自閉症は津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く
- 福村出版 (2017年4月7日発売)
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感想 : 26件
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Amazon.co.jp ・本 (264ページ) / ISBN・EAN: 9784571420634
作品紹介・あらすじ
自閉症児者が方言をしゃべらないというのは噂なのかそれとも真実なのか。発達障害、方言、社会的機能と多角的な視点から挑んだ、著者の10年にわたる研究成果の書き下ろし。
みんなの感想まとめ
自閉症スペクトラムの子どもが方言を話さないという一般的な印象を出発点に、著者はその真実を探求する研究を展開します。多角的な視点から、方言が持つ社会的機能や言語習得のメカニズムを解明し、データに基づいた...
感想・レビュー・書評
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妻の一言から「自閉症と方言について」の研究を深めていく著者のお話。仮説を立てて調査を行うという、研究が形になっていくプロセスそのものも見えて面白かった。
研究が進んでいく中で、自閉症の方たちがどのように世界を見て、コミュニケーションをしているのかについて語られていく。
自分たちが普段いかに、言葉以上の情報を読み取ってコミュニケーションをしているのか実感させられた。私たちだって、「雰囲気を読む」って難しい、難しすぎる。
私たちも自閉症の方たちも、もっと「言葉に出して明確に伝える」というコミュニケーションに寄っていけば、誰にとってもより意思疎通のしやすい世界になるのでは、と思ったり。
以下メモ
・自閉症が方言を話さない理由
①入力の問題:方言はリアルなコミュニケーションで使われるが、そこから学習するのは難しい。それよりも、テレビのような決まった形で出力される情報の法が学習しやすい
②コミュニケーション:方言には他者と距離感を縮めようとする機能があるが、自閉症の人は標準語と方言の使い分けが難しい
・ポライトネス理論
聞き手がそのような話し方をされて気持ちよいかどうかという「人の気持ち」を重視する理論。言語が使われる状況での、対人関係調整機能に焦点があてられている。
相手に好かれたい、良く思われたい:ポジティブポライトネス
他人に邪魔されたくない、立ち入られたくない:ネガティブポライトネス
人間には両方の欲求があり、それに応じて言葉を使い分けている。
・意図読み(意図理解)
言葉の文字通りの意味だけでなく、「相手がどういうつもりでそれを言ったのか」という、言葉の裏にある目的や感情、文脈を推し量って理解する力。私たちは日常会話において、文字通りの意味ではないやり取りを大量に行っている。
【例:「部屋が寒いね」と言われたとき】
文字通りの意味: 部屋の気温が低いという事実の報告。
意図読みした理解: 「(だから)窓を閉めてほしい」「(だから)暖房をつけてほしい」という遠回しな心理の推測。
・20世紀半ば、方言学者の間では20世紀中に方言が消えると考えられてきた。でも、まだ残っている。方言は相手との距離を縮める、同じ言葉を使う仲間として認識できる、という単なる言葉以上の役割を担っている。
・ASDや、高齢者、幼児に対して、です・ます口調で話すこと。例えば、「ここに座ります」など。
これは相手に何かをさせる「教示」の意味合い。本来なら教示の前には同意を必要とするが、彼らに対しては同意を取らず教示を行っている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
うーん…研究自体は興味深いけど私が見てきたASDの人は方言を使っていたので、方言を使っている=症状が軽い、というのはちょっと安易にまとめすぎのような気がしました。
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伝わるから「ですます」調で話すという感覚になっていたかもしれない。だけどこれはコチラ側の命令なのかも。とか思うと、意思を疎通させるにはどうひたらいいのかなって次の課題が見えてくる。その先を知りたくなる本だった。薄いレビューですまん。
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私は自分にアスペルガー傾向があるからだと思いますが、自閉症(スペクトラム)にずっと惹かれています。本書は特別支援教育、障害児支援の専門家である筆者が臨床心理士である妻の何気ない発言「自閉症は津軽弁を話さない」に「わかってないなあ」と反論して、調べるうちに「わかってたんだ」と気がついていく話。
私たちは言葉をどう学習するのか。
定型発達児は身近なの大人や子供から方言を、自閉症児はテレビから標準語を学んでいることはアンケートなどから判明した。問題は、なぜそうなのか、ということ。
本書では「言語の習得には社会・認知的スキルが必要で、中でも意図読み意図理解力が重要だが、自閉症(スペクトラム)にはそれが困難だから」となっている。言語の習得にとって、もうひとつ必要なスキルが意図理解なしの模倣や連合学習で、こちらは自閉症(スペクトラム)であっても困難がないので、人ではなくメディアを経由して繰り返される言葉(標準語)は学習できる。なるほど。
意図読みということについて面白い例が挙げられていて、これには唸らされた。
母「早く用意しなさい」
子「うるさいな。いま、やろうと思っていたのに」(p.198)
ここにどれだけの意図読みが含まれているか。
母読み <子は用意しようとしていない>
母発言 「早く用意しなさい」
子読み <自分は用意しようとしていない>
子読み <母は用意させようとしている>
子読み <母は私に用意する意図がないと思っている>
子発言 「うるさいな。いま、やろうと思っていたのに」=母の読みは間違っているという否定
意識していないだけで、実はこれくらいの自分の意図読み、相手の意図読み、相手の自分の意図読みが行われている。
歩く、という簡単な行為を分解してみると様々な感知や判断や制御があるように、話すという行為にも様々な読みや判断や制御があるということ。感心するばかり。
