「吉田調書」を読み解く 朝日誤報事件と現場の真実

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569823492

作品紹介・あらすじ

「所長命令に違反、所員の9割撤退!?」。『朝日』はなぜ日本人を貶める「虚報」を流したのか? 吉田調書と原発事故の「真実」が明らかに!

感想・レビュー・書評

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  • 門田隆将の本はいつも熱い。
    対象に体当たりで食い込んで行く、ジャーナリズムの鏡のような方だと思っている。

    この、誤報を出した新聞社は真逆としか思えない。
    改めて調書、そしてこの本で経緯を読み直しても、なんでこんなことになったかさっぱり判らない。
    つまり、真相は明らかになっていない。誤報ではなく、虚報としか思えないなあ、やっぱり。

    まだ、「新聞」として認めている人がいることが理解しづらい。

  • 福島第一原発事故時に、所長であった吉田氏の調書に基づき、事故時にいったい現場で、そして官邸で何がったのかを調書に基づき暴いた本。
    特に、朝日新聞の意図的ともとれる、悪質な印象操作記事について糾弾しています。
    事故時の現場でのストーリーに関しては、同著者の別著、死の淵…のほうがおもしろく…というか引用なので、新しいものはないが、
    政治家の行動が明らかになっています。
    リーダーシップのかけらもない元総理はもちろんのこと、覚えていないとはっきり断っておきながら、間違いなく、全面撤退といった、と言い張る思い込み決めつけの枝野氏、冷静なのかと思いきや、非常に重要な場面で重要(であろう)電話にあえて出ない、ということを選択した、(=責任はとらないという決意だろう)せこい男、細野氏。
    情けなくて、泣きそうになる。。。。

    もちろん、著者のバイアスもあるだろう、
    にしても、政治家から、リーダーシップのかけらもない、
    生死をかけた現場に、どんなサポートが必要なのか、そしてねぎらいの言葉もなかった、政治家に、心底がっかりした。
    怒鳴りに行くくらいなら、電気のジェネレーター?かなんか持ってけ!と思いました。

    星マイナスポイントとしては、吉田氏の口語形式で展開されるので、ややわかりにくいから。
    日本人日本語の特徴か、主語が省略されているので、わかりにくいし、氏の特徴なのかもしれないが、誤解を生みやすいのかも、とも思った。

  • NHK特番を観て、改めて読んで見ました

  • 吉田調書を中心にして事故を描いている。官邸サイドの証言と合わせてこれを読むのが真相にいたる道か。

    調書や取材による吉田の言葉から引用する部分は正確で信頼できるが、それについて著者が述べる評価の部分を読むときは注意が必要。吉田にずっと取材をしてきたせいで吉田の目線になってしまっている部分がある。ただそれは取材者としてやむおえないことだし、吉田亡き今、彼を一番良く知り、彼を弁護できる代弁者として門田が存在することは、これからも事故をめぐる言論空間にとって必要だろう。

    たとえば、203pに「この部分を読んで多くの国民は驚くのではないだろうか。海江田氏は清水社長から「1Fから"全員"撤退する」という言質をとっていたわけではないことがわかる」とある。これはあと知恵である。撤退、退避といっても必要な人数がのこる一時退避というオプションがあるんだということはそう報道されてきたからわかる話。海江田は、退避と聞いてこれは1Fから撤退(もちろん普通は全員)するんだとすっと理解した。当然のことである。

    吉田の認識にも納得できないところがある。原賠法の「異常に巨大な天変地異」にあたるかという議論にからめて、吉田は「これを想定外でないといえという今の腐った政府も納得できないです」といっている。吉田は10mを超える津波への対策を本店に訴えたというから「3つのプレートが連動する」M9の地震というのはそんな自分でも想定できなかったとの思いがあるようだ。
    だが原賠法制定時に想定した「異常に巨大な天変地異」というのは対策もしようがないレベルのもので、今回のようなプレート境界の地震による津波は対策によって事故は防げたし、だから原子力は安全だと言ってきたはずである。
    吉田には、現在の知見で想定できるものに対策すれば十分なんだという意識、コスト意識が垣間見える。一般国民が期待していた安全性のレベルとは残念ながら違っている。やはり原子力に慣れすぎたのだろうか。

