- 本 ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569904849
作品紹介・あらすじ
大阪の心斎橋からほど近い空堀商店街で「ソノガラス工房」を営む道と羽衣子。兄の道はコミュニケーションが苦手で、「みんな」に協調することができない。妹の羽衣子は、何事もそつなくこなせるが、突出した「何か」がなく、自分の個性を見つけられずにいた。正反対の二人は、祖父の遺言で共に工房を継いでからも衝突が絶えなかったが、ある日「ガラスの骨壺が欲しい」という依頼が舞い込み――。兄妹が過ごした十年間を描く傑作長編。
感想・レビュー・書評
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周囲にうまく合わせられない兄と自身に秀でた部分がないと悩む妹が二人で始めたグラス工房の物語。
骨壺を通して二人が和解しながらゆっくりと歩んでいく姿が良かった。
他人や家族、親戚などの微妙な距離間が妙にリアルで重々しく感じたが立ち向かうというよりはうまく付き合っていて兄妹の成長を感じる。
羽衣子の劣等感や兄の発達障害など難しい話題もストーリーに溶け込んでおり、さらっと読めた。
兄に頼るのが苦手な羽衣子が依頼人にかけた言葉が兄の譲り受けだし、妹のために全力で怒ってくれた道も素敵で兄妹の絆がみえた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
寺地はるなさん2冊め。
大阪のガラス工房『ソノガラス工房』で働く、発達障害の兄・道と羽衣子。
兄の道が発達障害ってこともあり、最初は羽衣子だけでなく、父・母からにも特別扱い(悪く言えば差別的)がされているのも、気持ちは分からなくもないが、ちょっと違うんじゃないかななんて思いつつ、度重なる衝突がありながら、距離が縮まっていき見え方や考え方が変化していく羽衣子の心の成長を見て、個性を大事にしてくれるようになってるんだなと。
このご時世、そういった障碍者がいらっしゃることに目を向いた時、私たち自身も特別扱いをしてしまう部分がある。それこそ羽衣子のような考え方に近く自己嫌悪…。
また羽衣子目線、道目線、それぞれザッピングストーリーの展開となっており、彼らの心情が描かれてて感情移入しやすかった。
そういえば昔住んでた街にガラス工房があって、見学に行った記憶がある。ところどころアクセサリーや骨壺を作るシーンが出てくるが、それがとても懐かしく感じた。いつかガラス工房にも足を運んでみたいと思いました。 -
発達障害の(傾向がある)兄、道。
何でも卒なくこなす妹、羽衣子の二人が祖父の残したガラス工房を継ぐ事になる。
幼少期から兄の言動に悩まされて来た妹は、仕事でも度々衝突し、兄に意見をしても理解されずモヤモヤは募るばかり。
それぞれの視点から語られながら物語が上手く進むので、外側から眺めながら見守る気持ちで読み進められた。
店の商品である「ガラスの骨壷」が物語の中心で、訪れるお客様の人生や、死にまつわるエピソードがあったり、上手くいかない家族、親戚など。
ともすれば暗くなりがちな物語は、ガラスの美しさやその文章で中和され、爽やかささえ感じられた。
昔に読んだ漫画のセリフ
家族なんて立場の違う人間の寄せ集めなんだから〜云々と言う言葉を思い出した。
家族でも言葉は必要で、それによって絡まった糸が解けていく。
道と羽衣子のその後をもっと見てみたいと思える、素敵な物語だった。
(おかしいと思ったら…
間違えて文庫本を登録してます) -
きょうだいがいる人には感じる競争や劣等感をそれぞれの思いが盛り込まれている
そして、人の死から新たの道へと進む物語 -
結論は、とても面白かった。
これに尽きる。
舞台となっている空掘商店街は、たまに寄らせてもらうし雰囲気も分かるので、そういう点でも私としては作品の世界に入り込みやすくて良かった。
物語の序盤、兄妹のお互いへの感情が刺々しくて読み進めるのが辛かった部分もあるけれど、それが終盤へきちんと布石になっていて中盤からは読んでいて楽しくなった。
周囲の登場人物の重くも温かい言葉すべてが、兄妹ふたりの成長の栄養になっていて素敵な物語だと感じた。 -
ガラス工房なんてあったやろか?と思いながら読み進めていき、でも空堀の雰囲気が滲み出てて、2人の視点で描かれてて、サラサラと読めて、
気持ちが良かった。
お墓なんていらないし、散骨でもしてもらったら結構です。別になんてことないけど、義理の実家の墓は、遠慮します。ってスタンスやったし、大きく変わるわけじゃないけど、人が愛しい人を亡くしたあとの気持ちに胸がくぅーっとなった。 -
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著者プロフィール
寺地はるなの作品





