「本当のこと」を伝えない日本の新聞 (双葉新書)

  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575153941

作品紹介・あらすじ

3・11という歴史的苦難に際して新聞はなぜ無力だったのか。その裏側には、ジャーナリズムの欠落という、日本の新聞が抱える根源的な問題があった。ニューヨーク・タイムズ東京支局長が明らかにする「新聞不信」の真実。

感想・レビュー・書評

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  • 「記者クラブ」のいびつさから始まる、青い目の方による日本の新聞への提言。
    丁寧な切り口とまとめ方で、非常に「読ませる」内容でした。

     「世界でも稀に見るこの組織は、英語圏では「kisha club」「kisha kurabu」と呼ばれる。
      あまりにも特異すぎて、翻訳語が存在しないのだ。」

    この方の記事が読めるのであれば定期購読をしてもいいかな、とまで感じるくらいには。
    もっとも、ニューヨーク・タイムズで書かれている間は、その機会はないでしょうけど。

     「ジャーナリストとは、基本的に権力寄りであってはならない。
     (中略)権力と市民の間に立ちながら当局を監視し、不正を糺していく。」

    この基本理念こそが、メディアが第四の権力と呼ばれる所以と思いますが、、
    果たしてこの原則(プリンシプル)を貫いているメディアは、日本にどれだけいるのでしょうか。

    例え広告主であろうと、自身の理念と異なるのであれば喰らいつく、そんな「反骨心」が、
    ジャーナリストには必要とされると、そして大事なのは読者だと、そう述べられています。

     「新聞にとって最も重要な財産は読者からの信頼だ」

    そうそう、個人的には何故あんなに持て囃されるのか疑問を感じていた日経新聞ですが、
    経済界の太鼓持ちとして見ておけばいいとは得心です、見出しの集約って位置づけですかね。

     「自らが疑問を抱き、問題を掘り起こすことはなく、何かしらの「お墨付き」が出たところで報じる。」

    自分の言葉で考えられず、表現もできない、、サラリーマン記者である以上は仕方ないのでしょうか。
    専門職の矜持ではなく、ルーチンで回すだけの記事に魅力が無くなっていったのも、必至だったのでしょう。

     「オンリーワンの記事を読みたいからこそ、読者はニューヨーク・タイムズを手に取ってくれる」

    この要件に応えられない日本の既存メディアの惨憺ぶりは、言をあらためる必要もなく。

     「記者やカメラマンの手を借りることなく、自らがニュースの発信者としてチャンネルを開いた」

    そのチャンネルの一つとして、ネットがあり、ブログがあり、SNSが定着し始めています。
    一朝一夕に変わるわけではないでしょうが、新聞のビジネスモデル変更が迫られてるとは納得です。

     「記者クラブメディアの本当の被害者は、私たち海外メディアの記者ではない。
     (中略)一番の被害者は、日本の民主主義そのものだ。」

    読み手の信頼に根差した発信者の強みは、最近とみに実感していますが、
    人々が、主体的に考え、判断し、行動していくのが、民主主義社会の理念の一つであり、

    それを実現していくために、必要な知識や情報を提供する社会的基盤であるのが、
    「ジャーナリズム」であり、その実行者である「ジャーナリスト」なのだと、感じています。

     「横並びの偏った記事が紙面を埋めることになるのだが、
      それでは読者に有益な情報を伝えられないばかりか、
      誤った認識を与えてしまう危険性すらある」

    故にこそ、恣意的に統制された、フィルタリングされた情報など、害悪でしかないかと。
    メディアの人々の導いていただく必要などない、人が主体的に歩んでいくための一助となればよい、

    「情報サービス」とはその辺りの原則を踏まえるべきと思いますが、さて。

    なんて、至極まっとうなことを考えさせてくれるヒントが、根拠と共に示されていて、
    一気に読めてしまいました、ただ一点だけ奇異に映ったのは、、

    何故か、朝日新聞が繰り返している捏造問題には一言も触れようとしていない、点でしょうか。
    他の大手新聞は大体、事例を挙げながら指摘しているにもかかわらず、です。

    ん、両社が提携していることもあってか「身内」扱いなのでしょうか、
    その点についてジャーナリズムの精神が発揮されていないのは、非常に残念ですね。

    ここまで丁寧な取材をされているのであれば、「アサヒる朝日新聞」を知らないはずはないと思いますが、、
    一度、この点について完オフで結構ですので、見解をお伺いしてみたいですね、なんて。

    個人的にはそんな奇異な点が気になったので、☆-1にしています。

  • 腐敗体質に立ち向かった日本人記者のお話、海外メディアのジャーナリズム、NYタイムズ紙が犯した過ちと守り抜いた信頼性、日本の新聞が今後進むべき道、などなど盛り沢山。文章は元よりデータソースも明瞭だからか、違和感なく読めた。

  • ■新聞

    なぜ日本のビジネスマンが、日本経済新聞をクオリティペーパーとして信頼するのか私には理解し難い。
    日本経済新聞の紙面は、まるで当局や企業のプレスリリースによって紙面を作っている様に見える。これはまるで大きな「企業広告掲示板」である。
    大量のプレスリリースの要点をまとめてさばいているだけであって、大手企業の不祥事を暴くようなニュースが紙面を飾るようなことは稀だろう。

