帝国ホテル建築物語

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569842769

作品紹介・あらすじ

日本を代表するホテルを! 世界的建築家フランク・ロイド・ライトによる帝国ホテル本館建設を巡る、男たちの闘いを描いた長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 帝国ホテルライト館をめぐっての人間の執念のドラマが描かれている。
    ロイド・ライトは、個人の中に、狂気が宿っているのかもしれない。
    建築家というこだわりよりも、芸術家としてのこだわりが強い。
    日本びいきで、日本の良さをどう自分のものにするのか?
    帝国ホテルで、ロイド・ライトがチャレンジしたのは、
    ライトの中にある「日本」というもののこだわりだった。
    黄色のスクラッチブリックとテラコッタ。
    スクラッチブリックを常滑で作り、帝国ホテルが直営のレンガ工場を作る。
    それが、伊奈製陶に発展して行く。
    穴のある軽い石 大谷石を選ぶこだわりと彫刻ができる。
    ある意味では、日本人の匠の技量に期待すぎている面があるが、やり遂げる。
    スクラッチブリックとテラコッタと大谷石で、
    組み立てて、そのままコンクリートを流し込む。
    子供の頃の積み木が好きな ロイド・ライトらしい発想。
    そして、浮き構造によって、地震対策をする。卓越した能力。
    それにしても、こだわることで、建設費はどんどん増えて行くが、
    あまり気にしていない胆力が素晴らしい。

    ロイド・ライトと知り合った 林愛作。
    この男、セレンディピティに優れている。
    京都のたばこ王、村井吉兵衛に連れられて、アメリカに渡る。
    アメリカの富豪 ミスリチャードソンと会い、奨学金など援助を受ける。
    山中商会の創業者、山中定次郎とばったりあって、入社する。
    そして、ロイド・ライトと知り合いとなる。
    渋沢栄一と大倉喜八郎に、帝国ホテルの支配人として要請される。
    赤字の帝国ホテルを立て直し、ロイド・ライトに帝国ホテルの建築を依頼する。
    人の繋がりでは、どんどんと引き上げられて行く。
    芸術家ロイド・ライトを守るために、全力をあげる。
    覚悟を決めて、リスクを負うことで、困難を突破する。
    別館の火災、本館の火災にあって、結局は帝国ホテルを辞することになる。

    遠藤新の生き方も、西洋建築の模倣に飽き足らず、
    それをどう突破するのか、悩んでいたことが、林愛作そしてロイド・ライト
    に師事し、タリアセンで学ぶことで、西洋と日本のハイブリッドが理解できるようになる。
    谷口吉郎と土川元夫が、同級生で、帝国ホテルライト館を保存することに
    奔走して行く。そして、明治村に 様式を再現させる。
    帝国ホテルの魔力みたいなものを感じる。

    丁寧な作品作りで、どっしりとしている。熱が伝わった。

  • 物語は、フランク・ロイド・ライトが設計した帝国ホテルが取り壊されることになり、明治村に移築する、という話が浮上した1967年からはじまる。

    そこから一気に時代は巻き戻り、日本の良いものを外国に伝えたい、という思いから、フランク・ロイド・ライトに新たに帝国ホテルを設計してもらおう、という動きがはじまる大正まで遡る。

    遠藤新、林愛作、というふたりの情熱を持った男が主人公となり、いかにして帝国ホテルが作り出されたかが語られる。

    建築が好きで、ライトはもちろん遠藤新のことも、帝国ホテルが紆余曲折ありながら建てられたこともなんとなく知ってはいたけれど、それにしても改めてその建築の道程を知ると、艱難辛苦とはこのことか、と思う。
    事実は小説より奇なり、とはよく言ったもので、これが完全なるフィクションだったら「話ちょっと盛り過ぎでは」という山谷があるのだけれど、それが史実に基づいているというのだからすごい。もうなんか、よく建ったな、という気持ちになる。この時代の日本人の意地のようなものを感じた。

    建物好きには面白い一冊だった。

  • 今は明治村にある帝国ホテルの建設物語り。
    2024年から建て替えと聞き、気になったので読んでみた。

    帝国ホテルのとこは全く知らなかったが、1つのホテルを建てるのにあれだけの苦難があるとは驚きだった。立場も拘りも違う男たちの執念で出来上がったようなホテルで、いつか明治村に見に行きたい。

  • 本の福袋。近所の図書館の企画をみて手に取った。
    福袋の見出しは「もっと行きたくなる!帝国ホテル」
    2冊入っています。
    福袋を開けて、このうちの1冊がこの本だった。

