逆流するグローバリズム (PHP新書)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569825328

作品紹介・あらすじ

なぜギリシャ・ウクライナ危機のみならず世界秩序までを揺るがすのか。グローバリズムの限界と世界経済の行方を見据えた画期的論考。

感想・レビュー・書評

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  • 合わなかったため途中でやめ。理解力不足のせいもあるが、、。

  • つい最近まで、グローバル化(グローバリズム)するとは、良いことの象徴で、グローバル化に乗り遅れると大変なことになるという雰囲気でした。この本は一年以上前の2015年中盤に書かれた本ですが、現在、欧州を中心に、今までのグローバル化を疑問視する動きが出てきていると解説しています。

    ギリシア崩壊、英国のEU離脱、そして、米国の次期大統領が、「アメリカファースト」を唱えてきた、トランプ氏になるというのがその具体例だと思います。EUは益々拡大していき、EC時代のような同規模の国の連合から、市場の大きさだけを求めた当初とは違う連合になってきていて、それが移民等の問題を引き起こしている感もあります。これからの世界経済の動きに、目が離せませんね。

    以下は気になったポイントです。

    ・徴兵による近代的な国民軍の制度はフランス革命期から始まった。傭兵よりもはるかに低コストで大量の兵隊が動員可能になる。徴兵の時代に傭兵の時代の発想で戦争をしたので、ドイツ・ロシア・オーストリアの3つの帝国が消えてなくなった(p27、30)

    ・金融経済危機のような非常時に、外国の投資家やIMFとの交渉に臨まなければならない、そうなったとき交渉相手に勝る学歴、経済学のプロとしての言語が話せて知識をもつことが必要なので、イタリアや中南米の中央銀行には高学歴の人が多い(p52)

    ・アイルランドは銀行資産がGDPの9倍もある、資産の10%が不良債権になっただけで、全GDPと等しくなる、政府が助けるのは疑わしい(p61)

    ・欧州では、インフレ率の低い国(ドイツ)で借りて、いちばんインフレ率の高い(ギリシア、ポルトガル、イタリア)国に投資すると、利ザヤが稼げる(p65、69)

    ・共通通貨を用いた場合、経済状況や経済体質が異なる国に対して、共通の金融政策を適用しなければならないが、これができないので、ユーロ危機が起きた重要な理由の一つになった(p71)

    ・欧州は生産国と消費国に分かれていた、ドイツのような生産国は、スペインのような消費国に積極的に借りてもらおうとしていた(p75)

    ・ユーロ規定には、どういう場合に、ユーロを離脱できるか、離脱させられるか、何も書いていない(p83)

    ・ギリシアはデフォルト(発行した国債の元利を払わない)する権利は独立国として当然あるが、するとユーロ以外の通貨を使わなければならなくなる。国債を売って資金調達ができなくなるので、国中に現金がなくなる(p85)

    ・ギリシアへのIMF支援は史上空前、通常の支援額は各国の出資額の6倍の上限があるが、ギリシアは32倍(韓国は20倍)で、通常の3-5年ではなく、異例の6年(p92)

    ・ドイツがユーロ圏の経済危機によってほかの国よりも打撃を受けなかった理由として、中国への輸出が強いことにある(p115)

    ・ドイツのマーケットによる評価が良いのは、輸出パフォーマンスがユーロ安で追い風、問題国に流れていた資本がドイツに逆流して金利が低下、といった要因がある(p119)

    ・そもそもリーダシップが必要な時期というのは、ルール通りの行動ではうまくいかない時期をいう。ルールに任せて上手くいくなら、リーダの必要は無い(p152)

    ・IMFにおいてアメリカだけは、唯一、単独でIMFの意思決定にノーが言える仕組みになっている。ルール改正、専務理事の選定、融資先の決定、あらゆる意思決定は、議決権の85%の賛成が必要(p188)

    2017年1月3日作成

  •  口語で語る現在のヨーロッパ経済。


    【目次】
    はじめに [003-008]
    目次 [009-016]

    第1章 「欧州統合」に欠けていた戦略的思考 017
    欧州統合の「作戦の失敗」
    共通通貨ユーロ創設のいい加減さ
    ディアレクティックな発展
    「市民」の概念が戦争を拡大した
    なぜ第一次世界大戦は起きたのか
    ジャン・モネの商売的な発想
    加盟二八ヵ国の巨大経済圏へ
    「欧州統合教の信者」たちの問題点