    吉田から見たときの官邸は、官邸から見たときの現場と本店をはさんでちょうど逆になっていたことがわかる。注水停止問題と、全員撤退問題がちょうど逆の構図なのだ。
    注水停止問題では官邸の意向(注水の継続は大前提として再臨界を検討)を本店の人間(武黒)が読み違え、注水停止として1Fの現場に伝わった。しかし現場はそれを否定した。
    全員撤退問題では、現場の一部撤退という意向が本店を通ったら、全員撤退として官邸に伝わった。しかし官邸はそれを否定した。

    この3者のうち両端にいる官邸と、現場(吉田)が、インタビューなどに積極的に応じているのは興味深い。繰り返している証言は、嘘があれば他の証言とのつき合わせなどでほころびがでやすいはずである。
    なので嘘を言っているとすれば本店だろう。本店の人間は限られた聴取にこたえるだけで一切口をつぐんでいる。その聴取に嘘があっても発覚しにくいようにしているのだろうか。事故について真相を調べるときは、両端の証言を基礎にして、証言の信用性も低い本店内の動きを推理していくのが妥当なんだろう。

    浮かび上がってくるのは情報伝達力も判断力もない本店という存在である。そのせいで吉田と官邸は要らぬ対立をしてしまっている。吉田から本店を通して見た官邸は本書の通り怒りの対象だが、官邸から本店を通して見た現場も最初はそうだったろう。ベントすると言ってきたのにその後ベントは始まらないし理由もわからない。ただ、官邸は直接現場に飛ぶことができたので、それ以降そのような敵視はなくなったのだろう。

  • この書籍は所謂、福島原発事件で吉田昌朗所長(故人)の「吉田調書」をめぐって、朝日新聞が情報操作をし、虚偽の記事を紙面で流したことに対して、著者のノンフィクション・ライターの門田隆将氏の対応と、実際福島原発事件で、吉田所長が官邸や、東電本社からの圧力と闘い、どのように事故を収束させていったかという事を著した著書である。

    まず、朝日新聞は原子力反対の立場から、事故当時の福島原発の責任者である、吉田所長の行動について虚偽の報道をしている。これはマスコミという立場にあるものにしては、決してやってはならないことである。

    曰く「彼らは命令違反を犯し、原発から撤退した」というのである。つまり放射能を避けるため、職員の9割が福島第二原発2Fに撤退したというものだ。現実は「1F構内で最も安全な場所」である免震重要棟にいた650人に及ぶ所員たちを退避させたのである。防護マスクは決定的に不足していた。もし朝日の記事が真実なら。多くの人はマスク無しで「1F構内の別の場所で待機する」ことになる。

    このとき福島原発、2号機と3号機で”18京ベクレル”という放射性物質が放出されている。朝日の言う通りだと、吉田所長は部下たちに「死ね」と命じたことになる。

    門田先生は、そんなことは「あり得ない」と吉田所長の人柄から断じている。
    このように、朝日新聞は原発=悪、東電=悪、現場=悪。という単純な図式の上にたった客観的なジャーナリズムとは無縁な代物だとしか思えなかったと、門田先生は仰る。

    時の首相はヒステリックに「事故の被害は甚大だ。このままでは日本国は滅亡だ。(現場から)撤退などありえない!命がけでやれ」とか「撤退したら、東電は100%潰れる、逃げてみたって逃げきれないぞ!」宣ったそうだ。

    この言葉は、現場を熟知していら吉田所長以下を激怒させたという。諸外国でも「職員が逃げた」「日本版セウォル号事件」と「日本人が福島第一原発から逃げ出していった」という虚偽の事実を朝日報道で知ることになったのである。

    門田隆将先生は「朝日の記事は現場の取材を全くしないままで書いているのではないか?」という疑問を持つ。しかもそれは本当だった。紙幅の事情で詳細は避けるが(詳しくは本書を読んでほしい)、朝日新聞の記者は現場と本部を結んでいたテレビ会議のやり取りしか、記事に反映してないというのだ。

