貧困を救えない国 日本 (PHP新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569835839

作品紹介・あらすじ

「強制出費」「国策貧困」など貧困の本当の原因、欧州で貧困者が少ない理由、有効な貧困対策など、研究者と現場取材者が真摯に語る。

感想・レビュー・書評

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  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00587906

    日本の相対的貧困率は15.7%(2015年。相対的貧困とは、2015年現在では手取りの年間所得が一人暮らしの世帯で122万円以下、4人世帯で244万円以下の世帯を指す)。人数で言えば1900万人以上にも上るが、日本には本当の貧困なんてないと言う人もいる。そんな人にこそ伝えたい現実がある。一時的にせよ「飢えた」状態に置かれてしまい、万引きをしなければ食べ物にありつけない貧困家庭の子どもは少なくないのだ。

     本書では貧困問題のリアルと本質について、社会調査とデータのエキスパートと、貧困家庭の現場を徹底して見聞きしてきたライターが語り合う。貧困への無理解に対抗するための本音対談。


  • 貧困に対する対談形式の本 。貧困の様子だけでなく、構造的な問題や、より具体的な解決にも言及

  • あれもダメこれもダメでうんざりする部分もないわけではないが
    貧困があらゆる方面から語られており、納得度が高かった。
    資金や物量ではなく、
    解決策が当事者に知らされること(情報)と
    行動できる状態になること(精神疾患)の課題が大きいように思った。

  • 目を背けたくなる現実というやつ。

  • 異なる立場にある貧困問題の専門家二人による対談。
    お互いに詳しく知らない内容について質問したり、意見が異なる時はハッキリ言ったりするところが良かった。私が知らなかったことを話してくれたり、異論があるところを突いてくれたりして理解が深まりました。
    現時点で二人が望む貧困対策については、キチンとしたまとめが欲しかった。

  • 貧困問題のリアルと本質について、異なる立場の二人が語り合う。社会調査とデータのエキスパートと、貧困家庭の現場を徹底して見聞きしてきたライターと。貧困への無理解に対抗するための本音対談。

    現場知らずと数字知らず、補完し合えば知恵もでてくると。

  •  貧困問題に取り組んできた著者二人による対談本。実際に現場に携わってきた為、出てくる事例が豊富である。特に、貧困が一部地域で連綿と受け継がれてきた、という事例は初見である。そういうことも漠然とあるだろう、と思ってきた所に実例を出されると、改めて考えさせられる。

     この本で着目したポイントは三つ。
     1.漠然とした世間でのイメージと現場との乖離。
     2.税金による再配分の必要性
     3.強制出費を強いる産業

     1について、現場と世間のイメージ・無理解に苦しめられている業界は多いので、人々の共感を得られると思う。さらに、世間体を気にしがちな日本では、尚更貧困の現場は見え難い。

     2について、応分の負担、つまり増税をしないと再分配ができないという趣旨。この時、富裕層から一方的に収奪するのではなく、富裕層も含めた区別なしの給付という考えは面白い。確かに、一方的に取られるだけというのでは、中々賛同は広がらないだろう。

     3について、ブライダル産業や教育産業等が挙げられている。これについては、世間の「普通」水準が上がる一方で、実際の生活実態はむしろ下降している事が問題であろう。著者は、全入という全員が全員大学まで行く必要があるのか、と疑問を出している。ただ、これに対しては全員行く必要は無いかもしれないが、おそらく「普通」のイメージが行かなかった人を苦しめると考える。

     以上、この本の感想である。しかし、この手の問題を考えるときに、3位に下がったとは言え、それでも世界3位の経済大国がこの体たらくなのかと、忸怩たる思いを禁じ得ない。
     

  • 『貧困を救えない国 日本』(阿部彩, 鈴木大介 PHP新書 2018)

    【版元】
    発売日 2018年10月15日
    在庫 品切れ
    判型 新書判 並製
    ISBN  978-4-569-83583-9
    価格  994円(本体920円)

    日本の相対的貧困率は15.7%(2015年。相対的貧困とは、2015年現在では手取りの年間所得が一人暮らしの世帯で122万円以下、4人世帯で244万円以下の世帯を指す)。人数で言えば1900万人以上にも上るが、日本には本当の貧困なんてないと言う人もいる。そんな人にこそ伝えたい現実がある。一時的にせよ「飢えた」状態に置かれてしまい、万引きをしなければ食べ物にありつけない貧困家庭の子どもは少なくないのだ。
     本書では貧困問題のリアルと本質について、社会調査とデータのエキスパートと、貧困家庭の現場を徹底して見聞きしてきたライターが語り合う。貧困への無理解に対抗するための本音対談。

    ● 欧州はなぜ社会福祉が整備されているのか 
    ● 新築の家などの『強制出費』は罪が重い 
    ● 貧困家庭の冷蔵庫はものでいっぱい。ただし、賞味期限切れの食べ物ばかり 
    ● 地方の若者の刹那主義 
    ● なぜ貧困を放置してはいけないのか 
    ● 貧困対策を徹底的に考える 
    ● 政治家も官僚も、世論を恐れている
    https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-83583-9

    【メモ】
    https://www.hinkonstat.net


    【目次】
    まえがき [003-005]
    目次 [006-014]

