和辻哲郎と昭和の悲劇 伝統精神の破壊に立ちはだかった知の巨人 (PHP新書)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569837048

作品紹介・あらすじ

戦争、敗北、占領という激動期、見苦しく変節した知識人が多かった中で、自らが掴み取った日本の本質を世に問い続けた知の巨人の真価。

感想・レビュー・書評

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    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/689962

  • 著者は、大正期から終戦直後にかけて、知識人たちが伝統を忘却したために時代の移り行きを正しく認識することができずにいたことを批判的な観点から論じています。同時に、日本思想史を独自の立場からとらえていた和辻哲郎の状況のなかでの発言に、一定の留保を置きつつも評価しています。

    著者はまず、ポツダム宣言の受諾による「無条件降伏」について、和辻や徳富蘇峰、鈴木大拙といった知識人たちがおこなった言説を参照し、正しい歴史観を忘却してしまっていると批判します。つづいて、大正教養主義における伝統の欠如を批判し、そこに共産主義からの影響が色濃く存在していることを指摘します。

    次に著者がとりあげるのは、いわゆる統帥権干犯問題や天皇機関説問題などです。ここでは、頼山陽の『日本外史』などにつらなる伝統と、佐々木惣一に代表されるアカデミズムにおける明治憲法の解釈を統一的な視座から考察することで、問題の所在を解明しています。

    最後に著者は、和辻が戦後になって刊行した『埋もれた日本』をとりあげ、佐々木惣一やアリストテレス研究の泰斗として知られる安藤孝行らとの論争を通して和辻が提示した、国体と天皇をめぐる考えに立ち入った検討を加えています。

    和辻が中心的にとりあげられているとはいえ、彼の日本思想史観に踏み込んだ議論がなされているわけではなく、やや期待はずれの感があります。とはいえ、明治憲法と伝統思想をつなぐいくつかの補助線の存在を教えられたという点では、勉強になりました。

  • 小堀先生一流の見識がいかんなく発揮された著作である。ただ、和辻哲郎に焦点を絞ったというよりは、敗戦の結果豹変した知識人に対する異論を強く表明したというほうが適切と思う。

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著者プロフィール

東京大学名誉教授。文学博士。昭和8年東京生まれ。東京大学文学部卒業後、旧西ドイツ・フランクフルト大学留学。東京大学大学院博士課程を修了し、平成6年まで東京大学教授。平成16年まで明星大学教授。現在、日本会議副会長。乃木神社中央乃木會会長。
主な著書に、『宰相鈴木貫太郎』(文藝春秋)、『森鷗外ー批評と研究』(岩波書店)、『靖国神社と日本人』『昭和天皇』『和辻哲郎と昭和の悲劇』(以上PHP研究所)、『和歌に見る日本の心』『皇位の正統性について』『象徴天皇考』(以上明成社)等がある。

「2022年 『國家理性及び國體について』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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