- Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575235401
感想・レビュー・書評
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好みドンぴしゃりの本でした!
この人の別の作品も読んでみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
雅な世界を舞台に、女の強さと弱さ、そして何より怖さが存分に描かれた作品ばかりでした。個人的に、ミステリを抜いて一番良かったのは「朝顔斎王」。他の短編には無い、ほんのりと淡い恋模様が何とも微笑ましいです。そしてミステリとして一番良かったのは「梶葉襲」。これは女の強かさが、とても印象に残りました。
少しずつ流れていく時代の中、それぞれの短編の登場人物が再び現れたり、人々に語られたりしていて、そういった繋がりを見つけるのも楽しいです。 -
古典ミステリ、といっていいかな。謎解きに派手さはないものの、始終雅な雰囲気に包まれてまったりとした印象。たぶん、古典にさほど詳しくなくても大丈夫だとは思うけど……ときどき古典の知識が必要か? という部分も見受けられるかも。「千年の黙」がお気に入りの人になら間違いなくお薦めの一作。
好きなのは「梶葉襲」。一番ミステリらしい物語だったかも。そしてこの裏事情……この話に限らず、全体的にかなりどろどろしたものが満ちているはずなんだけどね。やっぱり雅に感じてしまうこの雰囲気が良い。 -
時代物ファンタジー大好きです。
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デビュー作「千年の黙(しじま)」が王朝ミステリーだった森谷さんの3冊目の本。
今度は短編集で、時代は古代から江戸時代まで。
大王(おおきみ)が衣通姫のもとへ通っていて、誰も入れないはずの一室で急に亡くなり、駆けつけた大后(衣通姫の姉)が嘆く所から始まります。
不思議な池のほとりで暮らす巫女のような衣通姫はミステリというよりもファンタジーの住人ですね。
七姫というのは織女の異称が七つあるのをいうのだそうです。
秋去姫(あきさりひめ)、朝顔姫(あさがおひめ)、薫姫(たきものひめ)、糸織姫(いとおりひめ)、蜘蛛姫(ささがにひめ)、梶葉姫(かじのはひめ)、百子姫(ももこひめ)…
この名にちなんだ物語をそれぞれミステリー仕立てにしてあります。
山奥の水辺で布を織る女というモチーフが続き、愛する者をくるもうとする繭や罪を隠す布、跡をつけるための糸など、女の様々な思いが託され、物語が織り上げられていくのです。
実在の歌人や皇子、あの清少納言なども登場し、最後には作中人物が詠んだ歌があげられているという凝りよう。日本語って何て綺麗なんでしょう!
うっとりしました…
和物ファンタジーや、山岸さん長岡さんのコミックがお好きな方などにもオススメ! -
七姫とは織姫の異称のこと。
それぞれの姫の名前を関した女性が、神代の時代から江戸時代に至るまでにたどる様々な恋物語です。
いやー美しい!
一つ一つのお話が独立していながら蜘蛛の糸のようにつながりを持っていて、「女の血」というものを思い起こされます。
『千年の黙』作者らしく、ミステリ要素もふんだんに盛り込んであってとても読み応えのある物語でした。
第一編の密室ミステリのスタートからしてとても綺麗なんですよ。
しかもお話に添えられている歌が本当に物語りにぴったりで美しいんだな。
女の清らかさと美しさと恐ろしさを閉じ込めるのに「和歌」とは類まれなるツールなのかもしれません。 -
タイトルの通り幻想的でした。
よくわからないような、なんかきゅうっとする感じです。
時代っぽいファンタジー好きなのでおもしろかったです。 -
「女は今日も物語を綴る。誰に読ませるでもなく、ましてや他人の興を呼び覚ますことなど、初めから望んでもいない物語を。今となっては書くことだけが、女の生を価値あるものにしてくれると、信じているかのように。」
これもまたまた桜庭一樹読書日記より。
もう少し私自身が古典の歌の意味とかを理解していれば、もっと楽しめたかも。
7つの七夕にまつわるお姫様たちのお話。
それは、切ないものがほとんどで、お話の世界なのか、事実とかみ合わせた部分もあるのか、そう思って昔に思いを馳せました。
この著者のほかの作品も探してみようと思ってます♪
【6/20読了・初読・市立図書館】 -
「糸」「衣」まぁつまり七夕にかかわるのかな、という短編詰め合わせ。
ひそかに各話がリンクしているのがよいです。
個人的には斎宮のお話が好きだなぁ。 -
「衣通姫!これはなんとしたことだ?」
姫は答えない。
「なぜ,大王はみまかられた?申せ!そなたが毒を盛ったのであろう!」
「母上,そのおっしゃりようは……」
うしろから遠慮がちにそうなだめる声があったが,大后は耳を貸そうともしなかった。
「ほかにどう考えられる?この館は標で封印されており,誰一人入れるはずがない。そして室内には,姫と大王,二人だけだったのだぞ」
そしてその大王は死んでいる。大后はたまりかねたように声を放って泣き出した。
(「ささがにの泉」本文p.6-7)