はらぺこ 美味 時代小説傑作選 (PHP文芸文庫)

  • PHP研究所 (2022年10月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784569902487

作品紹介・あらすじ

シリーズ累計35万部突破!
うまいものには“謎”がある!?
みたらし団子、猪鍋、菜の花飯……旬の女性時代作家による江戸の料理×人情アンソロジー。
●「福袋」(朝井まかて)
妻と離縁をしたいが、持参金を使い切ったために別れられずにいる乾物屋の旦那。食べすぎで出戻ってきた姉を大喰い会に参加させ、賞金を手に入れようとするが……。
●「びっくり水」(中島久枝)
正吉は腕の良い菓子職人だが、めったに働かず、困った女房のお里が代わりに作るも、客からは文句を言われてしまう。このままでは奉公に出されてしまうと考えた娘のおみちは、父親の本当の気持ちを試すために、ある作戦を行おうとする。
●「猪鍋」(近藤史恵)
つわりで何も食べられなくなった年下の義母のために、流行の猪鍋屋を訪れた同心の千蔭。評判通りの味に義母の食も進み、ひと安心するも、千蔭は猪鍋屋の騒動に巻き込まれることになり……。
●「桜ほろほろ」(五十嵐佳子)
旗本の奥方に仕え、独り身を貫いたさゆ。五十五歳で奉公先を退いて実家の世話になったものの、毎日が退屈なさゆは、反対を押し切って茶屋を始める。そんな中、夫を亡くし、口うるさい姑に悩む女性と出会う。
●「糸吉の恋」(宮部みゆき)
岡っ引き・茂七の手下である糸吉は、菜の花畑で泣いている娘を見かける。話を聞くと、菜の花畑の下に赤ん坊が埋められているという。茂七に注進するも、それは作り話だと突き放され、むきになった糸吉はひとりで調べを進めるが……。

感想・レビュー・書評

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  • 出汁は土佐の鰹節、昆布は松前、醤油は銚子の亀長、大根は練馬の産、大納言はたんば、砂糖は琉球の黒、青海苔は浅草、、、
    乾物屋の娘お壱与は、不器量で鈍重で、おまけにやっと嫁いださきから「大食い」のため離縁されるという始末であった。唯一の特技「大食い」という特技を活かして、弟のため賞金稼ぎをしていたが、お壱与の食べ方は“食べ物を粗末にする“食べ方ではなく、ひとくちひとくち、産地を言い当てるほどに味わう。
      朝井まかて『福袋』

    「小豆の一番おいしいところはさ、皮の近くなんだ。鮭だって、皮のところごうまいだろ。それと同じだよ。そのおいしいところを、上手に使っているのが粒あんだ」
     中島久枝『びっくり水』

    「あの猪鍋が美味しかったのも当然でございますね。あれは食べてはならぬものだったのですから」
     河豚と同じで、危ないものは上手いのだ
      『猪鍋』近藤史恵

    長年女中として武家の料理を取り仕切り、辞したあと、還暦近くなって、一代決心をして、お団子とお茶だけのお店を開いたさゆ。お代は少し高いが、心を込めて蒸したお団子とひとりひとりに合わせたお茶のおもてなしが評判を呼ぶ。
      『桜ほろほろ』五十嵐佳子

     菜の花の黄色は眩しく、その茎のお浸しはほろ苦い。まるでどうにもならない初恋のよう。
      『糸吉の恋』宮部みゆき

    見栄えが悪くても癖があっても噛めば噛むほど味のある女。毒“と“美味“が裏腹の人生。そしてそれは“食“と同じ。美味しい、江戸時代小説のアンソロジー。

  • 第一線で活躍中の女性作家による"美味"をテーマにした、時代小説アンソロジー。

    《はらぺこ 》朝井まかて 「福袋」所収
    《びっくり水 》中島久枝 書き下ろし
    《猪鍋 》近藤史恵 「寒ツバキゆれる 猿若町捕物帳」
    所収
    《桜ほろほろ》五十嵐佳子 書き下ろし
    《糸吉の恋》宮部みゆき 「〈完本〉初ものがたり」
    所収

