中国ぎらいのための中国史 (PHP新書)

  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569857787

作品紹介・あらすじ

1800年ぶりに「諸葛丞相」復活?/元寇を知らない中国人/美少女ソシャゲに李白の漢詩登場/孫子の兵法で反体制暴動を鎮圧/台湾有事は始皇帝が原因?/一帯一路で長安に朝貢国集結「儒教道徳の先生」と化す共産党/「隴西の李徴」の後輩が大学受験で無双/横暴中国の根はアヘン戦争/悩める若者が毛沢東に頼る……。

これは“現代中国”の本だ!

三国志、元寇、アヘン戦争……。
これらの単語は、日本では小中学生でも知っている。
『キングダム』や『パリピ孔明』をはじめ、中国史が題材のエンタメも大人気だ。
いっぽう、現代日本人は中国が「嫌い」だ。
内閣府の最新の世論調査では、国民の約9割が中国に親しみを感じないと回答。
多くの人にとって、歴史の中国と現代の習近平政権の中国は「別物」の存在である。
ただ、その考えは中国側では通じない。
現実の中国は歴史の積み重ねの末に生まれ、社会の底流に歴史が流れ続けている。
中国共産党すらそれを意識して政策を決定し、習近平は演説に古典を引用し続ける。
諸葛孔明、始皇帝、孔子、孫子、元寇、アヘン戦争、毛沢東まで。
現代の中国社会と中国共産党は、自国の歴史をどう見ているのか。
令和日本の中国報道の第一人者による、渾身の中国史論!

感想・レビュー・書評

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  •  予想どおり面白い。中国の現代政治や社会、若者文化にすらもよく歴史や古典が出てくるとは思っていたが、中国では歴史と現代がこれ程密接なのだと実感。テレビ番組でのマルクスと孔子の対話には失笑したが。
     政治の正当化に歴史を利用したり自由な歴史研究を制限したり、は習近平時代は特にそうだろう。ただ漢詩好きな点などを見ると、政治とは別にしても、そもそも中国人にとり歴史が身近な存在なのだろうと思う。
     本書のトピックは、細部はともあれ概略は一般の日本人でもそれなりに馴染みがある。元寇の扱いや、隋唐拓跋国家論など、日本で一般的な内容が中国ではずいぶん異なる点もあるとしても。

  • Chinaに好意を持たない日本人は、9割に上るという。
    だが日本人は、三国志とか諸葛孔明は好きだ。
    日本人は、過去のChinaと今のChinaを別物として捉えているが、過去のChinaの歴史の上に今のChinaがあるのであり、特にChinaにおいては、歴史と古典は、実学として非常に大切なのである。

    一見とってもいいことを言っているように聞こえるが、読んでみればほぼ、内容がない。
    Chinaの歴史とか、古典についての雑学を散りばめた一冊にしかなっていない気がする。少なくとも著者の意図は成功していないように思えた。

    歴史とか人物が現代近いのが彼の国とか言ったって、上澄の何人かが政治的にそうであったって、全体の「人民」があれやん。
    上っぱりの知識を羽織った、あれやん。
    過去に学んでいるというか、ほぼ科挙で、過去の言葉覚えて自分で考えへんあれやん。自己肥大のアレやん。

    別段、三国志が好きといって、歴史じゃなくてフィクションでしょう。
    素材として面白いからと言って、別その歴史に興味があるわけじゃなし、ましてや今のChinaとの関わりなんか、一切興味がない。興味持たせるんなら、もうちょっと本の構成考えた方がいいように思う。
    なんか勘違いしてませんかね。

  • 東2法経図・6F開架:222.01A/Y62c//K

  • 安田峰俊さんは本当に「読ませる文章」が上手な方で、この本もすらすらと読めるのだが、内容と問題提起は常ながら実に深い。

    なぜ諸葛亮の南征が、現代中国で肯定的に受け止められるのか。
    中国の情報工作「認知戦」と紀元前に書かれた「孫子」の関係は。
    「原神」のセリフや固有名詞は、なぜ中国古典や漢詩を踏まえているのか。