    第2章 危機の原因は共通通貨ユーロそのもの 041
    グローバル化と「ホームバイアス」
    「ホームバイアス」の合理的な理由
    国債の発行残高が大きいメリット
    イタリア国債を買ったイタリアの銀行
    銀行資産を拡大した小国の悲劇とは
    コアとペリフェリーの「共犯関係」
    つくる国と使う国への二極分解
    ECBの会合とは債権者、債務者会議
    アリがキリギリスを歌わせつづけた

    第3章 ギリシャ救済はどこで間違えたのか 079
    もともとおかしかった財政データ
    ユーロの規定に「離脱」はない
    「足の切断手術」か「危機のドミノ」か
    じつに奇妙なトロイカの仕組み
    自らインチキを認めたIMF
    ユーロ圏が拒否した「ベイルイン」
    脱出にみごと成功した独仏の銀行
    もし「減免」が明言されていたら……

    第4章 ドイツの過剰な「ルール至上主義」 111
    立場の弱くなった国、強くなった国
    なぜフランスはドイツに追随したのか
    国債の買い上げをいやがるドイツ人
    ドイツ人のいう「ルール」とは?
    「神話」としての二つのイベント
    「経済自由主義」が信奉される理由
    「ネガティブ志向」で政府を縛る
    大衆を嫌う「オルドリベラリズム」
    インターネットに対する恐怖感
    「小市民的」であることの重要性
    メルケルの「ひし形」が意味したもの

    第5章 アメリカとドイツの知られざる戦い 155
    ドイツへの対抗馬としてのアメリカ
    オバマ大統領の提案した「SDR案」
    失敗に終わった米仏の「ドイツ包囲綱」
    アメリカの新パートナーはマリオ・モンティ
    夏休み中に熟考を重ねたメルケル
    ドラギ総裁に与えた「暗黙の了解」とは

    第6章 苦悩するIMF、揺らぐ世界秩序 177
    突如、来日したダイセルブルーム議長
    七年ぶりに日本にやってきたメルケル
    IMFの願いはギリシャと手を切ること
    日本の出資金にも損失が発生する
    韓国国民はIMFを許していない
    IMFクォータに潜む問題点
    ウクライナ支援の大いなる疑問
    ウクライナのEU接近を許さないロシア
    援助資金の一部が武器購入に向かう?
    現代版の「マーシャル・プラン」か
    拡大する政治家と国民のギャップ
    アメリカがIMFを脱退する日
    「欧州の悲鳴」に応じるためには

    第7章 日本がいま真剣に考えるべきこと 221
    メルケル首相の心中を察すれば……
    「お願いごと」はますます増える
    日本の発言を無視はできない
    ギリシャでいよいよ起こる「釘外し」
    欧州統合を「バブル」に譬えたソロス
    イギリスがAIIBに出資した理由
    中国の要求はどこまで正当か
    世界にも日本にもプランBが必要だ

  • 前著「ユーロ破綻 そしてドイツだけが残った」(日経プレミアシリーズ)の続編のような感じですが、前著より分かり易く整理されてきた感じがします。

    欧州統合には「統合が善」だという判断が基本にあって、地理的にどこまでが欧州統合の範囲か、またどこまで統合するのかというような検討課題があるが、明確な答えを持たないまま、闇雲に統合を進めていったと、著者は指摘する。

    その結果、一番金利の低い国(ドイツ)で資金を借りて、一番インフレ率の高い国(ギリシャ・ポルトガル・スペイン・イタリア)に投資すれば、利ザヤが稼げるため、ペリフェリー(周辺国)に資本が流入していった。しかもユーロという共通通貨を使っているため、為替リスクが発生しない。

    そしてギリシャ発のユーロ危機が起きる。その時にEUにおける加盟国間の財政支援を禁止する「非救済条項」が、さらに問題を大きくした。
    その結果なにが起きたかと言うと、返済の可能性がないギリシャへIMFの融資が行われた。要するに独仏の銀行は持っていたギリシャ国債を売り逃げし、IMFが肩代わりした。
    更に、ユーロ圏ではないが、欧州が行け行けドンドンで進出したウクライナでもIMFの融資がなされた。しかもロシアと戦っている国からの返済は絶対にあり得ない。

