源氏将軍断絶 なぜ頼朝の血は三代で途絶えたか (PHP新書)
- PHP研究所 (2020年12月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569848280
作品紹介・あらすじ
なぜ源氏将軍は3代で終わったのか。鎌倉幕府開闢から最後の将軍実朝の殺害まで、源氏3代の骨肉の争いを、第一人者が詳細に描く。
感想・レビュー・書評
-
源頼朝・頼家・実朝の三代で途絶えてしまった「源氏将軍」の悲劇の歴史を辿る一冊。
明年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の余波で生まれた本ではあるのだろう(著者は『鎌倉殿の13人』の時代考証を担当する歴史学者)。
が、「大河ドラマ便乗本」にありがちな粗製濫造感は皆無で、さすがの濃密さである。
通り一遍の入門書の域を超え、歴史マニアも唸らせる内容(私はマニアではないが)。
中世史研究の最先端の知見を随所に盛り込み、源氏将軍三代についての誤った常識が次々と正されていく。
『吾妻鏡』を重要な史料として用いつつ、幕府の公式史書であるがゆえの偏り・潤色・曲筆について、バシバシ指摘していくところが痛快だ。
この著者の著作を読むのはこれで3冊目だが、この人は文章がうまい。学者の文章にありがちなわかりにくさがなく、キビキビとした歯切れ良いリズムを持った明晰な文体。
とくに、合戦について記述するところなどは、抜群の映像喚起力でグイグイ読ませる。それでいて、俗に流れることはけっしてなく、格調高い文章なのだ。
「誅殺」という古めかしい言葉が、随所に登場する。何とも血なまぐさい時代だったのだなァと、改めて思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
鎌倉幕府において、創設者で初代将軍の頼朝の血統は、
三代で断絶した。その三代の将軍についてと、権力闘争、
その後の将軍継承をも含め、史料を基に詳細に解き明かす。
はじめに・・・「吾妻鏡」の意図とその他の史料について。
第一章 源氏将軍の誕生
第二章 源氏将軍の継承
第三章 源氏将軍の確立
第四章 源氏将軍の試練と成長
第五章 源氏将軍断絶
終章 源氏将軍のその後
関係略年表、主要参考文献有り。
鎌倉幕府の初代将軍の頼朝から実朝までと、その後の将軍継承。
それぞれの政治と権力闘争の流れを史料を基に解明していく。
根本史料である「吾妻鏡」から潤色・曲筆をそぎ落とし、
「愚管抄」や「明月記」、様々な日記や書簡、発給文書等の
著作物や史料を調べて当時の状況を考察し、
他の研究者の説をも検証する様子が分かり易く、
まるで推理小説や戦記を読むような感じで楽しめました。
頼朝の、奥州合戦の状況や戦時から平時への体制の変化、
朝廷との関係、網の目の如くの婚姻関係。
頼家の、治世と宿老たちとの関係。
実朝の、「善政」と幕府首脳部との協調で安定した幕政運営。
親王将軍推戴への、実朝、後鳥羽、北条氏のヴィジョン。
だが、頼朝の急死や頼家の急病、実朝の暗殺の、想定外の
出来事が、政権に混乱や対立を招いた。
特に、対立による乱の有り様は凄まじい。
比企の乱、謀叛の疑いで滅亡した畠山氏、和田合戦の凄惨なこと。
また、実朝暗殺当日の状況を「吾妻鏡」と「愚管抄」で比較し、
事件や黒幕を検証し、考察していくのも、ドキュメンタリーの
如くの分かり易さで、興味深く読めました。 -
実朝と後鳥羽のビジョンおよび実績が示されている。
別史料に照らし合わせて吾妻鏡を裏読みしていくプロセスも面白い -
ドラマ鑑賞の参考に読む。この時代を舞台に書かれたものを読んだのは太宰の『右大臣実朝』だけ。
背景に馴染みがなく、読み続けるのに苦労した。とりあえず実朝のイメージが真逆に提示しているのだけはわかった。実朝は公暁に暗殺されて死ぬことになるのだが、このご時世であの場面をドラマ化できるのか。別の方に興味が湧いてきた。 -
この時代の歴史研究は、やはりというべきか残存史料が後世に比べて少ないので、その解釈のやり方、あるいは新史料の有無とその扱い方で、どう描かれるかだいぶ違ってくるのだな…と感じた一冊。坂井先生は割と大胆な方という印象。
-
三代に終わった鎌倉幕府の源氏将軍について、頼朝による将軍家の成立とその指向性、頼家による継承と実朝による源氏将軍の確立とその消滅にいたる流れを紐解く内容。吾妻鏡の曲筆の検証を通じて行われる頼家・実朝の再評価が興味深い。
-
摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50225560 -
#英語 だと Extinction of Genji Shogun でしょうか?
著者は #鎌倉殿の13人 時代考証者
「新解釈」でドラマ化されるのでしょうか?とても楽しみにしています! -
なぜ源氏将軍は三代で途絶えてしまったのか。その謎に迫る本。