    2篇の書き下ろし以外の3篇は過去に読んでいた。

  • 積読歴多分2年くらい
    そろそろ読まなきゃと手にとった

    朝井まかて
    中島久枝
    近藤史恵
    五十嵐佳子
    そして、宮部みゆき
    5人の作家による
    食べ物づくしの時代小説アンソロジー

    近藤史恵「猪鍋」が良かった
    スキマ時間にちょうど良いボリューム
    でも、心なしかどの作品も終わり方が唐突
    アンソロジーはやっぱり苦手だ

  •  今回もどの作品も面白かったです。

     その中でもミステリ作家でもある近藤史恵さんの『猪鍋』が気に入っています。こちらはシリーズものだそうなので、次に本屋さんへ行ったときに探してみようかなと思っています(´∀`*)ウフフ
     南町奉行所定町廻り同心の玉島千蔭。それなりにいい年なのに、女性の影など全くない人物で、己が見合いした相手が父親の後妻収まる始末。
     その後妻・お駒がめでたく懐妊。だが、悪阻が酷く、ほとんど食べることが出来なくなってしまった。困った千蔭は知り合いの役者である水木巴之丞に相談。彼が紹介してくれたのは、『乃の字屋』という猪等の肉を食べさせる店だった。
     ですが、お駒も家族も全員、料理に満足して、お駒の悪阻もよくなってくるのですが……。
     その翌日、『乃の字屋』で刃傷沙汰が起り、そして食中毒が起ってしまうのです。
     そのわけは……。

     ミステリと美味って相性がいいなぁと思いながら読んでました。そして千蔭の新たな見合い相手が面白い人物で(笑) 楽しく読ませていただきました。

     五十嵐佳子さんは初読みの方でしたが、この方の『桜ほろほろ』も素敵な作品でした。大店の薬種問屋の娘だったさゆは旗本の池田家の奥方に仕えて、五十五歳の時に退いて実家へ戻るのですが、大事にしてくれるけれども、毎日が退屈。
     そんな彼女は旧友に出会ったことで茶屋『蒲公英』をやることに。値段も安くて、美味しいお団子もつくという店は繫盛するのですが、ある時、彼女は漆器屋の『光風堂』のおかみ・きよと出会うのであるが、口うるさい姑と夫に死なれた切なさを抱えたきよにさゆが差し出したものは……。
     この話を読んで、人には誰にもこうした料理が一品でもあるよねとしみじみ。
     そして白玉粉でつくるお団子のおいしそうなこと! 作ればいいんですけどね、手間のかかる料理は今はつくりたくなーい!
     だれか食べさせてくれないかぁとか、思いながら本を閉じたのでした。

     ごちそうさまでした、どの作品も大変おいしゅうございました(*^^*)

  • 2022年10月PHP文芸文庫刊。時代小説傑作選シリーズ11作目。朝井まかて:福袋、書き下ろし中島久枝:びっくり水、近藤史恵:猪鍋、書き下ろし五十嵐佳子:桜ほろほろ、宮部みゆき:糸吉の恋、の5つの美味しい食べものの連作短編。朝井さんの福袋が、楽しい。近藤さんは本編を読まないと…に走るのは必至。今回も書き下ろし2編というのは豪華。

  • 時代小説のアンソロジー
    どの話しも読みやすかった

    糸吉の恋 宮部みゆきさん
    町の色、雰囲気、ほどよいお節介が伝わってくる
    描写はさすが
    宮部みゆきさん作品のファンにはたまらない
    人物も出てきてにんまりした

