おじさんは傘をさせない (PHP文芸文庫)

  • PHP研究所 (2024年7月10日発売)
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本 ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784569904146

作品紹介・あらすじ

新しい時代の常識に、変われないおじさんに、もう我慢できない!
『妻の終活』の著者が描く、現代「中年」小説!

セクハラの嫌疑をかけられた男、女性の後輩に出世競争で負けた男、浮気が原因で離婚し、風俗通いを続ける男――。会社での働き方、女性への対応、家族との関係などの意識をアップデートできずに悩む「おじさん」たちが、あるきっかけから自分の人生を見つめ直していく。
時代の変化という嵐に対応できない中年男性の悲哀を切なく、時にコミカルに描いた傑作小説!

『雨の日は、一回休み』を改題。

感想・レビュー・書評

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  • あなたは、上司から突然こんなことを言われたらどうするでしょうか?

     『君に、セクハラの訴えが上がってきているんだよね』

    これは深刻な状況です。呑気に”どうするでしょうか?”と悠長なことを言っている場合ではありません。今の時代、『服装や髪型を褒めただけでセクハラと騒がれる』『時代』でもあるからです。そして、『こういうものは、相手の受け取りかた次第』という現実もあります。そんな中ではこんな思いが込み上げることもあるでしょう。

     『だいたい「ここまでがセクハラ」という明確な線引きもなく、一方の価値観のみに判断が委ねられているのは不公平だ』。

    確かに正論なのかもしれません。しかし、『セクハラ』という言葉の前には抗弁するその姿勢さえ問われてしまう場合もあります。

    さてここに、『入社したころにはまだ、男女雇用機会均等法すらなかった』という『おじさん』たちが主人公となる物語があります。それぞれの言い分に一理あると思わせる『おじさん』たちが登場するこの作品。そんな『おじさん』たちが『時代』の波の中に揉まれ苦しむ様を見るこの作品。そしてそれは、”変われない”『おじさん』たちが今の『時代』を生きていく様を見る物語です。
    
    『なんですって?』と、『長机の正面に掛けた部長の獅子堂怜一』に頬を振るわせながら返すのは主人公の喜多川進(きたがわ すすむ)。『だからね、喜多川進くん』、『君に、セクハラの訴えが上がってきているんだよね』と『幼子に言い聞かせるように、噛んで含める』獅子堂に『そんな馬鹿な!』と『机を叩いて立ち上がる』進。『いったい誰が、そんなデマを』と言う進に『デマなのかい?』と問う獅子堂。それに『デマでしょう。身に覚えがないんですから』と言う進は、『セクハラ、パワハラに厳しいこのご時世、部下との接しかたには人一倍気を配っている』と思います。しかし、『こういうものは、相手の受け取りかた次第というからねぇ』と『伝聞調』で語る獅子堂の姿勢は、『彼自身にも実感がないから』でした。『入社したころにはまだ、男女雇用機会均等法すらなかったのだから』という獅子堂。そんな獅子堂に『それでも私は、しておりません!』と『鼻息を荒くして言い切』る進は、『女子社員と二人で出張』の際には『新幹線や飛行機の座席すら分け』、『夕飯すら別々』と『ひと昔前ならコミュニケーション不足と非難されそうな接しかた』をするなど、自信がありました。『いったい誰が、そんなことを?』、『誰なんです』と詰め寄る進に『やめなさい、犯人捜しのような真似は』と『ぴしゃりと遮』る獅子堂は、『君の処分を求めているわけじゃない。ただ、今後はもう少し配慮してほしい』と続けます。それに、『相手が分からず、どんな言動を指してセクハラと言っているかも分からないのに、どう配慮しろというんですか!』と『つい声を荒らげ』る進は、『弁解の機会すら与えられない。部下の口から「セクハラ」という単語が出た。それだけで、もはやアウトなのだ』と思います。『「時代、すべては「時代」だ…古い人間はうまく折り合いをつけてゆくしかない』と考えるも『だが、突然の雨に降られたかのような身に覚えのないセクハラまで、俺が悪かったと謝らねばならないのだろうか』とも思う進。『国内大手企業を相手にリスクマネジメントを行う総合営業第二部、第三課の課長であ』り、『部下は十一人。その中で女性は四人いる』という進は、『腹立ちついでに一人一人、顔を思い浮かべてゆ』きます。『まずは鯉川みさき』、『思い返してみれば一度、「海外に行くことになったら旦那さんはどうするの?」と聞いてしまったことがある。あれがまずかったのだろうか』。『それから美園園美』、『三十半ばで、現在妊娠五カ月目』、『体を気遣うつもりで掛けた言葉を、セクハラと捉えられた可能性はある』。『次は城ノ内茜』、『「三十までに結婚できなかったぁ!」と誕生日当日に大騒ぎし』たことを聞いて『「三十なんてまだ若い、若い」と笑い飛ばしたのがいけなかったか』。『そして山田佑月』、『抜群にノリが』よく『「彼氏はいるの?」なんていう不用意な質問にも「やだそれ、セクハラですよぉ」と笑って返すことができる』分、『彼女が犯人だとしたら、そうとうにショック』と思う進は、『分からない。考えれば考えるほど、不安が膨らんでゆ』きます。一方で、『女子社員の心証をよくしたい』と思い、『週に三日はジムか、屋外をジョギングすることに決めている』進は、『冴えないオヤジに人権はないのか!オヤジたちよ、なぜ一致団結して立ち上がらない?』と憤る思いが込み上げます。『よりによってこの俺を、セクハラオヤジ扱いしやがって』と『言われなき中傷を受けた被害者だ』と自らを思う進は、『容疑者は四人。こうなったら、必ずあぶり出してやる』と誓います。『べつに相手を責めたいわけじゃない。再発防止のために、なにがいけなかったのかを知りたいだけだ。それさえ許されないというのなら、俺たちに明日はない』と思う進。そんな進のそれからの日々が描かれていきます…という最初の短編〈第一話 スコール〉。今の『時代』ならではのあるあるを描く好編でした。

