七姫幻想

著者 :
  • 双葉社
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感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575235401

感想・レビュー・書評

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  • 万葉集の古から蕪村の時代まで、七人の姫の、不思議の物語。

  • 織姫伝説になぞらえた七人の女たちの物語。
    神代から江戸時代までの時の流れの中に
    それぞれ関わりのある者たちが登場する。

  •  織姫の七つの異称をモチーフに、日本史の秘事に纏わる謎を描いた、連作歴史ファンタジーミステリ。
     古来より、機を織り、情を絡ませ、罪を織り込んできた、美しく密やかな織女たち。
     時を超えて語り継がれる、妖しく甘美な哀愁の伝説。
     古代史好きには馴染みの面々や説話の数々が、影の織姫の如き筆者の紡ぐ、生々しくも瑞々しい物語として立ち現れる。
     個々の作品は独立した筋立てながら、微妙に根底で繋がり合っては、世界観と奥行きを広めている。
     女の性と水の関連付けや、母方の血筋を辿ることで皇統に絡みつく一族を連想させる下りは、同筆者の「葛野盛衰記」を連想させた。

     また、史実との照合や人物の定説を調べてみる面白さも、歴史物の興。
     個人的には、「朝顔斎王」の娟子内親王と源俊房の二人が可愛らしかった。
     作中では二人とも和歌が不得手という設定だが、「今鏡」のエピソード(交互に扇に一文字ずつ書き加えながら歌を作る遊びをしている内に愛情が深まった)を知れば、微笑ましさも増す。
     (実際は、駆け落ち騒動の末に、内親王の弟である後三条天皇の怒りを買ったらしい。)
     記録では多くの子女に恵まれた俊房だが、娟子との間には子どもができなかったのも皮肉。
     それでも正室として大切に遇されたであろう彼女を想像するのも、小説の楽しみの一つだ。

  • ワクワクする新しい作家さんとの出会いだった。
    ぬめっとした(あ、でも、決して気もち悪いわけではなく)世界は独特で。
    他の作品も読んでみたい。って思った。

  • 短編集だけど、ちょっとずつ繋がっているのがよい
    ちょっと背筋がゾワゾワするようで、それでいて刹那い物語

  • アマテラスやスサノオが出てくるような古代からはじまって、
    最後は江戸時代の武家で終わっている連作短編。

    全てを繋ぐ糸は、ある里と七姫。

    で、確かに幻想は幻想なんだけど、「暗黒幻想」というか、
    出てくる女がとにかくしたたかで、怖い。
    生々しさは感じず、狂気だけが静かに滲み出ている暗黒幻想。
    正直後味は悪い。ぞくっと背筋が冷たくなる。
    ので、可愛らしいタイトルとカバーに騙されて読むと……っていう。
    私はこのひんやり感、あんまり得意じゃないなー。汗

  • 織女の七つの異名を鍵に、時代を越えて語られる短編集というか、連作なのでしょうか。

    語り口は綺麗そうに見えて、暗い情念のようなものが。
    「ささがにの泉」と「朝顔斎王」は比較的さっぱりとして気持ちよく読めました。


    姫達は強いのか、弱いのか、一途なのかしたたかなのか。

    短編だからか登場人物達の動機が説明不足だったり、かと思えばやけに説明口調なところがあったりで、ちょっと気になりました。

  • 凝った趣向が見事だが、原典に対しての知識が足りなかったため、楽しみ切れないところがあった。

  •  神代~江戸時代初期頃を舞台にした短篇連作。ミステリの味もあり、幻想味もあり。でも何より大きく作品全体を巡るのはたぶん、女の怖さと妖しさだと感じた。
     そんな中で少し和ませる部分もあるというか、ちょっと少女小説味もある「朝顔斎王」がいい緩和剤になっていて好き。

  • ある村の泉を軸に7つの物語が連なっている。綺麗な印象なのだが、実は怨念?やら人間の心の中の見たくない部分なども織り込まれていて、臨場感のようなものを感じた。自分がこの時代に生きていたらどんな階級の家だろうかとか自分が主人公だったらこういう風に生きられるだろうかということを、考えることが多々あった。時代物、それも古代~平安ぐらいの読み物がなかなかないので、森谷さんには今後もがんばって素晴らしいものを書いてほしいです。

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著者プロフィール

1969年静岡県生まれ。日本画家・屏風作家。筑波大学大学院芸術研究科美術専攻日本画分野修了。渦巻きをモチーフにした屏風制作を行う傍ら、神社、寺院,協会への奉納絵画をライフワークとして続ける。 主な奉納・収蔵作品大徳寺聚光院伊東別院 墨筆による「千利休座像」軸一幅/駿河総社静岡浅間神社四曲一双屏風「神富士と山桜」。主な出版物 絵本『おかあさんはね、』(ポプラ社)/絵本『メロディ』(ヤマハミュージックメディア)/絵本『サクラの絵本』(農文協)/詩画集『国褒めの歌巻一』(牧羊舎) 
自身の日本画制作に加え、寺社奉納絵画、絵本制作、コラム等の執筆、講演会等を行う。人と人、人と自然、人と宇宙が穏やかに調和する日本文化の特質を生かし、新しい世界に向けたパラダイムシフトを呼びかけている。静岡ユネスコ協会常任理事。

「2020年 『ジャポニスム ふたたび』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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