戦後リベラルの終焉 なぜ左翼は社会を変えられなかったのか (PHP新書)

著者 :
  • PHP研究所
3.33
  • (2)
  • (18)
  • (23)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 139
感想 : 18
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569825113

作品紹介・あらすじ

『朝日新聞』の権威失墜には歴史的な必然がある。左派と戦後日本の終焉を「集団的自衛権」「反原発」などから読み解き、日本がとるべき道を明らかにする。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  この本での清水幾太郎の書かれ方を読んでいると、唐牛健太郎のウィキにある「一番ひどかったのは清水幾太郎で、「今こそ国会へ」なんて煽っておきながら、なんだかんだと御託を並べるもののビタ一文出さなかった」というのが納得できる。
     著者が最も理想なリベラルとして挙げていると思える人は中西準子だろう。反対だけでは何も変わらないと気付き、「リスク」の概念を日本で広め、コストも安く環境にも良い小規模下水道を提案し、工場も「汚水」として排水を管理するようになり環境基準を守るようになった。P190に【純粋な「汚染ゼロ」の心情倫理を主張した人々は何も変えられなかったが、汚染のリスクを最小化した中西は日本の下水道を変え、環境を改善したのだ】とある。おそらくこの本は、清水幾太郎や朝日新聞等(戦後リベラル)から中西準子へ、を述べていると思う。
     日本の高度成長、俺たちはすごかった、猛烈に働いたんだぞという、昭和のダイナミックさによる、今の若い人へのマウンティングを打ち砕いてくれるのもありがたい。高度経済成長というのは、人口が増えて購買力は平均並みにあがっただけであり、消費大国アメリカに格安の為替レートで製品を輸出でき、戦争で古い資本が破壊され最新技術による資本蓄積が急速に進んだ……敗戦と人口増加とアメリカの消費力が成長を促進させたのであり、普通に成熟しただけである。安全も経済もアメリカに育てていただいた、右は手のひらのうえ、左は手のひらの上ですらない、ということを完璧にぶっちゃけた本である。

  • 著者のブログを読んでいる人にとっては新しい内容は少ないかもしれない。
    また、著者の物言い等が好きでない人には面白くない本かもしれない。

    まあでも。良識ある日本人だったら、著者の主張は別におかしくないと思うのが普通じゃないかね。
    「ただひたすら平和を祈って」いれば今の平和な生活が守られると思っている人がこの国にはたくさんいると思うのだが、そんなわけない。

    ・古賀も孫崎も、生活費を稼ぐために芸能人をしている。「左翼マーケット」は大きい
    ・マスコミは、太平洋戦争へと突進む動きを扇動した。メディアにとって戦争はキラーコンテンツ

  • 戦後日本のオピニオンリーダーとされてきた「戦後リベラル派(左翼)」の総括。
    朝日新聞から始まり、毎日新聞、日本社会党、民主党、60年安保のリーダー格の清水幾太郎と丸山真男、さらに70年前後の全共闘から大江健三郎、また最近話題の古賀茂明、孫崎亨等々を俎上に載せて、一刀両断というよりは、執拗に切り刻む感じで展開していく。

    戦後リベラルの話の中に突然小沢一郎が飛び出してきたり、最後は、本のタイトルから離れて日本政府の債務過多に話が飛び、「小さな政府」を目指すべきと結んでいるのは、タイトルとは違う結末に「あれれ?」という感じ。

    戦後リベラル派が世論を席巻した事実は詳細に記述されているが、サブタイトルの「なぜ左翼は社会を変えられなかったのか」という点については、本文の中では、「その最大の原因は、自民党が英米の保守党とは違って、良くも悪しくもイデオロギーを持たないからだろう。それは特定の政治的主張のもとに集まる結社というよりは、地元の面倒を見る政治家とその個人後援会の集合体であり、野党はこれに対抗できる集票基盤を持たない」と断定しているが、本当にそうだろうか?
    別の個所では、「左翼マーケットは意外に大きいのだ」と言っている。
    過去には非自民の細川内閣や、村山内閣、そして直近の民主党内閣が出来たが破綻している。この問題をもう少し掘り下げて欲しかった。

