ネバーランドの向こう側

  • PHP研究所 (2025年6月30日発売)
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本 ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784569859408

作品紹介・あらすじ

文化センターで働く30歳の実日子。実家で何不自由ない生活を送っていたが、両親が交通事故で亡くなり、母方の叔母と同居することに。箱入り娘で、家事ができず、世間知らずな実日子と合理主義の叔母は全く波長が合わず、実日子は人生初めての一人暮らしを決意するが……。新居であるメゾン・ド・ミドリで出会った大学生サイトーくんや声優の新田さん、お見合い相手の椎名さんとの交流の中で、実日子は少しずつ強くなっていく。
大人になり切れない大人の葛藤と進歩を描く、ハートフルストーリー。

感想・レビュー・書評

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  • Amazonの紹介より
    文化センターで働く30歳の実日子。実家で何不自由ない生活を送っていたが、両親が交通事故で亡くなり、母方の叔母と同居することに。箱入り娘で、家事ができず、世間知らずな実日子と合理主義の叔母は全く波長が合わず、実日子は人生初めての一人暮らしを決意するが……。
    新居であるメゾン・ド・ミドリで出会った大学生サイトーくんや声優の新田さん、お見合い相手の椎名さんとの交流の中で、実日子は少しずつ強くなっていく。
    大人になり切れない大人の葛藤と進歩を描く、ハートフルストーリー。



    突然の事故により、両親を亡くした主人公。生活をするにも、箱入り娘として育ったので、何も出来ずじまい。
    叔母が家に来たことで、主人公は新たな行動を起こしていくのですが、心温まるストーリーでした。

    ただ、小説なので、トントン拍子に良い展開へといくので、ちょっと現実的ではないなと思ってしまいました。

    新しい場所では、変な人だと思っていた人が実は良い人といった明るい話がほぼ占めています。ダークな部分は叔母の部分ぐらいなので、安心感や読みやすさ、癒しはありますが、「現実的にこれは無いな・・」などファンタジーっぽく捉えてしまいます。

    しかし、その一方で、大人が抱える悩みが繊細に描かれているなと思いました。年齢を重ねるにつれて生じる不安や決断など大人としての様々な関門があるのですが、どのようにして超えていくのか、そのヒントが書かれているなと思いました。

    この作品では、仲間や窮地に陥ったときの反発といった時に決断していきます。結局のところ、どうにかなれるんだなと思いました。仲間といっても、親しい仲だけでなく、近所の話せる人でもよいので、悩みを打ち明けることが大切であったり、新しいことに挑戦することも大切であると思いました。

    今迄箱入り娘だった分、新たな「大人」として成長した主人公にとって、一人暮らしは大きな転機でしたが、読んでいて心温まりました。

    前途多難でしたが、色んなものを吸収することで、違う自分を引きだせることができますし、私自身も何か頑張ってみようかなとも思いました。

  • 「大人になること」とは何かを静かに問いかける、幻想と現実が交錯する心温まる物語です。

    ピーターパンの物語をモチーフにしつつも、単なるファンタジーではなく、誰もが通る“子どもから大人への過渡期”に潜む不安や葛藤、そしてそれに伴う痛みや希望を丁寧に描いています。

    主人公たちは皆、何かしらの「喪失」を抱えており、それが読者の心にも自然とリンクしてくるのが本作の魅力。
    ノスタルジックな雰囲気と、透明感のある文体が相まって、物語全体に優しい余韻をもたらします。
    誰かにとっての“ネバーランド”とは何か、そこから「向こう側」へ進むとはどういうことなのか――。
    日常の中にある小さな奇跡や、過去と未来の接点を見つめ直したくなる一冊です。

    ネタバレせずに言うなら、「読後、静かに自分自身と対話したくなる物語」です。

  • PHPでの連載も読んでいて、実日子に対する最初の印象は「あ、うちの子どもになんか似ているかも」でした。

    そんな日常生活もままならない実日子を我が子を見守るような気持ちで読んでいましたが、やさしさはそのまま、でも「大人」になるために身につけないといけないものも自分のものにしていつの間にか「どこへでも」行けるように成長したのをまぶしいと思って読み終えました。

    連載時にも声を出して笑った新田さんのトイレットペーパーのくだり、メゾン・ド・ミドリの素敵なロビー(自分で思い描いていたと勘違いしていたけどPHP連載時のイラストだった。本当にすてきなイラストでした)などなど小さなエピソードも相変わらず気が利いていて、ああ佐原ひかりさんの小説だーとにやにやしながら読みました。

    連載にはなかった所長のエピソードがちょっと苦しかったけれどもそれは実日子が「向こう側」に行くためにとても重要だと思ったし、実日子のやさしさだけではない気持ちがあふれていてすごくよかったなと思いました。

    そしてなんといっても椎名さん!マイペース中のマイペースなのにここぞというところで的確なことを言ってくれる大好きなキャラクターでした。

    PHP連載時の「天国よりも、どこへでも」というタイトルをえらく気に入っていて(「どこへでも」は本作ですごく大きな意味を持っています)、改題したのなんでだろうと思っていましたが、読み終えてすごく納得しました。

    そして最後の実日子の決断に「乾杯」です。

    読みながら自分にある実日子のおばさまみたいな気質が自分にもあるよなーとか、自分が突然死んでもいいように自分の子どもも実日子のようにどこへでも行けるようになってほしいななどとも思いました。

    佐原さんの最高傑作ですという感想も見かけたけれども自分もそんな気持ちになりつつあります。オススメです。

  • やわらかく繋がる人間関係の物語。

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著者プロフィール

1992年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部卒。2017年、第190回コバルト短編小説新人賞を受賞。2019年、第2回氷室冴子青春文学賞大賞を受賞、『ブラザーズ・ブラジャー』で一躍注目を集める。

「2022年 『ペーパー・リリイ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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