前の連載をもとに書き下ろされた作品だそうけど
    主人公の大学院生が原子力工学を専攻している設定は、今だから書かれたものなのだろう。
    本筋には直接関係ないけど、最終的に主人公にとって大きく関わる部分なので
    このお話の印象自体がだいぶ変わったのではないかなと思いました。
    でもそこがとてもよかったです。
    負の遺産を、誰かが引き受けるしかない。忘れずにいよう。
    (そういえば、オリンピックの水泳選手というのも「島はぼくらと」と同じだな!)

    現代には存在し得ない「黄色いアサガオ」につながる殺人事件を追っているうちに、
    いろんな過去や人間関係も紐解かれていきます。
    東野圭吾お得意の理系ミステリーだけど、今度は植物かぁ。
    この人どんな題材でも書くな、すごい。

    一気に読んでしまうけど、東野作品は平均点が高すぎるだけに
    ミステリー的にはまぁまぁな感じ。(すみません)
    でもさすがお見事です。間違いなくおもしろいもの。
    黄色いアサガオ、気になって検索してしまいましたよ。

    なかなか和風でちょっとレトロな雰囲気がしました。
    おじいちゃんがいいんだよな。
    べったり暑い日本の夏によいですな。

  • ひさびさの東野圭吾さん。
    話の展開、登場人物の躍動は面白かったです。

    ショッキングな出だし。
    ぐぐぅーと時間が過ぎ去り、主人公の幼き淡い頃に。
    そして今へと...

    伏線を張り巡らせながらの回収も良かった。
    ミステリーでありがちな強引な畳み方を東野さんもして残念な時があるけど、本作は違った。
    良い余韻に浸りながら畳んでくれた。

    主人公の決断はあっちに行くかな〜と思ってたら、カッコ良く締めてくれました。
    ほんのり甘い後味を残して。

    面白かったです。

  • 次々と登場人物が出て、時間軸と場所も移行し、事件や出来事が連鎖的に起こるなかで、何がどう繋がるんだろう?と思いながら読み進め…徐々に明らかになる謎。タイトルの意味。虚無感を抱えて、負に向き合えず、運命を背負う覚悟ができずに手を出してしまう人々と対極的に負の遺産を義務付けされた一族の熱くほとばしる責任感は対照的だ。

    そして原発について。「天空の蜂」で著者の先見の明と意見を感じた。本作でも著者なりの考えを主張してる。始めてしまったのだから、どう処理するか。そこにも、技術が必要だ 。と、改めて認識する。

  • 胃腸炎で一日中寝込んでいる間に一気読み。
    先が気になり、とても途中でやめられない作品だったので、悲しいかな丁度良かったといえば良かった。
    事前情報で「原発」というキーワードが頭に入っていたため、勝手に全く違うストーリーを想像しながら読んでしまっていたのは大失敗。

  • ショッキングなプロローグから始まり、過去から現在へと、
    上手く張られた伏線が回収され、点と点が線へと繋がっていく、
    綺麗にまとまったミステリ。

    様々な事件や、エピソードに、何故?何故?と、
    ついついページを捲ってしまい、一気読み。
    そして最後に、あぁ著者のテーマはここだったかと、納得。

    「負の遺産」はまだまだ国民全体で考えていかなければならない。
    そんな社会への投げかけをひしひしと感じた。

    前向きで明るい読後感が好印象。

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著者プロフィール

東野圭吾(ひがしの けいご)
1958年大阪市生野区生まれ。大阪府立大学工学部電気工学科卒。大学在学中はアーチェリー部主将を務める。1981年に日本電装株式会社(現デンソー)にエンジニアとして入社し、勤務の傍ら推理小説を執筆する。1985年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、小説家としてのキャリアをスタート。2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木三十五賞を受賞。2013年『夢幻花』では第26回柴田錬三郎賞を受賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞受賞。現在、直木三十五賞選考委員を務めている。代表作としてガリレオ・新参者シリーズに加え、映画化された『手紙』『ラプラスの魔女』。ほかにもテレビドラマ・映画化された作品が多い。2018-19年の作品では、『人魚の眠る家』、『マスカレード・ホテル』、『ダイイング・アイ』、そして今後の映画化作として玉森裕太、吉岡里帆、染谷将太らの共演作『パラレルワールド・ラブストーリー』(2019年5月31日映画公開)がある。なお、中国で『ナミヤ雑貨店の奇蹟-再生-』が舞台化・映画化され、映画はジャッキー・チェンが西田敏行と同じ雑貨店店主役で出演する。2019年7月5日、「令和」初の最新書き下ろし長編ミステリー『希望の糸』を刊行。

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