なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略 (PHP新書)

著者 :
  • PHP研究所
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レビュー : 92
  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569819419

作品紹介・あらすじ

アベノミクス成功のカギは、ローカル経済にあり! グローパル経済も分析しながら、今後の日本が成長していくヒントを読み解いていく。

感想・レビュー・書評

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  • 日本の経済力を考えた場合、グローバルな企業の競争力ばかりに目が行くが、実際のGDPと雇用の多くを占めるのは、地域に根差したローカルな企業である。グローバル経済とローカル経済とではそこに働く力学が大きく異なるため、それぞれについて正しい見方をする必要がある、というのが本書の骨子だ。大きな違いは、「規模の経済性」が効くグローバルと「密度の経済性」が大きな意味を持つローカル、ということができるのかもしれない。

    グローバルで競争する企業は、グローバルで「規模の経済性」を得るため激しいシェア争いを勝ち抜くことが必要であり、そのために経営者は正しく経営資源を競争優位性を持つ事業に集中させることが必要となる。電機メーカーをはじめとする日本企業はこの選択と集中ができずに不採算事業とともに沈んでいった企業が多いと指摘する。日本政府のこのフィールドでの役割は、そういったグローバル企業が競争しやすくするための規制緩和を徹底的に行うことである。

    課題となるのは優秀な人材の育成や誘致である。グローバル企業の理想として、やはりシリコンバレーの企業をおいており、起業を増やすために、そのことが優秀で高い意志を持つ人にとって起業が有利な判断となるような社会になるべきだと考えている。著者はよい傾向として、「東大を出て日本の安泰な企業に行きたがるのは、東大の中では二線級の人たちだと言われるようになった」として、こういった人材がいったん外資系コンサルファームに行って、起業する人も多くなっているという。著者は自らの成功体験を背景に高いエリート意識を隠さないが、優秀なトップクラスの人間がグローバルで勝負をする、という発想がある。がそういえばIGPIは無限ラボをサポートしていた。

    一方で、これからの日本はローカルをどのようにしていくのかが国家としても重要事項となる。これをグローバル企業のモデルと同一視してはいけない、というのがこの本が他と異なる主張をしているポイントだろう。ローカルにおいては集約化と穏やかな退出を可能にするための規制作りが重要事項となる。グローバル企業の最重要KPIは資本効率性で、ローカル企業の最重要KPIは労働生産性であるという指摘がそのことをよく表している。

    バス運航事業などのローカルの事業体では、競争事業者は実質上存在しない。グローバルな事業とは異なり、営業地域が異なるバス会社同士は、同じ事業を行うにも関わらず、互いに競争関係にはない。そういったローカル企業については、他の例をいくつも挙げることができる。例えば、地方のケーブルテレビも同様である。そのような場合、企業の良し悪しはオペレーションの効率性に依存する。しかし、競争がないから効率性が悪い企業もブラック企業として生き残ってしまう。この解決策として、サービス業の最低賃金を上げることで、効率性の悪い企業が音を上げて効率性のよい企業や経営者に任せるところまでいかせることだという。そのときは、ソフトランディングが可能なような規制を整えることが必要であるとのこと。そして、地域交通機関、医療介護、保育といった公共サービスにこそこの考えが当てはまるとのこと。補足として、信用保証制度による債務規模が、これまで一生懸命に中小企業をつぶすまいとしてきた証でもあり、つぶれるべき企業が生き残っている状況が作り出されていることが示されている。

    著者は、地方ではコンパクトシティ化を進めることを説くが、これは集約化であるとともに限界集落からの退出をどうやって穏やかに進めるのかという話であるという。鉄道の駅と主要バスターミナルの駅に駅前商店街を復活させることで、モビリティの問題なども解消する(バス会社も効率的になる)。著者の冨山氏は、みちのりホールディングスという東北・北関東地方を中心としたバス運営会社と運営している。地方では雇用はなくなっていくのではというイメージがあるが、実際には地方から先に人不足が始まっているという。実際にCEOを務めるみちのりホールディングでも常にバス運転士の不足に泣かされているという。その上で、人手不足対策を「労働生産性の向上」「女性と高齢者の活用」「外国人の雇用」の順番で考えることが重要であると指摘する。日本社会は移民に対して脆弱であるため、むやみに外国人の受け入れを進めるべきではないのだと。


