対談 風の彼方へ 禅と武士道の生き方

  • PHP研究所 (2018年12月16日発売)
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  • 本 ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569840369

作品紹介・あらすじ

禅と武士道――日本人のDNAともいえる二つの生き方に共通点はあるのか? 4回にわたる白熱の対談を忠実に再現。
第一部は北鎌倉の円覚寺にて、禅の真髄を語り合った。第二部は執行氏が経営する日本菌学研究所にて、般若心経の「空」に迫った。第三部は横田老師が出家得度した龍雲院にて、武士道の生き方「やせ我慢の思想」を論じた。第四部は靖國会館にて、禅と武士道の極みである「絶点」に達した。
現代人は、長生きほどいい、健康なほどいい、おいしいものを食べるほどいい、お金持ちほどいい、立身出世するほどいい、それが幸せな人生だと勘違いしていると二人は指摘する。それこそ仏教でいう「餓鬼道」であり、哀れな「我利我利亡者」なのだと。
「今生で幸せになろうと思うな」「現世の死は肉体の死に過ぎない」「現世で偉くなるのは危ない人生」「何もない豊かさを知れ」……求道者のみが語り得る極限の対談集。

感想・レビュー・書評

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  • 批判的に読むべき書。
    いたるところで、固定観念や時代錯誤的なこと、反発する考えなども、多々あったが、動けていない自分自身がとらわれていることを気づかせてもくれる書。自分の今の常識を壊してくれるという意味で、話者の言う通り、毒そのものの言説だと思った。
    そんな中で、自分に響いたのは次のことがら。
    ・現代の人間は、無限の成長思想に侵されていること。
    ・死を見ないために、いつまでも生きると思っている。このため、体当たりでいきられない。体当たりで生き、本当の自分らしさを取り戻すには、後退しなければいけない。後退してもいいと自分に言い聞かせないと、本当のものは見えないということ。
    ・人生で大切なことは、自分が命を捧げるものを見いだすことにある。
    これらの言葉で、自分が今、進みたいけど進めない、決断しきれないことがら(自然資本を生かし生かされる生活へ踏み出すこと)について、決断をすることが間違いではないと言われている気がした。
    それにしても、冒頭で記載した通り、どうにも首肯できない言説も多々ある本だった。そんな中、あとがきの横田南嶺老子の言葉で救われた。「違和感を持たれるところがきっと多くあると思われます。受け入れられないところがあって、当然であります。世の中にはいろんな考えの人もいるのだなと思って頂ければ、私は十分だと思っています。」
    この書に書かれた言説が全て正しいというわけではなく、いろんなものの見方があるということ、その中でも学ぶべきところがあるということ、反発してもよいということの両行で、行けばよいということでホッとする。
    自分ではわからない、理解の及ばないところも多々ある本だった。されど、「死を見つめ、生を生かして今に生きて生命を燃焼させる」。気づかされ、受け入れられたこの部分を活かして、自分の糧としたい。

  • 禅と武士道に共通する精神性

    「体当たり」の生き方: 先入観・打算・計算なく行動する姿勢が両者に共通
    「空」の思想: 仏光国師の「臨剣の頌」に見られる、危機的状況でも動じない精神
    生死を超越した覚悟: 生と死を対立ではなく連続したものとして捉える視点

    歴史上の人物とエピソード

    北条時宗と無学祖元: 元寇の危機に際し、禅の教えが武士の精神的支柱となった
    乃木希典: 日露戦争での苦悩を支えたのは武士道精神と禅の力
    鑑真和上: 五度の失敗と失明を経ても「法のためである」と渡日を成し遂げた姿は武士道的
    正受老人と白隠禅師: 厳しい指導と弟子の成長を示す禅の師弟関係

    現代社会への示唆

    「足るを知る」の精神: 物質主義的欲望を超える禅の価値観
    仕事への打ち込みと悟り: 職業に命を懸けることで精神的な深化が可能
    「陰徳」の重要性: 人に知られない善行を積む真の利他的精神
    自己の運命を愛する: 困難な状況でも現実を受け入れ前向きに生きる姿勢
    「痩せ我慢の理」: 体面や保身ではなく大局を見て決断する精神

    靖國神社について

    明治天皇の思し召しにより創建された、国のために殉じた人々を祀る神社

    印象的な引用

    「先入観も、打算も、計算もないという生き方です」
    「自分が空であれば、あなた方も空だ」
    「人間は職業に命を懸けて打ち込めば悟りを得ることが出来る」
    「自分の運命を愛するということが、いちばん大切な考え方」

  • ぐわんぐわん生命を揺さぶられる。
    今まで生半可な生き方をしていたことが恥ずかしい。

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著者プロフィール

1950年、東京都生まれ。立教大学法学部卒業。実業家、著述家、歌人。ウナムーノの哲学思想に深く影響を受け、独自の生命論を確立し、実業に生かしている。また、戸嶋靖昌記念館 館長、執行草舟コレクション主宰を務める。蒐集する美術品には、安田靫彦、白隠、東郷平八郎、南天棒、山口長男、平野遼等がある。洋画家 戸嶋靖昌とは、深い親交を結び、画伯亡きあと全作品を譲り受け、記念館を設立。駐日スペイン大使館等と協力の元、戸嶋靖昌の展覧会を実施。また、コレクションを千代田区麴町の展示フロアで公開している。
著書に、『「憧れ」の思想』『おゝポポイ!』(以上、PHP研究所)、『生くる』『友よ』『根源へ』(以上、講談社)、『孤高のリアリズム』『憂国の芸術』『生命の理念 Ⅰ/Ⅱ』(以上、講談社エディトリアル)、『魂の燃焼へ』(共著/イースト・プレス)、『耆に学ぶ』(共著/エイチエス)、『見よ銀幕に』(戸嶋靖昌記念館)等、また『情熱の哲学──ウナムーノと「生」の闘い』(佐々木孝著、法政大学出版局)を監修。日本菌学会終身会員。

「2018年 『ベラスケスのキリスト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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