真田信之 父の知略に勝った決断力 (PHP新書)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569830438

作品紹介・あらすじ

父・真田昌幸、弟・真田信繁(幸村)と別れて徳川方につき、真田家を守った男の実像に迫る。別れの名場面「犬伏の別れ」の真相とは?

感想・レビュー・書評

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  • 真田信之の生涯を父や弟の関係や領国経営などから紐解いてあった

  • その生い立ちから最期まで93年の長い生涯を辿る一冊。真田期上田城についての検討や、内政の具体的な様相など、ただ事績を追うだけでは見えてこない統治の有り方がうかがえて面白い。真田領におけるキリシタンの事例は興味深いものがあった。

  • 真田丸の歴史考証を担当していた平山先生による
    真田幸村の兄であり初代松代藩主真田信之の本。

    華々しく散った弟幸村と対照的な生き方をした兄。
    以前松代に旅行に行った時に存在を知り、
    真田丸でも真田太平記でも弟より彼に惹かれた。
    実態はどうだったのだろうと思い読んでみた。

    読んでみて「苦労人」という言葉が思い浮かんだが、
    意外なことに若いころは猛将だったようで、
    有名な忍城攻めにも参加しており、
    昌幸の反対を押し切り強硬策をしている。

    他にも松代は譜代が藩主になった重要な地であり、
    秀忠の信之に対する信頼の現れだったなど、
    色々と新しい知見が得られて面白かった。

  • 真田信之を通じて、教科書では洗う事のない江戸初期の政治事情・風土が分かる
    まだ、戦国を引きずる武将が多くいるじだいは、行政を行う立場は大変な事と想像できる
    大河ドラマ大泉洋を重ねてはイケないが、生真面目に法理主義を貫く一方で戦国大名の気性が垣間見れるのは、平山先生の筆力のおかげかも知れない

    徳川方についたタイミングとかが通説とちがうとなると、行動の理由がガラリと変わる
    江戸初期の豊臣家と徳川家の態度は今まで習った歴史と違う、考えればそうかなと思う事もあるが、家康の晩年も豊臣政権だったと言えなくもない

    浅間山噴火や飢饉によりヒドイ状態からの経営だった
    松代藩を見すぎて藩をつぶした、騒動もおきたラストだけは人知の及ぶところではないのかもしれないが切ない

  • はしがき
    第1章 信之の生い立ちと家族の群像
    第2章 武田氏滅亡の衝撃と天正壬生の乱
    第3章 真田昌幸と信之の飛翔
    第4章 信之の決断
    第5章 苦難の連続だった信之の内政
    第6章 大阪の陣と信之
    第7章 上田から松代へ
    第8章 「土呑み裁判」からキリシタン対策まで―もめごと、さまざま 
    第9章 相次ぐ不幸
    第10章 信之、最後の闘い
    あとがき
    主要参考文献

  • [評価]
    ★★★★★ 星5つ

    [感想]
    2016年の大河ドラマ「真田丸」の時代考証を担当された平山優氏による真田信之の著作
    「真田丸」は主人公である信繁を中心に物語が進むが、この本ではサブの主人公ともいえる信繁の兄である信之の生涯についてを書かれている。
    この本を読んだ感想としては真田一族は優秀な人間ばかりだったのだと言うことに気が付かされる。特に信之は父、昌幸や弟、信繁と比べると知名度は低いがその業績は二人を上回ることはあっても下回ることはないと思うようになった。しかし、一方で残された信之は真田の家を護るために苦労していると強く感じた。
    また、戦国時代末期から江戸時代初期は天災や戦災による世の中が荒廃していたこと、先地から平時への変化で統治方法が変化していたことがよく分かる内容だった。

  • 真田丸において、『苦労』のみがコミカルに強調されすぎた感のある真田信之、彼の苦労は…真田丸に描かれた様な『軽い』ものでは無かった!!
    『犬伏の別れ』で父、弟と袂を分かって徳川方について以降、苦難に次ぐ苦難。難局に次ぐ難局。
    ・九度山に流された父・弟への仕送り
    ・浅間山の度重なる噴火
    ・内政を重視しようにも、災害が続いて農民が逃げ出す。<身銭を切って連れ戻したり!
    ・そんなこんなだから藩の財政は大変です!
    ・松代へ転封されたら、一部家臣が集団で離反したり
    ・御家騒動(それも、息子が先に亡くなっての御家騒動×2
    ・領内でのキリシタン問題まで!
    etc.etc.
    よくぞこれだけの難局を乗り切って真田家が続いたものだなあと、もはや呆れるしか無い。

  • 真田家を守った苦労人、兄上サイドから見た戦国から江戸への時代変化は興味深い。
    93年も生きて徳川家は4代、のんびり隠居の生き神様かと思いきや。跡取は早死、天変地異に米不作、農民の揉め事陳情書にバタバタ。「タイムスクープハンター」でいけそうなくらいネタに満ちたお話でした。

