白村江(はくそんこう)

著者 :
  • PHP研究所
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レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569831046

作品紹介・あらすじ

奇才・荒山徹が古代史に挑む! 大化の改新、揺れる朝鮮半島、そして白村江の戦い――激動の東アジア史を大胆に描く感動の長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • その船は死の臭いをまとっていた。の書き出しで始まり、1ページかけて朝日が黒い雲で隠された海を軍船が進み、兵士が空をみつめている様子を描くのに費やすこってり具合。
    WEB小説ではブラバ間違いなしの「暁天」とか「朝ぼらけ」とか「戎衣」とか「塑像」などの言葉でこった表現の文章が続く。上手いと思うし、技術の高い人で無ければ描けない文だと思うけど、何がこれから起きるのか? という期待より、一体何が欠いてあるのかが先にきてしまいそうな冒頭。でも、読み進めると意外にいい感じになってきそう。まだ途中まで。
    重厚な地の文に比べ会話分の分かりやすさ優先の割り切り方がすごい落差となっているのです。
    この時代の人間が「安全保障」とか、蘇我蝦夷が「力の可視化」と言っているるのは違和感を感じざるをえないけど面白いw 斬新。
    女王のしゃべり方がその辺のねーちゃん。「~じゃ」話すのは幼い王子の方。
    地の文で160キロのストレート全力で投げて、会話分でふぁぁぁぁとスローボール投げてくるこの緩急の差。今までちょっと見たこと無いケースで面白い。
    「白村江」というタイトルで、おそらく手にとる人は古代史に興味のある人だと思う。
    著者は古代東アジア史に関して相当な知識をもっているのは、概略の歴史の流れとか、国家間の関係の描写、内政の概要などの描写を見れば分かるのです。
    しかし、これは「歴史小説」や「時代小説」ではないです。
    これ「白村江」という時代を舞台とした、ほぼ架空ファンタジーです。まあ、人物像などは、古代ですから自在に作っていいと思いますが、会話文が完全に「現代風」で地の文の重厚な表現が浮き出ています。時折見せる知識の片鱗に比べ違和感を感じるほど。「在倭特権を享受してきただろ!」という台詞にはのけぞりましたわ。マジでww
    百済から日本に亡命し、百済が滅び、その復興のために百済に出兵した百済人に対し、現地の百済人の将軍が浴びせる言葉ですけどね。
    その他、現代でしか使わないような用語、会話の調子で、歴史的雰囲気は会話文に微塵もありません。わざとでしょう。それ以外ないです。

    私もキリストの話しで、「相互確証破壊」みたいな現代語とか、英語の外来語とかバンバン使ってますけど。基本ギャグ小説だからす。町田康の「ギケイキ」が少し頭にあって影響受けてます。
    しかし、この作品はギャグじゃないのです。シリアスなのです。つまり古代日本史というよく分からない時代を舞台に現代的な分かりやすい台詞を使った、内政、外交をおりなすファンタジーを作っているのです。
    ですので、これを異世界とすると、多国間の内政、外交を様々な視点で書いた物語ができます。そのまま、テンプレにして、物語の枠を流用したいくらい、構成は見事です。
    その意味で完全なエンタメなのですが、なんで「白村江」などと古代史に興味のある人しか手にとらないようなタイトルにしたのか謎です。
    もし、多国間の争い、内政をおりまぜたファなたジー小説を書きたいなと思ったら、この「白村江」を読むととても勉強になると思います。
    語彙力試験のように地の文は多彩な語彙と表現を使い、台詞は完全な現代語。古代史の雰囲気ゼロ。
    でも、エンタメとしては面白いです。ただ、人物や、白村江の戦いの真相をこの小説の通りとか思ってはアカンですということで。
    あくまで、エンタメとして面白く作っているもので、史実を勉強したい方はそのような本を読みましょう。

  • 最後はあういう終わり方でよいのだろうか。

  • 2020/06/16白村江☆読了
    中大兄皇子 聖徳太子の路線を堅持
    内政を重視し、隋、唐に対抗できる社会造り
    →「中央集権の律令体制国家」を造るビジョン
    しかし、『人材』が居ない

    百済の人材を確保するために
    新羅と組んで百済を滅ぼし
    白村江の戦いで敗北という謀略により
    百済の人びとに国家再興への諦めを促す
    その結果、日本へ大量の帰化を実現
    その百済人材集団により
    日本社会の構造改革を果たした

    東アジア諸国=唐、倭、三韓[百済・新羅・高句麗]の
    地政学的戦乱の中で日本の政治が翻弄されていく日本史
    スケールの大きさと歴史の紡ぎに大いに感心させられた

  • 2018.3.27

  • 古代の百済滅亡の攻防を描く歴史小説。

    黒岩重吾さん亡き後、日本の古代歴史小説が寂しくなっていたところでした。
    大胆な仮説による白村江の戦いの姿とそこに至るまでの政治的駆け引きに豊璋の成長を重ねて、うまくまとまっていると思います。
    黒岩さんよりも朝鮮半島との関わりを中心に描いたことで独特な作風となっていると思います。
    以後の天智、天武時代も朝鮮半島との関係を絡めて描いてほしいものです。

  • このサイトでやっていた「献本」でいただいた一冊。話は白村江の戦いの20年前から始まり、戦いにいたるまでの日本と今の韓国にあたる新羅・百済との外交策などがメイン。普段あまり触れることのない古代史ということで、それなりに面白く読めた。ただ、最後の”推理小説の謎解き”そっくりな長台詞がちょっと残念な感じだった。あそこは、他のシーンからも浮いていて、不自然な印象を受けるので、もうちょっと「見せ方」を工夫してほしかった。

  • 荒山徹氏の新境地を示す古代史エンターテイメント大作です。高句麗、新羅、百済が鼎立する半島の動きをリアルに描きだすところは、荒山氏の面目躍如ですね。豊璋の成長ぶりという軸もあります。“白村江の戦い”は半島と大和朝廷の密接な関係があっての出来事なので、こんな視野の大きい小説を待っていました。次作は、東アジアを舞台にした“元寇”を活写してください。荒山徹氏の復活を心から嬉しく思います。

  • ブクログに応募してこの本が当たりました。ありがとうございました。

    大化改新の前から白村江の戦いまでの期間を、百済・新羅・倭国(日本)を舞台にした小説。タイトルからは白村江の戦いの戦闘場面がクライマックスかと想像していたが、その記述はあっけなく、そこに至る過程、駆け引き、密約を描く。

    主人公は百済から倭に連れてこられた王子。身分を隠していじめにあいながら育つが、そこで友人を作っていく。百済が新羅に敗れると、復興のために担ぎ出されて百済に渡り、百済王となって白村江の戦いへ。

    蘇我蝦夷・入鹿の親子とか、葛城皇子(中大兄皇子)とか、知ってる名前も出てくる。

    始めの1/3は退屈だったが、その後は面白く一気読み。朝鮮半島と日本を巡る地理的スケールと、世代をまたいだ密約の時代スケールが大きい。

    出てくる単語や人名、地名は難しい。
    最後に皇子自身があの場であの内容をしゃべっちゃうのはどうなのかなぁ。

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著者プロフィール

作家

「2020年 『足利の血脈 書き下ろし歴史アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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