    “セクハラの嫌疑をかけられた男、女性の後輩に出世競争で負けた男、浮気が原因で離婚し、風俗通いを続ける男ー。会社での働き方、女性への対応、家族との関係などの意識をアップデートできずに悩む「おじさん」たちが、あるきっかけから自分の人生を見つめ直していく。時代の変化という嵐に対応できない中年男性の悲哀を切なく、時にコミカルに描いた傑作小説!”と内容紹介にうたわれるこの作品。2021年6月11日に、「雨の日は、一回休み」という書名で単行本として刊行されていた作品を、「おじさんは傘をさせない」と改題、加筆修正の上、文庫本として刊行されたという経緯を辿ります。ただ、個人的には単行本も改題後の文庫本もいずれも書名が内容を上手く表していないような気がします。坂井希久子さんの代表作というと、余命一年を宣告された妻と夫との関係性を描く「妻の終活」が思い浮かびます。こちらが書名そのままの内容だけに、改題するならもう少しなんとかならなかったの?という思いは残りました。

    さて、そんなこの作品ですがある意味で上記した「妻の終活」にも通ずるところがあると思います。いずれも、本の帯にあるように”意識のアップデート”ができずに苦悩する”変わらないおじさん”に光を当てていくところです。そして、この描き方が極めてリアル、坂井希久子さんの真骨頂とも言うべき物語に仕上がっています。

    ここしばらくという言い方が良いのか分かりませんが、世の中の価値観が日々と言って良いくらいに移り変わっているのが今の『時代』だと思います。そんな変化についていかなければ煙たがれるだけでなく、その場に生きていくことすらままならない『時代』でもあるのだと思います。では、そんな『おじさん』たちがノスタルジックに振り返る過去の時代から見てみましょう。

     『栄養ドリンクの空き瓶を机に並べ、同僚と睡眠時間の短さを競い合った、若かりし日。「24時間タタカエマスカ」というそのドリンクのキャッチコピーどおり働きまくっていたが、不思議と力が漲っていた』。

    昨今、揶揄されることが多い『24時間タタカエマスカ』という『キャッチコピー』。そもそも一体、何と戦っていたのか、今となっては全くもって意味不明ですが、『おじさん』の振り返りにはノスタルジックな雰囲気を感じます。

     『泥臭く駆けずり回り、取引先の要望とあらば買春ツアーのアテンドもした。強力なジャパンマネーをちらつかせ、日本の男たちが韓国や東南アジアの女たちを買い求めていた時代だった』。