もうひとつハッとさせられたのが、特別支援学校の先生などが自閉症児にこうして欲しい、と"意図"を伝えるシーンで「こうして欲しい」と言う代わりに「こうなります」と言う指摘。例えば「用意しなさい(しましょう)」ではなく「用意します」。現場でその方が結果として意図した行動をしてくれることから広まっているらしい。(相手の/自分の)意図読みがいかに複雑で難しいものなのか、ということの本質をえぐっている気づきだと思う。
続編『自閉症は津軽弁を話さない リターンズ』もぜひ読みたい。 -
「ことばの謎を読み解く」
自閉症は津軽弁を話さない - 福村出版株式会社
https://www.fukumura.co.jp/book/b285725.html -
ざっくり言うと、妻から「自閉症スペクトラムの子供は方言を喋らない。方言が出なかったら自閉症を疑う」という話を聞いた著者が「こいつはとんでもない風説が飛び交っているぜ…」と思い否定のための研究を始めたところ、本当に自閉症スペクトラムにおいて方言が出にくい傾向が見えてきて、統計を取ったり理由を考えたりした、その研究をまとめた本です。
データが惜しげもなく出てくるし、統計一つにしても何故その方法を取ったのか、その結果どうだったのかといった情報が満載で、安心してそして納得しながら読むことができます。
ミステリ好きがミステリを読むときの興奮はこんな感じかな、と思わせる知的ワクワク感に満ちた本です。最高です。 -
「自閉症児者は方言を話さない」という印象を出発点に、方言の社会的機能、意図理解を目的とした言語コミュニケーション、言語習得のメカニズムを解き明かしていく。
方言というものが連帯意識や帰属意識を想定したものだというのは、たしかによくわかる話だ。方言に限らず、我々は話し相手との距離感に応じて話しかたをさまざまに変化させるものだ。方言をわざわざ用いるということには、そこにある種の「親密さ」を込めるという意図がある。しかし、自閉症者にはそうした認識の共有であったり、共通語と方言を使い分けることが難しい。僕なんかこういうの他人ごとではない。
自閉症者や認知症の老人、乳幼児に対して声かけする際に「行きましょう」ではなく「行きます」というように「ですます調」で働きかけることが多いという話が興味深い。「聞き手に対してお願いや命令をするというのは、その強弱に差はあったとしても聞き手の意図に対する働きかけです(⋯)ところが、なぜかASDの人や認知症・乳幼児に対しては、「あなたがする行為についての教示」を示すような言い方をします。あなたがすることは、「◯◯です」と言っているのに近いです。相手の意図に働きかけているわけではないように感じられます。相手は意図に働きかけても自主的判断ができないとみなしているからかもしれません」(p.223-224)
ちょうどこの本を高田馬場駅前のロータリーのベンチで読んでいて、「ここでは煙草を吸えません」という注意書きがあるのに気付いたのだが、「吸ってはいけません」ではなく「吸えません」とするのは本書でいうところの意図変更の依頼のショートカットと同じことではないか。こうした言い回しにはそれなりの効果があるのだろう。
ASDの人が、相手の意図を変更するのに論理的・合理的説明に重きをおくのに対して、定型発達の人は理屈ではなく自己の希望の強さの表明が相手の意図を動かすと考えているという話、社会という感じがしますね。後者の希望というのは「社会通念上、当然のものとして求められていること」だったりするわけでしょう。転んだ人がいたらとりあえず駆け寄るとかもそう。「大丈夫だとわかっているのにわざわざ嘘くさいやりとりがうざい。自分だったら、そんなやり取りはしたくない」(p.243)というのは、非常に身に覚えがあります。コミュニケーションは面倒だ⋯。 -
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貸出状況はこちらから確認してください↓
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確かに!
原因についての調査や考察も興味深い。 -
新聞の広告を見て、ぜひ読んでみたかった。期待通り、すごくおもしろかった。
ASDや発達障害に詳しくないので、わかりにくいところもあったけど、言語習得に関しては思い当たることとか、なるほどと思うことが多かった。
外国語習得に関して言えば、教科書で習う外国語は、ASDの子がテレビやビデオで共通語を覚えるようなものだ。俗語やいわゆる「こなれた言い回し」は、その言葉が使われる場面で覚えていかないと、ヘタに使って失敗する可能性があるが、反対に言えば、そういう言い回しを自然に使えるということは、その言語コミュニティで自然言語として獲得したという証にもなる。教科書では俗語やこなれた言い回しは覚えられないのである。
言語というのは、どこまでいっても社会やほかの人とのかかわりの中に存在するものだ。外国語をなりわいとする身としては、教科書で習った外国語をどうやって社会とかかわりのあるものにするか、教科書で習った外国語でどうやって意図理解・意図確認ができるようになるか、これがとても重要なのである。 -
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ASDの子どもは方言を話さない? 多くの人が感じる実感を調査、考察する。
この本が面白いのは、自閉症が方言を話すのか?という問いが、そもそも方言とはどんな機能を持っているのか?へも広がっていくところにあると思う。
方言には同じ方言を話すことによって同一集団に所属しているなどの社会的な機能があり、その機能へのアクセスが乏しいASDは方言の獲得があまり行われないのだ。
素朴な現場の疑問には大きな意味が隠れている。 -
確かにって感じ。
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自閉症は津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く
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1~7章までは学術的にデータが出されて
さぁここからどう結論に持っていくんだろうと
思っていたら11章で実際ASD(自閉症スペクトラム障害)の子が
周囲の人間ではなくビデオで言語を習得している事例を出してきたので
「だよねー…(ASD育児してる人は絶対分かってることだよ…)」って感じで
拍子抜けしつつも「ASD児は津軽弁どころか方言を話さない」という
結論に到達しました。ASD児をまったく知らない人が読むには
とっつきやすくて良書だと感じました。
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