    習近平は演説でしばしば古典を引用するが、「中国において歴史とは、現代の問題を肯定したり否定したりする材料として活用する対象だ」と安田氏は説く。

    本書によると、日本には中国を、東洋史学、中国文学、哲学の観点から研究する「シナ学」(シノロジー)が存在したが、「2度にわたる痛恨の体験」で、その手法はすたれてしまった。

    蔑視と憎悪のトンデモ論を排し、シナ学的の手法を示すことこそ、現実の中国に相対する武器になるのだ――という著者の主張に深く賛同したい。

  • 中国史や漢詩を読むのは好きだが、現代中国は嫌いだ。私もそうだ。それは当たり前でいいのだが、その二つを別々に考えてはいけない。常に結びつけて考えるべきだという。それは分かるが実際にはどうすればいいのか、そこにトライしたのが本書であるはずだが、そううまくいっているとは思えない。
    ただ知らなかった事実はいくつかある。例えば諸葛宇傑なる人物が、将来有望かもしれないこと。2023広島サミットと同時に、中国西安で中国中央アジアサミットを開いていたことなどなど。興味深い話が出てくる。この著者はフォローしたい。

  • 精力的に書き続けている中国・アジアルポライター安田峰俊の最新の一冊がこの『中国ぎらいのための中国史』。リアルにお会いしたことが何度かあるということで、応援の意味も込めて安田さんの本は全て購入しているが、本作は安田さんに取ってはホームともいうべき中国史に関する久しぶりの書籍だ。

    ライターとしての安田さんの持ち味は現地取材や現在進行形の出来事を咀嚼し、中国国内の論理に照らし合わせて解説することだ。その安田さんが書くのだから、中国史に関する本といっても必ず現代に関する内容が入ってると想像していたが、 その想像通りに本書は中国の歴史的な事項が、現在においてもどのような意味を持つのかと言う観点から中国史を解説している。 中国史と言ってもいわゆる通史を書いているわけではなくコラムの集積という感じなので、中国に興味を持っている人であれば、あっという間に読むことができるだろう。

    参考のために目次をあげれば、本書で取り上げる内容が大体わかると思う。

    第一章: 奇書(諸葛孔明/水滸伝)
    第二章: 戦争(孫子/元寇/アヘン戦争)
    第三章: 王朝(唐/明)
    第四章: 学問(孔子/ 科挙/漢詩と李白)
    第五章: 帝王(始皇帝/毛沢東)

    この目次を見れば分かる通り、本作では日本人が名前ぐらいは知っているけどよくはしらない、だけど中国では(学校教育の影響もあり)よく知られている題材を取り上げて、それぞれが現代中国でどのような意味があるのかを語っていく。こういう並びを見ると、ルポライターというのは題材選びが重要なんだなということを教えられるような気がする。

    また安田さんといえば、真面目な考察の中にばかばかしいネタを放り込んでくることで文章の緩急をつけることが得意なライターだが、本作でも冒頭から「諸葛の姓を持つ人間が現在の共産党幹部に存在している」といういかにもなネタからスタートする。他にも日本でも人気のゲーム「原神」から題材を取ったり、始皇帝の部分では『キングダム』への言及を 忘れないなど、しっかり抑えるべきところを抑えていると言うところにニヤリとしてしまう人も多いだろう。


    一方でこちらも同じく安田さんの本らしく、現代中国への批判的な視点をつけることも忘れていない。中国生活をしたことがある人ならわかると思うが、本作でも述べられているように、大学生以上の教養を持つ人間にとっては中国の歴史や漢詩というのは共通言語のようなもので、それを使った社会批判や権力闘争が行われていることを面白おかしく書いている。

    ちなみに小学生でも漢詩を誦じれるというと日本人にとってはかなり驚きだが、我々だって「春はあけぼの」とか、「古池や蛙飛びこむ水の音」とかは普通に知っているわけで、文化に紐づいた教養というはそういったものなんだろう。トップクラスの大学に受かるレベルの人だと「漢詩でしりとり」をできたりするくらいなのだ。

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著者プロフィール

ルポライター

「2023年 『2ちゃん化する世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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