    著者は多くの企業再生に携わったが、旅館街の再生の話など印象深いものがいくつもある。カネボウやJALのリストラでは、人員整理に手を付けることに対して躊躇はなく、実際に多くの社員が再就職できたという(実際にリストラに会った人はこれを読んでどう思うかというのは気になるが)。一方、ローカル企業においては、地域に根ざすその人の人生が破綻しないようにものすごく気を遣うことになったという(この時点ではまだ地方でも人余りの問題があった)。また、日本の大企業の企業再生に関わった著者の指摘する日本の企業の問題点としてダイバーシティの欠如を挙げていることが印象的。「地頭が良い、地頭が悪い、知識がある、知識がないということで、意思決定を間違える企業はほとんどない。ガバナンス上の大きな過誤は、ほとんどが人間の性から生まれている」というのは、グループシンクや過度の忖度などを考えても示唆的である。

    この本を読んで気が付いたことのひとつは、通信事業者というのが極めてローカルの世界のビジネスであるということだ。技術がグローバルになり、端末も世界で売られているものと同じものとなり、インターネットというグローバルな世界との接続を担うことからグローバルの世界のビジネスをしているのかと無意識には思っていた。しかし、競争環境という点を見ても、Verizonやチャイナテレコムと直接競争するわけではないということからもわかる。そうやって見ると、違ったふうに見えることもあるかもしれない。その意味で役に立ちそうな本である。

  • 地方創生に興味があり読んだ。冨山氏の経済戦略提案。非常に示唆に富んでいて、様々なアイデアが浮かんでくる。冨山氏の慧眼のその先に、日本社会がどうなっていくのか、いやいや私自身はどう足掻こうか。とても良い一冊だった。

  • ★2つの世界の切り分けに納得★目にする地方経済の現状と、国やメディアが騒ぎ立てる経済のグローバル化といった話の距離にずっと違和感を覚えていた。世界の距離が近づき日本の生産年齢人口が減っていけばこれまでと同じ処方箋では対処できない。世界を2つに分けて考えるべきだという指摘はすごく腑に落ちた。

    「モノ」を中心に立地を問わず世界の(ニッチな分野でも)チャンピオンにならなければ生き残れないGの世界と、その場でしか成り立たたず人手のかかる「コト」のLの世界。かつての日本を支えていた加工組立の中小企業は、世界との距離が近づく中でGの世界でしか生き残れない。Lの世界は地方だけでなく流通・サービスにも当てはまり、いい意味でそこに地方のヤンキーが生き延びる余地もある。どちらがよいではなく、異なる世界が併存する。

  • ローカルビジネスに興味があるのであれば、こういう本をちゃんと読まなきゃいけなかったよなと後悔。ただ、過去を悔やんでもしょうがないので、これからちゃんと勉強しよう。
    日本全体が人口減少している中で、これまでと同様に地方の産業政策が「工業団地造成&企業誘致」では立ち行かなくなるだろうというか、すでに立ち行かなくなっていると実感しており、じゃあどうするかというと「質の高い産業だ」とロボット産業などの誘致になっているのだが、果たしてそれでいいのだろうかと思っていた。そういう意味では、この本で語られている、ローカルビジネスは密度の経済性が働いており、グローバルトップを目指す必要はなく、生産性の向上を図るための企業集約を図るべし、というのは腑に落ちた。ただ、それを行政政策に結び付けるのはなかなか難しい。転廃業の促進はできるかもしれないが、金融機関のデッドガバンス強化や、再編促進型の倒産法の導入といった解決策は、国や民間と協力しながらでなければ進められない。が、そういう視点を持つことが重要なんだろう。

