- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575235944
感想・レビュー・書評
-
今まで多くの三浦しをん作品を読んできたが、この本は後回しになっていた。というのも、文楽に馴染みがなく、なんとなく堅苦しい小難しい話に思えたからだ。
だが、読み始めてその考えは一掃された。とにかく面白い!文楽の物語と主人公である健大夫の心情を上手くリンクさせていて文楽の物語がとても身近に感じられたし、難しく思っていた文楽の世界も時に厳しく時にコミカルに描かれており、読み進めているうちにどっぷり文楽の世界にはまっていた。文楽ってなんて面白いの!
勿論、本当の文楽の世界とは違うところもあるだろうし、まだまだ知らない部分もたくさんあるが、近々本物を見に行きたいと思う気持ちにさせられる程面白い世界だった。
登場人物も個性的。そしてやはり三浦作品らしい(?)ちょっとBL風味なところもまた魅力的だった。 -
テーマが文楽。文楽とは、人形浄瑠璃のこと。
わ、分からない・・・予備知識がない・・・でも、キャラが魅力的で読ませる読ませる。「油地獄」の練習をしてるはずの健と兎一郎が、実は「寺子屋」をしていて、師匠に『アホかあー!!』って怒られるところとか。笑いが止まらんかった。
話の主軸としては、主人公「健」が文楽のキャラの心を、日常生活の出来事を通してつかんで行く。「ガラスの仮面」の北島マヤみたい。
文楽って、遠い遠い異国の存在かと思いきや、そこに出てくるキャラたちは、江戸時代に生きていた人たちだ。現代の私たちのように、恋をしたり、憎んだり、自分の信じる正義に生きたりしている人たち。私たちと同じ人間。
それを私たちは、太夫の語り、三味線の音色、人形の躍動を通して感じ取る。時空を超えた人々の、心の叫びを感じ取る。なんと、素晴らしいのだ、文楽なるものは!!見たことないけど・・・
「生きて生きて生き抜く。これからも文楽と共に」と、仮名手本忠臣蔵を語りながら悟る健太夫。かっこよかった。生きながら仏果を得てますね。
芸を極めるものの、容赦のない魂と魂のぶつかり合い。かっこいいなあ。何かひとつを突きつめつくすって、すごく大変だけど、すごくかっこいい。故に、文楽はかっこいいと悟りました。 -
伝統芸能、文楽(人形浄瑠璃)の世界で日々稽古に励む、若手の大夫の物語。
三味線に合わせて物語を語る大夫の健は、師匠の銀大夫に言われ、無口な三味線奏者の兎一郎と組むように言われる。
最初はどうしてよいのかわからず戸惑うも、徐々に呼吸が合ってくる。
心中やら仇討やら、すぐには理解できない登場人物の気持ちを想像し、自分なりの役つくりに励み、ひとつひとつ階段をのぼっていく――
熱い文楽の世界、と思いきや、けっこうゆるい空気感(笑)
文楽の有名な演目がたくさん出てくるのだけど、「全然知らん!」というのがちょっと恥ずかしい。
人形ではなく、あの端の方にいる人の方!というので、あまりイメージがわかず、とりあえずYOUTUBEで見てみる(便利な時代だ!笑)
おおお、大夫ってすごい。語りで情景を広げていく。
人形浄瑠璃って、人形が主役だと思っていたが、面白いもんなんだなぁ。
自分に遠いと思っていた文楽の世界に生きる人たちも、自分と同じように悩み、考えながら進んでいるのだなぁと思うと、とても身近に思えるから不思議。
でも、芸事を究めようとしているのに、恋愛はいらなかったんじゃなかろうか?なんだか少し半端だったし。
まぁ、そこらへんが、イマドキな味付けなのかな(笑)-
「とりあえずYOUTUBEで見てみる」
その手がありましたね(音楽は探してみるのに考えが及ばなかった)。
でも、舞台を観ていて「人形」が「人...「とりあえずYOUTUBEで見てみる」
その手がありましたね(音楽は探してみるのに考えが及ばなかった)。
でも、舞台を観ていて「人形」が「人形」に見えなくなる部分って、PCの画面からでは難しいかも。2013/01/11 -
nyancomaruさん
いつもコメントありがとうございます。
youtubeは、映画の予告だったり「ちょっと観たい」ときによく使っていま...nyancomaruさん
いつもコメントありがとうございます。
youtubeは、映画の予告だったり「ちょっと観たい」ときによく使っています♪
でも確かに、人形浄瑠璃の面白さというのは、youtubeでは伝えきれないでしょうねー。
日本の伝統芸能なのに、一度も観たことがないってちょっと悲しい^^;2013/01/15
-
-
3.4
-
人形浄瑠璃・文楽で、語り手(大夫)を務める「健」。
年若い彼は、人間国宝・銀大夫師匠の命令で、無口で変わり者の三味線「兎一郎」と組むことに…