    『買春ツアーのアテンド』という時点でありえないのひとことですが、『取引先の要望とあらば』という形容が、生々しさを醸し出しています。『強力なジャパンマネー』という死語のような言葉が時代の変化を感じさせます。

     『若手だったころは、忘年会は有無を言わせず朝までだった。一時間ほど仮眠を取って吐き気をこらえつつ出社すると、つき合わせた上司は休みを取っていたりして、理不尽に喘いだものである』。

    『朝まで』の『忘年会』というのも今や博物館級のお話だと思います。『一時間ほど仮眠』して翌日の仕事が始まるという世界。これらを総称して『24時間タタカエマスカ』ということだったのでしょうか?そもそも『近ごろは、宴会で酒を飲まない若者も増えた』、『飲めないのではなく、飲まない』という選択が許されるのが今の『時代』です。

    そして、『おじさん』たちは、”意識のアップデート”を要求される今の世をそれでも生きていかなければなりません。当たり前だったことが全否定され、想像もしなかったことが当たり前とされる『時代』。これは、言うは易く行うは難しを地でいくようなものです。そんな物語は、5つの短編それぞれに一人ずつの『おじさん』が主人公として登場し、その苦悩と日々を描いていきます。では、その中から3つの短編をご紹介しましょう。なお、それぞれの短編で主人公となる『おじさん』は、他の短編では脇役を務めるなど全体として連作短編を構成しながら物語は描かれていきます。

     ・〈第二話 時雨雲〉: 『同期の誰よりも出世は早』く、『総合営業部第二部の部長に就任したころにはいずれ役員になるだろうと言われていた』というのは獅子堂怜一。そんな獅子堂は『歯車は、どこで狂ってしまったのか』という今を思います。『男女共同参画』の流れから『役員に一人は女性を登用するようお達しがあったせいか』『二歳下の後輩だった』三条綾子が役員に収まり、『定年を控えたお飾り部長』としての日々を送る獅子堂。会社には『六十五歳まで一年更新での再雇用制度』があるものの『昨日まで部下だった奴らの下で働く』くらいならまだしも『警備保障の関連会社に回されて警備員になった先輩もいる』という現実を思います。『長年真面目に働いてきた者に対して、あんまりな仕打ちではないか』と思う獅子堂。

     ・〈第三話 涙雨〉: 『どうしてこの俺が、シニア向けのライフプランセミナーなんぞに出なきゃいけないんだ!』と、参加を命じた『糞野郎の顔を思い出し』て『鼻息を荒くする』のは佐渡島幹夫。『この鬱憤を、撒き散らさずには帰れない』という幹夫は、『老舗ソープ』のことを思います。しかし、『今はアレが切れていた』と思い出した幹夫は、『薬屋』にコンタクトを試みますが連絡が取れません。『五十三歳までに部長になれなかった者』を対象として役職を解く『役職定年制』の適用となり『事業の末端である営業所に飛ばされた』幹夫は、『主任時代の部下だった』富永哲平の下で働いています。『昨日のセミナーはいかがでした?』、『後でレポートを提出してください』と手を振る富永に『この下種野郎め、楽しんでやがる』と憤る幹夫。

     ・〈第四話 天気雨〉: 『よかったら、一緒に飲みに行きません?』と『営業所のエース』である門前に誘われるも『すみません、用事があるので』と、『気弱に微笑んで』場を後にしたのは石清水弘。『時給は千五百五十円、保険料などの諸々を引かれると、月々の手取りは二十万円に満たない』という石清水は、『派遣には三年ごとの雇い止めがある』という厳しい現実を思います。『営業所の経理事務として働きはじめて、もうすぐ一年』という四十三歳の石清水は『就職氷河期世代』ではあるものの『正社員として就職はし』ました。しかし、ブラック企業の現実に退職し、以降、『二十年近く、ずっと派遣』として働いています。『派遣切りに遭ってかは、もう一度正社員にチャレンジしようという気概すら湧いてこな』いという石清水。

    3つの短編を取り上げましたが、女性の後輩に出世競争で負けた獅子堂に光を当てる〈時雨雲〉、『役職定年』によって元部下の下で働く佐渡島に光を当てる〈涙雨〉。そして、不本意な中に派遣として働き続ける石清水に光を当てる〈天気雨〉と、それぞれの短編には、それぞれの今に苦悩する『おじさん』たちが登場します。この本の帯には、”意識のアップデートができず”とそれだけを読むと『おじさん』たちの側に一方的に落ち度があるようにも読めてしまいます。しかし、読めば読むほどに必ずしも、もしくは一方的に『おじさん』たちが悪いとは言い切れない裏事情がそこにあることがわかります。