  • 「地方消滅」のおさらい的に。人材と同様、グローバルの標準的なルール(オリンピック)で戦う会社と、ローカル経済で戦う会社のルールはおのずと異なるので、きちんと峻別して運用しましょう、という本。納得です。

  • ローカルとグローバルの話が中心。労働生産人口、少子化、雇用問題、移民政策、サービス業の人出不足等、範囲が広くなってしまう内容。

  • GとLという経済の分け方は非常にしっくりときたし、これまでごちゃごちゃにして考えてきたが故に整理できなかったことが整理できるなと思った。また、世界の流れとしてはGのイメージが強いが、Lの経済における問題の大きさに気づかされる。

  • こういう方向には進んできてない。言ってることはすごく私の実感にあう。でも。たぶんこうはなかなかいかない。なんだろう。

  • 経済学的には、好景気だから人手不足、不景気だから人余り、なのに景気停滞の今人手不足…

    少子高齢化時代の今、従来と異なる経済環境を経験している。団塊の世代の大量退職から、あと20年間は続くであろう極端な少子高齢化とこの人手不足の問題にどう対処するか?まもなく日本と同じ少子高齢化問題を迎える他国のお手本となる対処法を構築できるか?日本の腕が試される。対処法の糸口として、大企業と中小企業ではなく、グローバル企業とローカル企業に分けて考えることを推奨した本。モノを生産するグローバル企業に見られるのは資本集約型であり、サービスを提供するローカル企業に見られるのは労働集約型であることを考えると、国の支援の仕方は後者を軸にしたほうが効果的だと思われる。国を支える労働力をサポートするには、ローカル企業が健全に経営できる環境を整えることが大切だと改めて思う。

  • 日本の現在の状況と、将来的な予想について述べている本。

    以下、気づき。
    ○ 「既得権」っていう言葉をあちこちで目にするけど、つまり、変わることを恐れて次のステージに行けない人が、今持っているものにしがみつくことを言っているのね。
    「変わらずにいる権利」っていうのもあるけど、生き物としては、環境の変化に対応できなきゃ死ぬだけだよね。
    自分の持っているもので、何が本当に譲れないもので、それを持ち続けたいならどんな戦略が必要なのか考えないで、誰かに守ってもらおうとするだけじゃダメじゃないかと。
    でも 、変わるためにはエネルギーが必要で、エネルギーを蓄えることができて、失敗してもホームレスにならなくていい社会が無いと、当然リスクの高いことには挑戦できないっていうことか…。

    ○「昔からある」っていう理由で使われる「昔からある」の理由を考えないで踏襲するのは、ただの思考停止なんだなぁ…。

    ○少子化時代には、企業と同じように大学も外国籍の学生にとっても魅力になっていく必要があるということなのか。
    その方向で成功した大学に入るということは、大学時代から外国籍の人との関わりが増えるということだ。
    北海道にいると感じないけど、外国籍の人は国内に徐々に増えている。そういうことも生徒に伝えないと。

    ○少子化による人手不足は、もしかしたらブラック企業の撲滅に繋がるのか?
    「お前が辞めても代わりはいくらでもいる」なんて言えない時代になるんじゃないのか?
    バス会社がすでにその道を歩んでいるよね。

    ○人手不足になるということは、今の中学生が大人になる頃は就職難なんて無くなってるんだ。むしろ、外国籍の人を雇うより日本人の方がいいと思うような企業は、囲い込みを始めてるということか。
    外国籍の人を雇った方がいいと思われるような業種には就職できなくなるっていうことは、たまに生徒に伝えていたけど、もしかしたら、日本政府はそこまで外国籍の人に魅力ある条件を提示できないかもしれない?
    つまり、私が予想していたような、外国籍の人に囲まれた生活じゃなくて、本当に人が減って過疎化するのかも…。

    札幌市の図書館で借りた本。

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著者プロフィール

経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO

「2018年 『[図解]IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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