    この理由は、IMFが戦後すぐの指導体制を引きずっており、現在の出資額とは関係ない形、つまり現在の経済力に応じた形になっていない。それで欧州各国からの圧力で、IMFのフランス人のリーダー(クリスティーヌ・ラガルド)が、ギリシャに投資した独仏の銀行を救済したり、欧州の東側ボーダーをロシアの軍事的脅威から守ったりしている。その金は戻らないにも関わらず。

    なるほど! これで昨年3月(2015年)にドイツのメルケル首相が、7年ぶりに日本(IMFへの出資額は2位)に来た理由が分かった。

    そして、最後に中国が何故AIIBを設立したかに話しが及ぶ。つまり中国はIMFや世界銀行、アジア開発銀行において、その経済力に見合った発言力がないことの不満があり、中国の実力に見合った発言力の確保が、AIIBの設立理由だろうと著者は言う。

    全般に非常に面白かったが、ユーロの成立とギリシャのユーロ加盟については、私は著者と見解を異にする。

    ユーロの設立は、そもそも第2次大戦後、米ソの谷間で欧州が埋没するのを避けるために設立されたと思う。
    そしてギリシャ加盟については、著者は戦略のなさから加盟させたと言っているが、経済学の立場からはそうだと言えるが、私はギリシャのユーロ加盟は極めて政治的判断で決定したと思う。

    元々ギリシャがオスマン・トルコから独立戦争を経て1822年に独立するに当たって、当時の英露仏独等の欧州各国が、援助して独立させた訳だし、ギリシャには観光と農業以外に何もないのは、最初から分かり切ったことである。それをわざわざ加盟させているのは、経済的な観点ではなく、政治的な観点からなのは、はっきりしている。

    そういう意味では、ドイツは加盟国間の財政支援を禁止する「非救済条項」に隠れて、支援しないということの方が問題だと思う。しかもユーロのお蔭でドイツは国際競争力を得ているのは事実である。

  • 竹森俊平の本はいい作品が多いが、この本はその中でも断然面白かった。
    「なぜ中国がAIIBを設立したか。なぜ欧州諸国がギリシャをEU圏に残そうとするか。なぜロシアがウクライナを攻めるのか」等々連日新聞の一面を賑わすニュースの背景をについて垣間見ることが可能。

    以下頭の整理。
    ・フランス革命以前の戦争は金持ちが傭兵を雇って行っていたもの。フランス革命以降は「市民」の概念が世の中に広がり、徴兵制が導入されるようになり、戦争は大規模化
    ・日本の幕末の動きもこれにならったもの。武士という「傭兵」に頼らず、低コストの農民を徴兵する動きへ
    ・EUの起源はドイツとフランスの国境近くでの石炭・鉄鋼業の統合体。アルザスは鉄鉱石が豊富、ルールは石炭が豊富だった
    ・この統合はその後も地域をまたいで進展。しかし、「統合の先に何があるか」は議論されずに統合が進んでいった。しかし通貨を統合しても財政を統合しないことの問題点は明らか
    ・グローバリゼーションと逆の流れが起こっている。根本には、ホームバイアスがある。ユーロ危機の本質は「急激な資本逃避」
    ・ドイツをはじめとする国々は信用力の低い国に投資(与信)していった。それらの国の資産は、高インフレ(高投資収益率)であっても、それらの国の通貨の価値は毀損しない
    ・「ユーロ離脱」という規約はそもそも存在しない
    ・ギリシャが緊縮策を受入れず支援が打切られると、独自の通貨が必要となる。しかし、既存のユーロが担っている役割を新しい通貨が代替するシナリオを描くことは困難
    ・ECBは加盟国への財政支援ができない。「非救済条項」が存在
    ・本来的には、民間金融機関がギリシャ国債を保有している間に債務を減免する必要があった。しかしそれをせず、民間金融機関は逃げることができた
    ・ロシアはウクライナが国として機能しなくなることを目的としている。ウクライナがEUに入って経済的に成功すると、ロシアの勢力圏からEUへ移ろうとする国が出てくるため
    ・アメリカだけは唯一、IMFの意思決定の拒否権を持っている。本来IMFが融資するのは「流動性の危機」の際

