ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼 巨人たちは経済政策の混迷を解く鍵をすでに知っていた (PHP新書)
- PHP研究所 (2014年11月14日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569821375
作品紹介・あらすじ
世界の経済史を紐解き、リスクを負わない政府・国家がいかに破綻への道を歩んだのかを検証。あるべき経済政策を提言する論考。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
時代遅れの大きな政府の推進者とみなされがちなケインズと、新自由主義の祖の一人にかぞえられることのあるハイエクという、二人の経済思想家が考えていたことをみなおしつつ、ベーシック・インカムやインフレ・ターゲットといった、現代において議論の的になっているトピックについても検討をおこない、現代の日本経済が直面している問題に対する著者の処方箋を提示している本です。
著者の主張の根幹にあるのは、政府の役割は人びとの予想を確定させることだというものと、リスクと責任と意思決定が一致するような制度を構築するべきというものに、まとめることができるでしょう。著者は置塩派の経済学者ですが、右と左の政治的な対立構造が生む不毛な議論に巻き込まれることなく、柔軟なスタンスと平易な語り口を武器に、具体的な問題にも果敢に切り込んでおり、非常におもしろく読みました。 -
リスク、決定、責任の一致しなければ有効な政策は実行できない。
リスクも決定も現場で取れる体制が必要
サービスの低下を伴う効率化は本当の効率化ではない。
政府は予測可能な一般的ルールでバックアップする。
-
ケインズやハイエクは実はこう言ってた! これからの経済政策を考える。
大きな政府から小さな政府などの近代の経済の流れを説明しながら、経済学の大御所たちの理論はそもそもその先の道を既に想定した考えをしていたというのがこの本の主張。
本質的な部分を分かりやすい言葉で説明してくれるのは非常に助かる。ただ、経済学って分かりやすければ分かりやすいほど、なんか煙をつかまされたような不思議な感覚になるんだよなぁ。。。
さらに勉強したい。 -
ちょっとタイトル詐欺はいってると思う。
小さな政府だー新自由主義だー市場に任せろーいや第三の道だー といった叫ばれ続けてけっこう経つが評価の安定しない──評価することが無視されている──近年の政治的経済政策について、ケインズやハイエクといった経済学者がなにを問題にしていたのかに軸足をしっかりと置いて整理されている本。
ケインズやハイエクの主張に共通するもの、「リスク・決定・責任の一致」「予想は大事」という立ち位置からそれぞれの主張、当時の状況に対する解説、今必要な政策を考える内容。
作者の立ち位置(マル経)よりの言葉が付け加えられてたりはするけれど、なるべく様々な立場に立った理論だけの話になっている。
個人的には(理論で説明しにくい、推測でしか話せない)政治的思惑まで踏み込んで、未だに「勘違い」が続いている原因の考察も欲しかった。 -
訳あって敢えて止めていた読書再開です。
どういういきさつで購入したのか忘れましたが、政局・経済情勢を見るとなかなかタイムリーな内容なので積ん読からこれを選びました。
大きくは経済学における大きな二つの流派が現在はどのようなスタンスを取って政治につながっているか、そしてそのどちらもが経済の変遷の本質を見誤ったことで誤ったポジショニングを取っている事を分析した内容です。
私は経済には全く疎いですが、これは面白かった!
著者の主張は、「リスク、決定、責任は同じとろこにないと、無責任かつ恣意的な自己拡張の歯止めが効かない」というもので、序盤に「そごう問題」が例に引かれていますが、経営やリーダーシップに関する深い洞察があります。
また、政府の役割を「人々の予想を確定させるルールキーパー」であるべきと説き、裁量的なマネジメントへの介入は細かなニーズを無視する事になるので後方支援に徹し、民間及び個人の意思決定が「望ましい方向への均衡する」よう振る舞うべきだというところは、そのまま企業運営に活かされる内容で、私が影響を受けたスティーブン・R・コヴィー氏の「リーダーシップとマネジメントの分離」にもつながる主張なので納得性が高かったです。
個人的に特に興味深かったのは、失われた10年と呼ばれた不況と、戦後の終身雇用・年功序列・企業特殊技能優先のキャリアパスについてゲーム理論とナッシュ均衡を使って分析をするところ。
不況については、ポール・グルーグマンの言う「割に合わない円高がまねいたもの」と藻谷 浩介氏の言う「人口減少が招いた定常的経済成長ステージ」というのが私の主な理解だったのですが、著者はそれを「人災」だと断じています。
また、日本の労使構造については『痛快!経済学 2』で中谷巌氏が説明してた政府主導の政策的な性格が強いと理解していましたが、労使が「同じ手」を使うならば複数ある「ナッシュ均衡」の一つとしてごく自然な状態であるというのは目から鱗でした。
ただ、企業競争や企業そのものがグローバル化していく過程でゲームのルールが変っていっているので、汎用技能の担い手としてしかホワイトカラーを雇えなくなってきている日本という指摘は身につまされます。 -
主張が一貫していて楽しく読めた。
この書を読むと他の本も読みたくなるので興味がわいてきてよい。 -
レビュー省略
-
自由主義経済政策と社会主義経済政策の歴史を振り返りつつ、これからの経済政策・社会政策を考えていく上で重要な論点について、作者の意見を具体的に述べてくれている本です。それほど期待せずに読み始めたのですが、予想以上に面白かったです。
経済政策としては、何よりも人々の「予想」に働きかけることが重要であり、そのための政府の役割は、明確なルールによって予想を確定させることであるということ、また、情報を持つ者がリスクと責任を負って決定する権限を持つべきであり、組織規模の小さいスタートアップの段階では独裁制が良くても、事業が安定してくれば現場中心の分権型意思決定の方が望ましいとする考え方には、十分納得・共感できました。
左翼の新しい方向を目指そうとする作者の最終的な方向性にはあまり共感はできませんでしたが、途中の議論はとても勉強になりました。安倍政権への対抗軸を見いだすのに四苦八苦している民主党には、特によく研究していただきたい考え方だと思います。
著者プロフィール
松尾匡の作品





