ネオアベノミクスの論点 (PHP新書)

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  • PHP研究所
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感想 : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569824222

作品紹介・あらすじ

再起動した安倍政権は経済成長や格差解消を実現できるのか。リフレ派きっての論客が、総選挙後の日本経済のゆくえを斬る!

感想・レビュー・書評

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  • 副題にあるとおりレジームチェンジの貫徹で日本経済は復活するという主張。コンパクトな新書ながら、アベノミクスにおける消費税増税の失敗からいかに脱却し、新しいアベノミクス(ネオアベノミクス)を実現していくかについて、池田勇人の時代に実現した「オープンレジーム」(詳細は、117ページの表3−1を参照)を基本的な政治経済体制(レジーム)としつつ、3つのR、すなわちリフレーション、リフォーム、リディストリビューションを実行すべしと論じられている。

    高度成長期の歴史を論じた4章では、笠信太郎と石橋湛山の思想の相違が「花見酒の経済」を例にしつつ明確にされ、続く部分でも都留重人対下村治の話が読者を惹きつける。学史研究、思想史研究がディレッタンティズムになっていない好例だと思うが、いかがだろうか。

    最終章で引かれている下村治の『日本経済成長論』(1962)中の言葉は、まさに至言である。

  • 副総裁になられた方の2015年の著書を読んでみた。ザ・ボイスで高橋さんやら、宮崎さんが散々語ってきた理論や学者の名前がたくさん出てきてニヤリとします。
    後半は60年代の成長期の経済政策を巡っての石橋湛山と都留重人の争いに触れらてますが、これが面白い。このころから日本的な経済的な左右がイデオロギー的な左右と一致していくのだなと理解。
    僕は若田部さんの考えに同調し、成長なければ格差は埋まらないと強く思います。
    若田部さんが副総裁になったってことは増税凍結の布石だなー。

    面白かった。

  • 2015年刊行ですが、当時のアベノミクスに対するよくある間違った批判に対しての第2章でその答えが記されています。これからの、アベノミクスがネオアベノミクスとして効果を表すための処方箋や、過去のリフレ政策の歴史も学べるようになっています。

  • リフレ政策支持の経済学者が、2014年の消費税増税後のアベノミクスの指針について意見を述べた本。アベノミクスとは何かを知るには悪くないけど、引っかかる点も多かったので、良かった点と読んでいて引っかかった点を箇条書きにまとめる。

    良かった点

    ① 第一章の「第一次アベノミクス」が何だったのか、第二章の金融緩和に対する俗な批判についての反論が、手際良く整理されている。特に「円安なのに輸出が伸びない」という批判について「Jカーブ効果」で反論している箇所は勉強になった。

    ② 経済学の新しい知見を教えるのがうまい。例えばP.27でピケティの主張、P.129で名目GDP水準目標について端的に説明している箇所は見事だと思う。特に名目GDP水準目標の説明が素晴らしかった。「経済101」で紹介されている以外で、名目GDP水準目標を紹介しているのは、この本ぐらいしかないと思う。きっと大学でも教えるのがすごくうまい先生だなあと感じられた。

    ③ 一番読んでいて面白かったのは、第四章の戦後経済論争を扱った章。下村治と都留重人の論争を通した高度経済成長時代がうまく描写されていた。しかし笠信太郎は、今で言うと浜矩子みたいでトンデモだなあ。

    引っかかった点。

    ① 財政政策が本書ではほとんど語られていない。アベノミクスの第一の矢の金融政策の説明としては、多くのページを割かれて説明されているが、財政政策としては、もっぱら減税についてであり、政府支出について書かれた箇所は、P.161の出生率上昇のための金銭的補助だけ。供給制約のために従来の公共事業が乗数低いかもしれないけど、それなら別の方法の政府支出についての可能性をもっと語るべきでは?
    IS-MP分析からゼロ金利下では、インフレターゲットで予想実質金利を下げただけではデフレ脱却は難しく、やはり大規模な財政支出によってIS曲線を動かす必要性があると思うのだが。
    P.137から財政政策として、法人税減税が書かれているが、内部保留がさらに溜まるだけでそれ程筋がいい政策とは思えなかった。そこは消費税減税くらい言って欲しかったなあ。

    ② P.144で規制緩和について語られているが、タクシーの下限運賃の料金規制撤廃が規制緩和すべき例として挙げられている。昔、大竹文雄と森永卓郎との間で行われたタクシー規制緩和論争で、規制緩和に懐疑的な森永に分があると個人的には考えているので、あまりいい例だとは思えなかった。ここで悪名高きブラック企業のMKタクシーの社長の発言を持ってくるのは筋悪だと思う。
    そもそもインフレ期にやるべき成長戦略をデフレ期にやるのはどうなのだろうか? やるなとはいわないが、全面的に出す政策として良い政策とは思えなかった。(もっともP.135で第一の矢と第二の矢は第三の矢より先行すべきだと筆者は書いているが)

    本書は、金融政策偏重な部分が多く、個人的な要求としてはもっと財政政策について語って欲しかった。アベノミクスの金融政策を知るには悪くない本だけど、片手落ちだと思う。
    評点:6点/10点。

  • リフレ派の代表的な論客である著者が、2014年消費増税以後のアベノミクスならびに経済政策について提言する本です。

    本書のスタンスは、リフレ政策支持であることは当然として、一貫して経済成長重視です。無理に経済成長を志向する必要はないという主張はある意味で耳触りが良く、ついついそっちに引きずられそうになったりもするのですが、本書を読むとやっぱり経済成長の他に道はない(あったとしても非常に険しい)ということが腑に落ちます。

    リフレ政策にはいまでも多くの批判が寄せられています。実質賃金が23カ月連続で減少する中、アベノミクスは結局「トリクルダウン政策」に終わってしまうのではないか、という疑問はどうしても拭いきれない感じがします。本書の第2章ではそうした批判に対する反論が展開されています。

    著者が重視するのは「オープンレジーム」という考え方です。簡単に言えばこれまでの裁量的な政策運営をやめて、市場・競争を重視した環境を作るべし、というものです。こういう考え方はどうしても弱者・敗者に厳しいものになってしまいますので、その手当てとしての再分配政策についてもじっくり論じられています。

    この生きづらい世の中を思うと、成長なんかあきらめてまったり暮らそうとか、これ以上他人と競争させられたくない、という気持ちはどうしても強くなっていきます。そんなわけで著者の考えに100%共感することは難しいのですが、それでも方向性としてはこれでいくしかないのだと思います。

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著者プロフィール

早稲田大学政治経済学術院教授.早稲田大学大学院経済学研究科,トロント大学経済学大学院博士課程満期退学.著書に『経済学者たちの闘い』(東洋経済新報社)『危機の経済政策』(日本評論社)などがある.監訳書にマーク・ブライス『「緊縮」という病』(NTT出版)などがある.

「2018年 『ルールなき省察』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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