  • 戦国時代を代表する知将・真田昌幸の嫡男真田信之は、父や弟の信繁と別れて徳川側につき、真田家を守り抜いた男として知られる。父子の別れの場面である「犬伏の別れ」での筋を通した決断力は、晩年の「真田騒動」を解決する際にも発揮された。関ヶ原の合戦後、信之は相次ぐ浅間山噴火や戦災で荒廃した領国の復興に取り組む。その後、徳川家にとって重要な藩であった松代藩に転封。やがて「天下の飾り」と呼ばれ、徳川将軍が隠居を許さない存在となった。義を重んじた男の九十三年の生きざまを、真田家研究の第一人者が綴る決定版。(2016年刊)
    ・はしがき
    ・第一章 信之の生い立ちと家族の群像
    ・第二章 武田氏滅亡の衝撃と天正壬午の乱
    ・第三章 真田昌幸と信之の飛翔
    ・第四章 信之の決断
    ・第五章 苦難の連続だった信之の内政
    ・第六章 大坂の陣と信之
    ・第七章 上田から松代へ
    ・第八章 「土呑み裁判」からキリシタン対策まで
    ・第九章 相次ぐ不幸
    ・第十章 信之、最後の戦い
    ・あとがき

     待望の「真田信幸」の伝記である。一応、その誕生から死去までを扱っているが、上田時代が大半を占める。平山先生の著書にハズレはないが、いくつか特筆する点をあげると、真田氏時代の上田城をめぐる考察が、大変興味深い。
     荒廃した上田領を復興させようとする取り組みが、第五章で論じられているが、連年のように噴火する浅間山は、農地の荒廃に直結し、凶作や飢饉に繋がったという。本書に収録されている災害年表を見ると、まるで賽の河原で石を積むような感がする。慶長末年以降、病気がちであったとするが、為政者としての重圧によるストレスが影響しているのではないだろうか。
     また、松代転封についても、徳川氏の嫌がらせではなく、秀忠から信頼され、北国のかなめの城を任されたとしている。池波正太郎の真田太平記のようなお話は小説としては面白いものの、徳川の与力大名であったことや徳川氏の養女として小松殿が嫁いでいること、関ヶ原の動向をみても、(別家ともみえる)信之が嫌がらせを受ける筋合いは無いと思っていたので、腑に落ちる思いがした。(高野山にいた、信繁の大坂入城だって、信之の責任は問えまい)
     松代への転封は、家臣団との関係を再構築することになる。城下町の拝領屋敷への居住や地方知行制ではあるものの各地に細分化されて与えられたため、家臣達は知行地との結びつきを失うこととなったという。転封により、主君の力が強化されたことが、のちの御家騒動を乗り越える要因となったのではないだろうか。
     莫大な蓄財をどの様に行ったのか、疑問であったが、転封により、御料所が、上田時代の20%から60%にまで増加したことが、27万両の蓄財の足がかりとなったという。
     松代藩と沼田藩の関係について、信之は、沼田藩を信綱系の血筋で、継がせようとしたというのも面白い。沼田領において、キリスト教の布教が盛んであった事や、その対策に悩まされたことなど興味は尽きない。

     大河ドラマの影響もあり、真田氏研究は一気に進んだ感があるが、本書は随所で著者が、「記して後考を待ちたいと」書いてあるように、より一層研究の進展が望まれる。本書は、今後、真田氏を研究するうえで欠くことの出来ない必読の一冊であり、お勧めである。

  • 宇都宮仕置で昌幸、信之ともに、独立した豊臣大名に。1589-1600年の昌幸、信之の居所一覧。秀忠の目的は最初から真田昌幸追討。信繁の家臣に樋口角兵衛という名の者がいて大坂の陣後、上田に帰還したとあるが未詳、と(真田太平記読んだ人ならピンと来るはず。)。内政面では出浦昌相が大きな活躍。天災や不作、普請等の負担で、なかなか財政は上向かず。自腹を切ってまで逃げた百姓を買い戻したり。ただ、逃げたり、新たにやってきたものばかりの優遇は、既存のものには恩恵が少なく(なんだか現代の携帯キャリアみたいな。)。家康をはばかってか、信幸から信之へ名乗りを改めたのが通説だが、最近の研究で1608−1612年は再び信幸に名乗りを改めているのだとか。ただし理由は不明とのこと。信吉信政兄弟と信繁との対面。大坂の陣に参加したものや一族を厳しく処罰することで幕府に身の潔白をなんとか証明しようと奮闘。上田を離れることは寂しく思っていたが、家臣に松代転封は光栄と送っていること、松代の重要性から鑑みて、左遷には当たらないのでは、と。昌幸・信尹に泣きついて減刑を図る家臣たちもいたが信之は果断に対処したと思われること。真田信之犯科帳とも言える章で、さまざまな裁定の実態の一端が窺い知れること。四十八騎浪人事件は、本領から引き離されたこと、新たな任地松代でも加増がなかったことが不満の背景にあったこと。真田騒動については、当時の資料に記録が見当たらず、見直しの研究があること。などなど、さまざまな知見に触れられ興味深い一冊となった。

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著者プロフィール

平山優(ひらやまゆう)
一九六四年、東京都生まれ。立教大学大学院文学研究科博士前期課程史学専攻(日本史)修了。専攻は日本中世史。山梨県埋蔵文化財センター文化財主事、山梨県史編さん室主査、山梨大学非常勤講師、山梨県立博物館副主幹、山梨県立中央高等学校教諭を経て、健康科学大学特任教授。二〇一六年放送のNHK大河ドラマ「真田丸」、二〇二三年放送のNHK大河ドラマ「どうする家康」の時代考証を担当。著書に、『武田氏滅亡』『戦国大名と国衆』『徳川家康と武田信玄』(いずれも角川選書)、『戦国の忍び』(角川新書)、『天正壬午の乱 増補改訂版』(戎光祥出版)、『武田三代』(PHP新書)、『新説 家康と三方原合戦』(NHK出版新書)などがある。

「2023年 『徳川家康と武田勝頼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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