- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569848600
作品紹介・あらすじ
殺人犯の「元少年」が出所して書いた告白本は、本当に本人が書いたのか。『書店ガール』の著者が、書店を舞台に描くミステリー。
感想・レビュー・書評
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てっきりビブリオミステリーだと思って図書館にリクエストしましたが、読んでみたら全然違う未成年者による猟奇殺人の話だったのですが、せっかくリクエストした本だし(泣)最後まで読みました。
書店で契約社員として働いている椎野正和は17年前に中学の同級生の田上紗耶香が死我羅鬼潔と名乗る隣の家の少年に猟奇殺人によって殺されています。
隣の家の藤本創(はじめ)こそが犯人であり、創の弟の祐(たすく)と正和の弟の秀和は親友同士でした。
マスコミは正和の指紋が出たという警察の調べにより椎野家にも押しかけ、一時は共犯の可能性を示唆された忌まわしい事件。
その創は出所して17年後の今になって告白本を出版し、正和が働く書店にもその本が入荷してきます。
正和は最初は見るのもおぞましく感じた17年前の事件の本ですが、同級生の加藤つぐみと17年ぶりに会ったり、週刊誌のライターの青木につきまとわれるようになり、つい問題の告白本を読んでしまいます。
そこで、正和は殺人現場である学校の描写などの違いから告白本を書いたのは本人ではないということに気が付きます。
では告白本を本当に書いたのは誰なのか…。
最後はとんでもない結末でした。
『贖罪』という言葉の重みには軽々しく口にできないものがあるのだということがよくわかりました。
あまり気分がよくなる本ではありませんがミステリーとしてはよくできていると思いました。
そしてまた、実際にあったこのような猟奇的殺人事件でも、確か告白本が出ていたことを思い出し、事件の重さを考えさせられました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
まずはタイトルに驚いた。書店員が主人公で、2つの罪を侵したことが読む前からわかってしまう。もう少し良いタイトルはなかったのかと思いながらも読み進めていくと、これがなかなか面白い。
意味深なプロローグから始まった(終盤まで考えさせられた)物語は、やはりお目当ての書店員が登場し、進行していく。
書店員の正和は、ある事件から逃れるように地元名古屋から出て東京で書店員をしている。その正和の書店に入荷した本を見て正和は逃げ出した過去と向き合わざるを得なくなる。
正和が中学生の頃、同じ中学校の女子が殺害され、その切断された頭部を校庭に置くという残忍な事件が起こった。その事件の加害者は同じ中学校の男子であり、正和の幼馴染の創だった。
幼馴染ということもあり、正和の共犯が疑われ、正和も弟もイジメに遭い、弟はそれから引きこもりになり、正和は地元を捨て東京に逃げた。
そんな過去を持つ正和の書店に入荷されたのは、その事件の犯人が書いたとされる告白本だった。
ここから正和が事件と向き合うわけだが、その過程でまた新たな事件が起こる・・・。
読み終えた今、正和の犯した二つの罪について考えてみる。あれ?二つってどれとどれのことだろう?読み終えてなお、この小説と向き合うことになる。うーん。このタイトルは成功したと言わざるを得ない。 -
この著者の『書店ガール』を先に読めば良かった… 。読了後、なんとも言えない重苦しさが残った。
『告白 名古屋東部女子中学生殺人事件 死我羅鬼 潔著』が発売された。犯人の告白本により書店員、椎野正和は封印したはずの17年前に引き戻されていく。
なぜ幼なじみの創はあんな事件をおこしたのか?クラスメイトの沙耶香が選ばれた理由とは?