  • 最終章の「日本がいま真剣に考えるべきこと」は秀逸。それまでの記述はここへ導くための伏線と思えるほど。単なる地域分析に留まらず、巨視的に見据えるのは、さすがに著者の力量と言える。

  • ギリシャの財政危機に多くを発する欧州の現状を、そもそもの欧州の歴史に根ざした思考の枠組みや、そこから出てきた統合を推進した考え方にまで立ち返って解説している。
    表面的な解釈に終わらず、欧州の基本的な思考のベースである弁証法、その歴史、地政学にまで触れながらの解説は、認識していなかった奥深い因果というか、必然を感じさせてくれる。

    領主のポケットマネーを元手として傭兵間で争われてた中世の戦争が、フランス革命で市民の概念を産み出し、それが国家の成立に繋がり、そこに出現したナポレオンが戦争を国家間の規模にまでお仕上げてしまい、その延長の結果として容易に終わらせられなかった戦争が拡大し、第一次世界大戦を引き起こした。
    第一次世界大戦の結果、社会・経済秩序が徹底的にゆらぎ、大恐慌に繋がり、軍事独裁政権が担当したことが、第二次世界大戦へとつながっていった。
    二度と、このような悲惨な結果を引き起こさないように起きた発想が、フランスとドイツを仲直りさせて、欧州の主要国家をまとめる同盟をつくり上げることだった。
    最初は関税同盟という統合だったが、これは「石炭と鉄鉱石の共同事業」という提言と、「自由に貿易される商品とそうではない商品の矛盾」という反論をまとめあげるための弁証法的解決策だった。
    この動きは欧州の経済復興と共に進み、経済的効果がしっかりと生まれながら進んだために、統合の動きは益々推進されることになった。
    欧州の統合はECSC→EEC/EURATOM→ECと深化が進むとともに、地域的にも外延国へと広がっていった。
    そして93年のマーストリヒト条約により、EU発足という現在の姿が誕生した。

    ところがEUという欧州統合には明確な戦略が欠けていた。
    一つの国とするべきだったのか、外延をどこまで広げるつもりだったのか、などなど。
    確かに加入国間の関税をなくし、通貨を統合し、金融政策はコントロール出来るようになってきたけども、財政政策は各国に任せたまま。
    トルコ、イラン、ウクライナといった外延境界に位置する国々をどうするのかはいつまでも決まらず。
    欧州統合信者たちは、一歩進めて問題が出てくればそこでまた考えて深化の道を検討するという謂わば「社会的ダーウィン主義」の考え方がEUを引っ張ってきたのだという。

    こんな歴史的設立背景の説明の後に、いまのEU圏が抱える経済的問題点を整理している。散々、あちこちで解説されてきたことだが、インフレ率の低い国から高い国に為替差損なしに資本が流れ込み、欧州は生産国と消費国の二極分解を起こしていた。
    つまり消費国はインフレが高いために商品を輸入するが、外貨を稼げないために生産国である低インレフ国から資金を借りることになる。
    これがポジティブ・フィードバックとなり、状況が膨れ上がり固定されてしまうということだ。
    このような二極分解した国に、同じ金融政策を適用しなくてはならないというのがユーロそのものの矛盾なのだが、それは通貨統合以前から散々指摘されていたことでもあるのだ。

    しかもEUには加盟国間の財政支援を禁止する「非救済条項(No Bail-out Clause)」があるので、迂闊に加盟国への援助をできない状態になっているのだそうだ。。。

    ここにECB、IMF、そして欧州の危機脱出の鍵を握るドイツの政治的思惑が絡み合い、はたまたUSAからの圧力などがあるそうだが、とても簡単にはまとめられない。
    ただドイツが積極的な支援策にいつも否定的な姿勢を取る背景の解説が興味深い。
    ドイツはともかくも経済自由主義が徹底されているといい、不況時のケインズ的財政出動でさえ、ルールを外れた例外的対策だとして国内で支持を得れれないのだそうだ。
    ヒットラー政権が政府権限を拡大させ悲劇を招いたことが教訓となって残っていて、政府に大きな権限を与えることに歯止めをかける仕組みが強くなっているからだ。
    ギリシャ危機でも徹底的に原則を貫き通し、なかなかルールから外れた支援策を打たない理由は、こんなところにあるらしい。