特定の相方を拒む兎一郎をつかまえて、どうにか練習に漕ぎ着けようとする健だが…
渡る世間は芸事の鬼ばかり。登場人物の半分が文楽にどっぷり取り憑かれてます。
一見おだやかに見える亀治兄さん(銀大夫師匠の相三味線)すら、家族旅行なのに家族そっちのけで銀大夫と音合わせしてるし・・・
芸術家の嫁は大変だなと思いました。でも三浦しをんさんの書く女は強かな人が多いので、まあそんな旦那でも尻に引いたりマイペースに生きていったりするでしょう。バランスよければ全てよし。-
「渡る世間は芸事の鬼ばかり」
ホントですねぇ~
「あやつられ文楽鑑賞」を先に読んで、三浦しをんの眼力の凄さに恐れ入ってます。「渡る世間は芸事の鬼ばかり」
ホントですねぇ~
「あやつられ文楽鑑賞」を先に読んで、三浦しをんの眼力の凄さに恐れ入ってます。2014/04/17 -
「あやつられ~」の存在を知らなかったので、教えて頂けてありがたいです^^*
読んでみたいなあと。「あやつられ~」の存在を知らなかったので、教えて頂けてありがたいです^^*
読んでみたいなあと。2014/04/18
-
-
ものすごく面白い!!『舟を編む』よりもっともっと面白い!!!文楽を好きな人、興味のある人、つまらないと思ってる人、そもそも存在さえ知らない人、そのすべての人に読んでもらいたいと思った。ややきわどい表現はあるものの、それさえなければ子どもたちにも是非読んでもらいたい。学校の課題図書にしてほしいほど。
文楽と、それに関わる人たち(太夫・三味線・人形遣い)に対する作者の愛と好奇心が存分に感じられ、それにまた心打たれてしまう。来月に文楽鑑賞デビューを控え予習の意味も込めて手に取ってみたのだが・・・当日が待ち遠しくてたまらなくなった。どうしよう!
現大阪市長に是非とも献上したいものだと友人に言ったら、全国から送られてきて既に売るほど持っているのではないかと返されてしまった。確かに。 -
予備知識なく目について手に取り読み始めましたら、義太夫の話でありました。授業で少し聞いたことある演目がいくつか登場し、あの人形浄瑠璃はこんな話だったんか〜。
研修所出で人間国宝の銀大夫師匠に弟子入りして10年になる建。
師匠に言われ組むことになった、少し難しい三味線の兎一兄さん。
大きな役に抜擢され芸に苦悩したり、一目惚れしたり。
こんなに打ち込めることがあるのも幸せだし、それが一生かけられる仕事だというのも幸せ。
わたしには、ないかも。何よりも大事なんて。
そしてやっぱり、読後は心が温かいのです。
いい話でした。 -
デビューしました。面白くて、一気に読みました。
ちょっと感想がずれますが、高校時代不良だった人って不器用で融通が利かなくて、一途ですよね。何だか女性の造形にもそれを感じるのは、著者が元ヤンなんだろうか、とか思ったりして。
もう亡くなったのですが義理の父が歌舞伎の義太夫だったので、語りと三味線を両方やるってどんななんだろうと思いながら読んでいました。多読家でしたが、小説でも勉強していたのだろうか。もっと話を聴きたかったなあ。
***以下抜き書き**
・俺はついに、確信を抱いた。近松門左衛門は『女殺油地獄』で、あらかじめ定めづけられた生への疑問を、描きたかったんだ。
たとえばいま、女だから俺と同じ舞台に立てないと知って、ミラちゃんががっかりしているように。たとえば研修所出身の俺は、自分の見台なんか一個しか持ってなくて、師匠に借りたりしてやりくりしてるけど、文楽の家に生まれた大夫は、代々伝わる漆塗りや螺鈿の見台をごろごろ持ってるように。
自分ではどうしようもない部分で、なにかが決められてしまうことがある。
それは仕方のないことだ。そこから自由になりきれるものは、だれもいない。だけどそれは、哀しみやむなしさを確実に生み出しつづけている。俺は語れる。それを自分なりに咀嚼して、語ることができる。
・「どっちもあっていいんじゃないですか。この世界だって、研修所出身と文楽の家に生まれたものとで、半々ぐらいだし。どっちなのか、べつに気にする人もいないいし」
そういえば、兎一兄さんがどちらなのか知らない。健はそう思った。
「それを聞いて安心した」
兎一郎は浴衣姿で腕を組む。「古い考えのひともいる世界だから、いたずらに刺激しすぎるのはよくない。モーツァルトのオペラを無邪気に楽しんだ、アホなフランス貴族とは勝手がちがう。革命的舞台を作りあげたいなら、細心の注意を払って駆け引きしないとな」
「いや、そんなおおげさなつもりはなく…」
「近松門左衛門は、きっとそういうつもりだったさ」
・勘平がどんな男なのか。意志のひとなのか、いいかげんなやつなのか。それをつかめば、「勘平腹切の段」に揺らぎがなくなる。夜空を眺めつづけて、ついに星のめぐりを把握した太古の人々のように。茫漠として見える言葉の堆積は、実はきらきらと光る宝をひそかに隠している。それを探り当てなければならない。 -