    帝国ホテルのライト館は、フランク・ロイド・ライトが設計した建築物。くらいの知識しか無かった。このほんは、著名人の生前の想いや思惑が次々と登場する。
    ・佐藤栄作
    ・林愛作
    ・犬丸徹三
    ・大倉喜八郎
    ・遠藤新
    ・伊奈長三郎など

    構想から開業までの年月に起きた人間模様が立体的に描かれていて、建築に向けた執念や怨念がありありと伝わってくる。明治記念館に足を運びたくなった。

    本の福袋で読んだ本の組み合わせが秀逸であった。
    時代の推移がハード(建築物)、ソフト(接遇)と対比されたテーマの本を同時並行で読み進めたことで、帝国ホテルの魅力を深く広く知ることが出来た。

  • 2023.12 まぁいつもの感じでしたね。

  • 一行目:製図台が並ぶ事務所に、黒電話のベルが鳴り響いた。

    十数年ぶり!に行った、青山ブックセンターにて、フェアで文庫が紹介されていたので。
    帝国ホテルに特別な関心のない私でも、ライトの名前や火事なとのエピソードは知っていた。
    ただ、以前たまたま見た、安田顕が主演を務めた久田吉之助のドラマが印象的だったので、その行は特に面白く読めた。

    老朽化で多くの建物の取り壊しが進んでいるが、本作や辻村深月の東京會舘とわたし、も思い出し、人生を懸けて関わった人たちに思いを馳せた。

    • ニッコリマッコリさん
      「もっと行きたくなる!帝国ホテル」
      これが、近所の本の福袋2024のタイトルでした。

      福袋だけに中身の分からない本が2冊入ってるうちの1冊...
      「もっと行きたくなる!帝国ホテル」
      これが、近所の本の福袋2024のタイトルでした。

      福袋だけに中身の分からない本が2冊入ってるうちの1冊がこれ。
      フランク・ロイド・ライトが設計した建物がライト館とは知ってたが、他に様々な人たちの想いが詰まってたのだと気づかされる。
      ・佐藤栄作
      ・林愛作
      ・犬丸徹三
      ・大倉喜八郎
      など

      昭和を彩った著名人がどんどん出てくる面白さ。読後感もすごくポジティブ!

      この本がハード(建築物)、福袋のもう一冊がソフト(接遇)。対称的に読み進め、あっという間に完読。
      本のマリアージュってあるのだな。
      2024/01/13
  • インスタで見つけて、明治村の帝国ホテルが好きでよく写真を撮りに行っている友達の誕生日プレゼントの候補として、とりあえず自分で読んでみることに。。。
    
これが!すっごく面白かったです。

    明治村が犬山にあって身近なことや、常滑の焼き物も(INAXは帝国ホテルのレンガを作るところから始まったメーカーでした!ワオ!)登場するので愛知県民には縁を感じやすいストーリーなのですが、それを抜きにしても一つの建物がまるで生き物のようにいろんな人の人生を巻き込んでいく様が圧巻でした。

    明治村はもちろん何度も行っていますが、これを読んだらもう一度明治村のフランク・ロイド・ライトの意匠を見てみたくなりました。

  • フランクロイドライトで有名な帝国ホテルの竣工に至る迄の壮絶な物語。本当に凄い人間物語だと読み進めるうちに気持ちが重くなっていく
    常滑の黄色の煉瓦を作った伊奈長三郎はINAXの発祥
    この辺りのテラコッタ、煉瓦の製作苦労も取り上げてももう一つの物語があったと想像

  • 天才と付き合うのは、大変である。しかし、天才は、人の求めるもの、次世代の様子が見える。ライトもそういう人だった。明治村に行きたい。

  • 明治村が好きで何回か帝国ホテルを見ていたが、
    こんなに色々な人間模様や苦労があったとは
    知らなかった。ライトが最後まで日本で帝国ホテル
    を見る事が無かった事が残念だ。
    こんなにも明治村で最も愛される建物になるとは
    ライトが知っていたらきっと感激するだろう。

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著者プロフィール

静岡県生まれ。東京女子大学卒業。2003年『桑港にて』で歴史文学賞、09年『群青 日本海軍の礎を築いた男』で新田次郎文学賞、『彫残二人』で中山義秀賞。著書に『帝国ホテル建築物語』『万事オーライ』等。

「2023年 『羊子と玲 鴨居姉弟の光と影』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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