  • 寝る前に一つずつ読みました。
    どのお話も引き込まれ、日中の仕事のゴタゴタを忘れさせてくれました。

  • 江戸の食生活を知りたくて読んでみたけど
    そんなことはあまり書いてなくて
    言葉の違いとか
    意味とか理解するのに時間がかかった。
    上方訛りならまだしも
    江戸の役職とか、
    分かりにくくて
    詰まった。

  • 【収録作品】「福袋」(朝井まかて)/「びっくり水」(中島久枝)/「猪鍋」(近藤史恵)/「桜ほろほろ」(五十嵐佳子)/「糸吉の恋」(宮部みゆき)

    「福袋」は『福袋』、「猪鍋」は『寒椿ゆれる 猿若町捕物帳』、「糸吉の恋」は『〈完本〉初ものがたり』からの一篇。「びっくり水」と「桜ほろほろ」は書き下ろし。
    新旧取り混ぜたアンソロジー。旧作品は久々に読んで懐かしかった。

  • 何となくそそられて手に取りましたが、時代小説アンソロジー、シリーズになっているんですね。いろんな作家さんのぎゅっと詰まった心づくしが味わえて満腹になれました。

    まかてさんの「福袋」だけどこかで読んだ記憶がありましたが、その他は初見。五十嵐佳子さんの「桜ほろほろ」が沁みる。近藤史恵さんの「猪鍋」もユニークな家族構成で好き。

  • 桜ほろほろ…五十嵐佳子
    初めて読んだ作家さんだと思う。良かったです。他の本を探して読んで見ようかな。
    猪鍋…近藤史恵
    糸吉の恋…宮部みゆき
    どちらも面白かった。ちょっとミステリーっぽいところが好きです。

  • 勿論どれも面白かったが、企画ものの弱さか寄せ集め&中途半端感が否めない。宮部みゆきと朝井まかての納得の安定感。近藤史恵作は登場人物の組立がピカイチだったが(「はらぺこ」企画だから当たり前なのだが)食べ物に絡む謎解きが中心になってしまって、唐突な終わり方がとても勿体ない。

  • 美味しいご飯の出てくる時代小説短編集なんだけど、どうも私には『ダメ男』でくくってるように思えてしまった。出てくるお菓子もご飯もあぁ美味しそうと思うのに、話に集中すると腹の立つバカ男のなんと多いことか。時代なのか私の性格なのか、最後は落ち着くとはいえイラつく場面が多かった。

  • 時代小説って、なんか少しとっつきにくいと思っていたけど、それぞれの話の面白さや背景の違いが興味深くて、すらすら読めた。

  • 時代小説だけど、昔は昔の成りに美味しい物を食べていた、今はおいしいものといっても、人それぞれ好みもあるし、何が美味しいかは、人によって違う。ただ自分の好きなものを食べるこんな日常を維持して行くのが幸せに繋がると思う。

  • 女性作家 5人の時代小説!
    3人は、毎度、楽しみに読んでいた作家!
    新しく読む中島久枝氏と五十嵐佳子氏!
    題名の『はらぺこ』から、料理にまつわる話と思いながら、本の扉を開ける!

    「福袋」これは、以前読んだことがある!
    しかし、主人公のお壱与。
    食べっぷりに惚れ惚れしてしまう描き方!
    本当に、テレビ番組でも、食べ方や箸の持ち方も綺麗な所作で、顔色一つ変えないで、食している姿が、脳裏に浮かぶ!
    そこに、出来の悪い弟。
    仕事もせずに、妻帯者なのに、他の女に現を抜かす。
    姉の方が、自分の培った家の味、香り、味覚を武器に、自分で、人生を切り開こうとしている点が、小気味よい感じであった。再読。

    「びっくり水」
    一昔前、料理番組を見ていた時に、びっくり水を入れて!と言われた若い方が、蓋を取り「わっ!」と、叫んでびっくりした!
    びっくり水の事を知らなかった見たいで、後で笑い話みたいと、感じた!
    でも、これを読んだ人も、知っていない人もいるかも…と、老婆心ながら思った次第である。
    この話も、出来の悪い男。
    見栄えも良い、仕事の和菓子の餡子を炊くのも上手いのに、気儘で、余り仕事もせず、外で遊んでいる。
    家庭で、ぎりぎりの生活になると、仕事をするけど。
    それでいて、外面が、良いのだろう、家の蓄えも、他人に貸してやる。
    子供の事も全然気にしてないわけでないから、このような男の相手は大変だと思いながら、読み終わって何が書きたかったのだろうと、思ってしまった!

