日本で働くのは本当に損なのか (PHPビジネス新書)

著者 :
  • PHP研究所
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感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569815022

作品紹介・あらすじ

なぜ日本では上司が部下の面倒を見るのか? なぜ日本では転職が少ないのか? 長年、雇用問題を追いかけてきた著者の集大成となる一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 日本と欧米の労働雇用の慣習について、これほど的確に違いを描き出している本ははじめてあった。日本では異動をつづけながら適材適所を探していくという特徴、それゆえに酒屋での会社の愚痴も日本と欧米で違ってくるというのは面白かった。間違いなく良書だと思う。

  • 明快な論旨である。

    ヨーロッパで一般的な就職時に数%のエリートと非エリートが分かれる就業形態:非エリートは昇給も(一定年齢以降は)転職も殆ど無い代わり、ワーク・ライフバランスが保てる。企業はベテランを安く使えるので、若年層の失業率が高い。エリートは、高学歴が必要、若くして早く昇給し、高い報酬を得ることができる。労働時間は長く、育児などはアウトソースする傾向。家庭生活への満足度は低い。

    日本の誰でもエリートになれるシステム:2、3年で熟練するような単純作業が中心の業種を除き、誰でも頑張れば課長くらいまで昇進する可能性がある。若年層を大量採用するので、若年失業率は低い。全員が、頑張ることが期待されているため、ワーク・ライフバランスは壊れやすい。女性は出産・育児との両立が困難。

  • 雇用の専門家による、日本と欧米の雇用システムについての研究書。年功序列型雇用や正規労働者への優遇が批判されているが、欧米のシステムと比較しての多くの批判に誤りの多いことを指摘している。説明が質問・回答方式となっておりわかりやすい。説明も丁寧である。ただ、素人でもわかるよう容易に理解できることに重点が置かれているため、データの提示や根拠となる他の研究の紹介が少なく、研究所としてはやや物足りなかった。
    「統計データを見ると、かなり昔から、中卒は3年で7割、高卒なら3年で5割、大卒でもやはり3年で3割辞めるという状況が続いてきたのです」p6
    「日本の雇用の特徴:1 給与は「仕事」ではなく「人」で決まる 2 正社員とは誰もが幹部候補であり、原則、出世していく」p8
    「日本では、ポストがなくても能力アップすれば給料が上がる。だから、社内で地道に能力アップに励む。欧米だと、ポストがない限り、給料は上がらない。だからポストが埋まっていれば、それを求めて外に出る」p22
    「最近は、役職者になれる割合は減っているといいますが、それでも、大学を卒業した人たちなら、そのほとんどが40歳代には係長になり、50歳くらいでは、6割以上が課長になっています。賃金構造基本統計調査の数字でも、この傾向は示せます」p116
    「欧米型雇用の年代的な問題は「若年層に仕事がない」こと。日本型雇用の年代的問題は「働かない高給な熟年が多い」こと」p122
    「(受け皿となっていた農・工・建設・自営業の縮小により)今の若者たちは、まず、対人コミュニケーションを要求されます。人付き合いが苦手という人には、極端に生きづらい環境になります」p136
    「誰でも昇進昇格が当たり前、と考える日本人特有のキャリア観は、世界ではとても異端なのです。欧米では「階段を上る少数エリート」と「ヒラのままの大多数」の2層に分かれています」p158
    「長期熟練を保つためには、長い修行に耐える見返りとして、年功昇給が用意されていなければならない」p176

  • 日本と欧米の働き方やキャリアに関する違いを論理的に述べている。日本の働き方はダメだから働き方改革しなきゃいけない!というような内容ではなく双方のメリットデメリットが書かれており非常に勉強になる。

  • まとめる価値あり

  • 久々にキャリア関係の本で素晴らしいと思えるものに出会った!

  • ふたつの公理
    1.給与は「仕事」ではなく、「人」で決まる。
    2.正社員とは誰もが幹部候補であり、原則、出世していく。

    同一労働同一賃金という美名のもと、多くの労働者は低級にあえぐ構造にあり、その上がりの部分を、ごく少数のエリートがむしり取っている。
    誰もが昇進昇級が当たり前、と考える日本人特有のキャリア観は、世界ではとても異端なのです。欧米では、「階段を上る少数エリート」と「ヒラのままの大多数」の二層に分かれています。

  • 卒論準備段階でこれも読みたかった。日本型雇用についても外国型についても、「決めつけ」になってしまっている俗説を否定し、丁寧な分析の上で中立的な説明がなされているように感じた。

  • <読んだ日>
    201603

    <感想>
    伝統的な日系企業的なキャリアと外資企業(というか西欧での一般的な)キャリアを対比して論じている本。

    日本企業のキャリアの特色を、
    1.給与は仕事ではなく人で決まる
    2.正社員とは誰もが幹部候補であり原則的に出世していく
    という2つの公理で説明しようと試みている。

    内容が100%正しいかどうかは別として、論としては明快で面白いし、なんとなくの納得感もある。凡そ正しいのではないか?と感じる内容。

    <行き先>
    Amazon

  • 読みやすく、簡潔に日本と欧米の雇用の差について書かれている。
    欧米コンプレックスが打ち砕けるのでは?
    案外日本は休みが多いと言いますし、メディアリテラシーが大切ですね

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著者プロフィール

雇用ジャーナリスト、経済産業研究所コア研究員、人材・経営誌『HRmics』編集長、ニッチモ代表取締役、リクルートキャリア社フェロー(特別研究員)。
1964年、東京生まれ、大手メーカーを経て、リクルート人材センター(リクルートエージェント→リクルートキャリアに社名変更)入社。新規事業の企画・推進、人事制度設計などに携わる。その後、リクルートワークス研究所にて「Works」編集長に。2008年、人事コンサルティング会社「ニッチモ」を立ち上げる。『エンゼルバンク─ドラゴン桜外伝』(「モーニング」連載)の主人公、海老沢康生のモデル。
主な著書に、『「AIで仕事がなくなる」論のウソ』(イースト・プレス)、『雇用の常識「本当に見えるウソ」』(ちくま文庫)、『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと』(小学館文庫)、『仕事をしたつもり』(星海社新書)、『女子のキャリア』(ちくまプリマー新書)、『無理・無意味から職場を救うマネジメントの基礎理論』『経済ってこうなってるんだ教室』(ともにプレジデント社)など。

「2018年 『名著17冊の著者との往復書簡で読み解く 人事の成り立ち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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