    さて最終的に所謂Grexitが起こった場合、どんな状況になるのかだが、財政統合に進む計画がない限りは、次々と状態が不安定な国が同様の状況に進んでいき、周りの国が支えようとする連鎖が続き、結局は統合崩壊が長期的に進行すると予測している。

    なかなかまとまった形で今の欧州危機を俯瞰する機会がなかったので、歴史や欧州思想の背景まで取り込んだ形で解説してくれた本書は、とても有用だった。
    ただ読んでる時には理解できた危機の背景・詳細だが、あまりにも複雑に絡み合っていて、解説しろと言われても自分には難しいなぁ。

  • ユーロ危機の原因と欧米・IMFを中心とした世界秩序の今後を見通した内容。

    経済力や規模がバラバラなのに共通通貨(ユーロ)を導入したのが現在のユーロ危機の原因で、さらに非救済条項がユーロ規定にあるために柔軟な金融政策をECB(欧州中央銀行)が取ろうとせず、問題国ギリシャの救済が遅れ、ユーロ経済危機が深刻化したというのがいま起きていること。

    本来なら欧州内で一番の経済力と政治的リーダーシップもあるユーロのリーダー国・ドイツが頑張ってギリシャを助け危機を救ってくれればいいのだけど、うまくいかない。なぜか。ドイツの過剰なルール至上主義のため。これはナチスドイツの記憶がトラウマのようにドイツ人の脳裏に刻み込まれているからだ。戦前のハイパーインフレと国家が社会に過剰介入したナチスの体験が現在のドイツの経済観を規定し行動を縛っている。だから、非常時だからといって国債買い上げや量的緩和などの金融政策を行おうとしない。「非救済事項」というルールがある以上、欧州国は厳格にこれを守らないといけないと考える。だからギリシャ救済などとんでもない、と。(困ったちゃん)

    そこで救いの手を差し伸べたのが、アメリカとIMF。ユーロ危機を放置すればいずれ世界経済危機へと発展してしまう。この認識のもと、欧州に手を差し伸べるが、救済金が少ないことや救済プログラムの実行をドイツに阻まれてうまくいかない。
    欧米を中心として作ってきたIMF体制が限界に近づき、うまく機能していない、ってのが竹森先生の見通し。

    おまけにIMFに拠出している日本への影響もある。日本のお金が欧州危機救済のために使われる。(メルケルの今年初めの日本詣をみよ)。さらに欧米からのお願いごとはますます今後増えるだろう、というのが著者の見立て。
    この状況が続けば日本の発言を無視できなくなると希望的観測を述べているが、これは間違うとただのEUの金づるにしかならないのでは、と思ってしまった。

  • ギリシャ問題、ウクライナ危機、中国のアジアインフラ投資銀行(AIIB)設立……。そのすべてはつながっていた!
    ギリシャのユーロ離脱を端緒として、グローバリズムは逆流を始める。やがてそれは日本をも巻き込んで、国境を越えた金融取引を消失させ、安全保障環境を不安定化させていくと、著者は指摘する。本書では、欧州危機の原因や、アメリカ、IMFなどの思惑を緻密に読み解き、これから日本がとるべき道までを指し示す。

    第1章:「欧州統合」に欠けていた戦略的思考
    第2章:危機の原因は共通通貨ユーロそのもの
    第3章:ギリシャ救済はどこで間違えたのか
    第4章:ドイツの過剰な「ルール至上主義」
    第5章:アメリカとドイツの知られざる戦い
    第6章:苦悩するIMF、揺らぐ世界秩序
    第7章:日本がいま真剣に考えるべきこと

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著者プロフィール

慶應義塾大学経済学部教授
1956年東京生まれ。81年慶応義塾大学経済学部卒業。86年同大学院経済学研究科修了。同年同大学経済学部助手。86年7月米国ロチェスター大学に留学、89年同大学経済学博士号取得。2019年より、経済財政諮問会議民間議員

「2020年 『WEAK LINK』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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