    「猪鍋」
    武士社会、家督相続は、長男。 
    自分より一回り下の女性が、父と、再婚、そして妊娠!
    難しい家系であるが、嫌みも何も無く、おおらかに過ごしている。
    そして、つわりの酷くて食の細くなった義理のは母を案じて、猪鍋に連れて行く!
    主人公の千蔭の大らかさと、見合い相手のサバサバした対応。
    そんな中、この猪鍋の店での秘伝の味にまつわる話が、挿入されて旨い物には、危ない物が、含まれるというおちに!

    「さくらほろほろ」
    初めて読む作者であるが、風景などの描写が、上手い!そして、さりげなく、祝い膳をする還暦、古希、喜寿、傘寿…の話も、若い方にも、わかるように記載されている。
    この当時の 行儀見習いに 武家屋敷に奉公の主人公。
    お屋敷に暇を告げ、実家に戻るが、ここでは、皆 優しい人物ばかり。
    でも、じっとしていられない主人公
    さゆが、始めたお茶と団子の店。
    そんな中で、縁で知り合った漆器屋の女将。
    故郷の味を、さりげなく出す里の優しさ。
    いいねえ!
    シリーズ物になって欲しい作品である。

    「糸吉の恋」
    回向院の茂七のシリーズだった。
    岡っ引きの話であるが、好きになった女性が、菜の花畑を見て、その悩みを打ち明けるのだが、…
    複雑な事情が、絡んでおり、その女性の精神疾患が、もたらす思い。
    糸吉は、ほぐしてやれるのだろうか?
    菜の花料理が、登場するが、お浸ししか、口にしたことがない。
    菜の花も、見る機会が、少なくなって来たと思いながら、本を閉じた!

    再読した本もあったけど、楽しく読んだ一冊である!

  • 近藤史恵さん、五十嵐佳子さん、宮部みゆきさんの話は悪くはなかった。
    ただ、朝井まかてさんと中島久枝さんのはイラッとした。
    いくら優しい父親でも、働きもせず、家事もせず、妻が働いてコツコツ貯めた金を自分の友人に渡すとか、クズすぎる。

  • 福袋・朝井まかて 大喰らいの出もどり、味わって食べた
    びっくり水・中島久枝  菓子屋の正吉は商売をサボりがち、でも
    猪鍋・近藤史恵  父の妻は19歳、悪阻がひどくて、猪鍋を食べることに、その店が食中毒を
    味の決め手は毒キノコだった
    桜ほろほろ・五十嵐佳子  長年仕えていた武家の妻女 美恵が死に、実家に戻ったさゆ、幼馴染の小夏の援助もあり茶屋一人一人に個別の急須でお茶を入れ、手作りの団子だけだが常連もできた
    糸吉の恋・宮部みゆき  下っぴきの糸吉、菜の花畑で泣く娘に出会う。赤子殺しが絡むが…

  • 5人の作家による、食べ物にまつわる短編集。
    最後の宮部みゆきの「糸吉の恋」が秀逸。本当に短い話なのに、心が動かされた。最後に「今夜は菜の花飯だとさ。さあ、帰ろうじゃないか。」と茂吉が優しく声をかけるところ。あたたかいご飯と、帰る場所があるありがたみ、「ご飯に食べよう」は、落ち込んでいる人に救いになる言葉なのだと思った。

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1450737

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