  • 日本のあらゆる分野に閉塞感が蔓延しているのは、1940年体制とか55年体制とか言われる「体制の硬直性」に起因するのだろうが、より本質的には「学歴主義」偏重によるのかもしれない。
    官界・産業界・学界そしてマスコミ界も含めて、東大を頂点とした絶対的ヒエラルキーを作っているのは不思議な光景と言わざるを得ない。あたかも徳川江戸幕府のような堅牢さを見せている。
    本書のポイントもその東大ヒエラルキーと記者クラブ制度の世界標準から見た可笑しさを厳しく指摘している。しかし原発問題にみられるように、国民の実害の大きさを踏まえると到底笑って済ませるものではない。もしかすると、戦前の亡国への道を再現することになることが危惧される。国家戦略レベルについては「無謬性」が確固たるものとされ、小さな失敗を学習する健全さが機能しないと、最終的には「破綻」へまっしぐら、とならざるを得ない。
    細かいDataにこだわる瑣末主義より、大きなストーリーを大事にすべき
    世界でも稀に見る「記者クラブ」制度 韓国は2003年盧武鉉ノ・ムヒョン大統領が廃止
    ジャーナリズムは番犬watch dog =権力の監視者 →日本では官僚制度の番犬
    日本のジャーナリストはエリート 高学歴・高収入
    考えてみると、どの業界もヒエラルキーになっていて、上層部は高学歴・高収入
    新卒・年功序列はヒエラルキーを支えている 
    多様なキャリアと実績を踏まえてプロフェッショナルを育てていく仕組みがなく、
    日本のエリートは純粋培養で、結局ひ弱さが克服できない海外のエリートと比べると歴然
    戦後体制の既得権=特権層を見直すことにより、
    新産業・新アイデアを現実化する活力を実現する 若者・チャレンジャーが成長できる
    政治体制変革の第二幕 93年と同じで自民に戻っては、歴史が逆回転し体制が戻るだけ
    それでは未来は拓けない!

  • 著者はアメリカの大手新聞社「ニューヨーク・タイムズ」の東京支局長を2005年から6年間に渡って務めたジャーナリスト。2011年に起こった東日本大震災と原発事故という国難に際して「権力者の代弁」をたれ流す日本のマスコミに異を唱えつつ、新聞の無力さの裏側に潜む「ジャーナリズムの欠落」という根本的な問題を深堀りしながら「新聞不信」の真実を暴く。

  • 記者クラブは数十年も前から良識ある記者たちの間で問題視されてきたが依然健在である。著者のジャーナリズムに対する理念や情熱には頭が下がるが、恐らく新聞社がことごとく潰れるまで記者クラブがなくなることはないだろう。
    その理由は3つある。一つは記者クラブのインサイダーたちは自分たちが行き詰っているなど露ほども感じていない。抜いた抜かれたの厳しい競争から守ってくれるありがたい身内同士の寄り合い所帯である。誰がわざわざこれをなくそうと思うか。
    2つ目は記事の質が上がろうとも新聞が売れることがないから。自動車や家電なら画期的な新商品がでれば誰もがその違いが分かるし、欲しいと思う。しかしジャーナリズムの良し悪しがわかる人はそうはいないし、新聞を記事の品質で購読する人も少数派だ。何となく社の論調が自分の考えに合っているとか、果ては巨人戦のチケットがもらえるだとか、そんな理由で購読している人が大半ではないだろうか。もし発表ジャーナリズムから決別した新聞が売れるのなら、週刊文春は売れまくりだわな。
    最後の理由はニュースのリリース側にとって都合がいいから。先日も朝日、産経記者と検察幹部の麻雀が「文春砲」に攻撃されたが、マスコミとの良好な関係は官僚にとってもメリットが大きいのだ。記者クラブの特権を与えて飼殺した方が良いに決まってる。
    残念なことだが、この国には健全なジャーナリズムが報われる土壌はない。

  • 日本の記者クラブと発表ジャーナリズムを批判

  • 良書。現在なのか、過去からなのか、日本は職業上の矜持を失いつつあるのではないかと思う。昨今、心を撃つ記事が少なくジャーナリズムの躍進に期待したいし、自分自身もそこに助力したい。

  • メディア
    社会

  • 東2法経図・6階開架:070.21A/F11h//K

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著者プロフィール

ジャーナリスト。1966年アメリカ・アイオワ州生まれ。大学生のときに台湾の東海大学に留学。慶應大学をへて、東京大学で経済学修士取得。イリノイ大学でジャーナリズムの修士号を、カリフォルニア大学バークレー校で歴史学の修士号(現代東アジア史専攻)を取得した後、96年よりブルームバーグ、ウォール・ストリート・ジャーナルなどで記者として活躍。2009~15年からニューヨークタイムズ東京支局長。著書に『同調圧力』(角川新書、共著)、『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』(双葉社)など多数。

「2021年 『日本人の愛国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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