     『次長という肩書きは、ただのお飾りだ。出世レースから弾かれた中年男のプライドの保守のため、設けられた名目にすぎなかった。モチベーションを剥ぎ取られた役職定年者は、受け入れるほうも迷惑だ』。

    昨今、見直す企業も出てきているとされる『役職定年制』がもたらす負の側面は、人生100年時代を見据えた場合に当事者にとっては間違いなく切実な問題です。

     『なにか重大なミスを犯したわけでも、成績を落としたわけでもない。ただもう無慈悲に、年齢だけで区切られる』。

    『会社の若返りのために必要な制度』とはいえ、なんとも理不尽な思いを抱くことが避けられないのは尤もでもあると思います。そして、さらに理不尽さを極めるのがこれでしょう。

     『突然の雨に降られたかのような身に覚えのないセクハラまで、俺が悪かったと謝らねばならないのだろうか』。

    原因が全く分からない中に、上司から一方的に気をつけるよう指示をされ、『じゃ、そういうことで』と片付けられる展開は本人に自覚ができない分、どうしたら良いか分からない不本意さが残ります。

    しかし、そのように理不尽な目に遭ったとしても怒りを他のことにぶつけているだけでは何も変わりません。その理不尽さを糧にできるか、理不尽さを何かしらの起点にできるかが、その人が前に向かって進めるかどうかの試金石ともなっていくのです。この作品の43歳から65歳までの5人の『おじさん』たちは、それぞれの理不尽さの先にほんのちょっと心の持ち方を変えることによって気づきの機会を得ていきます。『時代』の大きな流れを変えることなどできはしません。しかし、そんな『時代』を受け入れていくしか前に進む道はないのです。「おじさんは傘をさせない」というこの作品、そこには、『おじさん』たちの悲哀に満ちた人生と、そこに少し晴れ間差す未来を垣間見る物語が描かれていました。

     『ネットやSNSの普及で意識の変化はどんどん早まってゆく。逆行させる力は誰にもなく、古い人間はうまく折り合いをつけてゆくしかない』。

    今の『時代』に何かと標的にされがちな『おじさん』たちに光を当てるこの作品。そこには、5つの短編それぞれに、それぞれの置かれた立場に悩みを深める『おじさん』たちの姿が描かれていました。如何にもありそうなシチュエーション設定のリアルさに複雑な思いが去来するこの作品。そんな物語をコミカルに描いてもいくこの作品。

    決して他人事と片付けることのできない物語展開に複雑な思いが去来する読後感。男性と女性でも見え方が違ってくるであろう、坂井さんの鋭さ光る物語でした。

    • さてさてさん
      ゆきみだいふくさん、
      こちらこそいつもありがとうございます。
      はい、この作品色々と考えさせてくれるところも多かったです。時代が変わってい...
      ゆきみだいふくさん、
      こちらこそいつもありがとうございます。
      はい、この作品色々と考えさせてくれるところも多かったです。時代が変わっていく以上、それぞれの時代に人は合わせていく他ないわけですが、昨今の変化の度合いは過酷だと感じる方がいてもおかしくないのだと思います。でも、それでも、変わっていかなければ生きていけない、それが今の時代。作品のおじさんの肩を持つわけではありませんが、むずかな…と思いました。人によって同じ時代でも価値観に差異がありますしね。
      2025/05/15
    • bouquet0606さん
      私も「アップデートできないおじさん」なのかな? 軽いセクハラ発言をして「昭和のおじさんだから」と自虐したりしてますが。
      本当にいろいろ変わっ...
      私も「アップデートできないおじさん」なのかな? 軽いセクハラ発言をして「昭和のおじさんだから」と自虐したりしてますが。
      本当にいろいろ変わっていますが、その方向が女性が生きやすくなるものならいいのですが。私自身「女性は損だなあ。男に生まれてよかった」と感じながら生きてきました。
      女性が生きやすい世の中になりますように……娘を持つとそう思いますね。
      2025/05/19
    • さてさてさん
      bouquet0606さん、
      コメントありがとうございます。ここしばらくものすごい勢いで世の中の様子が変化しているように思います。”コロナ...
      bouquet0606さん、
      コメントありがとうございます。ここしばらくものすごい勢いで世の中の様子が変化しているように思います。”コロナ禍”がそれを後押しした感もありますね。どの言葉が正しくて、どの言葉が問題なのか、今は正解でも一年後にはどうなるかわからないと言ってよい状況です。これでは、日々、自らの感覚のアップデートは必須ですし、しかもそのアップデートも何が正しくて何が正しくなかったのかを結果論で知るという状況も多々あると思います。さらには、国を超えると正しいことが日本とは正反対になることも多々です。すごい時代だと思います。なかなかに生きるのも難しいですね…。
      2025/05/19
  •  平安火災海上保険に勤める喜多川 進(きたがわ すすむ)さんは、ある日、上司から「君にセクハラの訴えが上がってきているんだよね」と言われました(第一章 スコール)。