初っ端から親切な説明などなく、文楽の世界が展開されていく。
有無をいわさず、引き込んでいく。
夢中で味わい尽くそうとする、未知の、だけど魂が揺さぶられる舞台。
三浦しをんさんって、スゴイ。
きっと、自身も心動かされたであろうプロの世界を、その感動の揺れ幅を決して損ねずに、全くの門外漢たちをも虜にさせていく。
最終章、いきなり文楽の世界にすでにおかれていることに、震えた。
著者プロフィール
三浦しをんの作品






この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。






仏果を得ずを本棚に登録しているひと
-
- みつまめ
- 2020年12月2日に登録
-
- akesann
- 2019年10月23日に登録
-
- 徳島大学附属図書館ユーザーのオススメ本棚
- 2019年2月14日に登録
-
- kazumifukucyan
- 2018年12月18日に登録
-
- meinanlibrary
- 2018年11月15日に登録
-
- corrupted1979
- 2018年10月12日に登録
-
- ブクブク交換@松本
- 2018年8月27日に登録
-
- AKA
- 2018年5月30日に登録
-
- ukihc
- 2017年4月16日に登録
-
- Raquel
- 2020年7月16日に登録
-
- lobscur
- 2020年3月9日に登録
-
- なっちゃん
- 2020年3月3日に登録
-
- saekoyamashita
- 2019年1月15日に登録
-
- ねむいさん
- 2018年4月2日に登録
-
- まつ
- 2018年3月27日に登録
-
- k-kunta2
- 2018年3月8日に登録
-
- hitoriyomi
- 2016年5月28日に登録
-
- yuzu3nouta
- 2016年2月19日に登録
-
- 紫
- 2019年8月4日に登録
-
- okamh
- 2017年1月21日に登録
-
- gonpi
- 2015年9月13日に登録
-
- takeshi-usa
- 2015年4月25日に登録
-
- roooooock
- 2015年2月22日に登録
-
- 3311180
- 2014年9月7日に登録
-
- bildub01
- 2014年7月19日に登録
-
- すみさん
- 2014年5月18日に登録
-
- ecoxx
- 2013年7月23日に登録
コメントありがとうございます(^-^)
文楽!本当面白くて興味持ちました。
伝統芸能(歌舞伎や能...
コメントありがとうございます(^-^)
文楽!本当面白くて興味持ちました。
伝統芸能(歌舞伎や能や…)の中でも一番
私とは遠い場所にあると思っていたのに(笑)
文楽に取り組む人達の人間関係が魅力的で、
熱意がすごく伝わってきて…
この本早く読んでおけば良かったと思いました。
私的に月大夫さんと兎一兄さんの話も
もっと読みたいな~と思ってみたり♡
来年1月の文楽見に行こうと計画中です(^-^)
こんにちは。いつも花丸ありがとうございます。
私も「文楽」ってお堅くって、とっつきにくい!と思って、しをんさんの...
こんにちは。いつも花丸ありがとうございます。
私も「文楽」ってお堅くって、とっつきにくい!と思って、しをんさんの作品、手をつけられずにいたのですが…。
先日、他の作家さんの作品を読んでいたら「文楽」の話が書かれていて、ちょっと興味が出てきて…。
そしてtaaaさんのレビューを読んで、私も「仏果を得ず」を手に取ってみようかな…と思いました。
ロードレーサーに無知だったのを近藤さんがうまく物語にしてくれたし、他も原田マハさんの「楽園のカンヴァス」もそうだったし。
なのでちょっと楽しみなんです♪
素敵なレビューありがとうございました♪
コメントありがとうございます(^-^)
小説によって今まで無知だった世界を
知る事ができるのは本当に楽しいで...
コメントありがとうございます(^-^)
小説によって今まで無知だった世界を
知る事ができるのは本当に楽しいですね(*^^*)
まさにこの本はそういう本で、
是非読んでみて欲しい一冊です。
文楽を完全に美化する事はなく、主人公に
「この演目の主役の気持ちさっぱり分からない」
などと思わせたりもしていて(笑)
主人公と共に理解していく感じも
取っ付きやすさを出している気がします。
伝統があり長く続いているものには、
やはり理由があるのだなぁと実感です(^-^)