    また現場でも、吉田所長が命を投げうって自分に事態収束のため残ってくれないか、という懇願に多数の職員が応募している、なんと30台の若手社員も大勢いたそうだ。

    その結果、朝日新聞は2014年9月11日夜、いままでの虚偽の報道に対して謝罪会見を開かざるを得なかった。新聞紙各紙は朝日新聞包囲網を作ったである。

    その記者会見で朝日は意図的に虚偽の記事を書いたのではなく、記者たちの記事のチェック体制が整っていなかった、と終始後手後手の対応に迫られた。

    全部本書をネタ晴らしすると、読者の興味を失って申し訳ないのでこの辺でペンを置くが、時の民主党政権、東電本部、それに堂々と正攻法で対応する吉田所長の獅子奮迅がよくわかる。

    福島原発は何も天災でなく、先送りする日本人の習性にある人為的事故であると本書を通じて気づかされました。

    この件で、現場の人間をバッシングした朝日新聞、常に高飛車だった首相官邸と東電本店。吉田所長の海水注入がなければ、東日本はチェルノブイリの10倍の核汚染の可能性があったことを肝に銘じておいてください。

    原子力はなるほど、事故が起こると高コストな電力ですが、COP21や安価で安定的な電力供給を保持するために、これからも日本国は原子力エネルギーを、だましだまし使用していく必要があると思います。

    福島原発でなにかモヤモヤとしたことがあった方は、ぜひ本書を手に取ってください。

  • 慰安婦といい、今回の吉田調書といい、朝日新聞は読む気にならんな。

  • 著者の「死の淵を見た男」の補足版のような話で、福島第一原発事故の陣頭指揮にあたった当時所長の吉田氏の「吉田調書」という報告書に込められた真実(事実)を著者が亡くなった吉田氏に代わり、訴えかけるような内容であった。
    マスコミ(ジャーナリズム)のあり方に関しても考えさせられる内容であったが、伝え手も聞き手もゴシップ的な内容を欲する部分があるが、そういうのに迎合することなく、客観的な事実を、きっちり伝える難しさというのが伝わってきました。
    改めて、日本を未曾有の危機から救ってくれた吉田所長をはじめとする、福島第一原発の事故対策にあたった現場作業員の方々に感謝したいと思いますし、事実を正確に伝える著者の作品に今後も期待したいと思います。

  • あの新聞はこれからも読むことは無いだろう

  • 福島第一原発の所長であった吉田昌郎氏の証言を元にした「「吉田調書」の報道で朝日新聞が「作業員が所長命令に背いて撤退した」と報道し、後に謝罪会見を開く事態にまで至った誤報事件。生前の吉田氏にインタビューし、震災直後の現場の真実を「死の淵を見た男」で詳細に伝えた著者が、朝日新聞の報道内容とは違って本当はいかに現場の作業員の人たちが責任感を持って持ち場を死守したのかを改めて伝えるノンフィクション。是非「死の淵を見た男」と併せて読んでみて下さい。原発推進とか反原発とかの立場ではなく、一般論として危機管理とはどうあるべきか、報道とはどうあるべきか、非常に示唆に富んだ本だと思います。
    「日常の営みは、非日常のためにのみ存在するのではない。日常の営みと非日常への備えのバランスを欠くようでは、人間の幸福に寄与するシステムとはいえない」という一節は、「非常時の安全」にどこまでのコストや不便さを私たちが許容できるのか、問いかけているのではないかと思います。

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著者プロフィール

作家、ジャーナリスト。1958年、高知県生まれ。中央大学法学部卒業後、新潮社入社。『週刊新潮』編集部記者、デスク、次長、副部長を経て2008年独立。『この命、義に捧ぐ─台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(集英社、後に角川文庫)で第19回山本七平賞受賞。主な著書に『死の淵を見た男─吉田昌郎と福島第一原発』(角川文庫)、『日本、遥かなり─エルトゥールルの「奇跡」と邦人救出の「迷走」』(PHP研究所)、『なぜ君は絶望と闘えたのか─本村洋の3300日』(新潮文庫)、『甲子園への遺言』(講談社文庫)、『汝、ふたつの故国に殉ず』(KADOKAWA)、『疫病2020』『新聞という病』(ともに産経新聞出版)、『新・階級闘争論』(ワック)など。

「2022年 『“安倍後”を襲う日本という病 マスコミと警察の劣化、極まれり!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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