共犯者と疑われマスコミに追われた正和は名古屋を出て一人東京にやってきた。
書店員の日常がよくわかる。話題本や有害図書の扱い。書店と版元の利害関係などに興味を惹かれた。書店大賞授賞式には全国から書店員が集まる。交流の場での会話や名刺交換会がリアルで、近づく本屋大賞の日もきっとこんな感じだろうと想像を膨らませながら読んだ。
雑誌記者の青木が残した取材ノートから真実が徐々に明らかになっていく。
"言わなかった罪"と"言う罪"の重さを問うラスト。母親からの呪縛の言葉がいつまでも消えず胸が苦しくなった。
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中学生時代、猟奇殺人事件に巻き込まれた主人公・椎名正和が、17年後犯人の告白本によって再び関わることになり、自身でその"謎"を追う物語。中学生によるこのような事件は、過去に実際起こっているので、興味深く読んだ。最終的な解決がイマイチだった。
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「スタンドバイミー」形式のサスペンス推理小説ですね‼️
東京の書店に勤務する正和は、中学生の時に隣に住む幼なじみ同級生が犯した猟奇的殺人事件に巻き込まれる⁉️
動機解明の謎を主題にした小説ですが、推理小説で「動機」ほど難しい問題は無いでしょう❗
本当の「動機」は犯人にしか分からない、犯人すらも確かな「動機」を持ってない事も有りうるから、本格探偵推理小説では「動機」は後回しにされることも有るくらいです⁉️
難しい課題に取り組んだ力作ですね✨
作家さんの書店員への愛着は並々ならぬものがあるのが良くわかる作風なので、シリアスながら興味深く読み進めました -
書店員が中学の時に起こった殺人事件。
その犯人の告白本を書店で手にした時に封印してた彼の心の中は、穏やかではいられず…
そこから書店員を中心に物語は始まるのだが、展開に引き込まれて一気読み。
本屋に関する売り場のことやバイト君の悩みなども挟みながらの少し楽に読める部分もあり…で。
そこは、書店員とタイトル通りなのか、と。
そして、二つの罪も最後に明確となるが、なんとも言えない複雑な思いの残る罪である。
母親の思いがなんともいえず…
消化しきれない。
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多分初めましての作家さん。プロフィールを見たら、「書店ガール」の方でしたが、「書店ガール」も読んだことはなく…。他の方のレビューを読むと、他の本でも書店員がよく出てくるとか。この本も主人公はカリスマ書店員。
ただ、物語の背景は、世間を震わせる少年犯罪なので、実際にあった事件を彷彿とさせるものがあり、楽しく読めるものではない。いや、物語と思って切り離して読めればいいんでしょうけどね。
とにかく改めて分かったことは、事件の大きい小さい関係なく、被害者だけでなく、その事件の周りの人達は皆ずっと苦しみ、悲しみ続けているということ。そして世間が忘れてくれることを祈ってひっそりと生きている。
と、ちょっと重かったですが、読みやすかったので他の作品も読んでみようと思います。 -
17年前の殺人犯が出した告発本。
書店員の正和はこの本が納品されたことから、17年前に起きた残酷な殺人事件の解明に巻き込まれていく。
彼自身、この事件が起きた中学校の出身であり、加害者と幼馴染であり、被害者と同じクラスであり、共犯者ではないかと当時疑われていた。
名古屋が事件の舞台だが、事件自体は、神戸で起きた事件を彷彿させるよう。
真実を明らかにすることが残された家族にとって、本当に正しいことなのか。
話題性のみのセンセーショナルな本を出す意義とは何なのか。
読んでいる時は知りたくない、でも、知りたいという気持ちから本を読むのをやめられなかった。
ざわざわとした気持ちで読み終えた。
作中、実在する地名や施設名称とアルファベット表記とか混在していて、特に名古屋の表記は違和感を感じた。
片思いの同級生が勤めていた図書館名はぼかしても良かったのでは? -
初めのうちは、どんなにおぞましい本でも収益のために売らなければならない書店員の苦悩の話かと思っていたが、実はもっとすごい本格ミステリーだった。誰にどんな罪があるのか、その重みを誰が受け止めるのか。なかなか難しい問題を提起された。