     課長である彼の部下は11人で、そのうち女性は4人です。彼は4人を容疑者と見做してあぶり出しを始めます。まず1人の女性社員に対して業務上のヒアリングを始業前に行いました。すると夕刻に上司から「ちっとも反省している様子がないと、訴えが上がってきたぞ。」と言われたのです。その上、妻と17歳の娘と夕食を摂っている時には、娘から「パパは女性差別主義者だよね!」と言われたりもします。
     でも何がなんだか分からない喜多川氏なのでした。

     その翌日、ベトナム支店から、顧客の多い工業地帯がスコールで広範囲に浸水したという連絡が入り、急遽、彼は若い男性社員を連れてホーチミンに飛び、さらに被害地域に赴きます。
     洪水で川のようになった道をボートで移動し、現場のひどい状況を目の当たりにする中、汚れた水に濡れるたびに声を上げる男性社員を喜多川氏は強く叱責します。「女子でもあるまいに、ちょっと水に濡れただけでキャーキャーと。いい加減にしろ!」と。険悪な雰囲気になる二人。。。

     さあ、仕事はどうなるのでしょうか。また、セクハラの訴えをしたのは誰なのでしょうか。続きはどうぞ本作でお読みください。

     この本には、全部で5つのお話が書かれています。裏表紙の説明には「時代の変化という風に対応できない中年男性の悲哀を切なく、時にコミカルに描いた傑作小説!」とあります。そして裏表紙に書かれた最初の言葉はこうでした。

     『「おじさん」はなぜ不適切な言動をしてしまうのか!?』

     賛否両論があるのかもしれませんが、1977年生まれの坂井希久子さんのこの作品、一読の価値があるのではないでしょうか。読書会をしたら面白いかもしれません(知らんけど)。
     あなたなら、どう読みますか?

    ※ さてさてさんが、レビューで詳しく作品解説をなさってますので、作品とともにオススメいたします。

  • オジサンだけじゃなく人の弱さについての本かなぁ、と。
    今までの日本を支えてきてくれたオジサン。
    当たり前たったセクハラやパワハラにどっぷり浸かってた時代。
    そりゃ自分を守るために威嚇して麻痺していくよね。

    三話の『涙雨』がいちばん良かったな。
    どうしようもないオジサンだったけど病気をきっかけに自分の弱さに気づけた話し。

    定年後の夫婦のあり方も考えさせられる本。
    やっぱり女性の方がどっしりしてるよなぁ^^;

    『雨の日は、一回休み』の改題。

    • コルベットさん
      ゆきみだいふくさん、おはようございます。同感です♪やっぱり女性の方がどっしりしてますよね笑
      ゆきみだいふくさん、おはようございます。同感です♪やっぱり女性の方がどっしりしてますよね笑
      2025/06/02
    • ゆきみだいふくさん
      コルベットさん

      おはようございます❢
      子育ても夫の仕事も終わると
      次を見つけるのは女性の方が上手かもしれませんね♪
      コルベットさん

      おはようございます❢
      子育ても夫の仕事も終わると
      次を見つけるのは女性の方が上手かもしれませんね♪
      2025/06/02
    • きたごやたろうさん
      「いいね」ありがとうございます。

      梅雨だし、この作品いいんじゃない⁈
      「いいね」ありがとうございます。

      梅雨だし、この作品いいんじゃない⁈
      2025/06/26
  • なかなか、なかなか。
    読んでいて少々切ないものがありました。
    「切なくコミカルな中年小説!」
    と帯にはありますが、コミカルには感じられませんでした。