    第一章 間違いだらけの「日本の貧困」 015
    日本に貧困はないと思っている人たち
    なぜ貧困層に厳しい意見が多いのか
    「貧」と「困」を分けて考えよう
    日本には本当に「絶対的貧困」の家庭は存在しないのか
    貧困家庭は、ひとり親よりふたり親世帯の割合のほうが高い
    三世代世帯も安泰ではない
    男性高齢者の貧困率は、むしろ改善している
    女性の貧困問題が「若い女性の貧困問題」にすり替えられた
    『最貧困女子』刊行後の落胆
    女性の貧困問題を子育ての問題にすり替えるな

    第ニ章 なぜ貧困を放置してはいけないのか? 025
    「旅をする人類」仮説
    人材投資論
    裕福な高齢者をどう説得するか
    社会悪化論
    階級社会化仮説
    男性というだけで大変なアドバンテージがある――生理の問題
    ブラック企業が働けない人を量産している
    かつては子どもより高齢者の貧困率のほうが高かった
    昔は子どもが親に仕送りをしていたことが知られていない
    政治家が動いた
    おばちゃんのパワーと限界
    子ども食堂もいいが、中学校の給食も必要

    第三章 誰が貧困を作っているのか? 089
    新築の家、結婚式、教育産業――「強制出費」の悪者たち
    奨学金制度と進路指導の先生
    幼稚園業界と政界
    発達支援やコミュニケーション能力向上プログラムが必要
    他人と会話するのが苦手な子が労働市場から弾き出されていいのか
    劣悪な労働条件でも働けるようなマインドづくり
    自分に合った仕事とは
    保育士は誰でもできる仕事だと思われている
    官僚に責任転嫁したくない
    かつて開拓や炭鉱に動員された貧困層の子孫が、やはり貧困層となっている
    どうにもならない部分はある
    町内会と地方議員の権力
    地域ベースでは、コミュ障の人は救われない
    男性のいない世帯が支払う「出不足料」

    第四章 メディアと貧困 137
    ウェブメディアはなぜ貧困ネタを好んで掲載するのか
    新聞記者の限界
    テレビによるコンテンツ消費
    大多数の読者、視聴者の「腑に落ちる感」を着地点にしている
    「ぱっと冷蔵庫を開けたときにモノが入っていたら批判が起こる」
    昔から社会的弱者は、笑いのコンテンツの中に入っていた

    第五章 精神疾患が生み出す貧困 157
    なぜ中高年女性の貧困について書かないのか
    離婚女性はDVで精神を破壊されている
    貧困問題と精神科医療の未発達には深い関連性がある
    休息が必要不可欠――認知行動療法というアプローチ
    スキーマ療法の可能性
    パチンコとスマホ――規制の議論
    報酬感情を得るための、段階を追った就業支援が必要
    「何をすれば嬉しいのかわからない」のが貧困


    第六章 地方の貧困と、政治を動かす力 185
    独居老人と子どもの貧困 
    ソフトヤンキー
    ソフトヤンキーは仲間に入れない貧困者に対する差別意識が強い
    親の面倒もよく見る。東京に出たらアウト
    東京都は貧困を語らない
    保守化する若者たち――インターネットによる先鋭化
    震災で、左翼がオカルトになってしまった
    政治家も官僚も、世論を恐れている
    芸能人生活保護受給騒動と年越し派遣村

    第七章 財源をどこに求めるか 216
    住宅手当、児童手当が少なすぎる
    日本人は税金をきちんと払ったことがない
    六割の人が「生活が苦しい」と言っている
    「国の無駄遣い」という批判
    国民が「社会保障は充実していない」と考える理由
    生活保護も、無駄が出て当然
    年金制度のマクロ経済スライド方式は画期的
    財源は消費税――高齢者の納税額が少なすぎる
    国民年金支給額を減らしていいのか

    第八章 支援者の問題 249
    子どもと児童養護施設、児童相談所の距離感
    専門職ではない、人数が足りない、医療との連携不足
    ケースワーカーと関わるほど精神的にきつくなる
    貧困対策は雇用対策でしかなかった
    土木が貧困対策になりにくい時代
    ごちゃまぜな生活保護
    児童専門員の設置
    国が行おうとしているのは学習支援
    生活保護世帯の子どもたちに対する学習支援
    高校生になっても行ける居場所が必要
    アメリカでは高所得者の子どもがアルバイトをしている


    第九章 貧困対策を徹底的に考える 287
    「タバコ規制」と「肺がん治療」の違い
    貧困層への学習支援とは居場所づくりである
    貧困対策の対象をどこに置くか
    「九%の層」には何が必要か
    日本の公営住宅――辺鄙なところに造って現在は孤立化
    マイホーム願望
    精神科を生活保護の窓口にすべき――生活保護の捕捉率を上げる
    学校での逃げ場所が必要
    「生活困窮者自立支援法」と「社協」
    社協で働いている人たち
    マッチングサービスが打開策になる

    対談を終えて [330-332]

  • 学校は学ぶというところから、もう少し生活を支えていく場所というところへと考えを広げてほしい。(阿部 彩:p319)

    このコメントは、教員である私自身も納得しているところであるが、現場の教員でこのような感覚を持っている人は、残念ながらごくわずかであるのが悲しい現実かなと。

    示唆に富む意見が多く、大変参考になった。

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著者プロフィール

首都大学東京教授

「2017年 『20年後、子どもたちの貧困問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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