    個別には興味のある個所もあるのだが、全て断定してゆく文体にやや食傷気味になり、全体を読み終えて、何かスッキリせず消化不良の感じが残った。

  • 左翼的なメディアの問題と政治の流れをいろんな実例で述べる本
    問題あるのは事実だけど、これでリベラルの終焉というのはちょっと全体化しすぎかな。政治のところは各時代の流れの紹介だけになっている。

    事実を伝えるだけじゃなくて方向性をつけようとする、地方紙は国政と接点が少ないので批判をしやすい、戦争を煽るほど新聞が売れる、不安を煽る。
    社会に対して漠然と不満を持った人に問題を与える。テレビ視聴者に合わせてワイドショーが増える、

  • 内容の多くは朝日新聞の批判である。慰安婦問題の吉田証言、原発の吉田調書等。

  • 朝日新聞の従軍慰安婦報道問題や、脱原発運動のおかしさのほか、古賀茂明や孫崎享らのメディアでの発言、大江健三郎や内田樹といった文化人の論考などをとりあげて、戦後民主主義の観念論的な立場が日本社会において変えられることのないまま残りつづけていることを、厳しく批判しています。さらに返す刀で、現在の自民党政権に対しても、将来の日本が直面する課題から目を背けている点では、戦後民主主義の陥っている問題からけっして無縁ではないと批判しています。

    現代のリベラルな立場に立つ論者たちの迷走ぶりを批判することに終始しており、戦後民主主義を「敗者の戦後史」としてえがき出した本とはいいがたい内容だと思いました。ただ、戦後民主主義のオピニオン・リーダーと目されることもある丸山眞男の洞察にもとづいて戦後民主主義の不甲斐なさを批判するという本書の根幹のコンセプトじたいは、興味深く感じました。

  • 信夫氏の左翼に対する熱い思いを垣間見ました。
    日本の左翼は定義が狭すぎて、共感できる人が少ないのが問題なんだと思うなー。あと、自民党の幅が広すぎて明確な対立軸を出せないのではないのかな。
    人の感情に直接反応させる右翼に比べて、左翼は賢そうだけど
    感情に届かないので結局それでは何も変えられない。大多数の人間は感情で動くものなので、大多数には響かないのではないかな。

  • 非常に幅広く日本の社会・政治状況の「根」の部分を敷衍し掘り下げた、良書でした。

  • 本書、全体的に辛辣な筆遣いで、それはそれで面白いのだが、各論的に細かいことを書き連ねているためか、全体を通じて、戦後の左翼系知識人達の道程やそれに対する著者の評価がどうもハッキリ掴めない。
    本書で印象に残ったのは、朝日新聞を始めとするマスコミは、戦前は軍国主義をあおって部数を伸ばし、戦後は平和主義に転向して反政府的な論調で人気を博するという、徹底した商業主義を貫いてきたこと。主義主張に節操はないが、行動原理はとても分かりやすい。 ジャーナリズムという仮面を被った一流紙も、一皮むけばスポーツ紙と変わらないということなのかも。
    なお、本書は、古賀茂明氏、孫崎稟氏、柳澤協二氏等、元官僚の評論家を、専業主婦や団塊老人の受けを狙ってワイドショー的に政府を批判する傾向があると分析している。孫崎氏の「戦後史の正体」面白かったんだけどなあ(ただし、著者もCIAが日本の政権を操ろうとしていたことは事実、と認めている)。

  • リベラル思想を滅ぼしてはいけない。あの戦争敗戦は何だったか。保守主義が勝っているわけではない。安倍さんの政治はたんに経済優先ではないのか。

全18件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1953年生まれ。東京大学経済学部卒業後、日本放送協会(NHK)に入局。報道番組「クローズアップ現代」などを手掛ける。NHK退職後、博士(学術)取得。経済産業研究所上席研究員などをへて現在、アゴラ研究所代表取締役所長。著書に『イノベーションとは何か』(東洋経済新報社)、『「空気」の構造』(白水社)、『「日本史」の終わり』(與那覇潤氏との共著、PHP研究所)、『戦後リベラルの終焉』(PHP研究所)他。

「2022年 『長い江戸時代のおわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

池田信夫の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×