    5つの物語が収められていて、ちょっとづつ登場人物が重なります。
    また、1話から5話まで全て「雨」という字が表題に使われています。

    セクハラ疑惑をかけたれた男性
    女性の後輩に出世競争で負けた男性
    浮気が原因で離婚し、風俗通いを続ける男性
    四十代で派遣社員。ストレス解消にネット上で女子高生を装う男性
    定年退職後、居場所が無くもがいている男性

    時代の流れと共に、これほどの偏った考え方の人は減っていると思いたいのですが、現代ではコロナで在宅ワークが増えて、家に居るのに「何もしてくれない相方」というところの不満が増えて離婚率が上がっているらしいです。
    きっと、この作品に登場する人たちと似たような考えを持っている人たちなのでは、と思ってしまいます。

    最後の章は定年退職後の男性の話。
    紆余曲折あったけれど心躍るものに出会えた話は、こちらも嬉しくなりました。

    「おじさん頑張って!」
    と応援しているように感じられた作品でした。

  • いやいやまだまだこんな人(オジサン)いるよ。
    パワハラであろうとなんであろうと。「何ハラになるんやろ~これ~エヘヘ」みたいな。キモって心の中でパンチ浴びせてますが(笑)
    まあでもバブル世代の人は働き過ぎてるし、就職氷河期の人は思い描く社会生活送れてないから辛いんだよね。だから今の若者には理解できないこともあるよね。許せないことも多々ありますが寄り添わないとね。傘をさしのべてあげてください。そっとさりげなく

  • なんだか読んでいて疲れてしまった。
    途中からは言葉だけを拾い読み。
    貴重な時間を潰してしまった感じ。
    私には合わず、消化不良。
    ただし、言っている事は分かる面もあったが。

  • 昭和のパワハラ&男尊女卑のおじさんを描いた
    5つの短編集。(第四話は違うけど)
    このおじさん達ほどの自分勝手なバカじゃないけど、知らず知らずのうちに、自分も他人には理解されないようなアホな考え方がどこかにないだろうかと少し考えさせられた。妻とは良好な関係を築いていると自分では思っているが、実は違うかったりとか考えると怖い。気をつけようと思ってしまった。

  • はじめての作家さんの本。
    短編5作品。

    セクハラを注意された課長、誰が!?
    定年を控えてすっかりモチベーションがなくなった部長、全ては後輩の女性に役員出世争いに負けた結果?
    役職定年から荒んだ生活を送る男は、娘のために…
    四十代の派遣社員は、ネットで女子高生を語るが…
    定年退職後に誰からも必要とされない男性

    なんだかサラリーマンの悲哀に満ちた作品でした。
    仕事、と言う言葉が全ての免罪符になっていた時代、がむしゃらに働き続けた男たちが、今の時代にマッチできなくて居場所も自己肯定感も抱けず、といったやるせない感じ。

    これ、人ごとでないなあ。。

  • 「雨の日は、1回休み」の改題(加筆修正)。覚えてなかった。還暦エリア世代の悲喜交々。結構うなづける。

  • セクハラ嫌疑をかけられた上司、後輩の女性に出世競争で負けた男。
    会社での居場所がなくなり、働き方も変わり、女性への対応や家族との関係などもぎくしゃく。
    時代に合った意識をアップデートできずに悩むおじさんたち。
    自分の人生を見直していくきっかけはどこに。
    時代の変化に対応できない中年男性の悲哀を、コミカルに描きます。
    連作短編ですが、それぞれが少しずつですが、繋がっていきます。
    コミカルに描かれていますが、悲哀が漂います。
    考えさせられる作品です。

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著者プロフィール

1977年、和歌山県生まれ。同志社女子大学学芸学部卒業。2008年、「虫のいどころ」(「男と女の腹の蟲」を改題)でオール讀物新人賞を受賞。17年、『ほかほか蕗ご飯 居酒屋ぜんや』(ハルキ文庫)で髙田郁賞、歴史時代作家クラブ賞新人賞を受賞。著書に、『小説 品川心中』(二見書房)、『花は散っても』(中央公論新社)、『愛と追憶の泥濘』(幻冬舎)、『雨の日は、一回休み』(PHP研究所)など。

「2023年 『セクシャル・ルールズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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